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魔王討伐そして
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「魔王よ……ガレオンよ……我らの積年の思いを込めた刃を受けるがいい」
どす黒い血にまみれた大剣を両手で振りかざし、勇者アーヴィンは言った。
地鳴りの止まない崩れかけた魔王の城。
その玉座の間で巨大な獣がうごめいている。
魔王ガレオン。
幾千もの民の命を奪い、町を滅ぼしてきた魔物どもの王である。
黒い翼は折れ、軋むような音を立てて前腕を震わせている。
「カ、カ、カハッ……皆殺しまであと、二匹であったか。口惜しい、口惜しい。その足元に転がった魔法使いめが……きゃつの卑怯な瘴気さえなければ……」
甲虫をすり潰したような耳障りな低い声で、魔王ガレオンは言った。
漆黒の巨体の足元には血溜まりができている。
アーヴィンは大剣を構えたまま、己の足元に視線を落とす。
昨夜、この城に踏み入れる前の野営で、貪るように愛し合った女魔法使い……エミリアの亡骸が横たわっていた。
裸の胸をえぐるように、魔王ガレオンの折れた鉤爪が突き刺さっている。
エミリア……。
光を失ったエミリアの目は、虚空をただ見上げていた。
アーヴィンの大剣を握る両手に一層の力がこもる。
魔法使いエミリア……戦士ジェシカ……僧侶ターニャ……みんな、みんな死んでしまった。
一部ではハーレムと揶揄された女性だらけのパーティ。
勇者アーヴィンは決して、女だからと彼女たちを選んだわけではなかった。
皆、強く、誇り高く戦った。
愛欲を互いに確かめ合うように、夜な夜な体を重ねここまでたどり着いた同士たち。
女たちを守りきれなかった。
悔恨がこみあげてくる。
生き残ったのは勇者アーヴィンと、馬車を率いて後方支援してきた商人の男、モルドだけである。
そのモルドも馬の死骸の下敷きになり、苦しそうに呻いている。
極限の中でアーヴィンに初歩の回復魔法を唱え続けていたのだった。
「最後だ、魔王よ。俺の刃を受けるがいい」
「勇者よ、きさま真の英雄として永遠に讃えられるとは……よもや思っていまいな?」
「なにっ!?」
「我はここで死す。悠久の時が我を癒すであろう。しかしきさまには……」
魔王ガレオンの三つ目がギロリとアーヴィンを捉えた。その瞬間。
「ぐおおおおおおおおああああああああっっ!」
魔王の瞳から放たれた朱色の閃光がアーヴィンの心臓を貫いた。
熱い。
熱い。
痺れと痛みが全身を駆け抜けた。
「ぐ……」
「グ、ク、クハハ……これでも倒れぬとは……きさまやはり勇者よ!しかし栄誉や称賛、平穏な日々などこの世界の経てきた時間の流れから見れば一瞬の火花のようなもの……」
「ガレオンよ……な、何をした!?」
「なぁに、きさまに永遠の生命を与えたまでさ……」
「なにっ!?」
魔王の巨躯が熱を帯び、背中から崩れ始めた。最後の余力を振り絞った呪いであったようである。
「きさまは死なぬ。永遠に続くその生命をもって、この世界の滅びを見届けるがよい」
「ぐ……なんという……」
「さあ、殺せ。そこに転がっている屍どもの仇を成すが……よい」
魔王が言い終わるか否かのところで、アーヴィンは疾走し大剣を打ち下ろした。
轟音と、衝撃波を感じ、アーヴィンの体は白い光に包まれた。
どす黒い血にまみれた大剣を両手で振りかざし、勇者アーヴィンは言った。
地鳴りの止まない崩れかけた魔王の城。
その玉座の間で巨大な獣がうごめいている。
魔王ガレオン。
幾千もの民の命を奪い、町を滅ぼしてきた魔物どもの王である。
黒い翼は折れ、軋むような音を立てて前腕を震わせている。
「カ、カ、カハッ……皆殺しまであと、二匹であったか。口惜しい、口惜しい。その足元に転がった魔法使いめが……きゃつの卑怯な瘴気さえなければ……」
甲虫をすり潰したような耳障りな低い声で、魔王ガレオンは言った。
漆黒の巨体の足元には血溜まりができている。
アーヴィンは大剣を構えたまま、己の足元に視線を落とす。
昨夜、この城に踏み入れる前の野営で、貪るように愛し合った女魔法使い……エミリアの亡骸が横たわっていた。
裸の胸をえぐるように、魔王ガレオンの折れた鉤爪が突き刺さっている。
エミリア……。
光を失ったエミリアの目は、虚空をただ見上げていた。
アーヴィンの大剣を握る両手に一層の力がこもる。
魔法使いエミリア……戦士ジェシカ……僧侶ターニャ……みんな、みんな死んでしまった。
一部ではハーレムと揶揄された女性だらけのパーティ。
勇者アーヴィンは決して、女だからと彼女たちを選んだわけではなかった。
皆、強く、誇り高く戦った。
愛欲を互いに確かめ合うように、夜な夜な体を重ねここまでたどり着いた同士たち。
女たちを守りきれなかった。
悔恨がこみあげてくる。
生き残ったのは勇者アーヴィンと、馬車を率いて後方支援してきた商人の男、モルドだけである。
そのモルドも馬の死骸の下敷きになり、苦しそうに呻いている。
極限の中でアーヴィンに初歩の回復魔法を唱え続けていたのだった。
「最後だ、魔王よ。俺の刃を受けるがいい」
「勇者よ、きさま真の英雄として永遠に讃えられるとは……よもや思っていまいな?」
「なにっ!?」
「我はここで死す。悠久の時が我を癒すであろう。しかしきさまには……」
魔王ガレオンの三つ目がギロリとアーヴィンを捉えた。その瞬間。
「ぐおおおおおおおおああああああああっっ!」
魔王の瞳から放たれた朱色の閃光がアーヴィンの心臓を貫いた。
熱い。
熱い。
痺れと痛みが全身を駆け抜けた。
「ぐ……」
「グ、ク、クハハ……これでも倒れぬとは……きさまやはり勇者よ!しかし栄誉や称賛、平穏な日々などこの世界の経てきた時間の流れから見れば一瞬の火花のようなもの……」
「ガレオンよ……な、何をした!?」
「なぁに、きさまに永遠の生命を与えたまでさ……」
「なにっ!?」
魔王の巨躯が熱を帯び、背中から崩れ始めた。最後の余力を振り絞った呪いであったようである。
「きさまは死なぬ。永遠に続くその生命をもって、この世界の滅びを見届けるがよい」
「ぐ……なんという……」
「さあ、殺せ。そこに転がっている屍どもの仇を成すが……よい」
魔王が言い終わるか否かのところで、アーヴィンは疾走し大剣を打ち下ろした。
轟音と、衝撃波を感じ、アーヴィンの体は白い光に包まれた。
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