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第三章 オフ会に行きたい
#25 スピードスター虎衛門1
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夜宵の操るジャック・ザ・ヴァンパイアは森林フィールドに足を踏み入れる。
そろそろ敵とかち合う頃だ。夜宵は暗い森の中を移動しながら警戒を強めた。
その時、ジャックの頭上に不穏な気配を感じ、即座に夜宵はAコンを操作して、その場から飛び退く。
次の瞬間、木の枝の上にいた忍び装束のマドールが、一瞬前までジャックがいた場所に飛び降り、鋭い爪を地面に突き刺した。
大河忍者、琥珀の操るそのマドールの右手には鋭く伸びた三本爪の手甲鉤が装備されている。
夜宵の反応がわずかでも遅れていたら、今頃ジャックはその爪で串刺しにされていただろう。
「気付かれたっすか。流石の反応速度っすね。ヴァンピィ!」
夜宵は声の方向に視線を向ける。
そこには不敵に笑いながらコントローラーを操作する琥珀の姿があった。
そして休む間もなく大河忍者は爪を振り回し、ジャックに襲いかかってくる。
ジャックが爪を躱しながら後方へ飛べば、森の木が一本、代わりに斬り倒された。
葬送爪牙、大河忍者の右腕特性はこの爪による斬撃らしい。
恐らく近接戦闘を得意とする機体なのだろう。
そう把握すると、夜宵はアナログスティックを回転させながら素早くボタンを叩く。
今まで回避一辺倒だったジャックが、力強く地面を蹴ると疾風の如き速さで忍者へと肉薄し、魔剣を振るう。
その剣先が描く軌跡は前後左右の空間を何重にも切り裂いていく。
次の瞬間、森に立っていた大木が五本まとめて斬り飛ばされた。
お陰で隙間なく木が並んだ森の中に、一ヵ所だけポッカリとした空間ができてしまう。
だが別に夜宵の目的は森林伐採ではない。
「随分スッキリしたっすね」
琥珀の軽口がその場に響く。
彼女の操る大河忍者は、軽やかな身のこなしで無事な木の枝の上にいた。
標的であった忍者は掠り傷ひとつない。
それを見て夜宵の口許が微かに緩んだ。
これは楽しい勝負になりそうだ、と。
接近戦は夜宵も得意とする分野だ。
近接戦闘においてジャック使いのヴァンピィの右に出る者はいない、多くの魔法人形プレイヤーにそう言わしめたほどに。
シングルスランカーの夜宵とダブルスランカーの琥珀は普段のオンライン対戦でもマッチングすることはない。
久しく会ったことのなかった近接戦闘のエキスパートとの邂逅に、夜宵の闘争心は昂るのだった。
「次にスッキリしたするのは、その忍者の首だよ」
言葉とともにジャックが跳躍し、木の上にいた大河忍者に魔剣を振り下ろす。
大河忍者がその場から飛び退くと、枝は綺麗な断面を残して切り落とされた。
地面へ降り立った忍者にジャック・ザ・ヴァンパイアは再び斬りかかる。
忍者は三本爪で魔剣をいなしつつ、爪を伸ばしジャックの首元を狙ってきた。
ジャックは上半身を反らしてその爪を躱すと、長い足で虎忍者の顎を蹴りあげる。
予想外の反撃を受け、忍者は後方宙返りしながら後ろへ飛び、吸血鬼と距離をとった。
そのまま二体のマドールは睨み合う。
琥珀は夜宵の顔を見ながら、ニヤリと笑った。
「やるっすね」
それに対し、夜宵も笑みを返す。
「近接戦闘なら私は負けない」
「それは楽しみっすね。相手の得意分野で叩きのめすのが!」
琥珀の言葉ととも大河忍者が地を蹴り、ジャックに襲いかかった。
忍者が三本爪でジャックを貫こうとするも、剣で受け止め攻撃を防ぐ。
(さっきより速くなった?)
大河忍者の動きがより俊敏さを増してるのを夜宵は感じとった。
何か秘密があるのか?
対戦への集中を維持したまま、夜宵はステータス表示を確認し、大河忍者の特性説明を読む。
「脚部特性・怪踏乱打」
Lボタンを連打し続けてる間、移動・攻撃・回避速度が上がり続ける。そう書かれていた。
なるほど、それなら大河忍者の動きがどんどん速くなってるのも納得がいく。
そう思いながら琥珀の手元を見るも、夜宵の中に新たな疑問が生まれた。
琥珀が使ってるのは卍手裏剣を象った特殊コントローラーだ。Lボタンの位置も通常のAコンとは異なるのだろう。
それがどのボタンなのか夜宵は知らないが、どうも琥珀は通常通り大河忍者を操作しているだけで、どこかのボタンを連打してるようには見えない。
そして夜宵はひとつの可能性に思い至った。
「まさか、そのコントローラーは!」
「おや、気付いたっすか」
クックック、と不適に笑いながら琥珀は言葉を吐き出す。
「そう、この卍手裏剣コントローラーは連射機能を持ってるんすよ!」
連射コントローラー。指定したボタンを自動で連打し続ける機能を持ったコントローラーだ。
本来であれば、特定のボタンを連打しながら通常のマドール操作を同時に行うのは非常に難易度が高い。
普通はどちらかがおざなりになるだろう。
だが連射コントローラーによりボタン連打を自動化したことで、琥珀は大河忍者の操作に集中しながら脚部特性による加速の恩恵も受けられる。
大河忍者の能力を最大限発揮する為に選んだコントローラー、これが琥珀のプレイスタイルというわけだ。
そろそろ敵とかち合う頃だ。夜宵は暗い森の中を移動しながら警戒を強めた。
その時、ジャックの頭上に不穏な気配を感じ、即座に夜宵はAコンを操作して、その場から飛び退く。
次の瞬間、木の枝の上にいた忍び装束のマドールが、一瞬前までジャックがいた場所に飛び降り、鋭い爪を地面に突き刺した。
大河忍者、琥珀の操るそのマドールの右手には鋭く伸びた三本爪の手甲鉤が装備されている。
夜宵の反応がわずかでも遅れていたら、今頃ジャックはその爪で串刺しにされていただろう。
「気付かれたっすか。流石の反応速度っすね。ヴァンピィ!」
夜宵は声の方向に視線を向ける。
そこには不敵に笑いながらコントローラーを操作する琥珀の姿があった。
そして休む間もなく大河忍者は爪を振り回し、ジャックに襲いかかってくる。
ジャックが爪を躱しながら後方へ飛べば、森の木が一本、代わりに斬り倒された。
葬送爪牙、大河忍者の右腕特性はこの爪による斬撃らしい。
恐らく近接戦闘を得意とする機体なのだろう。
そう把握すると、夜宵はアナログスティックを回転させながら素早くボタンを叩く。
今まで回避一辺倒だったジャックが、力強く地面を蹴ると疾風の如き速さで忍者へと肉薄し、魔剣を振るう。
その剣先が描く軌跡は前後左右の空間を何重にも切り裂いていく。
次の瞬間、森に立っていた大木が五本まとめて斬り飛ばされた。
お陰で隙間なく木が並んだ森の中に、一ヵ所だけポッカリとした空間ができてしまう。
だが別に夜宵の目的は森林伐採ではない。
「随分スッキリしたっすね」
琥珀の軽口がその場に響く。
彼女の操る大河忍者は、軽やかな身のこなしで無事な木の枝の上にいた。
標的であった忍者は掠り傷ひとつない。
それを見て夜宵の口許が微かに緩んだ。
これは楽しい勝負になりそうだ、と。
接近戦は夜宵も得意とする分野だ。
近接戦闘においてジャック使いのヴァンピィの右に出る者はいない、多くの魔法人形プレイヤーにそう言わしめたほどに。
シングルスランカーの夜宵とダブルスランカーの琥珀は普段のオンライン対戦でもマッチングすることはない。
久しく会ったことのなかった近接戦闘のエキスパートとの邂逅に、夜宵の闘争心は昂るのだった。
「次にスッキリしたするのは、その忍者の首だよ」
言葉とともにジャックが跳躍し、木の上にいた大河忍者に魔剣を振り下ろす。
大河忍者がその場から飛び退くと、枝は綺麗な断面を残して切り落とされた。
地面へ降り立った忍者にジャック・ザ・ヴァンパイアは再び斬りかかる。
忍者は三本爪で魔剣をいなしつつ、爪を伸ばしジャックの首元を狙ってきた。
ジャックは上半身を反らしてその爪を躱すと、長い足で虎忍者の顎を蹴りあげる。
予想外の反撃を受け、忍者は後方宙返りしながら後ろへ飛び、吸血鬼と距離をとった。
そのまま二体のマドールは睨み合う。
琥珀は夜宵の顔を見ながら、ニヤリと笑った。
「やるっすね」
それに対し、夜宵も笑みを返す。
「近接戦闘なら私は負けない」
「それは楽しみっすね。相手の得意分野で叩きのめすのが!」
琥珀の言葉ととも大河忍者が地を蹴り、ジャックに襲いかかった。
忍者が三本爪でジャックを貫こうとするも、剣で受け止め攻撃を防ぐ。
(さっきより速くなった?)
大河忍者の動きがより俊敏さを増してるのを夜宵は感じとった。
何か秘密があるのか?
対戦への集中を維持したまま、夜宵はステータス表示を確認し、大河忍者の特性説明を読む。
「脚部特性・怪踏乱打」
Lボタンを連打し続けてる間、移動・攻撃・回避速度が上がり続ける。そう書かれていた。
なるほど、それなら大河忍者の動きがどんどん速くなってるのも納得がいく。
そう思いながら琥珀の手元を見るも、夜宵の中に新たな疑問が生まれた。
琥珀が使ってるのは卍手裏剣を象った特殊コントローラーだ。Lボタンの位置も通常のAコンとは異なるのだろう。
それがどのボタンなのか夜宵は知らないが、どうも琥珀は通常通り大河忍者を操作しているだけで、どこかのボタンを連打してるようには見えない。
そして夜宵はひとつの可能性に思い至った。
「まさか、そのコントローラーは!」
「おや、気付いたっすか」
クックック、と不適に笑いながら琥珀は言葉を吐き出す。
「そう、この卍手裏剣コントローラーは連射機能を持ってるんすよ!」
連射コントローラー。指定したボタンを自動で連打し続ける機能を持ったコントローラーだ。
本来であれば、特定のボタンを連打しながら通常のマドール操作を同時に行うのは非常に難易度が高い。
普通はどちらかがおざなりになるだろう。
だが連射コントローラーによりボタン連打を自動化したことで、琥珀は大河忍者の操作に集中しながら脚部特性による加速の恩恵も受けられる。
大河忍者の能力を最大限発揮する為に選んだコントローラー、これが琥珀のプレイスタイルというわけだ。
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