ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋

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第三章 オフ会に行きたい

#17 一回戦開始!

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 試合が開始され、ゲーム画面にバトルフィールドが映し出される。
 広大なフィールドは荒野・砂漠・森・氷河など様々な地形が複合している。
 画面には俺の操作するマドールが表示された。
 赤い鱗で体を覆い、背中に燃え盛る炎の翼を生やした西洋竜のマドール、プロミネンス・ドラコ。
 初期配置は荒野か。
 そして他のプレイヤーのマドールの状況も同時に表示される。
 夜宵の操る黒マントを羽織った銀髪イケメンの吸血鬼、ジャック・ザ・ヴァンパイア。
 グルグルさんのマドールはガントレットで武装した白熊、ナックル・ベアーマン。
 モコモコさんの使用機体は、氷の鎧を身に纏ったペンギン騎士、アイシクル・ナイト。
 ゲーム開始時に全てのマドールは一定距離はなれた場所に配置される。
 敵との交戦や味方との合流には移動が必要となるのだ。
 勝利条件は至ってシンプル、相手のマドールを全滅させた方の勝ちだ。

 俺はプロミネンス・ドラコを操作し、移動を開始する。
 炎に燃える翼をはためかせ中空へ飛翔、そのまま滑空を続けるとバトルフィールドが切り変わり、氷河地帯へ突入する。
 凍てつく氷の大地に白熊のマドールが立っていた。
 見つけた、グルグルさんのマドールだ。
 俺の狙いは夜宵との合流ではなく敵との戦闘。
 早速攻撃を開始する。
 コントローラーを操作し、プロミネンス・ドラコの右腕特性ライトスキルを発動する。

 マドールは頭部ヘッド右腕ライト左腕レフト脚部レッグの四つのパーツで構成され、それぞれが特性スキルを持っている。
 またこの四つのパーツ以外にもオプションパーツをつけることも可能だが、オプションを含めたそれぞれのパーツには重量が設定されており、どれだけのオプションパーツを装備できるかは脚部レッグパーツの性能で決まる。

 話を戻そう。
 プロミネンス・ドラコの右腕特性ライトスキル火炎球ファイアボール
 空を舞う赤き竜の右手に炎の球が生み出される。
 竜が腕を振り下ろすと、炎の塊はナックル・ベアーマンへ襲いかかる。
 グルグルさんもこちらの接近には気付いていたのだろう、機敏な動きで攻撃を躱し、火の玉は氷の大地へ衝突した。

「早速俺を狙ってきたんすねヒナさん。ならこっちもお返しますよ」

 グルグルさんが楽しそうに笑い、コントローラーを操作すると、白熊は助走をつけて地面を蹴飛ばし、大きく跳躍する。
 そして空を舞う赤竜に上からガントレットを叩きつけた。

「やばっ」

 俺は咄嗟の操作で回避しようとするも、僅かに攻撃が掠り、プロミネンス・ドラコの右腕ライトパーツがダメージを受ける。
 予想以上に俊敏だな。もっと距離をとるべきか。
 グルグルさんのナックル・ベアーマンは氷タイプのマドール。氷河のフィールドでは回避と移動速度が倍になる。
 だが攻撃方法はガントレットで殴りかかる近接戦闘をメインとするものだ。
 逆に俺のプロミネンス・ドラコは遠距離からの炎攻撃を得意とする。
 相手との距離を広げれば有利に戦える。

 それにしても、想定外の一撃を貰ってしまった。
 本来であれば相手の攻撃が届かない位置から仕掛けるつもりだったのに、射程距離を見誤ったか。
 どうにも冷静になりきれていない。我ながらどこか浮き足立ってるように感じる。
 緊張してるのか俺は。
 オフ会参加経験は何度かあるが、やはり大会初戦はどうしても動きが固くなってしまう。
 もっと慎重に立ち回らねば。

 プロミネンス・ドラコは炎の翼を羽ばたかせ、白熊から距離をとる。
 そして十分に離れたところで右手から火炎球ファイアボールを連射し、ナックル・ベアーマンを攻撃した。
 しかし白熊は持ち前のフットワークを活かし、全て回避してしまう。
 火の玉は空しく白い地面に叩きつけられるだけだった。

「どうしたんすかヒナさん! そんな離れてちゃ当たらないっすよ!」

 確かにこの距離から火の玉を投げつけても、簡単に見切られてしまうだろう。
 だが相手からの攻撃も届かない。
 だからグルグルさんはこちらを挑発しているのだ。もっと近づいてこい、と。
 しかし、俺は一言呟いた。

「いや、俺の勝ちですよ」

 はっ、とゲーム画面を見るグルグルさんの表情が強ばる。
 白熊の周りを囲むように氷の大地に炎が踊っていた。
 氷河のフィールドは必ずしも相手だけに有利に働くわけじゃない。
 地面に打ちつけられた火炎球ファイアボールは氷でできた足場を溶かしていく。
 次の瞬間、白熊の足元に亀裂が走り、その巨体がバランスを崩した。

「その手には乗らないっす!」

 咄嗟の事態にもグルグルさんは瞬時に反応し、白熊はその場で地を蹴り、中空へ飛び上がって炎の輪から離脱する。
 だがここまで俺の読み通り。

「そう、その自慢のジャンプ力で逃げると思ってました」

 しかしその滞空時間の長さが仇となる。
 空中ではこの攻撃を躱すことはできない。

「トドメだ! プロミネンス・ドラコ!」

 炎の竜が右手に再度火炎球ファイアボールを生み出し、火の玉を投擲する。
 それは完全に無防備となった白熊へと襲い掛かる。
 火球はナックル・ベアーマンの頭部ヘッドパーツに命中し、火柱が上がった。
 マドールは頭部ヘッドパーツが破壊されると機能停止ダウンとなる。
 回避不能の状況で撃ち込んだ今の一発は致命傷となり、ナックル・ベアーマンの頭部は爆発し、バラバラとなった機体が地面に投げ出された。
 よし、倒した。

「くあー、やられたー」

 悔しそうに頭を抱えるグルグルさん。
 俺は内心でガッツポーズを決めた。
 ダブルスは相手の片方を倒せば、二対一の状況を作れて圧倒的に有利になる。
 これで大きく勝ちに近づいた。
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