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高校生編

mission44 悪夢から抜け出す方法を模索せよ!

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 外ですずめの鳴く声が聞こえる。ああ、もう朝か。昨日はなんだか色々と大変だったような……あまり、思い出せないな。

 体を起こそうと手を動かすと何かに当たった。ベッドが狭いのはこのせいか。なんだか温かくて心地よい柔らかさの、ふにふにとして、ん? 段々かたく……?





「ん……ほーちゃん。おはよう」





 素っ裸の太郎が、目を擦りながら声をかけてきた。






 すずめは、チュンチュン楽しそうに鳴いている。







「ぷっぎゃあああああぁぁああああ!?」






 自分の叫び声で目を覚ますと、まだ夜中だった。とんでもない量の汗が出ている。



『騒がしいぷんね。今何時だと思ってるぷん?』
「悪いなカッス。悪夢にうなされてたんだ」



 俺の声に驚いて上がってきたほまれの両親とついでに太郎に大丈夫と伝え、寝に戻る。嫌な夢を見たもんだ。


『あー、言い忘れてたぷんが、ふにゃ。高校時代から土曜の夜には、ふわぁ、今向かっているエンディングのルートが夢で見れるぷん。今が何ルートかそれで判断すると……むにゃ、いいぷん』


 割と重要なことを寝ぼけ眼で伝えてくるボケキャラがいる。


「おいカッス、寝るな! ちゃんと喋ってから寝ろ!」
『我はロングスリーパーぷん。寝ないと力がでないぷん……』
「力出てるところなんて見たことねぇよ! はぁ……うん。まあ、いいか」


 怒鳴られながらも寝る度胸だけは大したもんだ。とりあえず、寝てしまったカッスは置いておいて、あの悪夢の分析でもするか。

 あの太郎との朝チュンエンドは、どうやらバッドエンドらしい。誰の攻略もできていない中では仕方のないことだが、攻略が進まない限り毎週土曜は悪夢に魘されることになる。



「早く……早くなんとかしないと……!」



 精神がやられる。



 その前に、なんとか桐生すみれのルートに入らなくては。




 というわけで、桐生すみれと太郎をくっつけるべく動いているのだが。


「おっはよー! えへっ、クイズしない?」
「しない」
「問題っ!」
「話聞けよ!」


 クイズキャラ(暴言付き)の中安に邪魔されたり、


「ねーねーっ! しりとり勝負しようよしりとり勝負! アタシが勝ったらパン奢りで!」
「するわけないだろ」
「じゃあアタシからね! んー、じゃあ、パン! あっ!」
「後で奢れよ」


 アホの鹿峰に絡まれたり、


「はい、数学のノート……。はっ! か、勘違いしないでくれる!? アンタと話したくてノート持ってきたわけじゃないんだから!」
「誰がそんな勘違いするか」
「……そう、やっぱり勘違いしようもないほど、私って可愛くないんだ」
「ああ、もう……」


 相変わらず面倒な箱森を宥めたりしているうちに、1日が終わってしまう日が続いた。雑学のない太郎は中安に暴言を吐かれるし、アホの鹿峰と情緒不安定な箱森では組み合わせが悪い。そうして、桐生と何ら進展しないまま1週間が過ぎてしまい、




「ほーちゃん、この格好どうかな……? スースーして恥ずかしいけど……ほーちゃんは、すき?」





 土曜の夜には太郎が裸エプロンで出てきた。




「ぐぇぼぅゎ…………」
『夜中に吐きそうな声を出すなぷん。もらいゲロしてしまうぷん』


 精神的ダメージがひどい。


「カッス……寝ていいから攻略本だけ出して寝てくれ……」
『ぷん』


 ページをめくり、キャラ紹介を見る。桐生すみれ。桐生財閥のお嬢様。清楚淡麗な容姿から学園のマドンナと呼ばれている。ただ、悩みを抱えているようで……?


 雑誌の付録故に有益な情報も少なく、桐生の悩みが何かも分からない。幼少期の出会いイベントの後、母親が死んで祖父母の家で暮らしていることからすると母親絡みか? それとも、お嬢様ということで婚約者が決められていてそれに反抗する、とかか?

 この時代の流行りから何か推測できればとも思ったが……難しいな。



「とりあえず、桐生と仲良くなって悩みを聞き出すことが鍵か……」



 問題は、俺が桐生と話していてもどうにもならないことだ。太郎と桐生に接点を持たせて、仲良くさせるしかない。何か、何か良い方法は……。




「老人ホームの出し物?」
「正しくはボランティア活動ね。部活に入っていない人は、そうした活動をすることで内申が良くなるらしいけど」




 次の日。委員長から渡された紙には、そのボランティア活動の内容が書いてあった。



「一応クラスから5人出さなきゃいけないんだけど……面倒だからってやりたがらない人も多いみたい。部活ある人はどうしてもそっち優先しちゃうし」
「太郎と桐生」
「え?」
「太郎と桐生だ」



 ちょうど2人は部活に入っていない。部活に入っている鹿峰やみけといった面々からの邪魔も入りにくい。好都合だ。


「しかも1ヶ月も準備期間があるのか!」


 1ヶ月、準備やあれこれで仲良くなる、強制的にでも話ができる期間があるというのは大きい。


「なんか興奮してるみたいだけど……。赤来戸くんと桐生さんがやってくれるかな?」
「……土下座してでもやってもらうさ」
「そんなに!?」




 余裕なんてない。形振り構わずやってやる。





「委員長、この件。俺に任せてくれ」





 待ってろよ。





 1ヶ月後、おじいちゃんおばあちゃんが目を背けたくなるくらいにラブラブの2人を、







 俺が作り上げてみせる。
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