9 / 32
影王の専属人は、森のひと
08
しおりを挟む
これ以上はさすがに長居し過ぎで不自然ね。お腹ももういっぱいだし……。
「シルフィール様、そろそろ出ましょうか」
「そうね、ずいぶんと長居してしまったわね」
獣肉亭を後にしたわたし達は歩きながら今回の成果について話し合った。
「聞こえてきた中で気になったものとしては、花屋の前で佇む少女の話と、神出鬼没の義賊の話くらいですかね」
「ええ……思ったよりみんな噂話ってしないものなのね……。国政への不満を訴えるような声が少なかったのはホッとしたけれど……」
シルフィール様……お兄様のことを案じていらっしゃるんだな。
「少しずつではありますけど、暮らしが上向いてきているのをみんな実感しているのかもしれませんね」
「だと良いのだけれど……」
憂いを含んだ吐息をひとつついたシルフィール様に、わたしは気持ち明るめの声をかけた。
「まだ少し時間がありますから、噂話に出てきた花屋へ行ってみましょうか」
「えっ、場所が分かるの、リーフィア?」
「はい、多分。以前、その店の前を通ったことがありますから」
何組かのお客が噂していたところによると、裏路地にある「ラワール」という花屋の前で一ヶ月程前から連日のように立ち続けている少女がいるらしい。彼女は先端が尖った長い耳と小柄で細い肢体が特徴的なフロウ族の少女で、健気に誰かを待ち続けているようなのだ。
雨の日も風の日も朝早くから日が暮れるまで待ち人を想ってじっと佇むその姿がいじらしくて何だか見ていて切なくなると、町の人々は気の毒そうに口にしながら、彼女が待ち続けている相手と理由に興味津々の様子で、その正体や関係を悪気なくあれこれと憶測していた。
「リーフィアは元々、その少女の話を知っていたの?」
花屋へと向かう道中、シルフィール様にそう尋ねられたわたしは小さく首を振った。
「いえ、偶然その花屋に心当たりがあっただけで、少女の話は初めて聞きました」
「義賊の話は?」
「神出鬼没の義賊、ノヴァですか……名前は聞いたことがあります。何年か前までは派手に活動していたみたいで、わたしの住む村にも時々噂が流れてきていましたけど、ここ数年はすっかり鳴りを潜めているようで、巷では死亡説が流れていましたから、今日久々に名前を聞いて驚きました。もっぱら不正で私腹を肥やしているような上流階級をターゲットにした義賊で、盗んだ財貨を貧しい人々に分け与えていたとかで、庶民の間では英雄視されていた正体不明の人物です。再び表立って活動し始めていたとは知りませんでした」
「そうなの……その方はどうして、今になって活動を再開させたのかしらね?」
「さあ……どうしてでしょうか」
義賊の活動理由などまったくもって分からなかったけれど、当人には何かしらの思惑あってのことなんだろうな。
「噂によると直近で被害に遭われたのは『ゲイリー男爵』という方のようですね。ご存知ですか?」
「……ごめんなさい、ちょっと思い出せないわ」
シルフィール様はご存じない方なのか……まあ男爵は五等爵の中では一番低い爵位だったと思うし、仕方がないか。
シルフィール様と連れ立ってしばらく歩いていくと、目的の花屋が見えてきた。看板に「ラワール」の文字―――間違いない、ここだ。
季節の花が陳列された店の傍らには噂通り、フロウ族の少女が一人佇んでいる。線が細くて儚い感じの綺麗な娘だ。
「あの方ね。お話を伺ってみましょう、リーフィア」
「あ、はい」
近付いてきたわたし達に視線を向けた少女は、白目部分がほとんどない大きな黒い瞳を瞬かせて、こちらの様子を注視した。
「あの、少しお話を宜しいかしら」
「……。何か……?」
警戒する素振りを見せる少女に、シルフィール様はにっこりと邪気のない微笑みを向けた。
「突然ごめんなさいね。私、シルケと申します。あなたに少々伺いたいことがあって」
―――シルフィール様、偽名! サラッと!!
事前に何も打ち合わせていなかったものだから、わたしはそれに驚いた。
いや、本名を名乗るのはどう考えてもアウトだから偽名を使って正解なんだけど、ふんわりとしたシルフィール様からあまりにもサラッとそれが出てきたので、ビックリしてしまったのだ。
もしかしたら街へ出る時は偽名を名乗るように、と以前からの取り決めがあったんだろうか。
「まず、あなたのお名前をお聞きしても宜しいかしら?」
「……。ラステル……ですけど」
少女はためらった様子を見せながらも自らの名を名乗ってくれた。
「ラステル。素敵なお名前ですね」
「あの……?」
「ああ、ごめんなさい。街で少しあなたの噂を耳にしたんです。ここ一ヶ月ほど、日がな一日こちらに佇んでいる方がいらっしゃると聞いて、何か深い事情があるのではと思い、とても気になってしまって。もし何かお困りごとでしたら、僭越ながら私にも何かお手伝い出来ることがないかと」
「…………」
突然の申し出に目を丸くして無言でシルフィール様を見つめるラステル。わたしはフォローしようと横から口を挟んだ。
「気を悪くされたら申し訳ありません。あの、シルケ様……は昔からお節介というか何というか、困っていらっしゃる方を見るとどうにも放っておけない性分の方でして……心からあなたのお力になりたいと思っているだけで、決して他意はないのです」
「まあ、ひどいわリーフィア、お節介だなんて」
「頼まれてもいないことに首を突っ込んでこちらから根掘り葉掘り聞くのは、世間一般的に余計なお節介と言うんですよ」
「さらに余計をつけるの? 本当にひどいわ」
演技か本気か(多分本気)シルフィール様は頬を膨らませ、わたしを軽くにらみつけた。
シルフィール様、どうか本気にしないで下さいね! 演技です! 合わせているだけですから!
不慣れなことをして冷や汗たらたらになっている時だった。
「―――ふっ……ふふっ……」
不意にラステルが笑いだして、きょとんとするわたし達にこう言ったのだ。
「おかしな人達。みんな不憫そうな顔をして興味深げな視線を送ってはくるけれど、遠巻きに好き勝手な噂をするだけで、誰もこんなふうには接してこなかったのに。……育ちが良さそうなお嬢さん、ありがとう。気持ちだけいただいておくわ」
長い睫毛を伏せて、彼女は自分のことを少しだけ語ってくれた。
「あたしがここでこうしているのはね、ただの自己満足なの。とてもお世話になった人に会いたくて……どうしてももう一度、きちんとお礼が言いたくて。でも、その人の顔も名前も―――その人についてのことを、あたしは何ひとつ知らなくて……唯一の手掛かりが、リオーラの花なの」
「リオーラの花?」
名前は聞いたことがあるような気がするけれど、どんな花なのかパッと思い浮かばない。
そんなわたし達を見やり、ラステルは花屋の店頭に陳列されている白い花を指し示した。
「あの花よ。ちょうどこの時期に、限られた場所だけで咲く、優しい香りの花……」
それは筒状の白い小花が鈴生りについた、可憐な印象の花だった。
あ、これ―――植物に詳しい幼なじみが持っているの、見たことある。そうか、これがリオーラの花……。
「清楚で可愛らしい感じのお花ですね。私、初めて見たかもしれません」
お花が好きなシルフィール様は自然と花を愛でる顔になった。
「限られた場所でしか咲かないということもあって、あまり流通していない花なのよね。この辺りではここでしか売っていないの。派手な花じゃないし、似たような形の花は他にもあるから、あなたのようなお嬢さんは見たことがないかもしれないわね。
でも、あたしの恩人はこの花を知っていたの。以前買ったことがあるって言っていたわ。だから、あの人がここへこの花を買いに来ないか、あたしはそれに一縷の望みを託して―――こうして、ここで待ち続けているというわけ」
「でも、その方のお顔をあなたはご存じないのですよね? ここへその方が現れたとして、お分かりになるのですか?」
シルフィール様がもっともな疑問を呈すると、ラステルは小さく笑んだ。
「分かる……と思うわ。その人の全貌を知らなくとも、部分的に覚えていることもあるの。例えば瞳の色とか髪の色、それに声とかね」
「ラステル、あなたがもっと具体的に覚えていることを教えて下されば、私もその方を探すお手伝いが出来るかもしれません。何か、他に手掛かりはないのですか?」
「親切にありがとう、シルケ様。でも、いいの。表立って探すことは、あの人の迷惑になってしまうことが分かっているから。密やかにここで会えたならお礼が言いたい、それがあたしの望み。あたしが勝手に待ち望んでいるだけの、希望」
そこにはラステルのハッキリとした意思表示が見て取れた。
「でも……」
「シルケ様、これ以上は親切の押し売りになってしまいますよ。ラステルさんにも迷惑です」
止めに入ったわたしを振り返ったシルフィール様は何か言いたそうな顔をしたけれど、少し考えてそれを飲み込んだ。
「分かりました。でもラステル、私の方からまたあなたに会いに来る分には構いませんか?」
「えっ? それは……構わないけれど……。でも、あたしもここにずぅっといるわけじゃないわよ? そこまで暇人じゃないんだから……リオーラの花がここで売っている間の期間限定よ」
「ええ、覚えておきます」
それを聞いたラステルは深い息を吐いて、気の毒そうにわたしを見上げた。
「変わったご主人様で、付き合わされるあなたも大変ね」
「ええ、まあ」
わたしはあいまいに頷いた。
今のところはまだそうでもないのだけれど、これからそうなっていきそうな予感がひしひしとしてきたかも……。
でもまあ、お城の中で精神的に窮屈な思いをしているより、わたし的にはそっちの方がよっぽどいいかな―――そんなふうにも思った。
「シルフィール様、そろそろ出ましょうか」
「そうね、ずいぶんと長居してしまったわね」
獣肉亭を後にしたわたし達は歩きながら今回の成果について話し合った。
「聞こえてきた中で気になったものとしては、花屋の前で佇む少女の話と、神出鬼没の義賊の話くらいですかね」
「ええ……思ったよりみんな噂話ってしないものなのね……。国政への不満を訴えるような声が少なかったのはホッとしたけれど……」
シルフィール様……お兄様のことを案じていらっしゃるんだな。
「少しずつではありますけど、暮らしが上向いてきているのをみんな実感しているのかもしれませんね」
「だと良いのだけれど……」
憂いを含んだ吐息をひとつついたシルフィール様に、わたしは気持ち明るめの声をかけた。
「まだ少し時間がありますから、噂話に出てきた花屋へ行ってみましょうか」
「えっ、場所が分かるの、リーフィア?」
「はい、多分。以前、その店の前を通ったことがありますから」
何組かのお客が噂していたところによると、裏路地にある「ラワール」という花屋の前で一ヶ月程前から連日のように立ち続けている少女がいるらしい。彼女は先端が尖った長い耳と小柄で細い肢体が特徴的なフロウ族の少女で、健気に誰かを待ち続けているようなのだ。
雨の日も風の日も朝早くから日が暮れるまで待ち人を想ってじっと佇むその姿がいじらしくて何だか見ていて切なくなると、町の人々は気の毒そうに口にしながら、彼女が待ち続けている相手と理由に興味津々の様子で、その正体や関係を悪気なくあれこれと憶測していた。
「リーフィアは元々、その少女の話を知っていたの?」
花屋へと向かう道中、シルフィール様にそう尋ねられたわたしは小さく首を振った。
「いえ、偶然その花屋に心当たりがあっただけで、少女の話は初めて聞きました」
「義賊の話は?」
「神出鬼没の義賊、ノヴァですか……名前は聞いたことがあります。何年か前までは派手に活動していたみたいで、わたしの住む村にも時々噂が流れてきていましたけど、ここ数年はすっかり鳴りを潜めているようで、巷では死亡説が流れていましたから、今日久々に名前を聞いて驚きました。もっぱら不正で私腹を肥やしているような上流階級をターゲットにした義賊で、盗んだ財貨を貧しい人々に分け与えていたとかで、庶民の間では英雄視されていた正体不明の人物です。再び表立って活動し始めていたとは知りませんでした」
「そうなの……その方はどうして、今になって活動を再開させたのかしらね?」
「さあ……どうしてでしょうか」
義賊の活動理由などまったくもって分からなかったけれど、当人には何かしらの思惑あってのことなんだろうな。
「噂によると直近で被害に遭われたのは『ゲイリー男爵』という方のようですね。ご存知ですか?」
「……ごめんなさい、ちょっと思い出せないわ」
シルフィール様はご存じない方なのか……まあ男爵は五等爵の中では一番低い爵位だったと思うし、仕方がないか。
シルフィール様と連れ立ってしばらく歩いていくと、目的の花屋が見えてきた。看板に「ラワール」の文字―――間違いない、ここだ。
季節の花が陳列された店の傍らには噂通り、フロウ族の少女が一人佇んでいる。線が細くて儚い感じの綺麗な娘だ。
「あの方ね。お話を伺ってみましょう、リーフィア」
「あ、はい」
近付いてきたわたし達に視線を向けた少女は、白目部分がほとんどない大きな黒い瞳を瞬かせて、こちらの様子を注視した。
「あの、少しお話を宜しいかしら」
「……。何か……?」
警戒する素振りを見せる少女に、シルフィール様はにっこりと邪気のない微笑みを向けた。
「突然ごめんなさいね。私、シルケと申します。あなたに少々伺いたいことがあって」
―――シルフィール様、偽名! サラッと!!
事前に何も打ち合わせていなかったものだから、わたしはそれに驚いた。
いや、本名を名乗るのはどう考えてもアウトだから偽名を使って正解なんだけど、ふんわりとしたシルフィール様からあまりにもサラッとそれが出てきたので、ビックリしてしまったのだ。
もしかしたら街へ出る時は偽名を名乗るように、と以前からの取り決めがあったんだろうか。
「まず、あなたのお名前をお聞きしても宜しいかしら?」
「……。ラステル……ですけど」
少女はためらった様子を見せながらも自らの名を名乗ってくれた。
「ラステル。素敵なお名前ですね」
「あの……?」
「ああ、ごめんなさい。街で少しあなたの噂を耳にしたんです。ここ一ヶ月ほど、日がな一日こちらに佇んでいる方がいらっしゃると聞いて、何か深い事情があるのではと思い、とても気になってしまって。もし何かお困りごとでしたら、僭越ながら私にも何かお手伝い出来ることがないかと」
「…………」
突然の申し出に目を丸くして無言でシルフィール様を見つめるラステル。わたしはフォローしようと横から口を挟んだ。
「気を悪くされたら申し訳ありません。あの、シルケ様……は昔からお節介というか何というか、困っていらっしゃる方を見るとどうにも放っておけない性分の方でして……心からあなたのお力になりたいと思っているだけで、決して他意はないのです」
「まあ、ひどいわリーフィア、お節介だなんて」
「頼まれてもいないことに首を突っ込んでこちらから根掘り葉掘り聞くのは、世間一般的に余計なお節介と言うんですよ」
「さらに余計をつけるの? 本当にひどいわ」
演技か本気か(多分本気)シルフィール様は頬を膨らませ、わたしを軽くにらみつけた。
シルフィール様、どうか本気にしないで下さいね! 演技です! 合わせているだけですから!
不慣れなことをして冷や汗たらたらになっている時だった。
「―――ふっ……ふふっ……」
不意にラステルが笑いだして、きょとんとするわたし達にこう言ったのだ。
「おかしな人達。みんな不憫そうな顔をして興味深げな視線を送ってはくるけれど、遠巻きに好き勝手な噂をするだけで、誰もこんなふうには接してこなかったのに。……育ちが良さそうなお嬢さん、ありがとう。気持ちだけいただいておくわ」
長い睫毛を伏せて、彼女は自分のことを少しだけ語ってくれた。
「あたしがここでこうしているのはね、ただの自己満足なの。とてもお世話になった人に会いたくて……どうしてももう一度、きちんとお礼が言いたくて。でも、その人の顔も名前も―――その人についてのことを、あたしは何ひとつ知らなくて……唯一の手掛かりが、リオーラの花なの」
「リオーラの花?」
名前は聞いたことがあるような気がするけれど、どんな花なのかパッと思い浮かばない。
そんなわたし達を見やり、ラステルは花屋の店頭に陳列されている白い花を指し示した。
「あの花よ。ちょうどこの時期に、限られた場所だけで咲く、優しい香りの花……」
それは筒状の白い小花が鈴生りについた、可憐な印象の花だった。
あ、これ―――植物に詳しい幼なじみが持っているの、見たことある。そうか、これがリオーラの花……。
「清楚で可愛らしい感じのお花ですね。私、初めて見たかもしれません」
お花が好きなシルフィール様は自然と花を愛でる顔になった。
「限られた場所でしか咲かないということもあって、あまり流通していない花なのよね。この辺りではここでしか売っていないの。派手な花じゃないし、似たような形の花は他にもあるから、あなたのようなお嬢さんは見たことがないかもしれないわね。
でも、あたしの恩人はこの花を知っていたの。以前買ったことがあるって言っていたわ。だから、あの人がここへこの花を買いに来ないか、あたしはそれに一縷の望みを託して―――こうして、ここで待ち続けているというわけ」
「でも、その方のお顔をあなたはご存じないのですよね? ここへその方が現れたとして、お分かりになるのですか?」
シルフィール様がもっともな疑問を呈すると、ラステルは小さく笑んだ。
「分かる……と思うわ。その人の全貌を知らなくとも、部分的に覚えていることもあるの。例えば瞳の色とか髪の色、それに声とかね」
「ラステル、あなたがもっと具体的に覚えていることを教えて下されば、私もその方を探すお手伝いが出来るかもしれません。何か、他に手掛かりはないのですか?」
「親切にありがとう、シルケ様。でも、いいの。表立って探すことは、あの人の迷惑になってしまうことが分かっているから。密やかにここで会えたならお礼が言いたい、それがあたしの望み。あたしが勝手に待ち望んでいるだけの、希望」
そこにはラステルのハッキリとした意思表示が見て取れた。
「でも……」
「シルケ様、これ以上は親切の押し売りになってしまいますよ。ラステルさんにも迷惑です」
止めに入ったわたしを振り返ったシルフィール様は何か言いたそうな顔をしたけれど、少し考えてそれを飲み込んだ。
「分かりました。でもラステル、私の方からまたあなたに会いに来る分には構いませんか?」
「えっ? それは……構わないけれど……。でも、あたしもここにずぅっといるわけじゃないわよ? そこまで暇人じゃないんだから……リオーラの花がここで売っている間の期間限定よ」
「ええ、覚えておきます」
それを聞いたラステルは深い息を吐いて、気の毒そうにわたしを見上げた。
「変わったご主人様で、付き合わされるあなたも大変ね」
「ええ、まあ」
わたしはあいまいに頷いた。
今のところはまだそうでもないのだけれど、これからそうなっていきそうな予感がひしひしとしてきたかも……。
でもまあ、お城の中で精神的に窮屈な思いをしているより、わたし的にはそっちの方がよっぽどいいかな―――そんなふうにも思った。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説


【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる