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1巻

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 そして夜になると、誰を誘うかという選択肢が出現する。エロゲーなので、もちろんセックス相手だ。このゲームは主に、セックスして好感度を上げる仕様である。ただしセックスするとモラルのパラメーターが少々減るし、翌日別のヒロインを選ぼうものなら激減するので、注意が必要。モラルがゼロになると、バッドエンド直行である。
 六日~十日及び、二十六日~月末は、都市内での行動となる。〈鍛練〉、〈会話〉、〈読書〉、〈売買〉、〈散歩〉、そして〈依頼〉。
 この〈依頼〉をすることで、モラルが回復する。なのでとても重要な行動なんだが、どうやらその内容は、冒険者ギルドに張り出されているものだったらしい。ゲームでは、犬の散歩とか、荷物の配達とか、カフェの店員とか、公園の清掃だったのに。
 それにしても、リュカは俺が黒髪の闇属性だと知っているし、この前ボロ負けしたのに、よく話しかける気になったな。

「……リュカ・ソレイユだったか。王子でもギルドの依頼を受けるのだな」
「少しでも人々の助けになりたいからね。といっても、最近ギルドに登録したばかりだから、簡単な依頼しか受けられないけど」

 彼が立っているのは、Gランク掲示板の前。見れば、犬の世話や、部屋の片付けと書かれた依頼書があった。あのバイトのようなラインナップは、Gランクの依頼だったようだ。俺はレア素材を提出してさっさとDランクまで上がったので、知らなかった。
 犬の世話か。きっと可愛いだろうな。

「これ、ザガンも一緒に行く?」

 俺がじっと紙を見ていたからか、リュカはその依頼書を掲示板から剥がして、誘ってきた。
 なんだこの男、コミュ強か。俺は闇属性なんだが? あと自分のほうが身長高いからって、わざわざ首を傾げて顔を覗き込んでくるな。眉間にしわが寄る。
 しかし、犬の世話か。俺一人では絶対に受けられない依頼である。

「…………少しなら、手伝ってやらなくもない」

 悩んだ末、先輩冒険者として同行することにした。後輩を指導するのも、たまには良いだろう。
 結論、犬はとても可愛かった。依頼場所がペット預かり所だったので結構な数がいたが、どの子も撫でるとしっぽを振って喜ぶし、闇属性であろうと人間のように怯えたりしない。前世で犬を飼っていたこともあり、懐かしさも湧いてくる。

「ふふ、みんなとても可愛いね」

 その通りなので素直に頷くと、リュカはまたふふっと笑みを零す。どうやらリュカも犬好きだったらしく、とても嬉しそうにブラッシングしていた。


       *


 それからというもの、リュカが受けるGランク依頼に同行するようになった。昼過ぎにギルドに行くと、何故かいるのだ。しかも毎度誘ってくる。内容が興味ないものであれば断るが、動物関連ばかり選ぶから、付いていかざるを得ない。
 第二ダンジョン攻略前に三回、攻略後に二回。第三都市で攻略前に四回、攻略後に三回。そして第四都市攻略前に、三回。時には夕食を共にすることもあった。
 それだけ会っていれば、世間話もするようになる。彼自身のプロフィールに、普段どのように過ごしているかや、祖父母に両親、兄、妹弟の話など。リュカは家族ととても仲が良く、父と兄には尊敬の念も抱いているようだ。
 俺のプロフィールも聞かれたので、答えておいた。ちなみに誕生日は、七月八日である。
 今までどのような生活を送ってきたかについては、元貴族子息であることや、ノエルが妹なことを隠しながら話した。地下で生活していたこと、家を出たあとはエトワール大森林で生活していたこと、十五歳で冒険者になったことなど。
 あと動物の発情や交尾について話している時には、さりげなく俺の経験を聞かれた。王子でイケメンなリュカでも、そういう話題に興味があるんだな。もちろん俺も男として、なおかつエロゲープレイヤーとして興味はあるものの、しかし俺である。

「闇属性の人間と肌を合わせようとする者が、いると思うか? 凌辱りょうじょくしない限り、そのような経験は出来ないだろう」
「……凌辱りょうじょくしたいと思うことは?」
「ないな。俺を見て怯える連中になど、触りたくもない」
「なら良かった。でも、それだとキスもまだなのかな」
「…………妹の髪や額になら、ある」
「そっか。素敵な思い出だね」

 我ながらあまりの経験のなさに少々羞恥を覚えたが、リュカは馬鹿にしてこなかった。エロゲーの主人公なのに、同性にも優しくて良いのだろうか。


 話は変わるが、ソレイユ王国には四季があり、日本と同様の暦である。しかも第一都市攻略時は一月、第二都市は二月と、わかりやすくなっている。
 季節に合わせてのイベントもあり、第二ダンジョン攻略開始前日の二月十日時点で、好感度一〇以上のヒロインはチョコレートをくれる。
 ただしその時点で加入していないシンディ以外の全員から貰おうとする場合、ミランダ、ニナ、カミラ、ベネットの四人を、一月二十六日~二月九日の間に上げなければならない。厳しいスケジュールだが、ノエルを含んだ五人の好感度が一〇以上だとスチルイベントが発生するため、誰もが一度は攻略サイトを見ながら頑張るだろう。
 そんなわけでバレンタインシーズンの甘い街並みに煽られた俺は、自分用に板チョコを買った。甘すぎるのは苦手だが、ビターは好きだ。
 それをリュカと食べたのは、たまたま十日に会ったからである。
 もうすぐバレンタインだねと言われ、チョコが欲しいのかと返したら頷かれたので、買っておいた板チョコを開けた。公園のベンチに座り、ペキペキ割りながら男二人で板チョコを食べる図は、傍から見れば笑えたかもしれない。意外にもリュカは、嬉しそうだったが。もしかして、誰からも貰えなかったのか?
 三月には動物クッキーを出され、一緒に食べようと誘われた。日付的に、板チョコのお返しである。男相手に律儀な奴だ。まぁクッキー自体は、さくほろで美味かった。
 四月上旬には、ゴンドラに乗らされて川から桜並木を鑑賞した。
 街並みは西洋ファンタジーのものでありながら、満開の桜も見られるソレイユ王国。夕陽を受ける桜の美しさには目を奪われたし、淡い花びらが時々落ちてくるとつい手を出してしまい、リュカに微笑まれてしまった。
 ちなみにゴンドラ乗船には、王子特権を使っていた。何故ヒロインを誘わないんだ。いやでも、花見イベントは全員参加のメインストーリーのみで、個別にはなかったか。
 どれだけ『リュミエール』の世界に似ていようと、ここは現実であり、リュカは自由自在に動ける生きた人間である。ゲームのように一日四回しか行動出来ないわけでも、シナリオにある言動しか出来ないわけでもない。
 だからこんなふうに、誰かと二人きりで花見をするのも、おかしくはないが……俺を誘うくらいなら、ヒロインの誰かと親睦を深めておけ。
 まぁ桜の美しさには感動したし、ゴンドラに乗るのも楽しかったので、良い体験をさせてもらったとは思っている。


       *


 四月十一日になり、第四ダンジョンが開いた。
 出入口が混雑する早朝は避けて、昼過ぎからダンジョンに入る。そして今回も、十二あるうちから適当なルートを選んで、ひたすら前に進んだ。
 今まで攻略途中に、誰かと会うことはなかった。大広間の時点で十二に分岐していて、途中でも幾度となく道が分かれているので、遭遇率はとても低いのである。最初にリュカ達と会ったのも、あくまでもボスフロアだからだ。
 なので、ゲームではこの第四ダンジョン内で主人公達と遭遇していたが、現実では会わないかもしれない。俺にはリュカと争う理由もないし。
 だがシナリオの力は思いの外強く作用するらしく、結局途中で遭遇してしまった。三ヶ所から合流する開けたセーフティルームで、休憩していた彼ら。

「あぁザガン。ここで会えるなん」
「深淵の闇ザガン⁉ こんなところで会うなんて、ついてないね」
「ほう? こやつが以前お主らを負かしたという、闇属性か。なるほど、確かにものすごい魔力を秘めておる。これは一筋縄ではいかんのぅ」
「まぁでも、多勢に無勢っしょ。私達ならやれるやれる!」
「ふ、ふえぇぇ、怖いよぉ……」
「あらあら、お姉さんも死なないように、頑張らなきゃいけないわねぇ」

 笑顔で声をかけてきたリュカの言葉をさえぎり、ヒロイン達が次々武器を構えた。温度差が酷い。

「ちょ、ちょっと待ってください! たまたま会っただけの御仁ごじんに、何故そんな、うわっ!」

 ノエルを触手で捕らえて上に吊るし、動きを封じる。これで六対一。
 ワンテンポ遅れて放たれた魔法は全てマジックバリアで無効化させ、繰り出されたニナの双剣とミランダの斧は、短剣と杖で防御する。
 大振りのミランダの攻撃は重いが、身体強化を使えば対処が可能。隙もデカいので、背後からの双剣を避けながら斧を受け流して、彼女の脇腹に短剣を刺した。容赦はしない。彼女達も魔法や防具で強化されているので、死ぬこともない。

「ぐ、ぅ……っ! あぐぅ‼」

 うめくミランダを壁に蹴り飛ばした。それを見て小さく悲鳴を上げたベネットのところへ、足を身体強化させて一瞬で近付き、やはり短剣で斬り付ける。

「きゃあああ!」
「ミランダ! ベネット! こんの野郎‼」
「ニナ落ち着いて! 闇雲に攻撃してもザガンには当たらない! シンディ、二人の回復を!」
「わかったわ、お姉さんに任せてっ」
「くっ……リュカ、ニナ、あの者の杖を早く落とせ! デカいのが来てしまう!」

 杖に魔力を溜めるのを阻止しようと、カミラが何発も魔法を打ってくる。バリアで防ぎきれなかった攻撃が、フードやターバンを吹き飛ばす。目を見開くカミラ。

「なんと。は、はは……漆黒とな……まるで悪魔じゃ」
「愚者に血の審判を下せ――ブラッディジャッジメント」

 全方位を襲う上級魔法。この空間を、破壊し尽くすほどの威力だ。

「く、ぁ、ああああ!」
「キャアアア‼」

 必死にマジックバリアを張る彼らだったが、一分以上続く魔法が終わった時、きちんと立っていたのはリュカだけだった。あれを防御するとは、さすがは膨大な魔力を保持している光属性だ。しかしそれでも、かなり傷付いている。
 カミラは膝をついていた。ボロボロで呼吸も荒いので、魔力はほとんど残っていないだろう。他のヒロインは壁際に吹っ飛んでいるし、意識もないようだ。ノエルは俺の頭上に捕らえたまま触手で守ったので、傷一つ付いていない。
 これで戦闘が強制的に終わると思っていたが、まだ続くらしい。ノエルを捕らえているからか? とりあえずリュカから少し離れた場所に、そっと下ろしておく。

「は……ザガン、君は容赦ないな」
「当然だ。貴様らは完膚なきまでに叩き潰さなければ、無駄に何度も喧嘩を吹っかけてくる。俺を見たら逃げるくらいにしておくのが、ちょうど良いと思わないか? 悪いが勝たせてもらうぞ」

 剣を構えたまま警戒している彼に、短剣を向ける。交差する視線。
 そうして互いに一歩、踏み込んだ瞬間。リュカの足元が崩れた。

「うわっ……!」
「ッ……⁉」

 イベントが発生し、戦闘は強制的に終了。
 決着は付かないまま、主人公は好感度が最も高いヒロインと共に、崩落に巻き込まれて落ちてしまう。それを見たザガンは、主人公が落ちたことで先を越されるのを懸念して、他のヒロイン達を放置してダンジョン攻略に戻る。
 ――なのに何故、そのザガンである俺が、一緒に落ちている?
 瓦礫がれきは下の階層の地面を壊していき、結局三層分が破壊された。そしてとてつもなく広い階層へと放り出される。ダンジョンには時々空が存在し、自然の広がる階層がある。空から落ちているので、もちろん地面までは相当遠い。
 ゲームでは確か、先程通過した三階層目のレンガ壁が、場面背景だった気がする。主人公はあそこで傷付いたヒロインを介抱しながら、他の仲間を待つというシナリオだ。
 ここは現実であり、ゲームと違うのは当然のこと。けれどこれほどの窮地に陥るとは、想像もしていなかった。このままでは、地面に激突して死んでしまう。
 とにかくリュカを触手で引き寄せたら、魔法杖を持つ左手にありったけの魔力を込めた。その間にも、落下速度がどんどん速くなる。大地が近くなっていく。

「黒き流星よ我が元へ集え――ダークネスミーティア!」

 闇の超級魔法を放った。何千という黒い魔力の塊が、激しく地面に衝突していく。いくつもいくつも降り注ぎ、どんどん大地を抉っていく。
 その衝撃や爆風でどうにか落下速度を抑えて、死なずに地面に着地した。
 ……それからの記憶はない。


       *


「は、ぁ……俺は、魔力切れを起こして、気絶した、のか……?」
「ふふ、ようやく思い出したんだね。思い出すまでに三回も軽くイっちゃうなんて、ザガンったらすごく可愛い」
「ひっ……ぁ、あんんっ、ん、……ん」
「あのあと気絶した君を抱えて、近くにあった水場まで運んだんだよ。ずっとあそこにいるのは、危険だったから」

 確かに危険だ。抉れた地面が再び崩落し、さらに下の階層に落ちてしまうかもしれない。上空から瓦礫がれきが落ちてくる可能性もあるし、あれだけ目立つ魔法を撃ったので、時間が経てばモンスターも集まってくるだろう。
 シートでなくわざわざテントを出したのは、モンスター避け機能が付いているからと思われる。水場回りがセーフティエリアでも、その周辺で待ち構えられたら危険だから。布団に寝かされているのは、気絶した俺を介抱するため。
 だがそこまで気遣ってくれておいて、どうして魔力を回復させる方法がこれなんだ。精液に魔力がたくさん含まれているとはいえ、俺は女じゃないんだが……もしかして、MPポーションを持っていなかったのか?

「ザガン、俺を助けてくれてありがとう。お礼に俺の魔力をいっぱいあげるから、全部、下のお口でゴックンしてね」
「ん、あん、ん……も、起きたから、MPポーション飲めば、い……ひぅっ」
「んん……奥ちょっと突くだけで、中も縁もきゅうきゅうしながら、頑張ってしゃぶってくるよ。俺の魔力、美味しいね?」

 低音で柔らかな、脳を揺さ振るような官能的な声。
 ゲームでの彼にはボイスがなかったので、どんな声であろうと目の前にいるリュカの自由だが、何故こんなにもイケボなんだ。くそ、エロゲ主人公め……!
 どうにか離れさせたいのに、まだ魔力が少ないせいで、思うように身体が動いてくれない。そのうえ快楽に侵されている現状では、どうしても震えるばかり。
 くちゅんと奥をつつかれて、ペニスを締め付けた。その中をずるずる擦りながら出ていき、途中で止まると、狭まったところをゆっくり擦りながら入ってきて、また奥をつつかれる。それを何度も繰り返される。気持ち良さからか、涙がにじんでくる。

「あんん……、リュカ……ふぁ、あ……」
「はぁ、すごい……ザガンが、闇属性だからかな。君の柔らかな胎内や、魔力に絡み付かれていると、すごく刺激されて……んん、そろそろ、出る」

 腰を掴まれ、奥の奥までペニスで抉られた。たぶん結腸まで入っている。
 埋められている感覚だけでも全身が痙攣けいれんするほど感じているのに、ビュルルルッと熱い精液を出されてしまった。光の魔力が奥で炸裂して、ブワブワブワッと全身に広がっていく。リュカの魔力に侵食されて、脳天から足の爪先までが、強烈な快楽に見舞われる。

「――――……ッ!」

 なんだこれ、ヤバい。おかしくなる。気持ち良い、気持ち良すぎて、全身が引き攣る。パチパチと光の魔力が奥で弾けていて、断続的に腰が跳ねる。視界がチカチカする。
 気持ち良い、気持ち良い。射精していないのにイってしまっている。

「ッ――……あ、あ、あっ……! あう、んんん!」
「は、すご……ザガンのお尻、すごく締め付けてくる。搾られてる。とても、気持ち良いよ」

 髪をかれながら、胎内を優しくなぶられた。出された精液を、結腸奥で掻き混ぜられる。するとどうしても身体が震えるし、腰が跳ねてしまう。

「ふぁっ……あ、ぁんん……、んっ」
「ふふ。俺に種付けされながら、ぬちぬち掻き混ぜられるの、気持ち良いね?」
「そんな……あん、ん」

 種付け。種付けされている。そうだ、パチパチ小さく弾けているのは、リュカの精子だ。種付けされたものが魔力に変換されて、全身へと浸透していく。何億という彼の精子に、侵されている。

「あぅ……リュカ、おれ、おれ……」
「うんうん、ザガンのお尻、すごくきゅうきゅうしてるよ。エッチなこと言われて感じちゃうの、ホント可愛い。目がとろけてハートまで浮かんでるし、舌も出ちゃってるし。ふふ、キスしてほしいんだね? もちろんいっぱいしてあげる。ほら、ちゅー」

 閉じられない唇をちゅっと吸われ、舌に舌が絡まってきた。なまめかしい感触に捕らわれて、ふるりと肩が震える。触れ合っている舌先が気持ち良くて、背筋がゾクゾクする。

「ふ、ぁん……ん、んむ……ん、ん」
「ん……ザガン、……ん、ふ……」

 何度も舌を絡められ、ピチャリピチャリと唾液が混ざった。熱い吐息も混ざる。溢れそうになる唾液を飲んだら、キスしながらもリュカが小さく笑う。
 たくさん舐められて、ちゅうと吸われて。つつぅとゆっくり舌裏を辿られると、ようやく唇が離れていった。舌先がじんじんしている。キスだけで、とてつもなく感じている。

「ふ……はぁ、ん……、はじめて……なのに、こんな」
「大丈夫、もう初めてじゃないよ。ザガンが寝ている間に、いっぱいキスしたから」

 いや、何が大丈夫なんだ。もっと駄目ではないか。
 悪態は吐かなかったが、どうにも眉間にしわが寄ってしまう。そんな俺にリュカは微笑むと、あごに零れていた唾液を拭ってきた。

「童貞おちんちんも、いっぱい舐めたよ。魔力が枯渇していて勃ちはしなかったけど、気持ち良さそうに腰をくねらせて、すごく可愛かったなぁ。……うん、まだ勃たないね。やっぱり一回出しただけじゃ、回復しないか。指先は、だいぶあったかくなったけど」

 ペニスをふにふに揉まれたあと、そっと手を取られた。確認するように指先を撫でられ、そこに唇を寄せられる。そして指を絡めながら手を握られた。
 その優しい仕草や、ふわりとした微笑は王子らしいのに、吐いてくる言葉はまるでエロゲ主人公のようだ。いや、正しくエロゲ主人公なのだが、これほどのイケメンに卑猥なことを言われると、どう反応すれば良いかわからなくなる。
 迷ったままじっと見つめていると、彼は小さく笑った。

「大丈夫、まだザガンの中にいてあげるよ。ちゃんと勃起するようになるまで、いっぱいエッチして、気持ち良くなろうね」

 唇にキスされて、中に埋められているペニスを再び動かされた。くちゅん、くちゅんと奥をなぶられると、どうしても快楽が湧いて、震えながら喘ぐだけになる。
 それから何度も何度もリュカの熱いペニスで奥をつつかれて、どうしようもなく気持ち良くて、ほぼイきっぱなしになってしまっていた。特に中出しされると、光の魔力がたくさん弾けて腸壁を刺激してくるから、そのたびに背中が大きく撓る。

「ふぁ、あ、あん……ん、ん――……ッ」
「は……ザガン、ザガン……んぅっ」
「っ、あぅ……またリュカの、光が、奥に……。もぅ、いっぱい……」

 全身が光に浸っているのではないかというくらい魔力は回復したのに、さらに出されるから、変換出来ずに溜まったままになっていた。リュカのたくさんの子種が奥にあるのを想像してしまい、きゅっと胎内を締めてしまう。
 すると下腹部を優しく撫でられた。

「うんうん。俺の子種、いっぱいゴックン出来たね。魔力も回復したようで良かった。ちゃんと童貞おちんちんが勃起して、蜜を零してるよ。俺のより小振りだし、綺麗なピンクで可愛いなぁ」
「ん、んぁ……あ……」
「ああ見て。俺の魔力に押されて、外にザガンの魔力が溢れてる。黒くて小さいハートがいっぱい飛んでるね。俺とエッチするのが大好きって、ザガンの魔力が言ってるんだ」
「ぁん……そんな、ことは……」

 ない、と言いきれなかったのは、魔力が嘘をつかないのを知っているからだ。それに気持ち良いのは事実である。ただしそれが大好きに結び付くかはわからないし、肯定するのも恥ずかしくて、素直に同意出来そうにない。
 だから口をつぐんだが、結果としてさらに羞恥を煽られることに。

「違うの? でもザガンのエッチで可愛いお尻は、俺専用だよね? 俺に処女奪われて、いっぱい犯されて、もうすっかり俺の形になってるもの。んんっ、すごい蠕動ぜんどう。ふふ、もっと俺が欲しいんだね。もちろんいっぱいあげるよ」
「あんんっ……ふぁ、あ、リュカ……も、……あ、あ、あ」

 駄目だ、そんなふうに奥をつつかれたら、駄目になってしまう。快楽に侵されすぎて、おかしくなる。ああ駄目だ、気持ち良い、気持ち良い。

「ザガン可愛い。……はぁ、もっともっと、いっぱい苛めてあげるからね。独りではいられなくなるくらいに、いっぱい。……ね、ザガン。俺だけの、ザガン」
「あ……ぁん、ん――……、……」


       *


 しばらく瞼を閉じたまま微睡まどろんでいたが、次第に意識が鮮明になる。腹に腕が回され、背中から抱き締められているようだ。うっすら目を開けると、テント内に、外からの光が漏れてきていた。いつの間にか意識を失い、そのまま眠ったらしい。
 仰向けになるよう身動ぎしながら、背後へと顔を向ける。リュカはまだ眠っていた。
 と思いきや、彼の手がペニスを包んできた。ふにふにと軽く揉まれて、震えてしまう。反射的に身体を縮こまらせたら、うなじに唇が触れてくる。

「ザガン、起きたんだね。おはよう」
「……、…………おはよう」

 とても久しぶりにかけられた、寝起きの挨拶。少々戸惑ったものの、どうにか返答すると、リュカは小さく喉を震わせた。嬉しそうなのが、密着している場所から魔力を通じて、なんとなく伝わってくる。
 俺がリュカの感情を知れるということは、俺の感情も、リュカに伝わっているだろう。だからか彼の手が、そっと下腹部を覆ってきた。

「ザガンの中から、まだ俺の魔力が感じられるよ。しばらくは光に浸されたままだね」
「……そうだな」

 リュカの魔力は、あたたかくて心地好い。陽のようにぽかぽかしていて、ずっと微睡まどろんでいたくなる。裸で抱き締められて他者の温もりに包まれるのも初めてだが、とても気持ち良い。相手が光属性だからか、それともリュカだからかは、判断付かないが。
 起きるのが勿体なくて抱き締められたまま横になっていると、うなじや髪にキスされた。それに下腹部を覆っていた手が、脇腹へと移動する。腰のラインを確かめるように太腿まで下りていき、尻も撫でられた。そしてくにくにと、アナルの表面をさすってくる。

「ん、リュカ……そこは」
「ザガンのここ、まだ柔らかい。指なら簡単に飲み込んじゃいそう。中も、俺の精液でトロトロだろうなぁ。ねぇザガン、入れて確かめてみても良い?」
「そ、れは……朝からするべきではないだろう」
「前立腺、とんとんってたくさんマッサージしてあげるよ。ちっちゃいおっぱいも吸うし、ずっと童貞なおちんちんも、うんと舐めて可愛がってあげる。……駄目かな?」

 どう考えても駄目なんだが、間近から覗き込んでくる蒼い双眸そうぼうに、言葉が詰まってしまう。駄目と言おうとした瞬間、唇で唇を塞がれる。片腕でしっかり腰を抱き込んでいるあたり、逃がすつもりは微塵もないのだ。
 リュカに触れられるのが、嫌というわけではない。前立腺を弄られて気持ち良くなれるのは昨日でわかっているし、想像したら情けなくもペニスが勃起してしまった。それに闇属性で今後もずっと童貞なのは明らかなので、否定のしようもない。
 だがしかし、それでも俺は男である。気持ち良いとわかっていても、自尊心や羞恥で、素直に頷けそうにない。
 だから黙ったままでいると、ちゅっと頬にキスされ、アナルに触れている指に力が込められた。
 入ってくる。そう思い、反射的に下腹部に力を入れた瞬間。
 ぐうぅぅと、盛大に腹が鳴った。きょとんとして、ついリュカと顔を見合わせてしまう。

「…………腹が減った」
「ふ……あははっ。そうだよね。何時間もエッチしてたし、そのまま寝ちゃって、夕食取っていないものね。ふふ、俺もお腹空いてきちゃったよ」

 結果的に朝からセックスするのはまぬがれ、服を着たり洗顔したりとあれこれ準備したら、外にテーブルを置いてリュカと二人で朝飯を食べた。マジックバッグから出しただけの普段から食べている弁当だが、一人じゃないからか、いつもより美味かった気がする。
 朝飯を終えたあとはコーヒーで一服して、武器や防具を装備し、テーブルやテントを片付けたら準備完了である。
 けれどその途端、リュカに腰を抱き寄せられ、引き留められた。

「やっぱり別行動じゃないと駄目?」
「駄目だ。お前の仲間達は、俺を恐れているだろう。そんな連中に一緒にいるところを見られて、また喧嘩を売られたら面倒だ。それに、俺は独りが良い」
「またそんな寂しいことを言って。俺はザガンと一緒にいたいのに」
「王子という自覚を持て。ダンジョン攻略に参加しているのは、Aランク以上の冒険者か、騎士か魔導師で、ほとんどの者が俺を闇属性だと知っている。貴族出身の連中に、共にいるところを見られたら厄介だろう」
「そうだね、貴族社会はいろいろ面倒だから。特に俺は光属性のせいか、期待してくる人が多くてさ。君といたら何を言われるか……いっそ片っ端から潰そうかな」

 ボソッと呟かれるが、これだけ近くにいるから当然聞こえる。

「止めろ。闇属性が悪とされているのは、昔からだ。人の意識は、そう簡単には変えられない。それに闇属性達が、多くの人間を殺しているのは事実だろう」
「ザガンは悪くないじゃない」
「悪いのさ。同じ闇属性だからな」

 闇属性だから、悪である。それが何百年と積み上げられてきたソレイユ王国の歴史であり、世界の意思だ。
 リュカは反論してこなかった。代わりにぎゅううと抱き締めて、首筋に顔を押し付けてきたので、ポンポン背中を叩いて宥める。

「街を一緒に歩くぶんには平気だ。民間人のほとんどは、Sランク冒険者に闇属性がいることは知っていても、その外見までは知らない。髪を隠している限り、闇属性だとはバレない。だから街での依頼であれば、今まで通り付き合ってや……らなくもない」
「ザガン……。ふふ、相変わらず素直じゃないなぁ。そこが可愛いんだけど。それじゃあ、今度またデートしようね」

 頬にキスされた。デート。そうか、あれらはデートだったのか。
 唇にもされそうになったので手で塞ぎ、そのままリュカの身体を押して距離を取る。

「つれないなぁ」
「うるさい。俺はもう行く。じゃあなリュカ」
「うん、気を付けて」

 手を振られ、リュカと別れた。
 そして今日も、ダンジョン攻略に勤しむ。



   2.


 リュカとあのようなことをして時間を取られても、第四都市では俺が星の欠片を入手した。シナリオ通りに。ならば第五都市では、リュカ達が手に入れるだろう。やはりシナリオ通りに。
 ここは現実だ。けれど思った以上に、ゲームの影響力が強い。
 第一ダンジョンの時は、まだ気付かなかった。ゲームでは主人公達が先に着くところを、俺が先に着いてボスを倒していたから。しかし結果としてシナリオ通りに俺が欠片を所持して、ダンジョンから出ている。
 第二でも第三でも、他にも攻略者達がいるのに、やはり俺が最初に最深部に到着していた。そして第四でも。たとえ俺がゲーム通りのザガンでなくても、ゲーム通りにシナリオが進むように調整されている気がする。
 だからこそ考えてしまう。もし俺が入手するはずの章で、そもそもダンジョン攻略に行っていなかった場合、どうなっていたのかと。リュカ達が欠片を入手するなら構わない。後々出てくる闇組織の人間でなければ、誰でも構わない。
 だがもしかしたら、俺が最下層に到着するまで、他の者達は延々とダンジョン内を巡らされていたかもしれない。そう考えてしまうほどに、シナリオの作用が強い。


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