31 / 66
幼少期編
mission28 裸の魅力に対抗せよ!
しおりを挟むすっかり忘れてしまいそうになるが、俺は太郎を探している。太郎が泣かせた箱森のフォローを太郎自身で行って好感度を上げるというマッチポンプ的な作戦の成功率が、限りなく低い気がしているからだ。多分2%もないだろう。
だからこそ、箱森のフォローをする太郎のフォローをしなければならなかったのだが。
『日が暮れだしたぷんね』
「アイツマジどこ行ったんだよ!」
鹿峰と宮藤とのやり取りを終えてからずっと探していたが、どこにも見当たらないのだ。
「先帰ってるとかいうオチじゃないだろうな……」
『あ、あそこにいるぷん』
ほーちゃーん、と呑気に呼びながら歩いてくる太郎は、それこそ何も考えていない小学生男子だった。箱森の姿は当然のようにそこにはない。
「お前どこ行ってたの……?」
「えへへ、怒られてた」
誰にだよ。
「ほら、箱森さん追いかけて行ったじゃない? ほーちゃんが言ってたとおり、フォロー! って言いながら後ろから抱きついたんだけど」
「俺そんなこと言ったか!?」
フォローしろとは言ったが、抱きつくまでは想定の範囲外だ。指示したつもりもない。
「そしたら、箱森さんごとプールに落ちちゃって。箱森さん泣いたまんまだし、監視係の人にハメを外しすぎないようにって怒られてきたところなんだよ」
「ああ……うん、そう」
全くフォローになっていなかった。俺がそばにいれば……とは思いもするが、それでもどうにかできたとは思えない。
「ほーちゃんが言ってたとおり泣いてる女の子は落ちやすかったから、もうちょっと気をつけなきゃいけなかったねー」
そういう意味じゃないが、この際どうでもいい。そういや、宮藤の関連でバタバタしているときにプールはプールで騒がしかったが、それはこれが原因か……。
「ま、いっか。帰ろ、ほーちゃん」
ま、いっか。ですむ話かは分からないが、箱森はそもそも攻略の本命ではないし、これ以上どうにもできないだろう。致し方ない。
途中、長らくプールサイドにいてこんがり焼けたみけを回収して、更衣室で別れた。やれやれ。女体を見て回復するだけのはずがやけに疲れてしまった。まあ、当初の目的は達成されたし、これでしばらく太郎にときめくなんてこともないだろう。
「ほーちゃん、パンツなくなったー」
裸。
はだか、裸、ハダカ、すっぽんぽん。
一糸纏わぬ姿、と形容されるように何も着ていない生まれたままの姿である。
ぺたぺたとこちらに向かってくる太郎は自身の小さな分身をぷらぷらさせながら、何も考えてないような無邪気な笑顔を向けてくる。
「パンツどっかいっちゃった」
それは、今日見たどの水着姿よりも眩しく
「そんなわけあるかぁっ!」
気合を入れて立て直す。新スク、競泳水着、ビキニ、旧スク。それらがすべて裸の一撃で粉砕されていいはずがない。まだぷらんぷらんしている太郎から目を背け、自分の荷物を漁る。
「どこかに紛れてるんだろ。まあ、とりあえずこれを使え」
「僕のパンツ!」
「ああ、予備を持ってきておいて良かったよ」
魅力が上がった割にパンツを忘れるのは、元々太郎がうっかりしているからか? いや、わざとやっている可能性は……考えたくないな。
「ほーちゃんはいっつもすごく気がつくね! 彼女みたい!」
何? コイツ今日俺がここへ何しに来たか知った上で苦しめようとしてるの?
「バーカ。本当の彼女はもっとすごいぞ」
「本当! 変形とかするかな?」
「するする。16段階くらいする」
「すごーい!」
適当に話を合わせて話の主眼を彼女の方に向けさせる。早く誰でもいいからコイツとくっつけないと、身が持たない。更衣室から出ると、みけが先に待っていた。こういう時は女子の方が時間がかかりそうなものだが、パンツ騒ぎで時間を食ってしまったらしい。
「ごめん、みけ。待たせたな」
「みけ焼けたねー」
「あはは、ちょっとひりひりするよーっ」
笑いながらみけは着ていたタンクトップの肩紐をご丁寧に肩までずらしてくれた。
「水着の跡すっごいついちゃってー」
日焼け跡。日焼けした肌色に比べ、水着を着ていた部分の肌が白く見えることから、そのコントラストの美しさを讃えるために作られた言葉である。
中には何が興奮するのか分からないという思考停止で批判してくる輩も存在するが、裸であるのに服を着ているように見え、だが実際はそうではないという謎めいた要素こそがその神髄であると俺は理解している。
肌の明るい部分と暗い部分をそれぞれ触れてみたときに反応が違うのではないか。何の疾しさもない健康的な跡のはずであるのについ触れてみたくなるこちらの疾しさが背徳感を産むのではないか。
様々考えられる理由も、日焼け跡の吸い込まれるような魅力の前ではすべてが無に等しく感じる。
なんかよく分かんないけどエロい。日焼け跡に対する考察は、それだけで充分なのかもしれない。
「みけはいつも良い子だな……」
「褒められて嬉しいけど泣くほど感動する要素あったかなっ!?」
心が洗われた。対象が男であれ裸こそ至高ではないのか、という邪念を見事に吹き飛ばしてくれたみけには感謝しかない。
「ついでに両手をあげてくれるか?」
「えっ? ばんざーいっ!」
他のところに比べると陰になりやすい脇の下。水着に覆われている部分ではないため、やや焼けているが他に比べると明らかに白い。そのコントラストたるや。世が世なら国が1日で滅ぶだろう。
「ありがとう、みけ」
大丈夫だ。これで自分を見失わずに生きていける。
攻略上は捨て回ともいえるこの夏の一幕は、俺の心に潤いをもたらして静かに閉じていった。
『我の水着姿に対するコメントはないぷんっ!?』
「早く着替えろよ」
幼少期。残すところあと3日。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。
後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。
しかし、そこに香奈が現れる。
成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……
オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕!
※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。
「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。
【今後の大まかな流れ】
第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。
第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません!
本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに!
また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます!
※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。
少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる