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第三章 オフ会に行きたい

#30 ヒナの賭け1

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「ねえ、お兄様。私はお兄様のことが大好きなので、お兄様のことはなんでも知っています」

 光流は唐突に、俺にそう語りかけてきた。
 話してる間にも、彼女はピストル型コントローラーを操作し、ラビット・バレットの放つ光線がプロミネンス・ドラコを撃ち抜いていく。

「でも、悲しいことにお兄様は私に興味が無いんですね。たまごやきの絵が私の絵だと気づいてくれなかったですし。私の魔法人形マドールの腕も甘く見ていた」

 目元にハンカチを当てて泣き真似をしてる彼女に俺は言葉を返す。

「確かに最近はお前達に構ってやれなかったな。それについては謝るよ」

 だけど、だからといって俺が光流のことを何も理解していないわけではない。

「俺はお前について一つだけ知ってることがある。お前は賢い子だ」

 それを聞くと彼女は泣き真似をやめて不思議そうな顔を見せた。
 実は俺の中には一つの仮説がある。
 それが正しいかどうか、この会話の中で確証を得たい。

「さっきお前がガンショット・コントローラーの説明をしてくれた時、違和感があったんだ。
 知ってるか? 勝負の最中に自分の手の内を明かす人間には二つのタイプがある」
「二つ、ですか?」

 小首を傾げる光流に、俺は人差し指を一本立てて説明する。

「一つ目、手の内を晒しても負けるわけがないと思ってる自信家タイプ」

 琥珀であればそういうこともあるだろう。
 しかし光流の場合、これには当てはまらない。
 俺は中指も立て、ピースを作る。

「そして二つ目、ペラペラと自分の手の内を喋ってるように見えて、その中に嘘を混ぜてるタイプ。巧妙に自分の弱点を隠しているタイプだ」

 そう言い切ると同時にラビット・バレットの銃口から光が放たれ、プロミネンス・ドラコの右腕を貫いた。

右腕ライトパーツ破壊ですよ」

 嬉々として彼女はそう言い放つ。
 今ので十五発目、か。
 プロミネンス・ドラコの右腕は黒く変色し、力なく垂れ下がる。
 これで右腕特性ライトスキル火炎球ファイアボールはもう使えない。

「さて、次はどのパーツを狙いましょうか? 頭ですかね?」
「プロミネンス・ドラコの脚部特性レッグスキル炎の柱ファイアポールにより、頭部ヘッドパーツへのダメージは他のパーツが受ける」

 おや、とおどけながら光流は言葉を返す。

「そう言えばそんな効果でしたね。では足を狙いましょう」
「なぜ最初から脚部レッグパーツを狙わなかった?」

 俺がそう問うと、光流の笑顔が固まる。
 確かにプロミネンス・ドラコのメイン攻撃手段となる右腕が破壊されたのはこちらにとっても痛手だ。
 だがプロミネンス・ドラコを倒すなら、脚部を破壊し炎の柱ファイアポールを無力化した後で頭部を攻撃するのが最短の筈だ。
 そして早めに俺を片付けて琥珀の援護に向かえばいい。

 光流は天罰の光パニッシュ・レーザーを五秒間隔で撃ち続け、プロミネンス・ドラコの動きを永遠に封じると言った。
 しかし俺の仮説が正しければ、それはハッタリだ。
 こちらの動きを永遠に止めることはできないとわかっていたからこそ、脚部・頭部の連続破壊よりも、攻撃手段である右腕の破壊を優先したのだろう。
 光流は相変わらず惚けた様子で言葉を紡ぐ。

「私が嘘をついてると仰るんですか? 心外ですね、お兄様。天罰の光パニッシュ・レーザー特性スキル説明は本当のことしか言ってませんよ」

 確かにマドール達の特性スキルはステータス表示で確認できる。だからそこで嘘を吐いてもすぐにバレるだけだろう。
 光流が嘘を言ってるのはそっちではなく。

「コントローラーだよ。お前の使うガンショット・コントローラー。
 そもそも連射コントローラーっていうのは本来指定したボタンを高速連打するためのものだ。五秒間隔でボタンを押すなんて、そんな連射コントローラーがあるのか疑問だった」
「実際にあるから私がこうして使ってるのでしょう?」

 手に持ったコントローラーを示しながら彼女はそう言う。
 そんな光流に俺は核心に迫る言葉を突きつけた。

「世の中は広いからな、探せばそんなコントローラーもあるかもしれない。けどお前が使ってるそれは違うだろ」

 その時の光流の僅かな表情の変化は、きっと俺にしかわからなかっただろう。

「お前のガンショット・コントローラーは連射コンじゃない。マクロコンだな」
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