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連載
42話
しおりを挟む夜中まで宴会した、翌朝。
いつもよりだいぶ遅い朝食を終えたあと、リュカが今日はどうするかと皆に聞いてきた時、ミランダが突然立ち上がった。
「ザガン、調子は戻ったんだろう? だったら今日は、私に付き合ってもらおうじゃないか。サシで勝負しな」
「良いだろう」
唐突な申し出だったが承諾し、ターバンを巻いてフードをしっかり被ると、待っていたミランダと屋敷を出た。リュカ達が困惑していたのは、スルーさせてもらう。
いや、わからないでもない。ミランダは寝起きから二日酔いに苦しみ、ノエルに状態異常回復魔法を掛けてもらい、ベネットにしじみ汁を作ってもらい、カミラから貰った薬を飲んでいたのだから。
それなのにキリッとした態度で俺に声をかけるのだから、何事かと思うだろう。俺は思った。
だがどんな理由であれ、戦闘意思をぶつけられた以上、応じるのが冒険者である。
「場所はどこにしようかね。邪魔の入らない場所が良いから、冒険者ギルドの訓練所は駄目だし。……アンタとノエルが訓練していたところは?」
「それなりに歩くが、邪魔は入らない」
「じゃあそこで決まりだ。案内しておくれ」
頷き、足を進めると、ミランダは後ろを付いてきた。話しかけてはこないが、最初は敵視されていたことを思えば、共に歩いているだけでも相当の進歩である。俺ではなく、ミランダが変わってきているだけだが。
都市の外に出て、昨日までいた森林に入る。ふーん、と呟きが聞こえてきたので背後を確認すれば、ミランダは落ち葉が多くなった木々を見上げていた。彼女の趣味は木工なので、いろいろ気になるのかもしれない。
時折遭遇するモンスターをサクッと倒し、目的地に到着する。やはり今日も人の気配はしない。
「ここだ。それで、ルールはどうする」
互いに距離を取りつつ、確認を行う。殺し合いでない以上、ルールは必要だ。
ちなみにノエルとの手合わせではルールを設けず、ひたすら全力で向かってこさせたが、あれはあくまでも修行だったからだ。俺は基本的に剣を受け止めるだけで、攻撃はあまりしなかった。ノエルを倒すことが目的では無かったから。
「アンタは闇魔法を使わない。あと剣技も。私も斧技は使わない。それで構わないかい?」
「互いに身体強化と魔法壁のみか。シンプルでわかりやすい。了解した」
「そんじゃ、いくよ!」
ミランダの現在の得物は、ハルバード。戦斧と槍を合わせた武器であり、斬る、突く、払う、など様々な攻撃が可能である。しかも彼女の得物なだけあって、斧部分がかなりデカい。彼女自身に内包されている魔力も高く、初めて戦った時よりも相当強くなっているのが窺える。
間合いを詰められ、振り下ろされる斧。避けるとドゴンッと地面が抉れ、振動が伝わってきた。とてつもないパワーだ。それに動きも早くなっている。
持ち上げられた斧を、今度は横に薙いできた。後ろに飛んで斧自体は避けたものの、かまいたちのような風が追撃で飛んでくる。魔法壁で防御したら、今度は槍部分での突きが襲ってきた。その先端を、短剣の樋で受け止める。キインッと鳴り響く音。
ミランダは目を見開き、すぐさまハルバードを引いた。ハルバードは柄が長いので、弾かれると身体が振られてしまい、隙が出来やすくなるからだろう。
「ハッ、まさかこれだけ強くなっても、簡単に止められちまうなんてね。良いねぇ、ゾクゾクしてきたよ」
「そうか。風邪は引かないようにな」
「無表情でそんな返ししてくるから、天然なんて言われるんだよ!」
ブオンッと再び振られる斧。それもあえて短剣で受け止めて、上に流した。よろけるミランダ。その胴体へと蹴りを入れるも、彼女はさらによろけただけで、ノエルのように吹っ飛びはしなかった。防御力が高く、頑丈なだけある。
ところで俺を天然とかツンデレと言っているのは、リュカだけだぞ。
決着がついたのは、1時間以上経ってからだった。
「はぁ、はぁ…………こ、降参だよ……」
「わかった」
地面に転がっているミランダから声が上がったので、短剣を鞘に収めた。
彼女は上体を起こすと、マジックバッグからポーションを出し、ゴクゴク飲み干す。みるみるうちに、治っていく怪我。
「ぷはぁ。……あー、まったく歯が立たなかった。アンタ、どれだけ強いんだい」
「リュミエールが出現するまでは、大森林で生活していたからな。毎日戦いに明け暮れ、数え切れないほどのモンスターを討伐していた。だからだろう」
「……そうだったね。アンタが強いのは、黒髪だからってだけじゃないんだ」
ミランダは地面に座ったまま、動かなかった。しかも眉間に皺が寄っている。俺との戦いで、彼女の中にある何かが、解決すると思っていたが。
「俺との手合わせでは、何も得られなかったのか?」
「……なんだ、お見通しかい」
「全てを見通せるわけではないが、俺がお前より強いことは、最初からわかっていたはずだ。よって勝つ為に勝負を挑んだわけではないと、判断した」
なのですぐに決着がつくような攻撃はせず、ミランダからの降参を待ったのだが、不要だっただろうか。
首を傾げていると、ミランダは俺をじっと見上げてきたあと、盛大に溜息をついた。
「自分なりのケジメだよ。私達は冒険者だ。戦うことでしか語れないものがある。……そうだろう?」
それには同意する。言葉で伝えるよりも、刃を交えた方が理解出来ることはある。
俺との勝負で付けられるケジメとなると、闇属性についてだろう。
以前ニナも言っていた。ミランダは俺がノエルの兄と知ったことで、闇属性だからと嫌っていた自分に自己嫌悪し、ヘコんでいたと。
確かに出会った当初から、憎悪を向けられていた。だが闇属性への反応としては、普通である。むしろリュカやノエルのように、友好的な方が珍しい。なので俺は気にしていなかったが、ミランダは後悔し、心を痛めていたらしい。
だが俺が気にしていないとわかっている事項に対して、謝罪は無意味である。そんなもの、自身の罪悪感を薄めたいだけ。なのでミランダは、言葉ではなく、刃で伝えてきた。彼女なりの反省と、これからの未来についてを。
そう、俺達は冒険者だ。どのような結果であれ、勝負して勝敗が決したのであれば――あとは、友になるだけ。
地面に座ったままのミランダに、手を差し伸べることはしなかった。代わりに椅子を2つ出して、地面に置く。すると彼女は片方に座り、ビール瓶とジョッキ2つを出してきた。ローテーブルもセッティングすると、つまみもいくつか置かれていく。
ミランダがビールを注いでいる間に、周囲に魔導バリアを置いて起動させた。これで邪魔は入らない。
椅子に腰掛けると、彼女はジョッキを掲げてきた。俺も、自分の前に置かれたジョッキを持つ。
「乾杯!」
「乾杯」
ガツンッとぶつけ合って、一緒に煽った。香りも良いし、喉越しがスッキリしていて飲みやすい。
俺が半分ほど飲んでいる間に、ミランダはゴクゴク喉を鳴らし、飲み干してしまう。
「っはー! やっぱり戦ったあとの1杯は美味い!」
「ん……俺は普段あまり飲まないが、それでも美味いと感じるぞ」
「そりゃそうさ。これ、結構高いビールなんだから。特別に飲ませてやってるんだから、感謝しな」
「ああ、感謝する」
「アンタってば、ホント天然だね。ノエルもかなり天然だし、兄妹ってのは性格も似るのかねぇ」
しみじみ呟きながら、今度はウィスキーと専用グラスを2つ出してきた。しかも片方はストレートである。俺用ではないよな?
「アンタは水割り? ロック?」
「水割りで」
良かった、聞いてくれて。ウィスキーをストレートで飲んだら、さすがに酔ってしまう。というかストレートと聞かれなかったあたり、どの程度の強さか把握されているらしい。昨夜も、ビール数杯飲む程度だったしな。ちなみにリュカは強いし、シンディなんてザルだ。
ビールを飲みきったあとは、ゆっくりウィスキーに口を付けながら、つまみを食べた。ピーナッツやチーズ。しかしもう昼過ぎなので、このまま昼食も済ませてしまおうと思い、俺のマジックバッグからも料理を出した。海老やサーモン、トマトソースのパスタ。
ところでミランダの飲むスピードがかなり速いが、このペースだとすぐに酔ってしまうぞ。今朝も二日酔いだったのに、どうしたのだろう。
ヤバそうなら止めるつもりで窺っていると、彼女はグラスを見つめながら、口を開いた。
「……この前。アンタが魔力欠乏で、ぶっ倒れちまった時なんだけどさ。闇組織の中に、仇がいたんだよ。ベネットを拘束していた、えーと……私より肌が出ていた女、わかるかい?」
「いたな。覚えている」
名前を知らないので内心で痴女と呼んでいるが、ミランダも装備によってはかなり露出が高く、似たようなものである。
「我ながらガサツな性格してる自覚はあるけど、これでも結婚を約束していた相手がいてさ。同じパーティーの仲間だったんだけど。……でも4年前、あの女に殺されたんだ。私が駆けつけたら、あの女は笑いながら、彼を放り投げてきたよ。夜だったせいで簡単に逃げられちまって、彼の亡骸に縋りながら、泣くしか出来無くて……絶対に復讐してやるって、誓った」
当時のことを思い出したのか、ミランダは涙を滲ませた。それを誤魔化すようにグラスを煽り、空にする。
「でもこの前、貴族の女が、闇属性というだけでザガンを殺そうとしただろう? 他の貴族達も、アンタに敵意を向けた。そもそも私だって……うん」
言っていてヘコんだらしく、ガックリ肩を落として俯いてしまう。そんな彼女のグラスに、ウィスキーを注いだ。2日連続で二日酔いになったら大変かもしれないが、落ち込んで泣かれるよりは、酔わせてしまった方が良い。
注ぎ終わると、ミランダは少し飲んでから、はぁぁと盛大に息を吐いた。頬はすでに赤い。
「あと、闇組織のリーダーっぽい奴も、言ってたじゃないか。殺さなければ、自分達が死ぬって。それを聞いて、ふと思っちまったんだ。彼が殺されたのは、もしかして先に、あの女を殺そうとしたからじゃないかって。……闇属性というだけで、殺そうとしたかもしれない、って」
「……否定はしない」
痴女とはドラゴンとの戦闘前、ダンジョンを出た時に、少しだけ言葉を交わしている。命への責任について話したところ、涙目になった彼女。あの時は理由がわからなかったし、時間を稼ぐことに重きを置いていたので、深く考えなかったが。
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殺したくて、他者の命を奪ったわけではない。だが殺さなければ、自分が死んでしまう。それでも命の重さや、周囲がどんな感情を抱くかは、わかるからと。
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ゲームでは、第11ダンジョンで痴女と遭遇する。ミランダのイベントをこなしてきている場合、2人が真っ向から対峙するのだが、詳細は覚えていない。とにかく罵り合っていたような気がするが、現実ではどうなるだろう?
ミランダはグラスを見つめながら、グスッと鼻を鳴らした。結局泣いてしまったな。慰めるのは、あまり得意ではないけれども。
「……連中は、邪神復活を目論んでいるからな。星の欠片を求める限り、また出会う機会は訪れるだろう。その時に、聞いてみれば良いんじゃないか? どうして婚約者を殺したのかと」
言葉を交わしてみれば良い。俺達冒険者は刃を交えて白黒つけることが多いが、この世には言葉を交わさなければ、理解し合えないことだってたくさんあるのだから。
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彼女の視界に料理が入るよう、少しずつ移動させていく。とりあえず酒ばかり飲んでないで、食って腹を満たすべきだ。そうすれば元気が出るかもしれない。
ミランダが、潤んだ目で見つめてきた。その目を見返し、告げる。
「だがこれだけは覚えておけ。お前達がどんな選択をするにしろ、相手を殺した先には、さらなる悲しみと憎悪が生まれるだけだということを」
最後にフォークを差し出したら、ミランダは目を見開いた。どこに驚く要素があったかわからず、首を傾げてしまう。とりあえず見返したままでいると、だんだん破顔してくる。
「ふ、はは、あはははっ! まさか、そう来るとはね。ニナも言っていたけど、本当に手厳しい男だよ。……でも、そうだね。だからこそ、話そうと思えたんだ」
笑いながらもフォークを受け取ると、料理を食べ始めた。笑顔で、しかしポロポロと、涙を零しながら。
「私ゃ性格はあれでも、外見はほら、結構良いだろ? 昔からそれなりにモテていたしね。だからかアイツは、ミランダが他の男に取られないか心配だぁって、いつも喚いていてさ。そのたびに、アンタだけだよって抱き締めたもんさ。……なのに、私を置いて死んじまうんだから、ホント酷い奴だよ! 聞いてるかいザガン!」
ミランダはバンッとテーブルを叩くと、俺を睨んできた。顔はとっくに真っ赤だし、息もだいぶ酒臭い。それにもう2時間近く、元婚約者の話を聞かされている。酔ったら面倒になるタイプだったらしい。
生活魔法も使えないようで、先程おしっこしたいと言って木に向かったもんだから、慌ててログハウスを出した。ついでに中のソファかベッドを使って寝てくれれば良かったのに、再び外に出てくるし。これでは確実に、明日また二日酔いだろう。
「聞いているから、水を飲め。あとそろそろ、ノエル達が迎えに来るぞ」
ミランダがトイレに行っている間に、リュカに連絡を入れておいた。ノエルと修行したところにいると。あとミランダがベロンベロンに酔っているとも伝えたので、案内役にノエルと、ニナあたりが来るだろう。
「あーあ、アンタには素敵な彼氏がいるもんねぇ。リュカの奴、出会った当初に誘ってみたけど、靡きゃしないどころか、咎められちまったし。挙句にはザガンが好きだって? 闇属性の男を好きになるなんて、言われた時は王子なのに頭が可笑しいのかと疑っちまったよ」
そういえばミランダと関係を持つ場合、寂しいから慰めてくれという、彼女からの誘いに乗る設定だったか。むしろノエル以外は、ヒロイン達から誘ってきていた覚えがある。
ゲームでは、プレイヤーが夜時間にヒロインを選択することで発生するイベントだが、ここは現実だ。
つまりリュカはミランダからだけでなく、ニナからご奉仕してあげると言われ、カミラから錬金術で精液を使ってみたいと言われ、ベネットから男の娘として自信を付けたいと言われ、シンディから健康に良いらしいと運動感覚で誘われた可能性があると。
まぁもしそうだとしても、全て断っているだろう。リュカならば。
「アンタもアンタで結構イイ男なのに、あまりにも手厳しくて、肩すら貸しゃしないし」
「なんだ、自力で歩いて帰りたかったのか?」
「そんなだから天然って言われるんだよ! むしろ良かったけどね! 気まずい思いしなくて済んだから!」
訳わからん。とりあえずこの2時間を覚えていたら、ミランダらしからぬ惚気と愚痴の数々に、気まずい思いをするんじゃないか。
「はぁ……私もいい加減、過去ばかり見てないで、前を向かないと……」
彼女はテーブルに突っ伏すと、そのまま動かなくなった。大丈夫かと顔を窺ってみれば、普通に寝ているだけである。
静かになり、しばらくは1人のんびりと、ウィスキーを傾けた。揺れる琥珀を眺めながら考えるのは、闇属性のこと。
多くの闇属性達は、産まれてすぐに殺されてしまう。もし生きたとしても、闇組織に助けられていなければ、過酷な人生が待っているだろう。
闇属性というだけで命を狙われる。殺さなければ、自分が死んでしまう。だから奪うしかない。
しかし俺も闇属性だが、他者を殺したことはない。とても、恵まれていたから。
前世の記憶があった。それだけで俺だけの時とは違い、独りで生きられるようになっている。
それに産まれてすぐに父上が俺の黒髪を剃り、病気だからと周囲を誤魔化してくれた。地下に隠してからも、9歳まできちんと育ててくれた。成長して独りでも生きていけるようになるまで、父に守られていたのだ。
そうして屋敷を出たあとは、大森林で生活した。誰とも関わることなく約6年。15歳で冒険者になった頃には、すでに強かったと自負している。少しずつ社会と関わるようになるも、俺が闇属性だと知られる頃には、もうAランク冒険者だ。しかもテール王国へ行っていたので1年半は姿を見せなかったし、帰ってきたらSランクである。なので俺に憎悪は向けても、殺そうとしてくる者はいなかった。
そもそも黒髪であり、魔力が膨大なので、攻撃された瞬間には相手を捕らえられる。殺そうとしてくる者がいたとしても、命を奪わなくて済む。
だというのに俺は……何も、してこなかった。これだけの力を、持っていながら。
ミランダが寝てから15分ほどして、ノエル達が来た。案内してきたノエルに、ニナ、シンディ、それからリュカまで。しかも走ってきたようで、少し息を切らしている。
魔導バリアを解除すると、リュカが勢いよく抱き付いてきた。
「ザガン大丈夫!? 何もされてない!?」
「? もしや出掛ける前の、ミランダの言葉が聞こえていなかったのか? 俺達は手合わせをしていたんだ。もちろん俺が勝っている。かすり傷1つ受けていない」
「そっか、さすがはザガンだね。でもなんでログハウスが出てるの?」
「見ればわかると思うが、手合わせしたあと飲んでいたんだ。そしたらミランダが酔いすぎて生活魔法すら使えなくなったから、トイレの為に出した」
「ああ、そういうこと。……良かった」
リュカはほっと息を吐くと、唇にキスしてきた。ちゅ、ちゅ、と数回されたあと、俺を抱き締めたまま嬉しそうに笑う。しかも離そうとしない。
そうしている間にも、女性陣が片付けをしてくれる。
「兄様、この上にある食器は、全部片付けてベネットに洗ってもらうよう頼んで良いですか?」
「そうしてくれると助かる。酒はミランダので、椅子とテーブルは俺のだ」
「じゃあ酒瓶は私が回収しとこう」
「ミランダちゃん、立てる? お姉さんの背中に乗れるかしら?」
「うー……立てるよぉ……」
シンディがミランダに声をかけると、のろのろ顔を上げた。そして傍にしゃがんだシンディの背に乗る。
俺も片付けよう、と思ったら。
「じゃあ私達は帰るわね。リュカ君とザガン君は、ゆっくりしていってねぇ」
立ち上がった彼女から言われた内容に、きょとんとしてしまう。しかも肯定するように、リュカは俺を抱き締めたまま、その場から動かない。
「ありがとうシンディ。3人とも気を付けて帰ってね。俺達は明日の夕方くらいに帰ると思うから、ベネットに夕食は用意してくれるように伝えておいて」
「了解しました。では兄様、リュカ、また明日」
「じゃあね。お兄さんは頑張ってねー」
手を振りながら、遠ざかっていくノエル達。その姿を見送りつつも、リュカに聞いてみる。
「何故、一緒に帰らないんだ?」
「……ねぇザガン。俺、結構怒ってるんだけど、理由わかる?」
え、怒っているのか? 何度もキスしてきて、嬉しそうに微笑んでいたのに?
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