ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋

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第六章 布教に行きたい

#122 白き太陽

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 ウサギガンマンは森林フィールドに逃げ込み、身軽さを活かして縦横無尽に森の中を駆け回る。
 それを追うブラックアリスは、障害物の多い森林フィールドの移動に悪戦苦闘していた。

『逃げるのはウサギの専売特許ですね。厄介な』
『ならクロリスちゃん、ここは俺に任せな!』

 毒づくクロリスに対し、コスモはニヤリと笑って宣言する。

『コズミック・ドラグオン! 星々の輝きで森を消し飛ばしてやれ!』

 ドラグオンの両肩に載ったキャノン砲に光が集まり、砲門から眩い黄金の輝きが放たれる。
 閃光は木々を次々と消し炭に変えていった。
 森を形成していた木々が消失し、ドラグオンを中心とした一帯が開けた空間に変わる。
 そして隠れるところのなくなったラビット・バレットの姿が露わになった。

「なんて戦い方するんですか! もっと自然を大事にしてください!」

 光流の抗議に構わず、クロリスは冷酷に微笑む。

『フフ、見つけましたよウサギさん。ブラックアリス、ハープストリング!』

 ブラックアリスがハープを振るうと弦が伸び、ウサギガンマンへ迫る。
 そこでラビット・バレットは両手に銃を構え、青き竜皇に向けて光線を放った。

『何!』

 それに驚きの声を上げたのはコスモだ。
 コズミック・ドラグオンが自動的に左手を突き出し、その手に闇色の球体が生み出される。
 暗黒球はすぐに巨大化し、強烈な重力場を形成する。
 ラビット・バレットの光線も、ブラックアリスの弦も、そこに引き摺り込まれていった。

「もう気付いているんですよ。ブラックホールシールドは敵の攻撃に自動発動し、敵味方問わず全ての攻撃を吸収するんです!」
『ちっ、俺のブラックホールシールドを逆利用して目眩ましに使うとは、やるな!』

 その隙にラビット・バレットは敵から離れ、まだ木々の残っている森の奥へ逃げ込んでいく。
 一方で俺のプロミネンス・ドラコも翼をはためかせながら、森林フィールドに到着した。

「お兄様!」

 プロミネンス・ドラコが羽を畳み、木々の間に降り立つと、そこにウサギが駆け寄ってくる。

「お願いします、このアイテムを!」

 次の瞬間、一筋の閃光が視界を遮った。

「な、に?」

 それは一瞬の出来事だった。
 強烈な光の砲撃がラビット・バレットの背後から迫り、その華奢な体に風穴を開けた。

『スターブライトカノン! 光の速さからは誰も逃れられない』

 コスモがそう吐き出す。
 見れば、少し離れた場所にコズミック・ドラグオンがキャノン砲を構えていた。
 その砲撃に撃たれたラビット・バレットは大ダメージを負い、頭部の装甲ヒットポイントゲージが一気に減少する。
 そしてそれがゼロとなった瞬間、ラビット・バレットはその場に崩れ落ちた。

「そ、そんな」

 光流が悲しげにウサギのマドールを見つめる。
 ラビット・バレット、機能停止ダウン

『さて、いよいよ年貢の納め時ですよ』

 クスクスと微笑みながら、クロリスが言う。

『覚悟を決めるがいい、太陽の竜よ』

 ランスもそれに言葉を加える。
 プロミネンス・ドラコとコズミック・ドラグオンが距離をおいて睨み合っているところに、左手からブラックアリスが、右手からはグランドランス・ユニコーンが姿を現す。
 敵のマドールに完全に囲まれてしまった。
 三対一、か。
 この試合の開始直後、コズミック・ドラグオンが俺達の陣地に単身攻め込んできて、俺と夜宵と水零相手に三対一の戦いを繰り広げたが、今はあの時と真逆。
 俺一人で敵の三体のマドールと戦わなければならない。
 圧倒的に不利な状況。

「お兄様」

 光流が強い意志のこもった瞳で俺を見つめる。

「託しましたよ。私達の希望を」
「ああ、任せろ」

 その時、フィールド上空に所持アイテムの移動を示すメッセージが表示される。
 なんとか間に合った。
 ラビット・バレットが倒される直前、ギリギリでアイテムのやりとりが成立していたのだ。
 そして俺は敵チームに向けて言い放つ。

「覚悟を決めるのはお前達だぜ。俺の手には、ひよこが繋いでくれた勝利へのバトンがある」
『なるほど、さっきクロリスちゃんから横取りしたアイテムを渡されたのか。それで、一体何を見せてくれるんだ?』

 コスモは期待のこもった眼差しを俺に向ける。
 全くこいつは、誰よりも試合を楽しんでるな。
 いいぜ、見せてやる。
 光流から託された最後のアイテム。それは――

「アイテム発動、リペアメモリー!」

 プロミネンス・ドラコの頭上にオレンジに輝くダイヤ型の記憶媒体が現れる。
 このアイテムはマドールの本来の姿が記憶されている。

「リペアメモリーの効果で破壊されたパーツを一つ復活させる。俺はプロミネンス・ドラコの左腕レフトパーツを再生する!」

 虚空に浮かぶリペアメモリーから優しい光が溢れ、傷ついていたプロミネンス・ドラコの左腕に降り注ぐ。
 左腕レフトパーツは機能を取り戻し、火炎壁ファイアウォールが再び使用可能になった。
 それを見て、愉しげにコスモは笑う。

『ヒナ、今更火炎壁ファイアウォールを復活させたくらいで俺達三人の攻撃を凌げると思ってるのか?』
「いいや違うぜ。これで条件は整った。見せてやるよコスモ、お前も知らないプロミネンス・ドラコの真の力を」
『プロミネンス・ドラコの?』

 俺の言葉にコスモが目を見開く。
 そうだ、今からやることこそが俺達の最後の切り札。
 チーム全員で繋いだライオンハートの最後の希望。
 俺は力強く宣言する。

「フィールドが昼で、全てのパーツが健在のとき、パワーゲージを百パーセント使い、太陽竜プロミネンス・ドラコは超越進化オーバーパワーエボリューションが可能となる!」

 瞬間、太陽竜の足元から炎が湧き上がり、その全身を包み込む。

「灼熱の太陽が大地を照らす時! 気高き百獣の王が覚醒する! 真の姿を現せ――」

 炎が弾ける!
 プロミネンス・ドラコの新たな姿が陽の光のもとに晒し出された。
 今までの赤い鱗のドラゴンとは全く違う姿。
 純白に輝く体毛、ヒマワリのように顔の周りに広がる白とオレンジの混ざったタテガミ。
 炎の如くギラギラと輝く瞳が敵を射抜き、四本の足で地面を踏みしめる獅子が、その場で雄叫びを上げた。

「太陽獅子王プロミネンス・ライオネル! ここに降臨!」
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