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 その日の昼、またしてもイベントが発生した。イベントは参加自由で、攻略したい相手と関わるものでなければスルーしてもいい。しかし、人から嫌われすぎ&破滅フラグだらけのルサレテにとっては攻略が死活問題なので、ひとつひとつのイベントを着実にクリアしていかなければならない。

「危ないっ!」

 昼休み、学園の稽古場でサイラスと別の男子生徒が剣の稽古をしていた。
 たまたまルサレテが通りかかった瞬間、空中ディスプレイに『イベント発生』の文言が再び現れる。

 サイラスの稽古には、剣を振る彼の姿をひと目見ようと大勢のギャラリーが集まっている。そこに、彼の剣が吹き飛んできて、女子生徒のひとりが怪我をするかもしれないという。怪我をする予定の女子生徒の頭上には赤い矢印マークが。
 無視する訳にはいかず、とりあえずイベント参加をタップする。

(使用できるアイテム無し……か)

 続いて、目の前に3つの選択肢が表示された。

『①身を呈して庇う ②女子生徒を突き飛ばす ③危ないと声を上げる』

 選択するまでの時間の猶予はたった20秒。カウントダウンが進む中で必至に思考を巡らせる。まず、3つ目の選択肢だが、あの女子生徒の反射神経が余程よくなければ避けきれないと思う。2つ目の選択肢は、剣がぶつかったことによる怪我は防げても、転んだことで違う場所を怪我する可能性があるだろう。……となると、残りは1つ目の選択肢しかない。

(これ、捨て身で助けろってことじゃない……!)

 庇ったらルサレテが怪我をするかもしれない。しかし、選択の余地がないルサレテは、1番を指先で押した。すると、ゲームの作用で身体が勝手に動き、女子生徒のことを抱き庇った瞬間、剣がひゅっと飛んできた。

 ――ごんっ。
 剣がルサレテの腕に弾かれ、鈍い音を立ててから地面に転がる。ずきずきと痛む左腕を押さえながら、女子生徒に尋ねる。

「怪我はないですか?」
「は、はい。それよりあなたの方こそ大丈夫ですか!? すみません、庇ってもらっちゃって……」
「私も大丈夫です。……大したことはありません」

 必死の作り笑いを貼り付けて大丈夫と言いつつも、実際はかなり痛い。サイラスの好感度を確かめるのはまた今度にして、とりあえず医務室に湿布をもらいに行こうとすると、彼がこちらに駆け寄ってきた。

「大丈夫か!? 悪い! 俺の不注意だった!」
「こちらの方が私のことを庇って怪我をされています!」
「それは本当にすまな――って、ルサレテ嬢……」

 庇ったのがルサレテだとは知らなかったサイラスは、一瞬だけ嫌な顔をした。ルサレテに謝るのは不本意のようだ。

「大したことはないので、ご心配なく」

 そう伝えてひとりで医務室に行こうとするが、意外と律儀な彼はわざわざ付いてきてくれた。医務室には人の姿がなく、サイラスが代わりに手当までしてくれることに。医官が来るまで待つからと抵抗したが、彼は頑固で、強引だった。無理やり椅子に座らされて、腕を見せるように言われる。
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