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一章:傭兵フラウと聖女様
6.仔羊たちのマーチ
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乳白色の夜明けが闇を溶かし始め月も眠りにつく頃、リシテアがタルタロスから出してくれた。
どうやらもう時間が無いらしく拘束具を外してくれた後、門前で待たせていた馬車に押し込まれ急ぎ王城へ向かった。
「これからティシーに喧嘩売りに行くわよ」
「早くない!?まだ鳥だって寝惚けてる時間帯だよ!?」
冗談かと思ったが、リシテアの目は意気揚々としていた。どうやら本気のようだ。
「先手必勝よ!フラウ、これから忙しくなるから覚悟しなさい!」
「りょ、りょうかいです、まいろーど」
首をゴキゴキ鳴らしながら気合いを入れているリシテアのあまりの気迫に圧倒されてしまう。
リシテアって意外とアグレッシブだなぁ。
「作戦通りに行くわよ。大丈夫、絶対成功するから。フラウはただその場で立っているだけでいいから」
朝の微風が前髪を攫う。心地の良い追い風だ。
風に遊ばれている髪を押さえ先程頭の中に叩き込まれた作戦を思い出した。
今から朝一で王城へと電撃訪問しに行く訳だが。リシテアは家に帰るんだけども。
まずはティシーに会い、約束をしてもらう。
フラウは実はリシテアの専属の傭兵だったと。騎士団とは国を守るために情報を共有し、連携をとっていたという設定だ。
フラウはリシテアの貴重な財産だ。だから勝手に処刑はしていはいけない、と。
めんどくさかったのか説明は途中で省かれたが約束をして頂いた暁には私は、ティシーに誤解をさせてしまった&悲しませてしまったと言う事でレイヴ騎士団との関わりを今後一切断つことを宣言する。
これにはティシーも食いつくだろうと。
リシテア曰く、ティシーは単純だが一筋縄ではいかない相手だ。
最大限に警戒しておこう。
「そうだわ、城に入る前にコレを着けて」
「これは……チョーカー?」
リシテアから渡されたのはシンプルで小さな装飾が付いた黒いチョーカーだ。
「今付けてるその悪趣味な首輪は外してちょうだいね。今日からはこっちを着けるのよ」
悪趣味…一応誕生日プレゼントとして貰った物なのだが。
手を首に回し、馴染んでいたチョーカーを取って懐に仕舞った。
少し窮屈だった首周りが解放され風を感じた。
ずっと付けっぱなしだったから日焼けの跡とか大丈夫かな…。
「そのチョーカーに着いている石は特別な魔法石よ。互いが遠くにいても魔力を流せば会話をすることができるわ」
「へぇ~便利な石だね。しかもキラキラ光ってて可愛い」
「気に入ってもらえて嬉しいわ」
リシテアと雑談をしながらも王城までの距離は着々と短くなっていった。
──そして遂に…。
「着いたわよ」
私は額に手を当てて、天を仰ぐように王城を見つめた。
以前、用事があって登城した時はなんとも思わなかったのに今日は城全体が禍々しく見えた。
「さぁ、作戦開始よ」
どうやらもう時間が無いらしく拘束具を外してくれた後、門前で待たせていた馬車に押し込まれ急ぎ王城へ向かった。
「これからティシーに喧嘩売りに行くわよ」
「早くない!?まだ鳥だって寝惚けてる時間帯だよ!?」
冗談かと思ったが、リシテアの目は意気揚々としていた。どうやら本気のようだ。
「先手必勝よ!フラウ、これから忙しくなるから覚悟しなさい!」
「りょ、りょうかいです、まいろーど」
首をゴキゴキ鳴らしながら気合いを入れているリシテアのあまりの気迫に圧倒されてしまう。
リシテアって意外とアグレッシブだなぁ。
「作戦通りに行くわよ。大丈夫、絶対成功するから。フラウはただその場で立っているだけでいいから」
朝の微風が前髪を攫う。心地の良い追い風だ。
風に遊ばれている髪を押さえ先程頭の中に叩き込まれた作戦を思い出した。
今から朝一で王城へと電撃訪問しに行く訳だが。リシテアは家に帰るんだけども。
まずはティシーに会い、約束をしてもらう。
フラウは実はリシテアの専属の傭兵だったと。騎士団とは国を守るために情報を共有し、連携をとっていたという設定だ。
フラウはリシテアの貴重な財産だ。だから勝手に処刑はしていはいけない、と。
めんどくさかったのか説明は途中で省かれたが約束をして頂いた暁には私は、ティシーに誤解をさせてしまった&悲しませてしまったと言う事でレイヴ騎士団との関わりを今後一切断つことを宣言する。
これにはティシーも食いつくだろうと。
リシテア曰く、ティシーは単純だが一筋縄ではいかない相手だ。
最大限に警戒しておこう。
「そうだわ、城に入る前にコレを着けて」
「これは……チョーカー?」
リシテアから渡されたのはシンプルで小さな装飾が付いた黒いチョーカーだ。
「今付けてるその悪趣味な首輪は外してちょうだいね。今日からはこっちを着けるのよ」
悪趣味…一応誕生日プレゼントとして貰った物なのだが。
手を首に回し、馴染んでいたチョーカーを取って懐に仕舞った。
少し窮屈だった首周りが解放され風を感じた。
ずっと付けっぱなしだったから日焼けの跡とか大丈夫かな…。
「そのチョーカーに着いている石は特別な魔法石よ。互いが遠くにいても魔力を流せば会話をすることができるわ」
「へぇ~便利な石だね。しかもキラキラ光ってて可愛い」
「気に入ってもらえて嬉しいわ」
リシテアと雑談をしながらも王城までの距離は着々と短くなっていった。
──そして遂に…。
「着いたわよ」
私は額に手を当てて、天を仰ぐように王城を見つめた。
以前、用事があって登城した時はなんとも思わなかったのに今日は城全体が禍々しく見えた。
「さぁ、作戦開始よ」
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