上 下
98 / 125
第六章 布教に行きたい

#98 チーム名を考えよう

しおりを挟む
「えー、自己紹介も終わったところで、そろそろ本題に入ってよろしいでしょうか?」

 俺の畏まった物言いに、女性陣も居住まいを正す。

「チームを結成して最初の議題、チーム名を決めたいと思います」
「チーム名ねえ」

 水零が頬を指でつきながら、思案顔を浮かべる。

「そうね、私は魔法人形マドール界隈に詳しくないんだけど、何か参考になるものとかあるかしら?」
「参考か。例えば俺達が今度戦うコスモのチームとかは――」

 俺はスマホをテーブルの上に置き、DMのやりとりをみんなに見せる。
 そこにはコスモのチーム名とメンバー五人のハンドルネームがリストアップされていた。

「レジェンドハンターズ、ですか」

 そこに書かれた相手チーム名を光流が読み上げる。

「伝説のトレジャーハンターってことっすか。強そうっすね。ここは私達も負けてらんないっす。強そうな名前をつけるっすよ」

 そう言って琥珀は拳を握りしめ、気合いを入れる。
 と、そこで夜宵が会話に入ってこれてないことに気付いて俺は彼女に話を振る。

「そうだな。夜宵は何かアイディアとかあるか? 好きな言葉とか」
「えっ、好きな言葉? うーん、パンツ丸見え、とか?」
「最近キミの精神年齢が男子小学生のまま止まってるんじゃないかと思えてきたよね」
「まるで私が男子小学生だった時期があるみたいな言い方やめてヒナ。泣くよ、泣いちゃうよ」

 夜宵が涙目でそう訴える。
 俺の大好きな夜宵を泣かせるなんて、一体どこのどいつなんだ。許せないなー。
 まあそれはどうでもいいや。
 そこに光流が言葉を挟む。

「そう言えば、以前私達もチーム戦のオフ会に出たじゃないですか。あの時の私達のチーム名は我ながらナイスアイディアでしたね」
「ああ、バニートラップだっけ」

 俺が相槌を打つと光流は得意気な顔を見せる。

「はい、私の使うウサギ型のマドール、ラビットバレットがバニーの部分担当。卑怯なトラップ戦法を使う汚い忍者の琥珀ちゃんがトラップの部分を表していて、女の子チームらしくハニートラップとかけた、最高にお洒落なネーミングだと思いません?」
「おっ、喧嘩売ってる? 売ってるのか光流? いいぞ、表出ろ!」

 さらりと幼馴染みをディスる光流に対し、琥珀は指をポキポキと鳴らす。

「どうぞ、琥珀ちゃんは先にお外に出てください」
「よーし、今日こそお前を泣かすからな」

 意気揚々と琥珀が席を立ち、部屋を出ていく。

「ところでお兄様と夜宵さんのチーム名はキャンプファイアでしたね。どんな由来なんですか?」
「あっ、普通に話続けるんだ。琥珀は放置するんだ」

 そこで夜宵が口を挟む。

「あの時は、どうやって名付けたんだっけ? 私のジャック・ザ・ヴァンパイアから夜を連想して、ヒナのプロミネンス・ドラコが炎のドラゴンだから。夜に火を燃やすキャンプファイアみたいな感じだっけ?」
「そうそう、それが丁度プロミネンス・ドラコのジョーカースキルの名前でもあるから丁度いいかなって」
「ただいまーっす」

 と、そこについさっき部屋を出て行った琥珀が帰ってきた。
 右手にプリンを持って。

「そ、それは私が冷蔵庫にとっておいたプリン! 琥珀ちゃん、私のプリンをどうする気ですか!?」

 取り乱す光流を見て、琥珀は不敵な笑みを返す。

「ふっ、パーティから追放された私、冷蔵庫からプリンを持ってくる。今更謝ってももう遅い」

 なんか始まったぞ。

「そのプリンは最後の一個なんです! お願いです! プリンだけは! プリンの命だけは許してください! プリンに罪はないんです!」

 悲痛な様子でそう懇願する光流に構わず琥珀はプリンの封を開ける。
 そしてそれにプラスチックスプーンを突き刺し、プリンを食べ始めた。

「あっ、あっ、ああああああああ! 私のプリンがあああああ! うああああああ」

 光流はソファからヨロヨロと立ち上がったと思うと、すぐに膝をついて崩れ落ちた。
 俺はそんな彼女の頭を優しく撫でる。

「はいはい、喧嘩しないの。光流、プリンなら後でお兄ちゃんが買ってあげるから」

 そこで琥珀はプリンを食べ終えると、勝ち誇った顔を浮かべた。

「ふっ、これでわかったろ光流。この世界は弱肉強食。勝者はプリンを手に入れ、敗者は地べたに這いつくばる」

 勝者が手に入れるのプリン限定かよ。

「強さこそが絶対。強さこそがチームの名前にも求められる。そして野生動物の中で最も強いのが虎だ! 虎こそが私達のチーム名に相応しい」

 虎か。
 こいつのハンドルネームが虎衛門だし、ゲーム内のプレイヤー名がタイガーマスクだったし、虎に思い入れがあるのかもしれない。
 そこに光流が涙を浮かべながら反論した。

「でも琥珀ちゃん、虎より猫の方が可愛いですよ」
「くっ、一理ある。にゃんこ可愛い」
「おい、強そうはどこ行った」

 早くも強そうな名前という方向性からブレ始めたぞ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

Bグループの少年

櫻井春輝
青春
 クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...