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第六章 布教に行きたい
#93 夜宵ちゃん闇落ちする
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「魔法人形のチーム戦? へー、面白そう!」
俺の話を聞き、水零は目を輝かせた。
しかしすぐにテンションを落とし、俺に確認する。
「でもいいのかしら? 私初心者だし、そんな大事な試合に参加して」
「気にすんな。トレジャーハントバトルに関してはみんな初心者同然だ。これから一緒に強くなっていこう」
そう告げると彼女の顔に納得の色が浮かぶ。
「そっか。なら私、太陽くんと一緒のチームで魔法人形やりたいな」
眩しい笑顔とともに水零はチームへの参加を快諾してくれた。
確かに水零は初心者で魔法人形対戦の腕は期待できない。
でもそれ以上に、仲のいい友達とチームを組む方が楽しいと思う。
ライト勢だった彼女がこういう対戦に参加してくれるのが嬉しい。
しかしその隣で夜宵は硬い表情を浮かべていた。
「ヒナ、私やっぱり今はまだ魔法人形をやっちゃ駄目だと思う」
夜宵。
半年間不登校だった夜宵は、この夏休みを利用して遅れていた勉強を追いつくために頑張っている。
気分転換に他のゲームで遊ぶことはあっても、魔法人形だけは起動しなかった。
その決意は、俺が思っていたよりずっと固いのかもしれない。
彼女は真剣な眼差しを俺に向ける。
「私は魔法人形が好き。その気になれば一日中対戦し続けられるくらい。けど、だからこそ今魔法人形を触ったら歯止めが利かなくなると思う。また勉強が手につかなくなる」
そう言って、不安げに視線を落とす。
そうか。
真剣に勉強に打ち込む彼女の決意を邪魔することはできないな。
残念に思っていると、水零が質問を投げかけてきた。
「ねえ太陽くん。他のチームメンバーってもう決まってるの?」
「ああ、光流と琥珀だ。水零は会ったことなかったっけ」
「太陽くんの従兄妹と近所の子でしょ。話には何度か聞いたことあるけど」
そうか、水零とは中学の頃から四年以上の付き合いになるが、俺の家族に会ったことはなかったんだな。
ならば光流や琥珀とはこれが初顔合わせになる。
そう思っていると夜宵の表情が徐々に青褪めていった。
「ちょっと待って。光流ちゃんと琥珀ちゃんとヒナと水零が一緒に遊ぶの? それってアレでしょ。
『この前はみんなで魔法人形やって楽しかったよね。あっ、そうか夜宵はあの時いなかったっけー』
って私だけ置いてけぼりにして、みんなで仲良くなるパターンでしょ」
それは確かに。
ただでさえ友達の少ない夜宵が、その数少ない友達みんなが自分のいないところで仲良くなって、思い出を共有していくことになると、疎外感に苦しむ未来は容易に想像できる。
夜宵は暗い表情のまま頭を抱えて悩み始める。
「みんな仲良くなって、みんなが一緒に遊んでるのに私だけ除け者で、誰にも呼んでもらえないなんて。そうだね、そういうことあるよね。小学校の時も、中学のあの時だって。カラオケとかボーリングとか、私の知らない間にみんなで遊んだ話で盛り上がってて、これだからリア充は」
暗い! 何か夜宵のトラウマに触れてしまったのか、ものすごい暗黒オーラが漏れ出してきている!
一方の水零はニヤニヤとした顔で夜宵を見守りながら俺に視線を向ける。
どうするの太陽くん? そう言いたげだ。
そうだ。俺達のチームに参加しなければ、みんなと距離感に差が出てしまう。それを交渉材料にすれば夜宵をチームに引き込むことも可能かもしれない。
しかしそんなネガティブな動機で協力してもらったところで夜宵は心からゲームを楽しめないだろう。
俺の理想は円満な形で夜宵にも参加してもらうこと。
「もうやだ。人間関係面倒くさい。ボッチに戻りたい」
完全に死んだ目で闇落ちしている夜宵に、俺は言葉を投げかける。
「夜宵、迷ってるなら参加してくれ! 勉強のことは俺が責任を取るから!」
「せ、責任!?」
夜宵が目を白黒させているところに俺は語り掛ける。
「そうだ。俺達はチームだ! お前が成績が心配だって言うなら、魔法人形だけじゃなく勉強だって協力する。
夜宵が日々こなすべき勉強のノルマをきっちり決めて管理してやる。勉強を優先させ、残りの時間を魔法人形に使うようにさせる。
夜宵のご両親にも一緒に説明する。それじゃ駄目か?」
昔読んだスポーツ漫画で、家庭の事情で練習に参加できないチームメイトを助ける為にチーム全員で力を合わせて家の問題を解決する展開があったことを思い出す。
チームを組むっていうのはそういうことだ。魔法人形だけじゃなく個人的なことも含めて助け合う。それが正しいチームの形だと思う。
俺が捲くし立てると、夜宵は困惑の顔を見せる。
「えっ、えっ? えっ?」
そして隣に座る水零は意地悪く笑って見せた。
「へー、夜宵の私生活を太陽くんに管理されちゃうんだ。やーらしー」
おい、水を差すな。
俺の話を聞き、水零は目を輝かせた。
しかしすぐにテンションを落とし、俺に確認する。
「でもいいのかしら? 私初心者だし、そんな大事な試合に参加して」
「気にすんな。トレジャーハントバトルに関してはみんな初心者同然だ。これから一緒に強くなっていこう」
そう告げると彼女の顔に納得の色が浮かぶ。
「そっか。なら私、太陽くんと一緒のチームで魔法人形やりたいな」
眩しい笑顔とともに水零はチームへの参加を快諾してくれた。
確かに水零は初心者で魔法人形対戦の腕は期待できない。
でもそれ以上に、仲のいい友達とチームを組む方が楽しいと思う。
ライト勢だった彼女がこういう対戦に参加してくれるのが嬉しい。
しかしその隣で夜宵は硬い表情を浮かべていた。
「ヒナ、私やっぱり今はまだ魔法人形をやっちゃ駄目だと思う」
夜宵。
半年間不登校だった夜宵は、この夏休みを利用して遅れていた勉強を追いつくために頑張っている。
気分転換に他のゲームで遊ぶことはあっても、魔法人形だけは起動しなかった。
その決意は、俺が思っていたよりずっと固いのかもしれない。
彼女は真剣な眼差しを俺に向ける。
「私は魔法人形が好き。その気になれば一日中対戦し続けられるくらい。けど、だからこそ今魔法人形を触ったら歯止めが利かなくなると思う。また勉強が手につかなくなる」
そう言って、不安げに視線を落とす。
そうか。
真剣に勉強に打ち込む彼女の決意を邪魔することはできないな。
残念に思っていると、水零が質問を投げかけてきた。
「ねえ太陽くん。他のチームメンバーってもう決まってるの?」
「ああ、光流と琥珀だ。水零は会ったことなかったっけ」
「太陽くんの従兄妹と近所の子でしょ。話には何度か聞いたことあるけど」
そうか、水零とは中学の頃から四年以上の付き合いになるが、俺の家族に会ったことはなかったんだな。
ならば光流や琥珀とはこれが初顔合わせになる。
そう思っていると夜宵の表情が徐々に青褪めていった。
「ちょっと待って。光流ちゃんと琥珀ちゃんとヒナと水零が一緒に遊ぶの? それってアレでしょ。
『この前はみんなで魔法人形やって楽しかったよね。あっ、そうか夜宵はあの時いなかったっけー』
って私だけ置いてけぼりにして、みんなで仲良くなるパターンでしょ」
それは確かに。
ただでさえ友達の少ない夜宵が、その数少ない友達みんなが自分のいないところで仲良くなって、思い出を共有していくことになると、疎外感に苦しむ未来は容易に想像できる。
夜宵は暗い表情のまま頭を抱えて悩み始める。
「みんな仲良くなって、みんなが一緒に遊んでるのに私だけ除け者で、誰にも呼んでもらえないなんて。そうだね、そういうことあるよね。小学校の時も、中学のあの時だって。カラオケとかボーリングとか、私の知らない間にみんなで遊んだ話で盛り上がってて、これだからリア充は」
暗い! 何か夜宵のトラウマに触れてしまったのか、ものすごい暗黒オーラが漏れ出してきている!
一方の水零はニヤニヤとした顔で夜宵を見守りながら俺に視線を向ける。
どうするの太陽くん? そう言いたげだ。
そうだ。俺達のチームに参加しなければ、みんなと距離感に差が出てしまう。それを交渉材料にすれば夜宵をチームに引き込むことも可能かもしれない。
しかしそんなネガティブな動機で協力してもらったところで夜宵は心からゲームを楽しめないだろう。
俺の理想は円満な形で夜宵にも参加してもらうこと。
「もうやだ。人間関係面倒くさい。ボッチに戻りたい」
完全に死んだ目で闇落ちしている夜宵に、俺は言葉を投げかける。
「夜宵、迷ってるなら参加してくれ! 勉強のことは俺が責任を取るから!」
「せ、責任!?」
夜宵が目を白黒させているところに俺は語り掛ける。
「そうだ。俺達はチームだ! お前が成績が心配だって言うなら、魔法人形だけじゃなく勉強だって協力する。
夜宵が日々こなすべき勉強のノルマをきっちり決めて管理してやる。勉強を優先させ、残りの時間を魔法人形に使うようにさせる。
夜宵のご両親にも一緒に説明する。それじゃ駄目か?」
昔読んだスポーツ漫画で、家庭の事情で練習に参加できないチームメイトを助ける為にチーム全員で力を合わせて家の問題を解決する展開があったことを思い出す。
チームを組むっていうのはそういうことだ。魔法人形だけじゃなく個人的なことも含めて助け合う。それが正しいチームの形だと思う。
俺が捲くし立てると、夜宵は困惑の顔を見せる。
「えっ、えっ? えっ?」
そして隣に座る水零は意地悪く笑って見せた。
「へー、夜宵の私生活を太陽くんに管理されちゃうんだ。やーらしー」
おい、水を差すな。
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