攻略不能ゲーム攻略作戦 〜濃厚ホモエンドを回避せよ!〜

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幼少期編

mission29 推理対決に勝利せよ!

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『また、遊んでいただけますか?』


 そんなことを言っていた割に、最有力攻略対象の桐生すみれはあれから一度も出てきていない。カッスによれば、残りの3日でメインのイベントもなし。サブイベントでも全く出てこないため不安は募っていく一方だ。しかし、出てこない以上対策も打ちづらい。

 となると、あと3日でやるべきことは、他のヒロインの好感度でも上げるしかない。綾咲をはじめ、蘭堂、篝火、山形、笹川といった出会いイベント以外出会っていない面々を優先すべきか、パラメータの条件は合わないが、今まで出会ったみけ、箱森、宮藤あたりの少しは進展している面子を優先すべきか。……ん?


『今のところ10人しか会ってないのか』
『我も数えるぷん。いーち、にーい……ぷん? 今どこまで数えたぷん?』
『さすがに冗談だと言ってくれ』


 カッスのアホは放っておいて、桐生、みけ、箱森、鹿峰、宮藤、綾咲、蘭堂、篝火、山形、笹川。うん、やっぱり10人だ。残り7人に隠しキャラ3人だから、半分しか会っていない計算になる。出会いすぎても良くないかと思っていたが、半分程度で良いのかも不安になってくるな。鹿峰はすでに攻略失敗したし。


『午後は新キャラと出会えるといいんだが』


 そうして、いつもどおり本を読み終わった太郎と外へ出たのだが。



「赤来戸くんに古井戸くんじゃーん! いいところに!」



 公園前を通りかかったところで、攻略対象外の鹿峰に捕まってしまった。


「なんでよりにもよって鹿峰なんだよ……」
「会って早々冷たくないっ!?」


 だってお前、今一番出会っても意味ないキャラじゃねぇか。


「何かあったの?」
「そうそう! 今アタシ犯人扱いされて超困ってるんだよ!」


 困っている割に元気そうだ。


「ちょこま!」
「今も昔もそんな略し方は聞いたことがないな」


 この時代ならチョベリバくらいだろうか。あれが何年の流行りだったかは忘れてしまったが。


「とにかく一緒に来て! アタシの無実を証明して!」
「分かった!」


 安請け合いをするな。と思ったが、イベントがもう始まってしまったようなので仕方がない。ため息をついて2人の後につく。


「わかちゃんどこ行ってたの?」


 怒っているつり目と怯えている眼鏡。現実ではあるようでない組み合わせの2人と鹿峰はどうやら友達らしい。揉めてるけど。


「へへっ……ヒーローは遅れてやってくるってね」


 お前は犯人だろうが。未確定ではあるが。

「アタシが犯人じゃないってことは、この2人が証明してくれるよ!」

 ばーんっ、なんて効果音でもつきそうな感じで紹介されたが、見てもいないのに証明できるのか? っていうかまず何があった?


「えっと……わかちゃんがこんなだから順を追って話すね。みどりちゃんが持ってきた限定の缶バッジがなくなっちゃって。わかちゃんが盗ったんじゃないかって話になってて」
「わーっ! 可愛い! いいなーっ! ってわかちゃんすごく発狂してたし」
「発狂してただけで盗ってはないよ!」


 興奮どころじゃなく発狂してたのかよ。それは疑われても仕方ないが……ん? なんか踏んだな。なんだこれ? どこかで見たようなブサイクなブタちゃんが書かれた缶バッジじゃないか。


「別にあんなの全っ然いらなかったけど、盗るのは違くない!?」


 いらない子扱いされていた。まあ仕方ないか。


『何を諦めてるぷん! 我の可愛さを力説する場面がようやくきたぷん!』
『ブタちゃんはちょっと黙っててね』
『誰がブタちゃんぷん!』


 まあ、とりあえず解決しそうだ。


「ほら、落ちてたぞ。これじゃないか?」


 つり目に渡すと、どうやらそれで合っていたらしい。やれやれ。まあ、早いこと解決して良かった。



「ちょっと待って」



 待つ必要ねぇよ。こっちは、こんな捨てイベント早く終わらせて帰りたいんだよ。


「僕達が来てすぐに解決……なんて、話がうますぎないかな?」


 被ってもいない帽子をいじるような真似をするな。格好悪い。



「この事件には……真犯人がいる!」



 いねぇよ。



「真犯人は君だ!」



 言って、太郎は眼鏡を指差す。


「そ、そんな……! 私、そんなことしないよ!」
「ふふ、してない人はみんなそう言うんだよ」


 そりゃそうだろ。してないんだから。


「間違えたっ。犯人はみんなそう言うんだよ!」
「で、でも本当に!」
「犯人はみんなそう言うんだよ!」


 悪魔の証明になってきたな。仕方ない。そろそろ手を貸すか。

「とりあえず状況を教えてくれるか? 缶バッジがなくなってからの」

 泣き出しそうな眼鏡に代わって、つり目が話してくれた。


「私が缶バッジ持ってて、わかちゃんがこんなふうに……よっ! はっ! ふぐぁ! って感じで発狂して」
「あ、そこはそんなに詳しくなくていいや」
「そう。それで、あっちの方にヒャッハーって言いながら駆けていって、そしたらもうなかったのよ」


 発狂してんな。


「その後、ポケットの中とか調べてたらわかちゃんが戻ってきて、盗ったんじゃないか? って私が言ったらどっひゃーっ! って驚いてどっか行って」
「激しい人生送ってんな」
「えへへ……そんなに褒めないでよ」
「そんなに褒めてねーよ」


 鹿峰のアホは放っておくとして。


「その間お前らはここから動いてないのか?」
「うん。ずっとここにいたよ。ねぇ?」
「う、うん」


 ということは。


「ドラゴン。お前の推理は大外れだ」
「な、なんだって!?」


 そんなに自信あったのかよ。


「2人の位置からここまでは結構距離があるだろ? あの缶バッジの形状じゃそんなには転がらない」


 試しにつり目に落としてもらったが、2人のほぼ真下に落ちて終わった。ボールでもなければここまではこないだろう。


「他にも理由は色々あるが、そもそもそいつがそんな可愛くない缶バッジを盗った上で鹿峰に罪を着せて缶バッジを捨てるなんてことをする理由もないだろ」
『とても可愛い缶バッジぷん!』


 外野がうるさい。


「そ、そんな……その子は鹿峰さんに親を殺されたかもしれないじゃないか!」
「とんだ極悪人だな」


 そしてそれは缶バッジの罪を着せた程度ですっきりする恨みなのか。

「ア、アタシ前世でそんなことを……」
「勝手にストーリー組み立てんな」

 あと前世で殺したなら年齢が合わないだろ。


「うん、なんかもう大丈夫。落ちてただけね。私も頭に血が昇っちゃって。わかちゃん、疑ってごめんね」
「ちょ、ちょっと待って。やっぱり鹿峰さんが犯人の可能性も……」


 まだ食い下がるか。


「鹿峰がそんなに頭回るわけないだろ」


 その言葉に、鹿峰は頬を赤らめる。


「も、もうっ。今日は褒めすぎだよっ!」
「ごめん、褒めてないんだ」


 何をどう取っても褒めてるふうには聞こえないだろ。



「ふっ……完敗だよ、ほーちゃん」



 謎の完敗ポーズを取りながら肩を竦める。お前はお前で納得するポイントがそこでいいのかよ。


「東西推理対決。今回は僕の負けだね」


 どっちが東でどっちが西なんだ。あと、今回とか言うな。後にも先にもこれだけだよ。


「でも、2人ともすごかったね。色々考えて」


 さっきまで真犯人扱いされていた眼鏡が、そんな気を遣う必要もないのに太郎まで褒めてニコッと笑う。この子天使か?



「それだけの推理力があるなら、学校の怪談も解明できちゃうんじゃないかな?」



 やめろ悪魔。余計な情報を植え付けるな。



「学校の怪談?」
「うん。満月の日の夜の学校に行くと」
「ドラゴン、用は済んだから帰るぞ」
「理科室のそばで物音が聞こえて」
「じゃあな」
「忘れ物を取りに来ていた生徒が」
「空気読めよ! 話聞きたくないって意味だよ!」



 無駄なところでメンタル強いなこの眼鏡。さっきまで泣きそうだったのに何なんだ?


「忘れ物を取りにきた生徒はどうなったの?」
「興味を持つな」


 まだ話を聞きたそうな太郎を引っ張って家路に着く。夜の学校なんて面倒そうな場所、行きたくもなければ聞きたくもない。

 しばらくして、もう怪談話忘れたのか、ダンゴムシの足についての話を太郎から聞いていると、後ろから声が聞こえた。振り返るとものすごいスピードで何かがやってくる。……鹿峰だ。


「2人ともっ……はぁっ! 話の、続き」


 眼鏡にわざわざ話を聞いた上で追いかけてきてくれたらしい。余計なお世話とはこのことだ。ただ、まあ。


「ふぁっ! はぁ、ふ、はっ」


 こんなに全力で走ってきてくれたんだ。観念して話を聞くくらいはしてやってもいいのかもしれない。


「あのあとね、忘れ物をした子はーーーー」


 一通り話を聞いて、先に口を開いたのは太郎だった。


「でもすごく早かったね鹿峰さん! 走る才能あるんじゃないかな?」


 確かに、すごいスピードだったな。

「え、そ、そうかな?」
「まあ、お前には向いてるんじゃないか」

 難しいこと考えずに走るだけ。何もしなくてこれだけ早いならフィギュアなんかより鹿峰には向いているといえるだろう。

「うんうん、努力したらきっともっと伸びるよ!」

 努力好きな、お前。


「あ、もしかしてこれ褒められてないパターン?」
「いや……今回は」


 直接言うのは少し照れ臭いが。


「褒めてるパターンだ。ドラゴンも全力で褒めてる」
「当たり前だよ!」


 当たり前かは知らないが。変な空気になったので、明後日の方を向いてポケットに手を突っ込む。……なんか入ってるな? あ。


「そうだ、鹿峰。これやるよ」


 可愛くないブタちゃんが貰える夏のパン祭りの台紙だった。これを可愛いという人間は鹿峰くらいしかいないのかもしれない。


「わっ! すごい! 最高にイカしてるね!」


 ベタ褒めである。


「この皿!」
「皿の方かよ」


 知らん人間が映ってる皿、そんなに気に入るか?


「ありがとっ! 古井戸くんはまた学校でね!」


 次会うのが学校、となると鹿峰にはもう会わないのか。やれやれ。


「じゃあ、ほーちゃん帰ろうか」


 こうやって幼少期の太郎と家に帰るのもあと2日か。高校時代は一体どうなっているのか。


 不安しかないが、まあ、なるようになれだ。


 そして、俺達が晩御飯を賑やかに食べている時。鹿峰の家では、


「あら? わかな、何か良いことでもあった?」
「えへっ、分かる。ふふーん」
「なんだなんだ? 父さんにも教えてくれよ」


 家族団欒の真っ只中、




「アタシ、陸上選手になるよ」





 まるで一枚絵にでもなりそうな満面の笑みを浮かべていた鹿峰がいたが、俺も太郎もそんなことは知る由もなかった。


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