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しおりを挟む昼の狩猟祭を終えると、館で夜会が開かれる。狩猟祭で見事に鷹を射落とし、令嬢や夫人たちからもてはやされていたエルヴィアナ。彼女たちは皆、エルヴィアナを男だと思っていたらしく、美しいドレス姿で再会を果たすと目を丸めていた。
最終日の夜。
「今日もとても綺麗だ」
「……見ているのは、クラウス様の方よ」
エルヴィアナは鋭い目付きをしている上、人を寄せつけない威圧的な雰囲気があるので、魅力的といえる女性像にはあまり当てはまらない。この国で理想とされるのは、くりっとした瞳に庇護欲を掻き立てられるような可愛い女性だから。
一方。礼服姿のクラウスは、まるで物語から飛び出してきた王子様のよう。女性たちが彼のことをうっとりと盗み見ている。
しかし、人気を集めているといえば、もう一人。第七王子ルイスも、クラウスと同じように女性たちの目を引いていた。クラウスは硬派な美形だが、ルイスは柔らかい雰囲気で、人好きのしそうな美形だ。そして、適齢期でありながら未婚というのも人気の理由。女性たちは我こそが見初められようと躍起になる。けれど彼は――リジーのことを慕っている。
リジーに会うために度々ブランツェ公爵邸に通ってくる彼。軽薄そうに見えて、一途でマメだ。
「こんばんは。エルヴィアナ嬢にクラウス」
彼はこちらに来て、紳士的に一礼した。そして彼の隣には――ルーシェルが。
「ごきげんよう、クラウス様」
彼女はエルヴィアナには目も向けず、クラウスだけを見つめている。分かりやすい人だ。
相変わらず、ルイスの周りには鬱陶しいくらいのキラキラしたオーラが漂っていて、目を眇めてしまう。ルイスはクラウスの方を一瞥して、意味ありげに口角を上げる。クラウスも、元々鋭い目付きを険しくさせていて。謎のアイコンタクトに、エルヴィアナは首を傾げる。
そういえばこの狩猟祭の間、やたらと二人はこそこそ話していたが、何を話していたのだろう。
「エルヴィアナ嬢は相変わらず女性に人気だね。黒の長髪の美男子は誰だって何度も尋ねられたよ。僕よりモテるんじゃない?」
「ご冗談を」
クラウスが不服そうに「エリィは俺にだけモテれば十分だ」と呟いた。一方、ルーシェルはふふと優美に微笑みながら言った。
「本当。エルヴィアナさんは凛々しく逞しくて……羨ましいです。わたくしも格好いい女性になりたいのですが、小柄で童顔のせいで、可愛いと言われるばかりですので」
もう一度言うが、この国の女性の理想像は、格好いい女性ではなく、彼女のように華奢で可愛らしい女性だ。少しも羨ましいなんて思っていないだろうことは見え透いている。これは遠回しに見下すような発言だ。
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