ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋

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第四章 学校に行きたい

#50 キスの味

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 夜宵の家に上がり、傷口を洗った後、夜宵の部屋で彼女の手当てを受ける。
 とは言っても絆創膏を貼ってもらうだけだが。

「ヒナ、本当にありがとうね」
「ああ、まあな。俺達の大事な思い出を壊されたくないって、無我夢中だったよ」

 俺は部屋に置かれた魔法人形マドールモデルStandスタンドを見ながらそう答える。
 しかし夜宵は首を横に振った。

「それだけじゃない。私が魔法人形マドールをやってきたこと、無駄じゃないって言ってくれて嬉しかった」

 ああ、そのことか。

「無駄なわけないだろ。魔法人形マドールのお陰で俺達は出会えたんだ。俺達の過ごしてきた時間を無駄なんて言われてたまるかよ」

 そこで俺は水零の言葉を思い出した。

「まっ、感謝の気持ちがあるなら行動で示して欲しいな」

 そう告げると夜宵は不思議そうに首を傾げる。

「お礼が欲しいってこと?」
「ああ、ご褒美のチューならいつでも歓迎だぞ」

 自分で言ってて気持ち悪すぎた。
 やっぱこの台詞、美少女の水零だからこそ許される台詞だわ。
 しかし予想に反して、夜宵は顔を真っ赤にして慌てふためいた。

「えっ、えっ、それは、その、恥ずかしいよ」

 うおー! すげえウブな反応! 恥じらってる夜宵可愛いいいいい!
 しばらく逡巡した後、彼女は意を決したように言葉を吐き出す。

「ヒナ、恥ずかしいから目を瞑って?」

 うっそマジで? 本当にキスしてくれるの?
 夜宵の照れてる顔を見れただけで十分な収穫だと思ってたのに、とんでもボーナス来ちゃう?
 俺は夜宵のことが大好きだ。こんなチャンス見逃せる筈もない。
 言われた通りに目を瞑って、ドキドキしながらその時を待つ。
 夜宵の深呼吸が聞こえる。彼女も緊張しているのだろう。
 そしてしばしの沈黙の後。


「いくね」


 と夜宵の声が聞こえ。


 ちゅっ、とした感触があった。


 おでこに。


 俺は目を開く。

「おでこかー。おでこチューかー」

 それはそれで、にやけそうになるほど嬉しいんだけど、俺は自分のにやけ顔を誤魔化す意味も込めて、夜宵をさらにからかってみる。

「夜宵ちゃん、狙いが上にずれてる。もうちょっと下だよ」

 我ながらキモいと思いながら自分の唇を指で叩いて示す。
 耳まで真っ赤になった夜宵がそれに反論した。

「そこは駄目! そこにしたらリア充になっちゃうから駄目!」

 ちいっ、駄目か。
 それにしても、頼めばおでこチューまでしてくれるなんて、夜宵のチョロさが心配になるな。
 明日からの学校生活大丈夫かな。
 今みたいに知らん男子からチューしてとか、からかわれて、本気にしたりしないかな?
 心配だな。やっぱり夜宵は俺が守らないと。

「本当に夜宵ちゃんはチョロ過ぎて心配になるなー」
「相手がヒナだからだよ! 他の男子にやるわけないじゃん!」

 と、恥じらいながらも精一杯の弁解をするのだった。
 さあ、いよいよ明日は夜宵の登校初日だ!
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