ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋

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第六章 布教に行きたい

#123 眠れる獅子の目覚め

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『太陽竜がライオンに進化しただと!』

 驚愕の声を上げるコスモ。
 そいつに向けて俺は言葉をぶつける。

「そうだ。太陽竜プロミネンス・ドラコは昼と夜、二つの顔を持つ。
 パワーゲージが百パーセントでフィールドが夜の時、切札特性ジョーカースキル月夜の煌めきキャンプファイアを強化して使うことができる。
 そしてフィールドが昼の時は、パワーゲージを百パーセント使い新たな姿へと進化する」

 俺の説明にコスモが納得したように頷く。

『なるほどな。だが一つでもパーツが壊れていれば進化はできない。
 だからお前は、いやお前達のチームは、破壊された左腕を復活する為にリペアメモリーを探してたってわけか。
 それほど厳しい進化条件で呼び出されたマドール。一体どんな能力を持ってるのか楽しみだぜ』

 コスモがニヤリと笑う。
 どこまで行ってもこいつは強敵との勝負を楽しむスタンスを崩さない。
 ならとことん楽しませてやるよ!

「ヒナ! 頑張って!」
「お兄様、絶対勝ってください」
「先輩! 気合っすよ!」
「ヒナくんふぁいと!」

 ああ! 任せろ!
 仲間達の声援を受けて、俺はコントローラーのボタンを叩く。

「太陽獅子王プロミネンス・ライオネル! 右腕魔法ライトマジック発動! メテオファイアボール!」

 プロミネンス・ライオネルが空に向けて咆哮すると、その頭上に火の玉が現れる。
 火の玉は天高く舞い上がり、真っ青な空を赤く染めた。
 そして次の瞬間、炎に包まれた巨大の隕石が大地へと降り注ぐ。

「最初のターゲットはブラックアリスだ!」
『何っ!』

 ブラックアリスの頭上に隕石が迫る。
 クロリスは表情を歪めながら黒衣の魔女を逃がそうとするが、間に合わない。
 燃え盛る隕石はそのまま地面に衝突し、ブラックアリスを含む周囲一帯を火の海に変えた。
 配信画面に表示されたブラックアリスの頭部装甲ヒットポイントゲージがゼロを示し、機能停止ダウンが確定する。

『そんな、私のブラックアリスが』

 配信画面に映るクロリスがガックリと項垂れる。
 顔を俯かせる彼女に俺は言葉を叩きつけた。

「ブラックアリスが倒れたことで、お前達のゴールデンマドールにかかっていた石化の呪いは終了する」

 これでインチキじみた防御力強化は消え、キングマドールを守るものはなくなった。
 とは言え、ここからだと敵のゴールデンキングマドールはまだ遠い。
 さらに奴らにはコズミック・ドラグオンとグランドランス・ユニコーンが残っている。
 そう思っていると、俯いたクロリスから忍び笑いが漏れ聞こえてきた。

『クッ、クッヒッヒッヒッヒッヒ! ヒハアーッハッハッハー! 残念でしたね! 貴方がブラックアリスを倒したことで最後の呪いが起動します!』

 最後の呪いだと?

脚部特性レッグスキル、シャドウカース! ブラックアリスのパーツが壊れた時、相手の同じパーツを破壊します』

 ブラックアリスが隕石に押し潰された場所から、骸骨の顔をした亡霊が何体も湧き上がってくる。
 同時にプロミネンス・ライオネルの足元の影から真っ黒な手が這い出てライオンの前足を掴んだ。
 これは!

『ブラックアリスの頭部ヘッドパーツが壊されたことにより、プロミネンス・ライオネルの頭部ヘッドパーツを道連れにします! 太陽の獅子も闇の呪いからは逃れられないようですね』

 ニイイイ、とクロリスは口の端を吊り上げる。

『楽しいゲームでした。しかしそれもこれで終わりです。さようなら、ライオンハートさん!』
「いいや、勝ち誇るのはまだ早いぜ」

 その時、白き獅子が前足に絡みついた影の腕を振り払い、眼前に飛んでくる亡霊を噛み砕いた。

『何っ!?』

 予想外の反撃にクロリスが目元を歪める。
 そんな彼女に俺は説明する。

頭部ヘッド右腕ライト左腕レフト脚部レッグ。プロミネンス・ドラコの四つのパーツが合体し、進化形態エボリューションモードのプロミネンス・ライオネルとなった。
 今のこいつは四箇所の装甲ヒットポイントゲージが一体化し、パーツの区別はなくなってる! パーツの単体破壊効果は通用しない!」
『そんな!』

 愕然とするクロリスとは逆に、コスモは感心したように言葉を吐き出す。

『やってくれるなヒナ。
 それにリバースカースでスピードの上がったブラックアリスが逃げ切れないほどの広範囲へ隕石攻撃。
 これが右腕特性ライトスキル火炎球ファイアボールの進化した攻撃技、右腕魔法ライトマジック・メテオファイアボールか!』

 そんな彼の横で、静かに怒りを滾らせる鎧騎士がいた。

『おのれ不届き者め! 我が主君クロリス様への狼藉、万死に値する!』

 ランスが感情のままに声を張り上げる。

『グランドランス・ユニコーン! その神秘の角を槍へと変え、敵を貫け!』

 一角獣が地面を蹴り、獅子王へ迫る。
 そこで俺は宣言する。

左腕魔法レフトマジック、メテオファイアウォール!」

 瞬間、プロミネンス・ライオネルの正面の地面が割れ、そこから炎が噴き出す。
 炎の壁に阻まれ、グランドランス・ユニコーンは足を止めた。

『くっ、炎の壁で攻撃を防ぐ火炎壁ファイアウォールか。小賢しい真似を!』
「いいや、進化したメテオファイアウォールはそれだけじゃないぜ」

 俺がそう言い放つと空が赤く染まり、そこから炎を纏った隕石がグランドランス・ユニコーンに向けて落下してくる。

『なんだと!』
「メテオファイアウォールは敵の攻撃を防ぎ、攻撃してきた相手にカウンターダメージを与える! 喰らえ!」

 一角獣が嘶き、その角を地面に突き刺す。
 また地中へ潜るつもりなのだろうが、逃がしはしない!
 すぐにその頭上に巨大な隕石が降り注ぎ、グランドランス・ユニコーンを押し潰した。
 そしてその周囲が真っ赤な炎に包まれる。
 配信画面に映るグランドランス・ユニコーンの装甲ヒットポイントゲージが減少し、ゼロを示した。
 グランドランス・ユニコーン、機能停止ダウン

『馬鹿な! 我のグランドランス・ユニコーンが敗れるだと!』

 ランスの声に驚愕の色が浮かぶ。
 よし、あと一息だ。あともうちょっとで奴らを倒せる!
 そんな俺の思考にコスモの興奮した声が割り込んできた。

『最高だ! 最高に楽しいぜヒナ! やはりお前は俺の魂を燃え上がらせてくれる、宇宙最強の好敵手だ!』

 コスモめ、プロミネンス・ライオネルの力を見ても、なお目を輝かせるか。

『ならば俺も奥の手を見せてやるぜ! 停止交代ダウンリリーフ! Come onカモン! ラストマドール! 銀河眷竜スターライト・ワイバーン!』

 コズミック・ドラグオンの後方の地面に光の柱が現れ、その中から透き通った青い体を持つ翼竜が姿を表す。
 オーロラのように輝く翼。頭の両側に生えた二本の角。
 ところどころ角張ったその体はまるでメカのようなデザインに思えた。
 これが奴らのチームの五体目のマドール!

『いくぞコズミック・ドラグオン! 強化合体オーバーパワーユニオン! 起動アクティブ!』

 合体だと!?
 コスモの言葉とともに、スターライト・ワイバーンの体が幾つものパーツに分離す
る。
 青く透き通った水晶の体はドラグオンの腕や足を追う鎧となり、頭部パーツはドラグオンの頭を覆うヘルメットに姿を変える。
 その青き竜皇の頭の両側には獰猛さを感じさせる水牛バッファローの角が装着された。
 オーロラの翼はドラグオンの赤い羽に取り付き、マントのように風に靡く。
 メカみたいとは思ったが、ホントに変形合体するのかコイツ!

『真の姿を見せろ! 銀河流星皇シューティング・コスモ・ドラグオン!』

 シューティング・コスモ・ドラグオン!
 初めて見るマドールを前に俺も驚きを隠せなかい。
 俺がプロミネンス・ライオネルを隠し玉にしていたように、奴も俺の知らないマドールを用意していたというわけか。
 コスモは高々と宣言する。

『ヒナ! お前が太陽系最強の獅子王を従えると言うなら、俺は銀河系最強のドラゴンで迎え撃つ! 今こそ俺とお前、どっちが強いか決着をつけるときだ!』

 そんな風に煽られ、俺の気持ちも自然と燃え上がる。
 コスモ、俺もお前と戦うのがめちゃくちゃ楽しいよ。

「ああ、望むところだコスモ! 太陽の輝きは宇宙の果てまでも照らしてやる!」

 今、銀河と太陽がぶつかり合う時だ!
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