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01 プロローグ

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 公爵令嬢エルヴィアナ・ブレンツェは、王立学園の二年生だ。

 今日は、王都の公共ホールで新入生を歓迎するパーティーが開かれている。
 このパーティーは新入生だけでなく、二年生も招かれる。お互いに親睦を深め、新入生に社交の場での振る舞い方や礼儀作法の見本を見せることを目的として。

 装飾が施された広間の片隅。エルヴィアナは婚約者と王女の姿を見つめていた。――またあの組み合わせだ、と。

 金髪につつじ色の瞳をした怜悧な美貌の青年と、桃色のウェーブのかかった長い髪に、くりっとした青い瞳をした娘。エルヴィアナの婚約者であるクラウス・ルーズヴァイン公爵令息と、この国の王女のルーシェル・エントだ。

 最近やたらと一緒にいるところを見かける。寡黙なクラウスは仏頂面を浮かべているけれど、ルーシェルの方はころころと表情を変え、楽しそうにしている。時折頬を赤く染める姿は、完全に恋する乙女だ。

 すると次の瞬間――クラウスがふっと笑った。それを見て、心臓がきゅっとなる。

(わたしの前ではもうほとんど笑わなくなったのに)

 家の縁で生まれたときから彼との婚約は定められていた。昔は仲良くやっていたけれど、今は違う。彼はエルヴィアナの前ではほとんど笑わなくなった。ほとんどどころか、彼がどんな顔で笑うか思い出せないくらいで。

 すると、クラウスと仲が良さそうに話していたルーシェルが、彼を置いてこちらにつかつかと歩いてきた。

「ごきげんよう、エルヴィアナさん」

 スカートを摘んで片足を引き、優雅に淑女の礼を執る彼女。こちらも合わせてお辞儀をする。

「……ごきげんよう」
「わたくしね、あなたに教えて差し上げたいことがあるの」

 ルーシェルは花が咲いたような愛らしい笑顔で、唇の前に人差し指を立てて言う。


「──クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」

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