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第六章 布教に行きたい
#103 配信開始!
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『折角のお休みに私の配信を見るくらいしか予定のない暇人さん達。こんにちは』
にこやかな顔で煽るクロリスのそんな台詞から配信は始まった。
ちなみに「暇人さん」とはクロリスの視聴者の総称である。
『昼間にも関わらず沢山のお星様が集まってくれて俺も嬉しいぜ。Thank you!』
コスモもいつもの様にキザな台詞回しで挨拶する。
「お星様」はコスモのリスナーを指す言葉だ。
『そうでしたね。今日はコラボ配信なのでウチの暇人さんだけでなく、コスモのお星様も見てくれるんでしたね。では簡単には自己紹介をしましょう』
クスリと小さく微笑み、胸に片手を置いてクロリスは言葉を紡ぐ。
『個人Vのクロリスと言います。普段は魔法人形のシングルス対戦を中心にゲーム実況や配信をしています。
今回はコスモからトレバトの誘いをいただいたので、微力ながらお手伝いさせていただきます』
品の有る挨拶に続いてコスモが言葉を吐き出す。
『ふっ、俺の名はコスモ。宇宙よりもビッグな男さ。今日は沢山のお星様にビッグバンより熱いバトルをお見せしよう!』
『それともう一人紹介しなければいけない人がいますね』
クロリスのそんな言葉と共に画面に三人目のVが姿を現す。
そいつは銀色のプレートアーマーに身を包み、顔さえも覆い隠した西洋の騎士のような姿をしていた。
『我が名はランス。クロリス様をお守りする騎士である。今日は騎士道精神にのっとり、正々堂々と戦わせていただく』
「なんか、また独特な人が出てきたね」と夜宵が呟く。
「この人もコスモさん達と同じヴァーチャル配信者なんですか?」
光流の疑問に俺は答える。
「ちょっと違うかな。ランスは言葉通りクロリスのセコンドってうか付き人みたいなことをやってるんだ。単独で活動はしてない」
クロリスの配信でチャット欄にコメントを書き込んだり、たまに画面に出て共演したり。それが普段のランスの仕事である。
裏では配信の手伝いもしてるらしいので、リアルではクロリスの彼氏なのでは、なんて憶測も囁かれている。
表だって活動してない分、魔法人形の実力は未知数な相手でもある。
と、そんなことを話しているとコスモが声を張り上げた。
『では早速今日対戦する両チームの紹介だ! まずは俺達のチーム、レジェンドハンターズ! メンバーはコスモ、クロリス、ランス、ミルキィ、グランパの五名!』
それを聞きつつ、俺は仲間内に説明する。
「ミルキィとグランパはVじゃないカタギの人だな。今回は喋らないのかな?」
「カタギって。Vの者はヤクザだったの?」
夜宵が顔を引き攣らせながらそう吐き出すと、画面の中ではいよいよ話題がこちらに移る。
『そして対戦相手の名はライオンハート! メンバーはヒナ、ヴァンピィ、ひよこ、虎衛門、水姫の五人だ!』
コスモの紹介を受けてチャット欄にコメントが流れる。
――ヴァンピィさんを見に来た。
――シングルスの六月シーズン最終五位のヴァンピィさんだ!
――ヴァンピィさん、オフ会で会ったけど美少女だった。
やっぱりシングルスの上位ランカーだったヴァンピィは有名人だな。
ちなみに「ヴァンピィさん、オフで会ったけど美少女だった」というのはある種のコピペである。
およそ一月前、俺は夜宵を初めてのオフ会に連れて行った。
その夜、彼女はツイッターでこんな呟きをした。
『今日のオフ会で俺と絡んでくれた方、ありがとうございました。「ヴァンピィさん、オフ会で会ったけど美少女だった」ってみんなに伝えておいてください』
実際に美少女なのだが、普段男口調でツイッターをやってるヴァンピィがこんなことを言うと逆に嘘くさくなる。
そうしてツイッターでヴァンピィと親しい人達を中心に、この文章はコピペとして広まった。
そんな経緯でヴァンピィ美少女説はほぼネタコピペとして定着してるので、本気で信じてるのは実際に会った人だけだろう。
さて、話を戻そう。コスモの説明はまだ続いている。
『ヒナと俺はかつて幻想の竜達のメンバーとしてトレバトの公式大会で優勝した実績を持っている。
最強チームのメンバーだった俺達が、今度は自分のチームを率いて戦う。この熱い戦いを最後まで見届けてくれよ。
じゃあヒナ、お前からも軽く挨拶をしてくれ』
おっと、こっちにお鉢が回ってきたか。打ち合わせ通りだな。
俺は通話をオンにして、こちらの声がむこうに届くようにする。
お兄様頑張ってください、と小声で応援する光流の言葉が耳に届いた。
俺はパソコンに向けて言葉を吐き出す。
「えー、ライオンハートのリーダーのヒナです。
早速なんですが、僕ってコスモのファンなんですよ。いつも動画や生放送チェックしてますし」
俺の言葉に、おっとお? とコスモが口元を綻ばせる。
「それでコスモのリスナーならわかると思うんですけど、彼って負けたところ見たことないんですよね。シングルスなら多少負ける試合もありますけど、トレバトに限っては絶対に負けない。
ねえ、お星様達? たまにはこいつが負けるとこ、見たくないですか?」
俺がそう問いかけると、チャット欄が一気に盛り上がった。
――見たいー。
――いいね、コスモを倒せ!
――今からライオンハートのファンになります。
『ぐっ、なんかウチのお星様達が寝返り始めたんだが』
『アハハ、人望がないですねコスモは』
悔しそうにするコスモと、それを嘲笑うクロリス。
とりあえずお星様達を味方につける作戦は成功したようだ。
「よし、今日は見せてりますよ! コスモが負けるところを! ライオンハートの勝利をもって!」
『ふっ、その意気だヒナ。今日の戦いでお前達の太陽の様に熱い魂をぶつけてこい! だが俺の宇宙はそれさえも呑み込んでやる!』
俺の煽りにコスモも煽り返す。こうしてチャット欄はそれぞれのチームを応援する声で溢れ、配信は盛り上がりを見せた。
にこやかな顔で煽るクロリスのそんな台詞から配信は始まった。
ちなみに「暇人さん」とはクロリスの視聴者の総称である。
『昼間にも関わらず沢山のお星様が集まってくれて俺も嬉しいぜ。Thank you!』
コスモもいつもの様にキザな台詞回しで挨拶する。
「お星様」はコスモのリスナーを指す言葉だ。
『そうでしたね。今日はコラボ配信なのでウチの暇人さんだけでなく、コスモのお星様も見てくれるんでしたね。では簡単には自己紹介をしましょう』
クスリと小さく微笑み、胸に片手を置いてクロリスは言葉を紡ぐ。
『個人Vのクロリスと言います。普段は魔法人形のシングルス対戦を中心にゲーム実況や配信をしています。
今回はコスモからトレバトの誘いをいただいたので、微力ながらお手伝いさせていただきます』
品の有る挨拶に続いてコスモが言葉を吐き出す。
『ふっ、俺の名はコスモ。宇宙よりもビッグな男さ。今日は沢山のお星様にビッグバンより熱いバトルをお見せしよう!』
『それともう一人紹介しなければいけない人がいますね』
クロリスのそんな言葉と共に画面に三人目のVが姿を現す。
そいつは銀色のプレートアーマーに身を包み、顔さえも覆い隠した西洋の騎士のような姿をしていた。
『我が名はランス。クロリス様をお守りする騎士である。今日は騎士道精神にのっとり、正々堂々と戦わせていただく』
「なんか、また独特な人が出てきたね」と夜宵が呟く。
「この人もコスモさん達と同じヴァーチャル配信者なんですか?」
光流の疑問に俺は答える。
「ちょっと違うかな。ランスは言葉通りクロリスのセコンドってうか付き人みたいなことをやってるんだ。単独で活動はしてない」
クロリスの配信でチャット欄にコメントを書き込んだり、たまに画面に出て共演したり。それが普段のランスの仕事である。
裏では配信の手伝いもしてるらしいので、リアルではクロリスの彼氏なのでは、なんて憶測も囁かれている。
表だって活動してない分、魔法人形の実力は未知数な相手でもある。
と、そんなことを話しているとコスモが声を張り上げた。
『では早速今日対戦する両チームの紹介だ! まずは俺達のチーム、レジェンドハンターズ! メンバーはコスモ、クロリス、ランス、ミルキィ、グランパの五名!』
それを聞きつつ、俺は仲間内に説明する。
「ミルキィとグランパはVじゃないカタギの人だな。今回は喋らないのかな?」
「カタギって。Vの者はヤクザだったの?」
夜宵が顔を引き攣らせながらそう吐き出すと、画面の中ではいよいよ話題がこちらに移る。
『そして対戦相手の名はライオンハート! メンバーはヒナ、ヴァンピィ、ひよこ、虎衛門、水姫の五人だ!』
コスモの紹介を受けてチャット欄にコメントが流れる。
――ヴァンピィさんを見に来た。
――シングルスの六月シーズン最終五位のヴァンピィさんだ!
――ヴァンピィさん、オフ会で会ったけど美少女だった。
やっぱりシングルスの上位ランカーだったヴァンピィは有名人だな。
ちなみに「ヴァンピィさん、オフで会ったけど美少女だった」というのはある種のコピペである。
およそ一月前、俺は夜宵を初めてのオフ会に連れて行った。
その夜、彼女はツイッターでこんな呟きをした。
『今日のオフ会で俺と絡んでくれた方、ありがとうございました。「ヴァンピィさん、オフ会で会ったけど美少女だった」ってみんなに伝えておいてください』
実際に美少女なのだが、普段男口調でツイッターをやってるヴァンピィがこんなことを言うと逆に嘘くさくなる。
そうしてツイッターでヴァンピィと親しい人達を中心に、この文章はコピペとして広まった。
そんな経緯でヴァンピィ美少女説はほぼネタコピペとして定着してるので、本気で信じてるのは実際に会った人だけだろう。
さて、話を戻そう。コスモの説明はまだ続いている。
『ヒナと俺はかつて幻想の竜達のメンバーとしてトレバトの公式大会で優勝した実績を持っている。
最強チームのメンバーだった俺達が、今度は自分のチームを率いて戦う。この熱い戦いを最後まで見届けてくれよ。
じゃあヒナ、お前からも軽く挨拶をしてくれ』
おっと、こっちにお鉢が回ってきたか。打ち合わせ通りだな。
俺は通話をオンにして、こちらの声がむこうに届くようにする。
お兄様頑張ってください、と小声で応援する光流の言葉が耳に届いた。
俺はパソコンに向けて言葉を吐き出す。
「えー、ライオンハートのリーダーのヒナです。
早速なんですが、僕ってコスモのファンなんですよ。いつも動画や生放送チェックしてますし」
俺の言葉に、おっとお? とコスモが口元を綻ばせる。
「それでコスモのリスナーならわかると思うんですけど、彼って負けたところ見たことないんですよね。シングルスなら多少負ける試合もありますけど、トレバトに限っては絶対に負けない。
ねえ、お星様達? たまにはこいつが負けるとこ、見たくないですか?」
俺がそう問いかけると、チャット欄が一気に盛り上がった。
――見たいー。
――いいね、コスモを倒せ!
――今からライオンハートのファンになります。
『ぐっ、なんかウチのお星様達が寝返り始めたんだが』
『アハハ、人望がないですねコスモは』
悔しそうにするコスモと、それを嘲笑うクロリス。
とりあえずお星様達を味方につける作戦は成功したようだ。
「よし、今日は見せてりますよ! コスモが負けるところを! ライオンハートの勝利をもって!」
『ふっ、その意気だヒナ。今日の戦いでお前達の太陽の様に熱い魂をぶつけてこい! だが俺の宇宙はそれさえも呑み込んでやる!』
俺の煽りにコスモも煽り返す。こうしてチャット欄はそれぞれのチームを応援する声で溢れ、配信は盛り上がりを見せた。
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