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第五章 お泊りに行きたい
#62 昨夜何があったの?
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暖かな日差しを体に浴び、ゆっくりと意識が覚醒する。
夜宵が目蓋を開くと、最初に見えたのは自室の天井だった。
彼女は昨夜の記憶を掘り起こす。
ヒナと遅くまで遊んでいた記憶はあるが、その後のことは思い出せない。
ひょっとしてあのあと寝落ちして、彼が部屋まで運んでくれたのだろうか?
そうなると男の子の前で無防備な寝姿を晒してしまったということが急に恥ずかしくなってきた。
夜宵は頭を抱えて、なんとか昨夜のことを思い出そうとする。
なんでもいい、何か記憶に残っていることはないだろうか?
その時、ふと脳裏にある台詞が浮かんできた。
――夜宵、好きだ。
――お前の笑った顔が好きだ。困った顔も照れた顔も最高に可愛くて好きだ。
――お前の全部が好きなんだ。
朧気な記憶の中、そんな言葉を言われた覚えがあった。
あれは夢だったのだろうか?
夜宵は考える。この告白を受けた時、自分はどんな感情を抱き、なんて答えたのだろうか?
首を捻ってみるも、まったく覚えがない。
ならば、やっぱり夢だったのだろう。
あるいは寝ぼけ眼の夜宵に対して、ヒナが熱烈な愛の告白をしたという可能性もあるが、そんなことをする意味が分からない。
やはり夢だと結論づける方が現実的だと夜宵は思った。
彼女はベッドから起き上がり、着替えて部屋を出る。
ドアを開けたところで、丁度廊下にいたヒナとばったり出くわした。
「おう、おはよう夜宵」
「えっ、あっ、おおおおおおはようヒナ」
ヒナの様子は特に変わったところはなくいつも通りだ。
対照的に夜宵は取り乱してしまったことを内心で恥じる。
「あのさ、ヒナ。昨夜って何があったっけ? 私、ゲームしてた後の記憶がなくてさ」
「ああ、覚えてないか? お前がウトウトしてたから、部屋まで連れて行ったんだよ。階段とかは危なっかしかったけど、ちゃんと歩けてたぜ」
「そ、そうなんだ」
無防備に眠りこけたところを部屋まで運ばれたのかと懸念していたが、なんだかんだで自室につくまで意識はあったらしい。
その点は安心した。
しかし、と夜宵はヒナの顔を見つめる。
こっちは男の子に隙だらけの姿を見せたかもしれないと気が気じゃないのに、彼はそれがなにと言わんばかりに平時通りだ。
ひょっとしてドキドキしてるのは自分だけなのだろうか? 彼にとっては自分の寝姿なんて見ても何にも思わないのだろうか?
「そうだ。おばさん、朝方に帰ってたみたいだぞ。俺達も朝飯にしようぜ」
何事もなかったように彼は世間話を続ける。
夜宵の母はすでに帰宅し、寝室で休んでいるらしい。
母が夜勤明けの日は、前日の夕飯の残りや作り置きしたものを翌日の朝食に充てるのがこの家の常だ。
「うん、わかった。顔を洗ったら私も行くから」
「おう、じゃあ一階で待ってるわ」
それだけのやり取りをして夜宵はヒナと別れて洗面所へ向かう。
なんだか拍子抜けしてしまった。
――そうだよね。ヒナの周りには可愛い女の子がいっぱいいるもんね。
――きっと女の子の扱いには慣れてるだろうし、私なんかでドキドキしたりしないよね。
美人でスタイルのいい水零。
小さくてふわふわして可愛い光流ちゃん。
明るく元気でコミュ力満点の琥珀ちゃん。
彼の周りにはそんな魅力的な少女達がいる。
それに比べて自分はどうだろう? なにか取り柄と呼べるものはあるだろうか?
残念ながら心当たりはない。
ゲームをしたいがために半年も不登校を続けたりと、むしろカッコ悪いところを沢山知られている。
彼は優しいから表に出さないだけで、内心ではドン引きしているかもしれない。
洗面所につき、顔に水を浴びせながら夜宵は考える。
昨日読んだ漫画の影響で、ひょっとしたらヒナは自分のことが好きなのかも、とか彼に隙を見せたら襲われちゃうかも、とか色々な心配をしてきたが今思えば全て一人相撲だったのだ。
彼は自分のことなど一ミリも女子として意識していない。あくまで一緒にゲームをする友達。そんな認識なのだろう。
それに気付くと、急に悔しくなってきた。
――私だって女の子なんだよ、ヒナ。
――少しくらい。私でドキドキしてくれたっていいじゃん。
自分ばっかりドキドキさせられたのでは不公平だ。
夜宵の中でそんな気持ちが芽生えていた。
うん、そうだよ。
彼に復讐しよう。
色仕掛け作戦の始まりだ。
夜宵が目蓋を開くと、最初に見えたのは自室の天井だった。
彼女は昨夜の記憶を掘り起こす。
ヒナと遅くまで遊んでいた記憶はあるが、その後のことは思い出せない。
ひょっとしてあのあと寝落ちして、彼が部屋まで運んでくれたのだろうか?
そうなると男の子の前で無防備な寝姿を晒してしまったということが急に恥ずかしくなってきた。
夜宵は頭を抱えて、なんとか昨夜のことを思い出そうとする。
なんでもいい、何か記憶に残っていることはないだろうか?
その時、ふと脳裏にある台詞が浮かんできた。
――夜宵、好きだ。
――お前の笑った顔が好きだ。困った顔も照れた顔も最高に可愛くて好きだ。
――お前の全部が好きなんだ。
朧気な記憶の中、そんな言葉を言われた覚えがあった。
あれは夢だったのだろうか?
夜宵は考える。この告白を受けた時、自分はどんな感情を抱き、なんて答えたのだろうか?
首を捻ってみるも、まったく覚えがない。
ならば、やっぱり夢だったのだろう。
あるいは寝ぼけ眼の夜宵に対して、ヒナが熱烈な愛の告白をしたという可能性もあるが、そんなことをする意味が分からない。
やはり夢だと結論づける方が現実的だと夜宵は思った。
彼女はベッドから起き上がり、着替えて部屋を出る。
ドアを開けたところで、丁度廊下にいたヒナとばったり出くわした。
「おう、おはよう夜宵」
「えっ、あっ、おおおおおおはようヒナ」
ヒナの様子は特に変わったところはなくいつも通りだ。
対照的に夜宵は取り乱してしまったことを内心で恥じる。
「あのさ、ヒナ。昨夜って何があったっけ? 私、ゲームしてた後の記憶がなくてさ」
「ああ、覚えてないか? お前がウトウトしてたから、部屋まで連れて行ったんだよ。階段とかは危なっかしかったけど、ちゃんと歩けてたぜ」
「そ、そうなんだ」
無防備に眠りこけたところを部屋まで運ばれたのかと懸念していたが、なんだかんだで自室につくまで意識はあったらしい。
その点は安心した。
しかし、と夜宵はヒナの顔を見つめる。
こっちは男の子に隙だらけの姿を見せたかもしれないと気が気じゃないのに、彼はそれがなにと言わんばかりに平時通りだ。
ひょっとしてドキドキしてるのは自分だけなのだろうか? 彼にとっては自分の寝姿なんて見ても何にも思わないのだろうか?
「そうだ。おばさん、朝方に帰ってたみたいだぞ。俺達も朝飯にしようぜ」
何事もなかったように彼は世間話を続ける。
夜宵の母はすでに帰宅し、寝室で休んでいるらしい。
母が夜勤明けの日は、前日の夕飯の残りや作り置きしたものを翌日の朝食に充てるのがこの家の常だ。
「うん、わかった。顔を洗ったら私も行くから」
「おう、じゃあ一階で待ってるわ」
それだけのやり取りをして夜宵はヒナと別れて洗面所へ向かう。
なんだか拍子抜けしてしまった。
――そうだよね。ヒナの周りには可愛い女の子がいっぱいいるもんね。
――きっと女の子の扱いには慣れてるだろうし、私なんかでドキドキしたりしないよね。
美人でスタイルのいい水零。
小さくてふわふわして可愛い光流ちゃん。
明るく元気でコミュ力満点の琥珀ちゃん。
彼の周りにはそんな魅力的な少女達がいる。
それに比べて自分はどうだろう? なにか取り柄と呼べるものはあるだろうか?
残念ながら心当たりはない。
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彼は優しいから表に出さないだけで、内心ではドン引きしているかもしれない。
洗面所につき、顔に水を浴びせながら夜宵は考える。
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それに気付くと、急に悔しくなってきた。
――私だって女の子なんだよ、ヒナ。
――少しくらい。私でドキドキしてくれたっていいじゃん。
自分ばっかりドキドキさせられたのでは不公平だ。
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うん、そうだよ。
彼に復讐しよう。
色仕掛け作戦の始まりだ。
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