ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋

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第六章 布教に行きたい

#115 竜皇の死角

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 それはエキシビションマッチの数日前のことだった。
 ある日の夕方、俺がリビングへ行くとソファには難しい顔でゲーム機とにらめっこしている亜麻色髪の少女がいた。

「どうした光流? なにか悩みごとか?」

 彼女が持っているゲーム機の画面をチラ見したところ、そこには何体かのマドールが表示されていた。
 マドールのセッティングについて悩んでいるのだろうか?
 だとすれば数日後に迫ったコスモとのエキシビションマッチが関係してるのかもしれない。
 チームリーダーとして放ってはおけなかった。

「あっ、お兄様」

 彼女は俺の顔を見上げると、躊躇いがちに言葉を吐き出す。

「実はコスモさんとの試合のことを考えてまして。私はラビット・バレットを使うのをやめて、他のマドールを使った方がいいんじゃないかなと思ったんです」

 彼女がそんなことを言い出した理由については心当たりがある。

「そうか、前に土倉と戦った時のことを気にしてるのか」

 数日前に土倉がウチに遊びに来たとき、光流は彼のコズミック・ドラグオンになす術なく敗北した。
 ラビット・バレットの光線銃を無力化するコズミック・ドラグオンのブラックホールシールドはまさに彼女の天敵と言える。
 戦う相手が事前にわかっている今度の試合では別のマドールを使った方が勝算があるのでは?
 そう考えるのは自然なことだと思う。
 だが――

「俺はそうは思わないな。ラビット・バレットのレーザーガンで相手の動きを止めるのはお前の得意戦法だろ。
 たとえコズミック・ドラグオンには通用しなくても、相手チームの他の四機には十分有効な筈だ」

 ラビット・バレットは彼女が長年愛用してきたマドール。光流の経験と実力が一番発揮できる機体だ。
 自分の一番の武器を捨てて付け焼き刃で別のマドールを使っても、きっといい結果には繋がらないだろう。
 ベテランのゲーマー同士の戦いは、長年の経験で培った互いの得意戦術のぶつけ合いになる。
 その上で自分の戦術が相手の戦術に相性不利となることもあるだろう。
 だがどんな時でも自分のスタイルを曲げるべきではない。それが俺の持論だ。
 俺は光流の肩を叩きながら告げる。

「いいか光流、今お前がやるべきことはひとつ。ラビット・バレットでコズミック・ドラグオンを倒す方法を見つけることだ」
「えっ」

 光流の表情が固まる。
 以前、コズミック・ドラグオンに完封された彼女にしてみれば無謀な提案にも聞こえるかもしれない。
 俺は人差し指をピンと立てて、とっておきの秘密を話す。

「実はな、コズミック・ドラグオンも無敵じゃない。ブラックホールシールドには大きな弱点があるんだよ」

 ラビット・バレットがコズミック・ドラグオンに一方的に不利な件については俺も以前から対抗手段を探していた。
 チーム練習が軌道に乗ってる今なら彼女にこれを教えていいタイミングだろう。
 そうして俺は光流に、ラビット・バレットでコズミック・ドラグオンを倒す秘策を授けた。
 その日から光流の特訓が始まったのだ。
 光流がガンショット・コントローラーを構え、テーブルに投影された立体映像に向けて引き金を引く。
 同時にラビット・バレットの銃口から光が放たれた。
 だが光線はあらぬ方向へ飛んでいき、敵マドールには掠りもしない。

「また失敗か。やっぱりこの作戦は無茶だったかな」
「いえ、お兄様の作戦は間違ってません。もう少し練習すれば形にできそうなんです。水零さん、もう一度お願いします!」

 俺の不安を打ち消すように光流はポジティブな言葉を吐き出す。
 それに対して一緒に練習していた水零も明るく快諾する。

「うん、いいよ光流ちゃん。何度でも付き合うから」

 チーム戦だからこそできる秘策。
 これが完成した暁には、きっとコスモのコズミック・ドラグオンを倒す切り札になる。そう信じて俺達は練習を続けた。
 そして今、磨き続けた技が日の目を見る!
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