ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋

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第五章 お泊りに行きたい

#60 ドキドキお風呂上り

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「お風呂出たよー! あれっ、ヒナ汗だくだね」
「おうよ、ちょっと脳みそまで筋肉になってたわ」

 夜宵の声が聞こえたので、俺はリビングの入り口へと振り向く。
 そして彼女の姿を見て言葉を失った。
 普段のワンサイドアップの髪型とは違う。三角のナイトキャップを頭に被り、顔の両側で緩く三つ編みにした髪をお下げにしていた。
 俺は照れつつも率直な感想を絞り出す。

「お、おう、三つ編み可愛いな」
「えっ、あっ、ありがとう」

 夜宵も照れた様子で言葉を返す。
 とても可愛い。これが夜宵の寝るときの格好なのか。
 クラスの男子は彼女のこんな姿見たことないだろう。
 お泊まりに来て良かった。
 しかし、無視できない点もある。

「で、その格好はなんなんだね。夜宵」

 夜宵の首から上だけ見て感動にうちひしがれていたが、彼女は肩からタオルケットを巻き、膝下辺りまでを覆っていた。

「いや、その、ね」

 夜宵はしどろもどろになりながら、頬を赤らめつつ理由を告げる。

「冷静に考えたら、さ。男の子にパジャマ姿を見せるのって恥ずかしいなーって気づいたの」

 はにかみながらそう言って視線を床に落とす。
 そんな彼女を前に、俺も照れつつも根本的な部分を指摘せざるを得ない。

「だったら男を家に泊める時点で、よく考えるべきだったんじゃないか?」
「だよねえ。あの時はヒナと遊べるってだけで舞い上がっちゃって、細かいことよく考えてなかったよ」

 純真すぎるだろこの子!
 そんな彼女を見て、俺の胸の奥から感動が沸き上がってくる。
 いい!
 恥じらってる夜宵、凄く可愛い!
 パジャマ姿すら見られたくないと言う純粋さ、とても尊い!
 恐らく彼女がタオルケットの下に着ているのは、以前この家に来たときに偶然見てしまった半袖短パンの夏物パジャマなのだろう。
 だが一度見られたからと言って、見られ慣れるわけではない。
 いや、慣れたりなんかしないでくれ。
 夜宵はこれからも恥じらいを忘れない無垢な女の子でいて欲しい。
 俺はそんな彼女を傍で見守り、愛でることができれば満足だ。
 思えば夜宵の体に性的な興味を抱いていた俺は間違っていた。
 夜宵の清廉潔白な心身は絶対に汚してはいけない崇高な存在なのだ。
 俺はそんな風に悟ってしまった。

 その後、俺は夜宵と交代して風呂に入った。
 ちなみに残り湯を飲んだりはしてないです。絶対に飲んでない! 妹に誓って!
 いや、でも正直好きな女の子が入った後のお湯って考えるだけでドキドキしちゃうのは許していただきたい。
 そして風呂から出たらまたゲームである。
 今度はピンクの悪魔が主役のアクションゲームを二人でプレイした。
 この丸いフォルムのピンクの悪魔は、敵キャラを吸い込んでその能力をコピーしたり、食べた敵を下僕として召喚することができるのだ。
 夜宵はピンクの悪魔を操作し、俺は下僕を操り協力プレイで冒険を進めていった。

「っと、やべ、体力ギリギリだ。夜宵、そっちの回復アイテム、口移しでくれ」
「く! くくくくく口移し!?」

 夜宵が素っ頓狂な声を上げる。
 このゲームはピンクの悪魔が下僕と口移しで回復アイテムを共有することができる。
 だからいくら口移しという言葉にセンシティブな響きがあっても、あくまでゲーム上の話なのはお互いわかってる筈なのだが。
 頬を紅潮させ、メチャクチャ動揺しながら夜宵は言葉を返して来た。

「そ、そうだね。ヒ、ヒナに口移ししないとね」

 ピンクの悪魔を操作し、下僕に回復をアイテムを分け与えてくれる夜宵。
 いやいや、なんなんださっきからこの空気は。
 もはやどんな話題でもギクシャクしてしまう気がする。
 夜宵は視線を逸らしながらぶつぶつと呟く。

「どうしてこうなっちゃうんだろなあ。ヒナと変な雰囲気になっちゃダメなのに」

 誰にも聞かせる気のない独り言のつもりだったのだろうが、ばっちり聞こえてしまった。
 ホント、どうしてだろうね。
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