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第三章 オフ会に行きたい
#18 試合の結末
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さて、夜宵の状況はどうなってる?
画面上部に表示された他のプレイヤーの戦況を確認する。
どうやらあちらもモコモコさんと交戦中のようだ。
氷の鎧を纏ったペンギン騎士と黒マントに身を包んだ吸血鬼の剣士が鍔迫り合いを繰り広げてる。
むこうもバトルフィールドは氷河か。場所はここから近いな。
早く夜宵と合流しよう。
俺はプロミネンス・ドラコを操作し、移動しながら夜宵の戦闘を見守る。
ペンギン騎士が氷の剣を振るい、吸血鬼の腕に切り傷を与える。
夜宵は頭部パーツを守るために左腕パーツでガードしているようだった。
しかしその動きはどこかぎこちなく見える。
ジャック・ザ・ヴァンパイアは夜宵がシングルスでも長年愛用している、彼女にとって使い慣れた機体だ。
普段であれば近接戦闘では敵なしと言わんばかりの反応速度と剣技で敵を圧倒するのに。
さっきの攻撃だって、いつもの夜宵なら防御でなく回避を選択する筈だ。
ここ数日、ダブルスの練習でこなしてきたネット対戦の時と比べても、今日の夜宵の動きは明らかに固いように感じた。
普段の実力の十分の一も発揮できていないだろう。
もしかして彼女も緊張しているのか?
ゲームを操作する夜宵の顔を窺う。その表情はやはり強張っているように見えた。
それなりに場数を踏んでる俺だって緊張するのだ。オフ会初参加で自己紹介の時からガチガチだった夜宵が緊張でまともに指が動かないのは容易に想像できる。
まずいな、早く彼女の援護に回らないと。
プロミネンス・ドラコが滑空し、夜宵の元に急ぐ。しかしその間にも戦局は刻一刻と変化していった。
ペンギン騎士、アイシクル・ナイトは氷の剣で吸血鬼を斬りつける。
ジャック・ザ・ヴァンパイアはそれを悪魔的な意匠の魔剣で受け止めながらダメージを軽減しているものの、防戦一方な印象は拭えない。
しかしペンギンが剣を振り下ろす瞬間、吸血鬼は下から魔剣を振り上げ、氷の剣にぶつける。
すると氷の剣にヒビが入り、それが真っ二つに折れた。
武器を失ったペンギンは後方へ飛び、吸血鬼と距離をとる。
形勢逆転し、夜宵が優位になったか? そう思ったのも束の間のことだ。
ペンギンを取り巻く氷の地面が隆起し、無数の氷の剣が生み出される。
これがアイシクル・ナイトの右腕特性、エターナルアイス。
フィールドが氷河の時、剣を破壊されても復活する。
氷河から生み出された剣の一つをペンギンが引き抜き、吸血鬼へ飛び掛かる。
その鋭利な一突きがジャック・ザ・ヴァンパイアの額を寸分の狂いなく貫こうとする。
しかしその二体の間に炎の竜が体を割り込ませ、代わりにその剣を受け止めた。
「ヒナ!」
「悪い、遅くなった」
驚く夜宵に手短に謝る。
が、状況は悪い。
ジャック・ザ・ヴァンパイアが致命傷を回避した代償にプロミネンス・ドラコの右腕パーツが氷の剣に貫かれる。
そのダメージに耐えきれず右腕パーツは破壊、赤竜の右腕は黒く変色し、操作不能になった。
これではもう火炎球が撃てない。
ここにきて自分の判断ミスを悟る。
何故ジャック・ザ・ヴァンパイアを助けるためにプロミネンス・ドラコを盾にした?
むしろジャックを囮に遠距離からプロミネンス・ドラコの火球攻撃を浴びせた方が有効だったのではないか?
後悔が頭をよぎるが、今更それを考えても仕方がない。
今から作戦を立て直し、さっきの選択を正解に変える!
プロミネンス・ドラコは本来、近接戦闘は得意ではない。
この近距離でペンギン騎士とやりあっても勝ち目はないだろう。
そう、一対一なら勝ち目はない、が。
俺はアナログスティックを倒し、炎の竜をペンギン騎士に突撃させる。
捨て身の体当たりを喰らったアイシクル・ナイトの体勢が崩れた。
ペンギンの体を押し倒し、その上に赤竜が覆いかぶさる。
「今だ、ヴァンピィ! トドメを刺せ」
プロミネンス・ドラコがアイシクル・ナイトを押さえ込んでる今なら奴は身動きできない。ここでジャックが仕留めてくれれば!
「あっ、う、うん」
一瞬遅れて夜宵もこちらの意図に気付いたのだろう。吸血鬼が魔剣を構える。
だが、その一瞬の遅れが命取りだった。
次の瞬間にはプロミネンス・ドラコの首は氷の剣によって一閃され、バックリと傷口が開いていた。
頭部パーツの破壊、プロミネンス・ドラコは機能停止し、もはや俺の操作は受け付けない。
もう少し動きを止めておきたかったのに、せめてこの隙を有効に使ってくれ夜宵。
だがそこでアイシクル・ナイトは機能停止したプロミネンス・ドラコの体を放り投げ、ジャック・ザ・ヴァンパイアの方向へ飛ばす。
正面から迫りくる赤竜の巨体をジャックは横に飛んで躱した。
だがそれは同時にアイシクル・ナイトから目を離すことを意味していた。
「えっ、う、嘘」
ゲーム画面を見つめながら青褪める夜宵。
アイシクル・ナイトから夜宵の意識が逸れた一瞬の隙を相手は見逃さなかった。
気付いたときにはペンギン騎士はジャックの目前に迫っていた。
夜宵に反応する隙を与えないまま、銀髪の吸血鬼の胸元に氷の剣が突き立てられる。
胸部は頭部パーツの一部であり、そこに大ダメージが発生する。
ジャック・ザ・ヴァンパイアは目を見開き、頭部パーツの破壊及びジャックの機能停止が決定した。
画面に『You Lose』の文字が表示される。
そんな、負けた。
モコモコさんとグルグルさんの歓喜の声が、俺の耳を虚しく通り過ぎて行った。
画面上部に表示された他のプレイヤーの戦況を確認する。
どうやらあちらもモコモコさんと交戦中のようだ。
氷の鎧を纏ったペンギン騎士と黒マントに身を包んだ吸血鬼の剣士が鍔迫り合いを繰り広げてる。
むこうもバトルフィールドは氷河か。場所はここから近いな。
早く夜宵と合流しよう。
俺はプロミネンス・ドラコを操作し、移動しながら夜宵の戦闘を見守る。
ペンギン騎士が氷の剣を振るい、吸血鬼の腕に切り傷を与える。
夜宵は頭部パーツを守るために左腕パーツでガードしているようだった。
しかしその動きはどこかぎこちなく見える。
ジャック・ザ・ヴァンパイアは夜宵がシングルスでも長年愛用している、彼女にとって使い慣れた機体だ。
普段であれば近接戦闘では敵なしと言わんばかりの反応速度と剣技で敵を圧倒するのに。
さっきの攻撃だって、いつもの夜宵なら防御でなく回避を選択する筈だ。
ここ数日、ダブルスの練習でこなしてきたネット対戦の時と比べても、今日の夜宵の動きは明らかに固いように感じた。
普段の実力の十分の一も発揮できていないだろう。
もしかして彼女も緊張しているのか?
ゲームを操作する夜宵の顔を窺う。その表情はやはり強張っているように見えた。
それなりに場数を踏んでる俺だって緊張するのだ。オフ会初参加で自己紹介の時からガチガチだった夜宵が緊張でまともに指が動かないのは容易に想像できる。
まずいな、早く彼女の援護に回らないと。
プロミネンス・ドラコが滑空し、夜宵の元に急ぐ。しかしその間にも戦局は刻一刻と変化していった。
ペンギン騎士、アイシクル・ナイトは氷の剣で吸血鬼を斬りつける。
ジャック・ザ・ヴァンパイアはそれを悪魔的な意匠の魔剣で受け止めながらダメージを軽減しているものの、防戦一方な印象は拭えない。
しかしペンギンが剣を振り下ろす瞬間、吸血鬼は下から魔剣を振り上げ、氷の剣にぶつける。
すると氷の剣にヒビが入り、それが真っ二つに折れた。
武器を失ったペンギンは後方へ飛び、吸血鬼と距離をとる。
形勢逆転し、夜宵が優位になったか? そう思ったのも束の間のことだ。
ペンギンを取り巻く氷の地面が隆起し、無数の氷の剣が生み出される。
これがアイシクル・ナイトの右腕特性、エターナルアイス。
フィールドが氷河の時、剣を破壊されても復活する。
氷河から生み出された剣の一つをペンギンが引き抜き、吸血鬼へ飛び掛かる。
その鋭利な一突きがジャック・ザ・ヴァンパイアの額を寸分の狂いなく貫こうとする。
しかしその二体の間に炎の竜が体を割り込ませ、代わりにその剣を受け止めた。
「ヒナ!」
「悪い、遅くなった」
驚く夜宵に手短に謝る。
が、状況は悪い。
ジャック・ザ・ヴァンパイアが致命傷を回避した代償にプロミネンス・ドラコの右腕パーツが氷の剣に貫かれる。
そのダメージに耐えきれず右腕パーツは破壊、赤竜の右腕は黒く変色し、操作不能になった。
これではもう火炎球が撃てない。
ここにきて自分の判断ミスを悟る。
何故ジャック・ザ・ヴァンパイアを助けるためにプロミネンス・ドラコを盾にした?
むしろジャックを囮に遠距離からプロミネンス・ドラコの火球攻撃を浴びせた方が有効だったのではないか?
後悔が頭をよぎるが、今更それを考えても仕方がない。
今から作戦を立て直し、さっきの選択を正解に変える!
プロミネンス・ドラコは本来、近接戦闘は得意ではない。
この近距離でペンギン騎士とやりあっても勝ち目はないだろう。
そう、一対一なら勝ち目はない、が。
俺はアナログスティックを倒し、炎の竜をペンギン騎士に突撃させる。
捨て身の体当たりを喰らったアイシクル・ナイトの体勢が崩れた。
ペンギンの体を押し倒し、その上に赤竜が覆いかぶさる。
「今だ、ヴァンピィ! トドメを刺せ」
プロミネンス・ドラコがアイシクル・ナイトを押さえ込んでる今なら奴は身動きできない。ここでジャックが仕留めてくれれば!
「あっ、う、うん」
一瞬遅れて夜宵もこちらの意図に気付いたのだろう。吸血鬼が魔剣を構える。
だが、その一瞬の遅れが命取りだった。
次の瞬間にはプロミネンス・ドラコの首は氷の剣によって一閃され、バックリと傷口が開いていた。
頭部パーツの破壊、プロミネンス・ドラコは機能停止し、もはや俺の操作は受け付けない。
もう少し動きを止めておきたかったのに、せめてこの隙を有効に使ってくれ夜宵。
だがそこでアイシクル・ナイトは機能停止したプロミネンス・ドラコの体を放り投げ、ジャック・ザ・ヴァンパイアの方向へ飛ばす。
正面から迫りくる赤竜の巨体をジャックは横に飛んで躱した。
だがそれは同時にアイシクル・ナイトから目を離すことを意味していた。
「えっ、う、嘘」
ゲーム画面を見つめながら青褪める夜宵。
アイシクル・ナイトから夜宵の意識が逸れた一瞬の隙を相手は見逃さなかった。
気付いたときにはペンギン騎士はジャックの目前に迫っていた。
夜宵に反応する隙を与えないまま、銀髪の吸血鬼の胸元に氷の剣が突き立てられる。
胸部は頭部パーツの一部であり、そこに大ダメージが発生する。
ジャック・ザ・ヴァンパイアは目を見開き、頭部パーツの破壊及びジャックの機能停止が決定した。
画面に『You Lose』の文字が表示される。
そんな、負けた。
モコモコさんとグルグルさんの歓喜の声が、俺の耳を虚しく通り過ぎて行った。
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