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無自覚たらし、キタ――――――!!
あたしは脳内で絶叫しながら、耳まで赤くなった。
分かってる! 多分、深い意味はないんだって。
でもでも、友愛精神に満ちた発言なんだろうと分かっていても、好きな男子に言われたらキュン死する―――ッ!
脳内で悶えながら、現実では真っ赤になったままフリーズしてるあたしを目にした喜多川くんは、遅ればせながら自分の無自覚たらし発言に気が付いたようだった。
「! あっ、オレまた……! ゴメン、ええと、今のは別に変な意味じゃなくて……! その、メイクしていてもしていなくても、岩本さんには充分魅力があるってことを伝えたかっただけで……!」
おふぅっ! 追いキュン!
「あ~~~、も、ゴメン。何かオレ、さっきからキモいね……。旅先に来た感覚で、変に開放的な気分になっちゃってるのかな―――」
やらかした感を全身に滲ませながら、再び顔を覆う勢いになる喜多川くん。そんな彼の姿が何だか可愛くて可笑しくて、あたしは照れながらも吹き出してしまった。
「ふはっ、何かもう……そういうトコも全部ひっくるめて、喜多川くん、好き」
「えっ?」
鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔になる喜多川くんの目を真っ直ぐに見つめて、あたしはニカッと歯を見せた。
「そうやって何の気なしに褒めてくれたり、自信のないトコを優しく拾い上げて、新しい見方を教えてくれるところ。でもって、無意識にそれやってるから、後で気付いた時に変に照れちゃうところ。喜多川くんの人柄が出てて、いいなぁって思う。人に寄り添って物事を考えられる、喜多川くんらしいなぁって。そういうところ、好きだなぁって思うよ」
―――よしっ、言ってやった!
自分で自分にドヤ顔を決めながら、じわじわ今の発言がボディーブローのように効いてきて、変なアドレナリンが全開になる。
―――きゃーっっっ! どさまぎで「好き」って言っちゃった!
もうね、好きの気持ちが高まり過ぎて言いたくて言いたくてたまらなかったから、本来の意味として捉えられなくても、こうやって吐き出せただけでちょっとスッキリ!
そのテンションのまま、目を見開いて固まっている喜多川くんにちょっぴり悪戯っぽく囁いた。
「でも、相手と場所をわきまえないと変な勘違いされちゃうかもしれないから、そこは気を付けないとダメだよー」
特に、阿久里さん!
「えっ……う、うん……」
一拍置いてフリーズが解けた喜多川くんが、頬を赤らめながらモゴモゴ頷いて、そんな彼に急に距離詰めすぎかなぁと思いながらも、あたしは勢いで聞いてみた。
「―――あのさ、今度から喜多川くんのこと、蓮人くん、って呼んでもいいかな?」
「えっ?」
急な話の切り替わりに頭が付いていかなかった様子で、眼鏡の奥の長い睫毛が何度か瞬く。
「……。別にそれは構わないけど―――急にどうしたの?」
―――っしゃ! オーケーもらえた~!
内心かなりドキドキしながら返答を待っていたあたしは、その瞬間、心の中で両拳を突き上げた。
やった~~~っ、当面の目標、クリア!!
「―――や、この間、別のクラスの子が喜多川くんのこと名前呼びしてるの、偶然耳にしてさ―――ノラオも名前呼びだし、苗字呼びより名前呼びの方が距離感近い感じがして、うらやましいなって思って」
「ああ……多分、同じ委員会の人かな。委員会に同学年で漢字違いの北川がいて、紛らわしいからオレとそいつだけ下の名前呼びなんだ」
! そういうこと!?
あたしは胸の中にあったモヤモヤがパァッと晴れていくのを感じた。
「そうなんだー、同中の人がそう呼んでるのかと思ってた」
「同じ中学でそう呼ぶやつもいなくはないけど……高校で名前呼びするのは基本、委員会の人かな」
なんだー! 阿久里さんだけじゃなくて、委員会の人みんながそうなんじゃん!
そういうことだったのかぁ、良かった~!
知り得た事実にホッとしながら、あたしは喜多川くんに笑いかけた。
「じゃあこれからは蓮人くんって呼ばせてもらうね! あたしのことも名前呼びでいいから」
「えっ? 名前って、急に言われても……、何て呼べば―――」
「陽葵でも陽葵でも、何でも。呼びやすいのでいいよー」
あたしにそう振られた蓮人くんは、大いに戸惑いながら、ぎこちなく下の名前であたしを呼んだ。
「えっ、えっと……じゃあ、陽葵?」
「何? 蓮人くん」
「いや、あの、陽葵?」
「はーい」
「~~~っ……ちょ、待って。恥ず……急に無理なんだけど……」
突然の名前呼びに苦戦する蓮人くんは首まで赤くなると、口元を片手で覆った。
かっ、かわゆ~~~っっっ!
その様子にあたしは再びキュンキュンしてしまう。
「何で岩本さんそんなに抵抗ないの? 呼び方急に変えるのって、難しくない?」
「こういうのは勢いだよ、蓮人くん! 思い切りが大事!」
「陽葵、陽葵、陽葵……さん。……。と、とりあえずいったん持ち帰らせてくれない? おじいさんおばあさんの前で急に呼び方を変えるのもアレだし……」
確かに、それはそうかも。
「んー……じゃあ、おじいちゃんちにいる間はあたしも今まで通り喜多川くん呼びするね。でも二人の時は蓮人くんって呼んでもいい?」
「うん、それは全然」
「へへ、嬉しい」
あー、念願の名前呼び! 思わず顔が緩んじゃう~。
目尻を下げてウキウキと喜びを噛みしめるあたしの隣で、へにゃっと崩れたその顔が見るに堪えなかったのか、自分の膝に視線を落とした蓮人くんは眼鏡の真ん中辺りを押さえていた。
あたしは脳内で絶叫しながら、耳まで赤くなった。
分かってる! 多分、深い意味はないんだって。
でもでも、友愛精神に満ちた発言なんだろうと分かっていても、好きな男子に言われたらキュン死する―――ッ!
脳内で悶えながら、現実では真っ赤になったままフリーズしてるあたしを目にした喜多川くんは、遅ればせながら自分の無自覚たらし発言に気が付いたようだった。
「! あっ、オレまた……! ゴメン、ええと、今のは別に変な意味じゃなくて……! その、メイクしていてもしていなくても、岩本さんには充分魅力があるってことを伝えたかっただけで……!」
おふぅっ! 追いキュン!
「あ~~~、も、ゴメン。何かオレ、さっきからキモいね……。旅先に来た感覚で、変に開放的な気分になっちゃってるのかな―――」
やらかした感を全身に滲ませながら、再び顔を覆う勢いになる喜多川くん。そんな彼の姿が何だか可愛くて可笑しくて、あたしは照れながらも吹き出してしまった。
「ふはっ、何かもう……そういうトコも全部ひっくるめて、喜多川くん、好き」
「えっ?」
鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔になる喜多川くんの目を真っ直ぐに見つめて、あたしはニカッと歯を見せた。
「そうやって何の気なしに褒めてくれたり、自信のないトコを優しく拾い上げて、新しい見方を教えてくれるところ。でもって、無意識にそれやってるから、後で気付いた時に変に照れちゃうところ。喜多川くんの人柄が出てて、いいなぁって思う。人に寄り添って物事を考えられる、喜多川くんらしいなぁって。そういうところ、好きだなぁって思うよ」
―――よしっ、言ってやった!
自分で自分にドヤ顔を決めながら、じわじわ今の発言がボディーブローのように効いてきて、変なアドレナリンが全開になる。
―――きゃーっっっ! どさまぎで「好き」って言っちゃった!
もうね、好きの気持ちが高まり過ぎて言いたくて言いたくてたまらなかったから、本来の意味として捉えられなくても、こうやって吐き出せただけでちょっとスッキリ!
そのテンションのまま、目を見開いて固まっている喜多川くんにちょっぴり悪戯っぽく囁いた。
「でも、相手と場所をわきまえないと変な勘違いされちゃうかもしれないから、そこは気を付けないとダメだよー」
特に、阿久里さん!
「えっ……う、うん……」
一拍置いてフリーズが解けた喜多川くんが、頬を赤らめながらモゴモゴ頷いて、そんな彼に急に距離詰めすぎかなぁと思いながらも、あたしは勢いで聞いてみた。
「―――あのさ、今度から喜多川くんのこと、蓮人くん、って呼んでもいいかな?」
「えっ?」
急な話の切り替わりに頭が付いていかなかった様子で、眼鏡の奥の長い睫毛が何度か瞬く。
「……。別にそれは構わないけど―――急にどうしたの?」
―――っしゃ! オーケーもらえた~!
内心かなりドキドキしながら返答を待っていたあたしは、その瞬間、心の中で両拳を突き上げた。
やった~~~っ、当面の目標、クリア!!
「―――や、この間、別のクラスの子が喜多川くんのこと名前呼びしてるの、偶然耳にしてさ―――ノラオも名前呼びだし、苗字呼びより名前呼びの方が距離感近い感じがして、うらやましいなって思って」
「ああ……多分、同じ委員会の人かな。委員会に同学年で漢字違いの北川がいて、紛らわしいからオレとそいつだけ下の名前呼びなんだ」
! そういうこと!?
あたしは胸の中にあったモヤモヤがパァッと晴れていくのを感じた。
「そうなんだー、同中の人がそう呼んでるのかと思ってた」
「同じ中学でそう呼ぶやつもいなくはないけど……高校で名前呼びするのは基本、委員会の人かな」
なんだー! 阿久里さんだけじゃなくて、委員会の人みんながそうなんじゃん!
そういうことだったのかぁ、良かった~!
知り得た事実にホッとしながら、あたしは喜多川くんに笑いかけた。
「じゃあこれからは蓮人くんって呼ばせてもらうね! あたしのことも名前呼びでいいから」
「えっ? 名前って、急に言われても……、何て呼べば―――」
「陽葵でも陽葵でも、何でも。呼びやすいのでいいよー」
あたしにそう振られた蓮人くんは、大いに戸惑いながら、ぎこちなく下の名前であたしを呼んだ。
「えっ、えっと……じゃあ、陽葵?」
「何? 蓮人くん」
「いや、あの、陽葵?」
「はーい」
「~~~っ……ちょ、待って。恥ず……急に無理なんだけど……」
突然の名前呼びに苦戦する蓮人くんは首まで赤くなると、口元を片手で覆った。
かっ、かわゆ~~~っっっ!
その様子にあたしは再びキュンキュンしてしまう。
「何で岩本さんそんなに抵抗ないの? 呼び方急に変えるのって、難しくない?」
「こういうのは勢いだよ、蓮人くん! 思い切りが大事!」
「陽葵、陽葵、陽葵……さん。……。と、とりあえずいったん持ち帰らせてくれない? おじいさんおばあさんの前で急に呼び方を変えるのもアレだし……」
確かに、それはそうかも。
「んー……じゃあ、おじいちゃんちにいる間はあたしも今まで通り喜多川くん呼びするね。でも二人の時は蓮人くんって呼んでもいい?」
「うん、それは全然」
「へへ、嬉しい」
あー、念願の名前呼び! 思わず顔が緩んじゃう~。
目尻を下げてウキウキと喜びを噛みしめるあたしの隣で、へにゃっと崩れたその顔が見るに堪えなかったのか、自分の膝に視線を落とした蓮人くんは眼鏡の真ん中辺りを押さえていた。
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