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58話

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 しばらくすると城が見えてきた。窓から顔を出して、ライトアップされている城を見上げる。

「美しい建物だな。それに間近で見ると、かなりデカい」
「うん、さすがは芸術の都に建っている城だよね。洗練された美しさだ」
「大都市の城がこれほどだと、王城はどれくらいの規模なんだ?」
「んー……高さだけでも、3倍以上はあるんじゃないかな。敷地面積は、俺でも迷いそうなほどに広いし」
「そうなのか。近くで見るのが楽しみだな」

 ソレイユ王国で、もっとも高く壮麗な建造物。王都の中心に聳える、王城。父上に抱き上げられて外に出た時、屋敷から見えていた王城は、夜でも淡く輝いていた。あれも魔導具による効果だったのだろうか。

 王都から離れて15年。俺が戻らないのは、家族や、屋敷で働いている者達に迷惑が掛かるからである。しかしザガンは、両親を恨んでいながらも王都に戻ることは無かった。子供時代ならともかく、成長したザガンは圧倒的な強者であり、王都へ侵入することも容易かったのに。

 どうして復讐しようとしなかったのか。ザガンは確かに父上を憎んでいた。だが、尊敬もしていたからだ。邪神を退けた父の強さに、憧れていたから。
 自分を認識すらしなかった母親は、とっくに重体に追いやり、回復出来無いよう呪っていた。ごく普通に育てられた妹の存在を知ると、激しい憎悪を募らせ、嬲り殺そうとした。

 全てが憎くて仕方無かった。それでも俺の根底には、父上への憧れと敬意がある。だから父上には、敬語で話そうと思えるのだ。





 城内の、パーティー会場前に到着。御者によってドアが開かれると、すぐにリュカが降りて、俺に手を差し伸べてきた。その手を取り、俺も馬車から降りる。そのまま流れるように腰を抱かれたが、ダンスパーティーなので大人しく受け入れておこう。……手を繋ぐだけで、充分な気はするけれど。

 全員が集合したら、開け放たれている二重ドアを潜り、建物内に入った。エントランスは落ち着いた雰囲気だし、広いのに暖かい。これならドレス姿の女性達も、快適に過ごせるだろう。もう11月終わりだ、ずいぶん寒い季節になった。

「ようこそいらっしゃいました。お荷物がございましたら、あちらのカウンターにお預けください」
「あ……僕、ポシェット預けてきた方が良いでしょうか? 皆さんの私服が入ってるんですけど」

 案内人の言葉に、ベネットが反応する。彼女が現在持っているマジックバッグは、彼女の着ているロリータドレスというものに合わせたデザインなので、違和感は無い。だが踊るには邪魔だろう。

「誰も貴重品は持ってきてないよね? それなら預けようか」
「わかりました。ちょっと行ってきます」

 ベネットが小走りでカウンターに向かう。俺達は他の来客の邪魔にならないよう横に退いたものの、彼女はすぐに戻ってきた。そのタイミングを見計らったかのように、杖を付いたモデスト侯爵がホールから出てくる。気配で俺達の来場を察したか。

「ほっほっほっ。ようこそいらっしゃいました、リュカ殿下。ザガン殿に、お嬢さん方も」
「久しぶりだねモデスト侯爵。このたびは、俺達の為にパーティーを開いてくれてありがとう」
「お招きありがとうございます、モデスト侯爵。それと、ドレスもありがとうございます」

 リュカとノエルが礼を言うと、皆も次々に感謝を告げる。ありがとーやら、感謝するぞやら。ベネットしか敬語を使っていないが、モデスト侯爵は嬉しそうに頷いた。

「麗しい女性に貢ぐのは、男としての使命ですからな。いや、本当に素晴らしいのぅ。儂が踊れるのであれば、すぐにでもダンスを申し込んでおりますぞ。もう歳なのが、残念でなりません」
「うふふ、お上手だわ。さすがは、芸術の都を治めている領主様ねぇ」
「ほっほっほっ、女性を褒め称えるのも、男の使命ですからな。さて、美しい花をここで引き止め続けるのは、無粋というもの。料理はたくさん用意しておりますし、休憩場所もあちこちにありますので、ゆっくり寛ぎながら楽しんでくだされ」
「ありがとう侯爵。それじゃあみんな、行こうか」

 笑顔で見送ってくれるモデスト侯爵に、会釈したり手を振ったりしつつ、俺達はホールに入った。

 ホールはとても広く、煌びやかだった。壁や柱の装飾は見事だし、吹き抜けの2階があり、窓やカーテンも豪華さを上乗せさせている。窓からはバルコニーに出られるのだろうか?
 天井にある巨大なシャンデリアは美しくキラキラ輝いていて、眩しいほど。何より、たくさんの光が浮かんでいる。光魔法によるものか。

 視線を下に戻せば、ドアから広めの道が伸びており、奥には音楽を奏でている演奏家達がいた。そして彼らの手前にある大きな空間では、すでにダンスを踊っている者達がいる。
 道の左右にはテーブルやソファがいくつも置かれていて、壁際には豪華な料理の数々が。まだ夜6時前だからか食事している者はあまりいないが、談笑しながら茶を飲んでいる者達はいる。

 なるほど、これは確かにホームパーティーだ。空気がかなり緩い。ただし規模はデカいけれど。300人はこの空間にいるんじゃないか。

「公式のパーティーがどんなものか知らないが、たとえば来場した者達の名前を全員読み上げたり、主催の挨拶があったりするのか?」
「全員は呼ばないかな。公式になると、千人規模のものもあるから。だから基本的には、主要人物の紹介のみになるよ。誕生パーティーなら主役だけだし、競技や遊戯などの凱旋パーティーなら、勝利したチームや個人だし。舞踏会であれば主催挨拶だけになる。でも王族が来場すると、知らされることが多いかも」

 ああそうか、公式パーティーには様々な種類があるのか。そして今日はホームパーティーなので、リュカの名すら呼ばれることは無いと。

 それでも、視線は集まってくる。しかもダンスフロアに近付くにつれ、どんどん増えてきた。王子であるリュカが目的か、あるいは黒髪である俺を観察する為か。
 悪意は、いくらか感じられる。だがこれは憎悪というより……嫉妬か? よくわからないが、とりあえず若い女達からの視線が痛い。リュカだけ見ておけば良いものを。今夜のリュカはいつも以上にイケメンなので、ものすごく目の保養になるぞ。

 ダンスフロア脇に待機して、音楽が止むのを待つ。ノエルとニナは最初に2人で踊ると言っていたが、友人達も、最初は練習したペアで踊るようだ。ミランダとシンディ、カミラとベネットで手を取り、待機している。

 前に立っている4人を見ると、視線に気付いたカミラが振り向いてきて、ニヤリと笑った。

「お主らと一緒に踊るなら、同性同士でもさほど目立たんだろう? ベネットよりだいぶ身長の低いわらわが男パートを踊っていても、誰も気付かんよ」
「あ、あの。最初は皆さんと一緒に、リュカさんとザガンさんの傍で、踊りたいなって」
「せっかくの晴れ舞台だからねぇ、まずは一緒に練習してきた友が良いもんさ」
「うふふ、ミランダちゃんの初めてをお姉さんが貰っちゃうなんて、嬉しいわぁ。優しくリードしてあげるわねぇ」
「……その如何わしい言い方は、どうにかならないのかい」

 ミランダの疲れたような返答に、ノエルやニナが声を潜めつつも笑う。彼女達から伝わってくる高揚感と、緊張感。どうやら皆ワクワクと期待に胸を膨らませているらしい。
 そんな彼女達を見ていると、リュカがちゅっと頭にキスしてきた。視線を移せば、リュカはキラキラした、ちょっとイタズラっぽい笑みを向けてくる。

「俺も優しくリードしてあげるからね。ザガンの初めてを、俺にちょうだい?」
「……もう、くれてやったではないか」

 俺の初めては、リュカが持っていっただろう。魔力を補充する為とはいえ、男相手でもセックスでの介抱を選ぶのには驚いたぞ。

 そんな意味を含めてじっと見つめれば、リュカは狼狽えた。ついでに顔が赤い。どうして照れるんだ?
 首を傾げると、ゆっくりリュカの顔が……唇が近付いてくる。なので目を瞑ろうとしたら、クンッと後ろに腕を引っ張られた。隣に立っていたノエルだ。

「リュカ? 人前でザガン殿に恥ずかしいことを言わせた挙句、何をしようとしているんですか? 穏和な私でも怒りますよ?」

 ノエルは俺越しに、リュカへと笑顔を向ける。ただし目が笑っていない。ノエルでもこんなふうに怒るのだな。そしてリュカは、バツが悪そうに眉を寄せた。

「そうだね、こんな注目を浴びてる場所でやることじゃなかった。ごめんねノエル。ザガンも、ごめん」

 悪乗りした自覚があるので、むしろ俺も謝るべきなのだが、火に油を注ぐだけな気がしたので大人しく頷いておく。すると柔らかく微笑まれたあと、額にちゅっとキスされた。これに対しては咎めてこないので、頭や額なら良いらしい。俺もノエルの頭や額にはキスしたことあるし、挨拶感覚で初対面の女性の手にキスする野郎もいるそうなので、恋人なら許されるのだろう。

 しばらくして音楽が止んだ。するとリュカは抱いていた腰から手を離し、代わりに俺の手を取ってくる。

「さぁザガン、踊ろうか」

 促されるまま、一緒にフロアに入った。すると踊っていた者達が次々とフロアから出ていき、あっという間に俺達だけになる。

 この状況は想定していなかった。広い空間に俺達だけなんて、確実に目立ってしまうではないか。だが考えてみれば、王子が来たのに無視してフロアに居座るというのも、なかなか出来無いことである。たとえホームパーティーであっても。
 共に踊ってくれる友人達に感謝である。いやむしろ、こうなることを見越してくれていたのかもしれない。ベネットあたりは緊張していそうだが、カミラが相手なら大丈夫だろう。

 練習時と同じように、右手を取られて背中に手を添えられる。リュカの腕に左手を添えると、再び音楽が奏でられ始めた。美しいワルツの旋律。リュカと呼吸を合わせ、1歩、俺は後ろへと下がった。





 1曲踊り終わり、リュカに合わせて観衆に向かって礼をすると、大きな拍手が湧き上がった。歓声も聞こえてくる。上手かったかどうかはわからないが、とりあえず最後までリュカの足を踏まずに済んで良かった。
 ホッとしていると、友人達がやりきった表情でこちらに寄ってきて、俺達の背中を叩いていく。

「兄様さすがでした」
「感謝するノエル」

 拍手に混じってコソッと言われたので、礼を返せば、ノエルは嬉しそうに微笑んだ。そのまま皆はフロアから離脱し、壁際に並んでいるソファに腰掛けると、寄ってきたウェイターから飲み物を受け取る。

 俺達は休憩しないのか? そう思いながらリュカに視線を戻せば、苦笑された。

「ノエル達は、パートナーを換える為に離れたんだよ。俺達には、その必要無いでしょ?」
「む。ノエルはずっと、ニナと踊っていれば良かったのに」
「恋人や婚約者、配偶者でない相手とは、2回以上踊らないものだからね。それにノエルは貴族だから。今までもたくさんの男性と踊ってきてるし、あしらい方もちゃんと心得ているから、安心して」

 そう言われてしまうと反論出来無い。俺はリュカと違って、ノエルのほとんどを知らないのだ。逆にリュカのことも、ほとんど知らないけれど。……ノエルは知っているのに。
 どうしようもないと理解しているが、それでも幼馴染である2人に、少々嫉妬してしまう。

 ムッとしていたからか、リュカに引き寄せられて、額にキスされた。そして頭に頬を擦り寄せられる。

「愛してるよザガン。今までの時間はどうにも出来無いけれど、これからの俺は、ずっとザガンのものだからね」

 魔力から感情が伝わったのか、それとも最近のリュカは、表情から俺の心を察するのが上手くなりすぎているのか。わからないけれど、どこまでも寄り添ってくれる優しさと温もりに、胸が熱くなる。愛しいという想いが、たくさん溢れてくる。





 2曲目の時は、10ペアほどがダンスフロアに入ってきたので、1曲目より視線を感じなかった。ただし何故か年配者ばかりだったが。それから3曲、4曲と踊っていく。リュカからとても幸せという気持ちが伝わってきて、俺も幸せになる。

 5曲目が終わったら、さすがに気疲れしたので、フロアから出た。そのまま食事場所まで移動する。俺達を見てくる者はたくさんいても、声をかけてくる者はいない。

 ちなみに殺気を飛ばしてくる妙齢の女達には、飛ばし返しておいた。それこそ問答無用で。ヒィッと悲鳴を上げられたり倒れそうになられても、俺の知ったことではない。この世界では誰もが魔力を保持していて、身体強化や威圧、魔法壁による防御が可能。よって女はか弱いということが無ければ、手加減するという選択肢も無い。

 ただしリュカからは、苦笑されたが。

「もう少し、加減してあげられない? もちろんザガンに殺気を向けてくる時点で、俺も殺したいくらい腹立つけど」
「威圧であれば何もしないが、殺気を飛ばしてくるということは、相手は殺されても構わないつもりでしていると認識している。大丈夫だ、周囲にはほとんど気付かれていない。たぶん」
「ふふ、ザガンは容赦無いなぁ。ザガンほどの人から向けられたら、タダじゃ済まないのに」
「……ノエルに声をかけている男共には、何もしていないぞ」

 ちゃんと自重しているだろう。それに女達に向けた殺気も、倒れない程度には抑えている。ただ二度と、俺に殺意を向けようという思考に至らないよう、全部に反撃しているだけで。

 離しながらも壁際に並べられている料理をいくつか皿に乗せたら、近くの空いている2人掛けソファに腰掛けた。するとすぐに、ウェイターが飲み物をテーブルに置いてくれる。シャンパンと水か。喉が渇いていたからありがたい。ん、美味い。料理も美味い。

 しばらく料理を堪能していたものの、これだけ隙がある状態なのに、誰もリュカに挨拶してこなかった。隣にいる俺が黒髪だからか、貴族ではなくて冒険者だからか。それともパクパクと、ひたすら食べていたからだろうか? 皿2つにいろいろ乗せてきたのに、すぐに無くなってしまった。リュカのは……。

「はい、あーん」

 と差し出されたので、反射的に口を開ける。口の中に入れられたものは、サイコロステーキだ。とても美味い。でも1つでは足りない。じっと見つめると、また口元に持ってきてくれたので、パクリと食べる。ん、やはり美味い。肉が柔らかいし、ソースも辛めという好みの味付けだ。

「はぁ、俺のザガンが可愛すぎる。ああ、そこの者。皿2つに、適当に料理乗せてきてくれるかな。肉料理を多めで頼むよ」
「かしこまりました」

 さきほどからずっと近くにいた燕尾服の男に、リュカが声をかける。もしかして、俺達の世話をする者が用意されていたのか? さすが王子、待遇良いな。
 彼のおかげでリュカから離れずに済んだので、ありがたかった。離れない約束はしていたが、一緒に席を立って料理を取りにいくというのは、微妙な気がしたし。

 たくさん食べて、ウェイターが皿を片付けてくれたあと、食後の紅茶とデザートはどうするか聞かれた。リュカを見るとニコリと微笑まれたので、俺が決めて良いらしい。そうだな。

「甘いものは得意ではないから、紅茶だけ頼む。それと、2階はバルコニーか?」
「はい、バルコニーになっております。テーブルとソファも、すぐにご用意出来ますよ」
「リュカと2人きりになれるか? なれるなら、そちらで茶を貰いたい」
「私が窓前で待機することになりますが、それでも宜しいでしょうか」
「ああ、よろしく頼む」
「かしこまりました」

 執事は頭を下げると、近くのウェイターに紅茶を用意するよう命令した。よし、これで視線の煩わしくない場所に行ける。話しかけてこないくせに、視線だけチラチラ寄越してくるのは、勘弁してほしいからな。

 ソファから立ち、リュカの両手を引いた。リュカは、とても嬉しそうに微笑んでいた。





「ザガンが傍にいてくれるだけで、本当に誰も話しかけてこないなんてね。しかも食事を終えたら、すぐに2人きりになれる場所に連れてきてくれるなんて。ありがとうザガン、パーティーがこんなに気楽で楽しいのは、初めてだよ」

 入れたての紅茶を飲みつつ11月の星が輝く夜空を眺めていると、リュカがふふっと笑い、俺の頭に頬を寄せてきた。

 バルコニーは窓1つにつき1つという区切りになっており、本当に2人きりになれた。それに11月の夜の寒さを遮るように、毛布も2枚貸してくれた。空気が入ってこないよう、2人くっ付いて一緒に包まっている状態。
 輝く星は綺麗だし、リュカの魔法で周囲に小さな光をいくつも浮かせてくれた為、幻想的な空間になっている。

「まさか、ザガンの強さに圧倒されて、誰も近付いてこないなんて。本当すごいなぁ」
「……そんな理由で、誰も話しかけてこなかったのか?」
「前にモデスト侯爵が言っていたじゃない。果たして何人の魔導騎士が集まれば、ザガンに勝てるのかって。ザガンほどの強者が傍にいるなら、他の守りなんて必要無いからね。しかも婚約者で、誰から見ても愛し合っているとわかるくらいに見せ付けたから。だから誰も、俺達の邪魔を出来無かったんだよ」

 そうだったのか。頭や額にキスしてきていたのにも、意味があったのだな。

 頷きつつ、夜空を眺める。キラキラ輝く、たくさんの星々。けれど澄み渡っている夜空に、月は見えない。女神リュヌが、隠しているから。自分の心から目を背ける為に。

「女神を救ったら、ソレイユ王国でも月が見られるようになるのだろうな」
「そうだね、俺も実際に見てみたいな。ザガンに気付かされるまでは、月が浮かんでいないことに疑問にすら思わなかったけど。そういうものだと、思い込んでいたから」
「そういえばリュカは、初めから月を知っていたな。カミラやシンディですら知らなかったのに。どこで知ったんだ?」
「えっ。あ……えっと」

 ふと疑問に思ったので聞いてみたら、リュカは明らかに動揺した。どうしたんだ?
 首を傾げてリュカを見ると、彼は逆方向へと視線をやっていた。訳がわからず見つめ続けると、小さく溜息をついてから、こちらに視線を戻してくる。

「夢で何度も見たと言ったら、信じてもらえる?」
「予知夢か? あるいは、リュカが神ソレイユの眷属で、神ソレイユは月の女神リュヌを愛しているから、影響を受けて夢に見たのかもしれない」
「…………うん。信じてくれて、ありがとう。俺と出会い、ここまで導いてくれてありがとう。……ザガン。俺はこれからずっと、君だけを愛し続けるよ」

 何故だろう、とても意味深なことを言われた気がする。だがリュカがほんのり切なさを帯びた、とてつもなく綺麗な微笑をくれるから、俺はただただ頷いた。

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