攻略不能ゲーム攻略作戦 〜濃厚ホモエンドを回避せよ!〜

めの。

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幼少期編

mission28 裸の魅力に対抗せよ!

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 すっかり忘れてしまいそうになるが、俺は太郎を探している。太郎が泣かせた箱森のフォローを太郎自身で行って好感度を上げるというマッチポンプ的な作戦の成功率が、限りなく低い気がしているからだ。多分2%もないだろう。

 だからこそ、箱森のフォローをする太郎のフォローをしなければならなかったのだが。


『日が暮れだしたぷんね』
「アイツマジどこ行ったんだよ!」


 鹿峰と宮藤とのやり取りを終えてからずっと探していたが、どこにも見当たらないのだ。


「先帰ってるとかいうオチじゃないだろうな……」
『あ、あそこにいるぷん』


 ほーちゃーん、と呑気に呼びながら歩いてくる太郎は、それこそ何も考えていない小学生男子だった。箱森の姿は当然のようにそこにはない。


「お前どこ行ってたの……?」
「えへへ、怒られてた」


 誰にだよ。


「ほら、箱森さん追いかけて行ったじゃない? ほーちゃんが言ってたとおり、フォロー! って言いながら後ろから抱きついたんだけど」
「俺そんなこと言ったか!?」


 フォローしろとは言ったが、抱きつくまでは想定の範囲外だ。指示したつもりもない。

「そしたら、箱森さんごとプールに落ちちゃって。箱森さん泣いたまんまだし、監視係の人にハメを外しすぎないようにって怒られてきたところなんだよ」
「ああ……うん、そう」

 全くフォローになっていなかった。俺がそばにいれば……とは思いもするが、それでもどうにかできたとは思えない。


「ほーちゃんが言ってたとおり泣いてる女の子は落ちやすかったから、もうちょっと気をつけなきゃいけなかったねー」


 そういう意味じゃないが、この際どうでもいい。そういや、宮藤の関連でバタバタしているときにプールはプールで騒がしかったが、それはこれが原因か……。


「ま、いっか。帰ろ、ほーちゃん」


 ま、いっか。ですむ話かは分からないが、箱森はそもそも攻略の本命ではないし、これ以上どうにもできないだろう。致し方ない。

 途中、長らくプールサイドにいてこんがり焼けたみけを回収して、更衣室で別れた。やれやれ。女体を見て回復するだけのはずがやけに疲れてしまった。まあ、当初の目的は達成されたし、これでしばらく太郎にときめくなんてこともないだろう。



「ほーちゃん、パンツなくなったー」



 裸。



 はだか、裸、ハダカ、すっぽんぽん。




 一糸纏わぬ姿、と形容されるように何も着ていない生まれたままの姿である。

 ぺたぺたとこちらに向かってくる太郎は自身の小さな分身をぷらぷらさせながら、何も考えてないような無邪気な笑顔を向けてくる。


「パンツどっかいっちゃった」



 それは、今日見たどの水着姿よりも眩しく




「そんなわけあるかぁっ!」




 気合を入れて立て直す。新スク、競泳水着、ビキニ、旧スク。それらがすべて裸の一撃で粉砕されていいはずがない。まだぷらんぷらんしている太郎から目を背け、自分の荷物を漁る。


「どこかに紛れてるんだろ。まあ、とりあえずこれを使え」
「僕のパンツ!」
「ああ、予備を持ってきておいて良かったよ」


 魅力が上がった割にパンツを忘れるのは、元々太郎がうっかりしているからか? いや、わざとやっている可能性は……考えたくないな。



「ほーちゃんはいっつもすごく気がつくね! 彼女みたい!」



 何? コイツ今日俺がここへ何しに来たか知った上で苦しめようとしてるの?



「バーカ。本当の彼女はもっとすごいぞ」
「本当! 変形とかするかな?」
「するする。16段階くらいする」
「すごーい!」



 適当に話を合わせて話の主眼を彼女の方に向けさせる。早く誰でもいいからコイツとくっつけないと、身が持たない。更衣室から出ると、みけが先に待っていた。こういう時は女子の方が時間がかかりそうなものだが、パンツ騒ぎで時間を食ってしまったらしい。


「ごめん、みけ。待たせたな」
「みけ焼けたねー」
「あはは、ちょっとひりひりするよーっ」


 笑いながらみけは着ていたタンクトップの肩紐をご丁寧に肩までずらしてくれた。


「水着の跡すっごいついちゃってー」


 日焼け跡。日焼けした肌色に比べ、水着を着ていた部分の肌が白く見えることから、そのコントラストの美しさを讃えるために作られた言葉である。


 中には何が興奮するのか分からないという思考停止で批判してくる輩も存在するが、裸であるのに服を着ているように見え、だが実際はそうではないという謎めいた要素こそがその神髄であると俺は理解している。

 肌の明るい部分と暗い部分をそれぞれ触れてみたときに反応が違うのではないか。何の疾しさもない健康的な跡のはずであるのについ触れてみたくなるこちらの疾しさが背徳感を産むのではないか。



 様々考えられる理由も、日焼け跡の吸い込まれるような魅力の前ではすべてが無に等しく感じる。



 なんかよく分かんないけどエロい。日焼け跡に対する考察は、それだけで充分なのかもしれない。


「みけはいつも良い子だな……」
「褒められて嬉しいけど泣くほど感動する要素あったかなっ!?」


 心が洗われた。対象が男であれ裸こそ至高ではないのか、という邪念を見事に吹き飛ばしてくれたみけには感謝しかない。



「ついでに両手をあげてくれるか?」
「えっ? ばんざーいっ!」



 他のところに比べると陰になりやすい脇の下。水着に覆われている部分ではないため、やや焼けているが他に比べると明らかに白い。そのコントラストたるや。世が世なら国が1日で滅ぶだろう。



「ありがとう、みけ」



 大丈夫だ。これで自分を見失わずに生きていける。





 攻略上は捨て回ともいえるこの夏の一幕は、俺の心に潤いをもたらして静かに閉じていった。





『我の水着姿に対するコメントはないぷんっ!?』
「早く着替えろよ」





 幼少期。残すところあと3日。


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