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しおりを挟むまた別の日。今度は、ルイに関わるイベントが起きた。
学園の廊下で彼が悩ましげに立っているのを見かけた。彼の目の目の前には教科書が山のように積み重なっている。『イベント発生』の文字が表示された空中ディスプレイを見つつ、話しかけてみる。
「何かお困りですか?」
「仮に困っていたとして、そなたに話す義理はない」
「……ああ、そうですか」
冷たく突っぱねられたルサレテはすぅと目を細める。
まぁ、わざわざ聞かずとも、ディスプレイを見れば悩みの内容は分かる。どうやら、ルイは所属している生徒会の会議があったのに、この教科書をすぐに図書室へ運んでほしいと教師から押し付けられてしまったらしい。
ルサレテは無言で教科書の山を抱える。
「図書室、ですよね」
「どうしてそれを……。それより、何のつもりだ? 僕は別に頼んだ覚えはない」
「はい。私が勝手にやるだけです。ちょうど、本を運びたい気分だったので」
「どんな気分だ」
さっさと教科書を運び始めると、ルイの好感度が+5上がっていた。
「……すまない。助かる」
彼はいそいそと会議へ行ってしまった。
教科書を運ぶだけで好感度が上がるなら、安いものだ。
好感度を上げるために頑張ってはいる。それでも、開始時の好感度が-100なので、好かれるには程遠い。大嫌いが嫌いになったくらいではほぼ意味がないのに。
「頑張ってるネ~ルサレテ!」
教科書を持って歩いていれば、目の前にぽんっとシャロが現れた。
「頑張ってるけれど、最初の好感度が低すぎて埒が明かないわよ」
「まぁまぁそう言わズ! ボクは興味深い観察をさせてもらってるヨ!」
「他人事でいいわねシャロは。見てるだけじゃなくてたまには手伝ってよ」
嫌味を零して睨めつけると、彼は少しだけ申し訳なさそうに言った。
「じ、じゃあここにキミの推しを呼んでアゲル! 好感度を上げるチャンスだヨ! わ~いやったネ!」
「えっ、ちょっと待って、何勝手に――」
頼んでもいないことを勝手にするなと阻む前に、シャロは画面の中に消えていった。
その瞬間、教科書の山が崩れそうになり転びかけ、ルサレテの腰が支えられたのと同時に、腕から教科書のおよそ半分の山が取り上げられた。
「ひとりだと大変でしょ。手伝うよ」
さり気なく気遣ってくれたのは、ロアンだった。好感度は-70。まだ割と、かなり、嫌われている。
「どこまで運べば?」
「図書室です」
「遠いね。こんなに沢山、ひとりで運ぶには無理な量だよ。分けて運ぶとか、そういう工夫はできないの?」
キャパを考えろと嫌味を言われる。ついさっきバランスを崩していた身では、ぐうの音も出ない。
「あの……親切にしてくださってありがとうございます」
「教科書を落として傷まないようにと思っただけだよ」
「でも……なんだかんだ言って、優しいですよね。私が転ばないように支えてくださいましたし」
「自惚れないで」
「……すみません」
そのとき、ロアンの好感度が+2上がった。ほんのりと頬も赤く染っていて。
(もしかして、優しいって褒めたから?)
意外と単純なところがあるのかもしれない。教科書を図書室に運んで戻ると、廊下の途中でルイとペトロニラを見つけた。
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