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第二章 おでかけに行きたい

#13 デートの邪魔者?

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 太陽が夜宵とのデートを堪能してるその頃、日向家では光流と琥珀の反省会が行われていた。

「申し訳ありません琥珀ちゃん。お兄様に今日デートの予定があったなんて、私の情報網をもってしても掴めませんでした」
「いや、光流が落ち込むことはないでしょ。出掛けることを家族にすら言ってなかった先輩が悪いわけで」

 琥珀が慰めの言葉をかけるも、光流の表情は暗いままだ。

「お兄様のスマホの通話履歴、LINEでの友人とのやりとりは常にチェックしてたのに一体どこに死角があったのか。私はまだ一人前の妹には遠く及ばないということですね」
「いや、一般的な妹はそんなストーカーみたいなことしない、って何してんの?」

 光流はテーブルの上にノートPCを広げて起動していた。

「これはお兄様のパソコンです。私のチェックが漏れていたとしたら、ここしかありません」
「いや、パソコンだって普通パスワードとかかかってるっしょ」

 琥珀の言葉に、光流はニコリと微笑みを返す。

「家族ですから。お兄様のことはなんでも知ってますよ。パソコンのログインパスワード、フリーメールやツイッター、ショッピングサイトや動画サイトの各種会員情報にログイン情報」
「たとえ家族でも知ってちゃいけない情報が満載なんですが!」
「お兄様は一見色んなサイトでパスワードを変えてるように見えますが、実際には数パターンのパスワードを使い回してるだけです。
 たとえパスワードを変えていても、私ならログインすることが出来ます」
「パスワードリスト個人攻撃こえええええ! どうしよう、幼馴染みが完全にストーカーの道に堕ちてしまった」

 琥珀がドン引きしてるのを他所に光流はマウスをクリックし、Webブラウザを立ち上げる。

「なるほど、ツイッターDMで今日の約束をしていたのですね。これは見落とすのも無理はないです」

 光流の呟きを聞き、琥珀は首を傾げる。

「私はツイッターやってないからよくわからないけど、DMってなんだ?」
「外部には表示されず、やり取りしてる当人達にしか見えない会話みたいなものです。私もお兄様のアカウントを監視していましたが、DMまでは把握できていませんでした」

 光流は会話をざっと読み終えると、DMを閉じ、タイムラインへ戻る。
 そこに表示されたとある画像が琥珀の目に留まった。
 小学生くらいの少女のスクール水着姿の絵だった。
 胸はそれほど大きくないのに、体にピッタリと張りついた紺の水着はボディラインを強調し、滴り落ちる水滴も相まってとても扇情的な一枚となっている。
 たまごやき、というアカウントがその絵をツイートしており、その人が描いたものだというのがわかる。
 それを見て、琥珀は呟いた。

「これ、光流の絵?」
「あっ、わかります?」
「光流の描いた絵は昔から見てるし、画風が何となく近いなーって思ったから」

 指摘を受け、光流は感嘆の息を吐き出す。

「琥珀ちゃんの言う通り、たまごやきは私のアカウントです。で、この相互フォローのヒナっていうのがお兄様のアカウントですね」

 へー、と琥珀が得心していると、光流は不満げに口を尖らせる。

「でもお兄様はこれが私だって気付かないんですよ。よく絵の感想をくれたりもするのに」
「えー、そりゃないわー。何年家族やってんの。光流の絵なのは見ればわかるでしょ」
「お兄様は、きっと私達に興味ないんですよ」

 よよよ、と光流が泣き真似をする。
 そんな彼女を見て、琥珀はニヤリと不敵に笑った。

「これは先輩には天罰を下す必要があるね」
「何をするんですか?」
「光流が先輩のDMを見てたってことは、今このパソコンは先輩のアカウントでログインしてるってことでしょ。先輩のアカウントから変なことを呟いて周りの評判を地に落とすこともできるってわけだ」

 まあっ、と光流は口元を手で覆い。楽しそうに告げる。

「琥珀ちゃんったら、悪い子ですね。
 ちなみに今お兄様とデートしてるヴァンピィさんもフォロワーですよ。お兄様の呟きはきっとヴァンピィさんも見るでしょうね」
「へー、そりゃあ好都合だ。このツイートをデートの相手が見たら、どう思うだろうね」

 クックックと悪い笑みを浮かべながら、琥珀は光流の隣に座ってキーボードを叩く。
 駄目ですよ琥珀ちゃん、なんて口先だけ止めるフリをしながら光流も楽しそうにその様子を見守るのだった。
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