ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋

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第六章 布教に行きたい

#106 天下無双! コズミック・ドラグオン!

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「ヒナくん、私に任せて!」

 水零がそう叫び、光線の向かう先に水晶の魔法使いクリスタル・メイジが立ちはだかる。

左腕特性レフトスキル! 水晶の反射鏡ミラーリフレクション!」

 水晶の魔法使いクリスタル・メイジが左手で杖を振るうと、その周囲が巨大な水晶玉に覆われ、水晶の魔法使いクリスタル・メイジとゴールデンマドールを守る。
 そしてコズミック・ドラグオンの放った光線は水晶の壁にぶつかると反射し、青き竜皇へと跳ね返っていく。

水晶の反射鏡ミラーリフレクションは、水晶の魔法使いクリスタル・メイジが受けた攻撃を相手の攻撃パーツに跳ね返す!
 スターブライトカノンは頭部特性ヘッドスキルだから、この攻撃はコズミック・ドラグオンの頭部ヘッドパーツへ反射されるわ!」

 水零の言葉は、ボイスチャットツールを通して配信画面に響く。
 そこに琥珀もテンション高く言葉を重ねる。

「流石っす水姫さん! あれだけ強力な攻撃を頭部ヘッドパーツに受ければ、ドラグオンだってひとたまりもないっすよ!」

 確かに、これが直撃すれば頭部ヘッドパーツは破壊され、ドラグオンは機能停止ダウンするだろう。
 だがそう上手くはいかない。

「虎ちゃん。忘れましたか? あのマドールの能力を」

 光流の冷静な言葉。
 それらの会話はコスモにも聞こえていただろう。
 画面の中の彼のアバターが、ふっと笑みを浮かべたのが分かった。

『残念だが、宇宙の果てには星の輝きさえも届かない永遠とわなる闇が存在する。左腕特性レフトスキル自動発動オートアクティブ! ブラックホールシールド!』

 コズミック・ドラグオンが左手を前に突き出すと、その手に闇色の球体が生み出され、見る見るうちに巨大化する。
 やがてドラグオンの体を隠すほど膨れ上がった暗黒球は空間を歪めるほどの重力を発生させ、周囲の草木を呑み込み始めた。
 水零が反射した光線も重力に引き寄せられて軌道を変え、ブラックホールに呑み込まれて消滅する。
 視聴者に解説するように、コスモはそのスキルの詳細を語り出した。

『ブラックホールシールドはプロミネンス・ドラコの火炎壁ファイアウォールと同様に、敵の攻撃を受け止めてダメージを軽減する防御スキルだ。ただし受けた攻撃が光属性だった場合、それを完全に無効化する」

 スターブライトカノンの攻撃属性は光。
 つまり今の反射攻撃によるコズミック・ドラグオンへのダメージはゼロ。かすり傷一つつけることはできなかった。
 以前俺の家で対戦したこともあり、俺も光流も琥珀もコズミック・ドラグオンの能力はよく知っている。
 しかし改めて対峙すると、強力な攻撃スキルと隙のない防御スキルを兼ね備えたこの大型ドラゴンの絶対的な力を思い知らされる。

「くっ」

 水零は苦々しく口元を歪める。
 見れば水晶の魔法使いクリスタル・メイジの左腕は黒く変色していた。
 水晶の反射鏡ミラーリフレクションは自分が受けた攻撃を反射できるが、自身へのダメージを打ち消せるわけではない。
 さっきスターブライトカノンを受けたことにより、左腕レフトパーツはその威力に耐えられず破壊されてしまったのか。
 これではもう水晶の反射鏡ミラーリフレクションを使えない。
 まずい、もはやゴールデンマドールを守る手段がない。

The Shows Overザ・ショウズオーバー! さて、幕引きの時間だ』

 その時、ドラグオンの背後から風切り音が響いた。
 音の発生源に目を向ければ、夜宵のジャック・ザ・ヴァンパイアが魔剣で斬りかかるところだった。
 しかしドラグオンは瞬時に振り向き、右の拳を握り締める。
 同時にコスモの言葉が響いた。

『天より落ちる彗星よ、一瞬の煌めきを一閃の光へと変え、この拳へと宿れ! コメットナックル!』

 ドラグオンの右手が青く光り輝き、その拳が剣を迎撃する。
 吸血鬼の操る魔剣とドラゴンの拳がぶつかり合い、次の瞬間には魔剣の刃はバラバラに打ち砕かれていた。

「う、うそっ!」

 夜宵が目を見開く。
 ジャック・ザ・ヴァンパイアの主力攻撃である右腕特性ライトスキル血塗られた魔剣ブラッド・ブレードさえも通用しないのか。
 しかも攻撃が通らないどころか、反撃でこちらのパーツが壊されるなんて。
 だが夜宵はすぐさま次の一手を打つ。

「ジャックの左腕特性レフトスキル血塗られた生贄ブラッド・サクリファイスを発動。左腕を代償にして、破壊されたパーツを復活させる」

 ジャック・ザ・ヴァンパイアが左手を強く握りしめる。するとその拳から血が滴り落ち、左腕レフトパーツが黒く変色する。
 代わりに右手に持った剣の破損した部分に光が集まり、砕かれた刃が修復された。
 これでなんとかジャックは主力武器を取り戻せた。
 しかし被害は甚大だ。俺も水零も夜宵も、三人共が左腕レフトパーツを失った形になる。

『今の不意打ちは中々スリリングだったぜ。ヴァンピィ』

 一方のコスモは余裕の表情でそんな軽口を返す。
 強い! 三対一だっていうのに、まるで歯が立たない!
 その時、コズミック・ドラグオンの体が半透明へと変化し始めた。
 それを見て、コスモは残念そうに言葉を吐き出す。

『どうやら十二時の鐘の音が近いようだ。フラフープワープで移動したマドールは三分経過後、元の場所に戻る。
 ライオンハート、お前達とのダンスは楽しかった。また第二幕で踊れるのを楽しみにしてるぜ』

 瞬間、燃え盛る炎の塊がドラグオンへ襲い掛かる。
 コスモはそれを見て息を呑んだ。
 そんな彼に俺はチャットツール越しに言葉をぶつける。

「忘れ物だよ。ガラスの靴を受け取りな!」

 フラフープワープの効果が切れる瞬間に油断したな!
 プロミネンス・ドラコの頭部特性ヘッドスキル燃え盛る魂ファイアソウルを喰らえ!

『ちっ!』

 コズミック・ドラグオンが左腕を前に出し、左腕特性レフトスキルが自動発動する。
 青き竜皇の正面に暗黒球体が生まれ、巨大化して炎の塊を受け止める、が。

「ブラックホールシールドは光属性攻撃を無効にできるが、プロミネン・ドラコの攻撃属性は炎だ! この一撃は受け止めきれないぜ」

 俺はStandスタンドから取り外していたアタッチコントローラーを握り締め、正面に突き出す。

「吹き飛べえ!」

 燃え盛る魂ファイアソウルがより勢いを増し、極大の火球が闇の結晶体を呑み込み、さらにドラグオンの左腕も燃やし尽くす。

 コズミック・ドラグオンの左腕レフトパーツの装甲ヒットポイントゲージが勢いよく減少し、ゼロを示した。
 ドラグオンの左腕は炎に呑まれ、破壊される。
 さらにその炎は消えることなく、コズミック・ドラグオンを蝕み続ける。

燃え盛る魂ファイアソウルの追加効果により融解メルト状態になってもらうぜ」

 そこで青いドラゴンの体は本格的に透明化していき、姿を消した。
 バトルフィールドを見ると、コズミック・ドラグオンは元居た相手陣地に戻っている。
 はー、なんとか追い払えた。
 しかしいきなりこっちのマドール三体が手痛い被害を受けることになってしまった。
 配信画面の中ではコスモが、不敵に微笑んでいた。

『クッハッハハハ、やるなヒナ! やっぱりお前とのバトルは俺を楽しませてくれる! ここからが第二幕の始まりだ』
「そいつは光栄だね。こっちもやられっぱなしじゃいられないからな」

 俺は通話を切り、夜宵と水零の様子を見る。

「ひとまず一難去ったわね」
「ヒナ、あの人強い」

 安堵の息を吐く水零。
 表情を険しくする夜宵。
 そんな彼女達を俺は鼓舞する。

「ああ、だが落ち込んでる暇はないぜ。今から俺達はあいつをぶっ倒しに行くんだからな!」

 そして作戦指示を飛ばす。

「ヴァンピィ、当初の予定通り夜のフィールドを通って敵の陣地へ侵攻だ! 水姫はゴールデンマドールを守っててくれ!」
「わかったよヒナ!」
「任されたわ。ヒナくん」

 俺の言葉に二人が頷く。
 さあ、ここから反撃開始だ!
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