ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋

文字の大きさ
上 下
118 / 125
第六章 布教に行きたい

#118 忍び寄るカウントダウン

しおりを挟む
『キングを倒す、ですか』

 配信画面に映るクロリスは、無感情に琥珀の言葉を反芻する。

『ブラック・アリスの石化の呪いによって私達のゴールデンキングマドールは鉄壁の防御力を得ています。この守りを打ち崩す作戦でもあるんですか?』
「もちろんっすよ。魔女の呪いなんかに負けない変幻自在の忍法を見せてやるっす」

 自信満々に胸を張る琥珀。
 そんな彼女に対して、クロリスは視線を鋭くした。
 ブラック・アリスがハープを逆手に持ち、弓のように構える。
 そして弦の一本が矢へと姿を変え、彼女は矢羽を引く。

右腕特性ライトスキル、ハープアロー』

 言葉と共に黒き魔女のハープは連続で三本の矢を放つ。
 当たったものを石化させる呪いの矢。
 琥珀も即座に臨戦対戦をとった。

右腕特性ライトスキル葬送爪牙そうそうそうが

 忍者は右手についた鋭い三本爪の手甲鉤を構える。
 その爪を一振りして、正面に飛んできた矢を全て叩き落とす。
 そして地面を蹴り、虎忍者はブラック・アリスへと飛びかかった。

『速い!』

 クロリスが口元を歪める。
 脚部特性レッグスキル怪踏乱打かいとうらんだによりスピードの上がった忍者は走りながら跳躍し、黒き魔女の頭上を飛び越えた。
 そのまま相手のゴールデンマドールの前に着地すると琥珀はニヤリと笑う。

頭部特性ヘッドスキル魔鬼火死まきびし!」

 虎忍者が口を開くと、そこから光線が放たれ、ゴールデンマドールの周囲の地面を照らす。
 そしてキングを中心とした一帯に透明なガラス製の撒菱がバラ撒かれた。
 そこで琥珀は得意気な笑みを浮かべる。

「ふっふっふ、これでキングの周りを完全に包囲したっす!
 一歩でも動けば魔鬼火死まきびしの餌食っすよ」

 対照的に画面の中のクロリスは怪訝そうに眉を顰めた。

『設置系のトラップ戦法ですか。
 しかしゴールデンマドールはプレイヤーが操作することはできず、能動的な移動もしません。
 一歩も動かないのだから、トラップなんて踏む筈ありませんよ』
「おっとお、それはこいつの効果を忘れてるっすよ」

 行け琥珀! 俺達の切り札を見せてやれ!

「アイテム発動、レッドカード!」

 琥珀がコントローラーを操作すると、虎忍者の左手に真っ赤なカードな現れ、それを投げつけた。
 カードは真っ直ぐに飛び、敵のキングマドールの胸にぶつかる。

「さあ、レッドカードの効果でその場所から退場してもらうっすよ!」

 次の瞬間、ゴールデンキングマドールは直立不動のまま後方へ飛び、一歩、二歩、三歩と移動する。
 三回目の着地でようやく勢いを失い、キングはその場に立ち止まった。
 しかしその間に地面にバラ撒かれた撒菱を三度踏み抜いている。
 キングマドールの装甲ヒットポイントゲージが僅かに減少した。
 それを見てクロリスは冷静に言葉を吐き出す。

『撒菱を踏んだことでダメージが発生しましたか。しかしそんな微々たるダメージでキングは倒せません!』
「いーや、ダメージなんてオマケっすよ。魔鬼火死まきびしの真の恐ろしさはここからっす!」

 琥珀がそう言い放つと、ゴールデンマドールの隣に青白く燃える人魂が浮かび上がった。
 そしてその炎の中には、7、という数字が刻まれている。

魔鬼火死まきびしを踏んだマドールには死のカウントダウンが始まるっす!
 今回は三回踏んだから、カウントがあと二つ進むっすよ!」

 人魂に刻まれた数字が減少し、5、という数を示す。

「そしてこのカウントダウンがゼロになった時、ゴールデンキングマドールは機能停止ダウンするっす! これなら防御力がどれだけ高くても関係ないっすよ!」

 威勢よく宣言する琥珀を見て、ウチのチームメイトも沸き立つ。

「出た! 虎衛門ちゃんの必殺技、死のカウントダウン!」

 夜宵が拳を握り締め。

「流石は虎ちゃん、卑怯なトラップ戦法に関しては右に出る者はいませんね」

 光流が微笑む。
 そんな中でもクロリスは冷静さを崩さず、言葉を吐き出す。

『なるほど、少々驚きました。私の石化の呪いをそんな方法ですり抜けるなんて。
 しかしレッドカードは使い切りのアイテムです。同じ手はもう使えません!』
「いいや、それは違うっす。オプションパーツ、採掘鎖鎌リサイクル・チェーン発動!」

 大河忍者の手に鎖鎌が現れ、忍者はそれを振り回す。
 そして鎌を地面に向けて投げると、その刃が赤いカードを貫き、カードは忍者の手へと回収されていく。

採掘鎖鎌リサイクル・チェーンはパワーゲージを三十パーセント払うことで、使ったアイテムを再利用できるっす。そしてレッドカードを再発動!」

 パワーゲージは試合中にコマンド操作をすることで少しづつ貯まっていく。
 連射コントローラーを使う琥珀は特に貯まりやすく、こういったパワーゲージを要求するオプションパーツと相性がいい。
 そして忍者は再び赤いカードを投げる。
 カードは手裏剣のように回転しながら飛び、ゴールデンマドールの額にぶつかった。
 するとキングの足が地面から浮き、先程の再現のように三歩後ろへ下がる。

「これでまた三回、魔鬼火死まきびしを踏んだっすね! 死のカウントダウンは三つ進むっす!」

 キングの隣に浮かぶ人魂の数字が五から二へと減少する。
 それを見て、クロリスは息を呑んだ。

『馬鹿な。ここまで追い詰められるなんて!』
「くっくっく、あと一回。あと一回レッドカードを使えば、死のカウントダウンはゼロとなり、私達の勝ちっす!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした

恋狸
青春
 特殊な家系にある俺、こと狭山渚《さやまなぎさ》はある日、黒服の男に恐喝されていた白海花《しらみはな》を助ける。 しかし、白海は学園三大姫と呼ばれる有名美少女だった!?  さらには他の学園三大姫とも仲良くなり……?  主人公とヒロイン達が織り成すラブコメディ!  小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。  カクヨムにて、月間3位

俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件

ながしょー
青春
高校入学を前に両親は長期海外出張。 一人暮らしになるかと思いきや、出発当日の朝、父からとんでもないことを言われた。 それは…… 同い年の子と同居?!しかも女の子! ただえさえ、俺は中学の頃はぼっちで人と話す事も苦手なのだが。 とにかく、同居することになった子はとてつもなく美少女だった。 これから俺はどうなる?この先の生活は?ラブコメ的な展開とかあるのか?!   「俺の家には学校一の美少女がいる!」の改稿版です。 主人公の名前やもしかしたら今後いろんなところが変わってくるかもしれません。 話もだいぶ変わると思います。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...