3 / 125
第一章 お家に行きたい
#3 吸血鬼はコンビニでプリンを買って帰り道で転んで泣いた3
しおりを挟む
「おはようみんな! 今日も月詠以外は全員出席だな! 先生は嬉しいぞ!」
思い出した。
月詠夜宵、幻のクラスメイト。
聞くところによると彼女は一年の終わり頃から学校に来ていない、いわゆる不登校らしい。
俺は二年から彼女と同じクラスになったものの、六月になる今日まで一度も学校に来た姿を見たことがない。顔すら知らない。
俺のように今年から彼女とクラスメイトになった人間達にとって幻の存在。
そんなわけで、ついたあだ名が幻のクラスメイトというわけだ。
あの子が月詠夜宵ならば、平日の朝でありながら学校に行く様子が無かったことも納得が行く。
やがて朝のホームルームが終わり、担任教師が退出すると教室内が賑やかになる。
今朝の失態を思い出しながら、俺はスマホを操作しツイッターを見る。
そういえば、ヴァンピィさんは結局どうしてるんだろうな。
まあいつもなら寝てる時間だと思うが。
そんな風に思いながらタイムラインを確認する。
すると丁度、その当人の呟きが表示された。
『公園で弱そうなガキに絡まれてプリン潰れちまったけど、返り討ちにして泣かせてやったぜ』
めっちゃイキってるやん、この人。
正直、このツイートを見て俺の中に一つの疑念が生まれた。
さっき公園で会った少女は自身がヴァンピィであることを否定したが、プリンが潰れたという符合が気にかかる。
やっぱり、さっきのあの子――恐らくは月詠夜宵がヴァンピィさんなんじゃないのか?
俺はその真偽を確かめるために、彼にDM(ダイレクトメッセージ)を送ってみる。
下手をすれば身元バレに繋がる話題なので、第三者から見えないDMの方がいいと思ってのことだ。
『どうも、弱そうなガキです。さっき転んだ時の痛みは大丈夫でしたか?』
そんなメッセージを送り少し待ってみると、返事はすぐ届いた。
『えっ! 待って、さっきのは、ひょっとして』
かなり驚いているようだ。
あの時、俺は自分のハンドルネームを名乗らなかった。彼女からすれば俺が誰だか分らなかったのだろう。
『違うぞヒナ。キミは何か勘違いしている。あるいは人違いというべきか』
すぐに取り繕うような返信が来たが、それには構わず俺は畳みかける。
『まだ本調子でないようなら、学校が終わってからお見舞いに行きますね』
『いやいや、来なくていい。何、勘違いしてるんだ? 俺は怪我とか一切してないからな!』
その返事を見て、俺は苦笑した。
この人、なんか可愛いな。本当に誤魔化すのが下手だ。
『本気で誤魔化したいなら、ヒナは俺の家を知らないだろ、って言うべきでしたね。お陰で僕は貴方の正体に確信が持てました』
これはもうヴァンピィさんが月詠夜宵で確定と思ってよいだろう。
『え、えっと、あのね、本当に、来なくていいから、平気だから』
とうとう、いつもの男言葉ではなく、素の喋り方になって俺の訪問を取り下げさせようとする。
俺はそんな彼女の反応に苦笑しながら、『放課後を楽しみにしていてください』と送るのだった。
思い出した。
月詠夜宵、幻のクラスメイト。
聞くところによると彼女は一年の終わり頃から学校に来ていない、いわゆる不登校らしい。
俺は二年から彼女と同じクラスになったものの、六月になる今日まで一度も学校に来た姿を見たことがない。顔すら知らない。
俺のように今年から彼女とクラスメイトになった人間達にとって幻の存在。
そんなわけで、ついたあだ名が幻のクラスメイトというわけだ。
あの子が月詠夜宵ならば、平日の朝でありながら学校に行く様子が無かったことも納得が行く。
やがて朝のホームルームが終わり、担任教師が退出すると教室内が賑やかになる。
今朝の失態を思い出しながら、俺はスマホを操作しツイッターを見る。
そういえば、ヴァンピィさんは結局どうしてるんだろうな。
まあいつもなら寝てる時間だと思うが。
そんな風に思いながらタイムラインを確認する。
すると丁度、その当人の呟きが表示された。
『公園で弱そうなガキに絡まれてプリン潰れちまったけど、返り討ちにして泣かせてやったぜ』
めっちゃイキってるやん、この人。
正直、このツイートを見て俺の中に一つの疑念が生まれた。
さっき公園で会った少女は自身がヴァンピィであることを否定したが、プリンが潰れたという符合が気にかかる。
やっぱり、さっきのあの子――恐らくは月詠夜宵がヴァンピィさんなんじゃないのか?
俺はその真偽を確かめるために、彼にDM(ダイレクトメッセージ)を送ってみる。
下手をすれば身元バレに繋がる話題なので、第三者から見えないDMの方がいいと思ってのことだ。
『どうも、弱そうなガキです。さっき転んだ時の痛みは大丈夫でしたか?』
そんなメッセージを送り少し待ってみると、返事はすぐ届いた。
『えっ! 待って、さっきのは、ひょっとして』
かなり驚いているようだ。
あの時、俺は自分のハンドルネームを名乗らなかった。彼女からすれば俺が誰だか分らなかったのだろう。
『違うぞヒナ。キミは何か勘違いしている。あるいは人違いというべきか』
すぐに取り繕うような返信が来たが、それには構わず俺は畳みかける。
『まだ本調子でないようなら、学校が終わってからお見舞いに行きますね』
『いやいや、来なくていい。何、勘違いしてるんだ? 俺は怪我とか一切してないからな!』
その返事を見て、俺は苦笑した。
この人、なんか可愛いな。本当に誤魔化すのが下手だ。
『本気で誤魔化したいなら、ヒナは俺の家を知らないだろ、って言うべきでしたね。お陰で僕は貴方の正体に確信が持てました』
これはもうヴァンピィさんが月詠夜宵で確定と思ってよいだろう。
『え、えっと、あのね、本当に、来なくていいから、平気だから』
とうとう、いつもの男言葉ではなく、素の喋り方になって俺の訪問を取り下げさせようとする。
俺はそんな彼女の反応に苦笑しながら、『放課後を楽しみにしていてください』と送るのだった。
0
お気に入りに追加
201
あなたにおすすめの小説

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした
恋狸
青春
特殊な家系にある俺、こと狭山渚《さやまなぎさ》はある日、黒服の男に恐喝されていた白海花《しらみはな》を助ける。
しかし、白海は学園三大姫と呼ばれる有名美少女だった!?
さらには他の学園三大姫とも仲良くなり……?
主人公とヒロイン達が織り成すラブコメディ!
小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
カクヨムにて、月間3位

俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件
ながしょー
青春
高校入学を前に両親は長期海外出張。
一人暮らしになるかと思いきや、出発当日の朝、父からとんでもないことを言われた。
それは……
同い年の子と同居?!しかも女の子!
ただえさえ、俺は中学の頃はぼっちで人と話す事も苦手なのだが。
とにかく、同居することになった子はとてつもなく美少女だった。
これから俺はどうなる?この先の生活は?ラブコメ的な展開とかあるのか?!
「俺の家には学校一の美少女がいる!」の改稿版です。
主人公の名前やもしかしたら今後いろんなところが変わってくるかもしれません。
話もだいぶ変わると思います。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる