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出発
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ナリアとタカトの二人は、山小屋を出て、サミアールの街へと向かった。
「女神様、そのガキは?!」
昨日のパン屋の主人に訝しげに問われたが、ナリアは微笑みながら、
「ええ。私の手で保護することにしました。この子があまりにも不憫でしたので。」
と、皮肉を交えて答えた。
「……女神様、これからどこへ向かわれるのですか?」
「そうですね、ヤマツシトに。」
ヤマツシトとは、サミアールから南東の向かった所にある島国で、多くの島を持った国だ。春と冬しかないようなサミアールより暖かく、過ごしやすい気候で、四季折々の景色が楽しめる所だ。
ふと、タカトを見ると、不安げな表情をしていた。ナリアは、大丈夫だよ、とタカトの頭を撫でるとタカトはナリアの服を小さな手で掴んだ。
「それでは、お世話になりました。ご健康にはお気を付けてくださいね。」
ナリアは、にこやかに言い、お辞儀をして背を向けた。
サミアールを出て、少し南東へ行くと、ヴラジアルという港町がある。二人はそこでヤマツシトへと向かう船を待つ。今の時刻は昼過ぎ。次の船は明日の夕方に来るようだ。
「それじゃあ、ご飯にしましょう。」
ナリアの言葉にタカトは小さく頷き、二人は飲食店へと入っていった。
席に通され、メニュー表を開く。タカトは辺りをキョロキョロと見回す。
「どうしたの?」
「……初めてこんなお店に入った。」
タカトは少し怯えながら、小さな声で答えた。
「何にする?」
ナリアはタカトにメニュー表を見せたが、タカトは首を横に振った。
「……なんて書いてあるのか、わかんない。」
ナリアは失念していた。タカトが字を読めない可能性を考えていなかったのだ。
「そうなの?ごめんなさいね。私と同じものでいいかしら?」
タカトは頷いた。
「すみません!白鰯の唐揚げとコンソメスープ2つずつください!」
「了解しました。」
ナリアの注文に、ウェイターは下がっていった。
「お待たせしました。白鰯の唐揚げとコンソメスープでございます。ご注文は以上でしょうか?」
「ええ、ありがとうございます。」
ウェイターが二人の目の前に注文したものを運び、下がっていった。
「いただきます。」
タカトはもう白鰯に齧り付いていた。
「……おいしい。」
目を輝かせて呟くタカトに、ナリアは微笑んだ。
「女神様、そのガキは?!」
昨日のパン屋の主人に訝しげに問われたが、ナリアは微笑みながら、
「ええ。私の手で保護することにしました。この子があまりにも不憫でしたので。」
と、皮肉を交えて答えた。
「……女神様、これからどこへ向かわれるのですか?」
「そうですね、ヤマツシトに。」
ヤマツシトとは、サミアールから南東の向かった所にある島国で、多くの島を持った国だ。春と冬しかないようなサミアールより暖かく、過ごしやすい気候で、四季折々の景色が楽しめる所だ。
ふと、タカトを見ると、不安げな表情をしていた。ナリアは、大丈夫だよ、とタカトの頭を撫でるとタカトはナリアの服を小さな手で掴んだ。
「それでは、お世話になりました。ご健康にはお気を付けてくださいね。」
ナリアは、にこやかに言い、お辞儀をして背を向けた。
サミアールを出て、少し南東へ行くと、ヴラジアルという港町がある。二人はそこでヤマツシトへと向かう船を待つ。今の時刻は昼過ぎ。次の船は明日の夕方に来るようだ。
「それじゃあ、ご飯にしましょう。」
ナリアの言葉にタカトは小さく頷き、二人は飲食店へと入っていった。
席に通され、メニュー表を開く。タカトは辺りをキョロキョロと見回す。
「どうしたの?」
「……初めてこんなお店に入った。」
タカトは少し怯えながら、小さな声で答えた。
「何にする?」
ナリアはタカトにメニュー表を見せたが、タカトは首を横に振った。
「……なんて書いてあるのか、わかんない。」
ナリアは失念していた。タカトが字を読めない可能性を考えていなかったのだ。
「そうなの?ごめんなさいね。私と同じものでいいかしら?」
タカトは頷いた。
「すみません!白鰯の唐揚げとコンソメスープ2つずつください!」
「了解しました。」
ナリアの注文に、ウェイターは下がっていった。
「お待たせしました。白鰯の唐揚げとコンソメスープでございます。ご注文は以上でしょうか?」
「ええ、ありがとうございます。」
ウェイターが二人の目の前に注文したものを運び、下がっていった。
「いただきます。」
タカトはもう白鰯に齧り付いていた。
「……おいしい。」
目を輝かせて呟くタカトに、ナリアは微笑んだ。
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ナリアとタカトこれからどうなるのな非常に気になりました。儚いような雰囲気がよかったです。転生や召喚ものが多いなかでは珍しいですよね。
続き楽しみにしております(*´ω`*)