ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋

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第五章 お泊りに行きたい

#64 夜宵とセクシービキニ

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 ゲームを終えた後は、いつも通りの勉強タイムが始まる。
 ヒナと夜宵はテーブルを挟んで向かい合い、夜宵は教科書を読みながら問題を解き、ヒナも夏休みの宿題を進めていく。
 時折夜宵がわからないところを質問するのにヒナが答えながら順調に勉強は進んでいった。
 やがて一段落ついたところで、何気なくヒナが口を開く。

「なあ夜宵、折角の夏休みなんだから今度どっか遊びにいかないか? 遠出でもして」
「遠出? どこに?」

 夜宵が首を傾げると、間髪入れずヒナは答えた。

「海とか行ってみないか?」

 いつも通りの世間話を装いながら、内心では勇気を振り絞ってヒナはそう誘った。
 そして彼は夜宵の反応を窺う。
 男と二人で海に行くなんて、完全にデートである。
 果たして夜宵はこの提案を受け入れてくれるのか。
 今の二人の関係ならこれぐらい攻めたアプローチをしてもいいとヒナは勝負に出た。

「海!」

 ヒナの言葉に夜宵は目を輝かせる。

「いいね海! 夏の海といったらリア充がわんさかいるからね! 沢山のリア充を爆破できるよ」
「なんか、思ってた反応と違うんだが」
「知ってるヒナ? リア充を一人爆破するごとに表彰ポイントが貰えてね。ポイントが貯まると階級が上がるんだよ」
「キミ、ゲーム脳過ぎない?」

 そう言われて、むむむ、と夜宵は口を尖らせる。

「じゃあヒナは海に行ってリア充爆破以外何をするの? 他に何を爆破するの?」
「爆破から離れて、もっと平和に海を楽しもう」

 ほら、とヒナは言う。

「海と言えば、やっぱり泳ぐのが一番の目的じゃないか?」
「泳ぐ……」

 その言葉に夜宵は気まずそうに目を逸らした。
 あまり乗り気でなさそうな彼女の反応に、ヒナはその理由を探ろうとする。

「もしかして泳ぐの苦手か? なら別に浅瀬で水遊びするとかいくらでも楽しみ方はあるしさ」
「うんと、そうじゃなくて。あれじゃん」

 夜宵は恥ずかしそうに視線を床に落としながら、スマホを取り出しテーブルに置く。

「海っていったら、その、さ。あれでしょ」

 スマホの画面にはツイッターが表示されていた。
 どうやら夜宵がブックマークしたツイートがまとめられているようだった。
 最初に目についたのは、海で遊ぶ紐ビキニ姿の女の子の絵を投稿しているたまごやきのツイートだ。
 紐がほどけて水着が脱げかけているが、当の本人は全く無自覚な表情をしている、とても無防備なワンショットである。

 夜宵も子供ではない。
 男の子が女の子を海に誘うのは、キミの水着姿が見たい、という意味だということくらいわかる。
 一方のヒナもようやく得心した。
 さっきまでリア充爆破で騒いでいたのは彼女なりの照れ隠しだったのだ。
 どうやら夜宵は水着になることを恥ずかしがっているらしい。
 そんな乙女心をヒナは理解する。

「ちょっと見ていいか?」

 そう言って断ると、ヒナは夜宵のスマホをタップし、ブックマークの一覧を眺めていく。
 たまごやきに限らず色んな絵師をフォローし、可愛い女の子の絵をブックマークに登録しているあたりは、普段の彼女のイメージ通りだった。
 もちろんその中には水着の女の子の絵も多数ある。
 それらは紐のような際どい水着だったり、脱げかけだったりといったセクシーショットが大半を占める。
 そこまで見てヒナは事態を把握した。

「夜宵ちゃん、キミは一つ勘違いをしている!」
「勘違い?」

 力強く宣言するヒナに対し、夜宵は疑問符を浮かべる。

「キミはツイッター上のイラストレーターさんが描くセクシーな水着の女の子絵に毒されてるだけなんだ。
 いいかい? 水着っていうのはね、エッチなものやセクシーなものだけじゃない。世の中には露出の控え目な健全な水着だって沢山あるんだよ!」

 ヒナのその言葉を受け、夜宵に衝撃が走る。

「そ、そうなの?」
「そうなんだよ!」

 ヒナの懸念は的中していた。
 夜宵はツイッターに流れる布面積の少ない水着美少女絵を見すぎて、水着というものに対するイメージが歪みに歪んでしまっていた。
 夜宵が水着になるのを恥ずかしがっていたのも、そもそも水着と言ったら布地の少ないビキニというイメージしかなかったからだ。

「その様子だと夜宵は水着とかは持ってなさそうだな」
「当たり前でしょヒナ。私を何だと思ってるの? 私は引きこもりコミュ障で友達いないんだよ。海とかプールとか、そんなリア充の縄張りに行ったことあるわけないじゃん!」
「うん、ごめんね。自信満々にキレないで」

 謎の開き直りを見せる夜宵をなんとか宥めたところで、ヒナは提案する。

「じゃあさ、今から夜宵の水着買いに行かないか?」

 いくら夜宵と仲良くなったからと言っても、異性と一緒に水着選ぶなんて抵抗があるのが普通だろう。
 こんなこと言って引かれたらどうしよう、とドキドキしながらもヒナはそう提案した。
 しかしこの話題をなあなあにしたら夜宵と海に遊びに行くという目的が遠ざかってしまう。
 夜宵がお気に入りの水着と出会い、これを着るのが楽しみ、早く海に行きたい、そう思ってくれるところまで持っていくのが目的だ。
 彼の提案を受け、夜宵は少し考えこむ。

「水着かー。確かにスクール水着くらいしか持ってないからなー」

 少なくとも引かれてたり嫌悪感を示している様子はない。
 ならばいける、とヒナは強引に夜宵を誘うことにする。

「そうそう、実際にお店に行ってみれば可愛い水着が沢山見つかると思うぜ。そんで一緒に海に行こうぜ」
「うわー」

 夜宵は恥ずかしそうに机に視線を落とす。

「今日はぐいぐい来るねヒナ。誘い方がリア充っぽいよ」

 まるで自然な態度で海に誘ってくる彼を見て、さぞ女の子慣れしてるんだろうなあ、という感想を夜宵は抱く。
 実際にはヒナはヒナで、一言ごとに夜宵との距離感を測りながら慎重に言葉を選んでいるのだが。

「違う違う、俺はリア充じゃないって。俺は夜宵と同類のただのゲームオタクよ。だから一緒にリア充を爆破しに行こうぜ」

 その台詞にピクリと反応し、夜宵は顔を上げてヒナを見つめ返す。

「ヒナ、ようやくヒナもその気になってくれたんだね。わかった、一緒に海に行って沢山のリア充を爆破しよう! 二人でいっぱい殺そうね!」

 予想以上に食いついてきた。
 夜宵を動かすにはリア充への憎しみを利用するのが有効らしい。
 とにかく折角乗り気になってくれたのだ、この機にヒナは夜宵に同調する。

「おう。どっちがより多くのリア充を殺せるか競争しようぜ」
「負けないよ。リア充への憎しみは私の方が強いからね!」

 こうして、なんとか夜宵をその気にさせることができた。
 彼女が食いつくポイントは意外に物騒だということを学んだのだった。

「じゃあ、出かけようぜ。可愛い水着を選んでやるからさ」
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