攻略不能ゲーム攻略作戦 〜濃厚ホモエンドを回避せよ!〜

めの。

文字の大きさ
上 下
26 / 66
幼少期編

mission23 攻略対象を変更せよ!

しおりを挟む
 鹿峰の攻略に失敗したことが分かり、宮藤はかまきりを踏み、太郎が闇落ちして元に戻った10日目の夜。

「もうすぐ太郎ちゃんともお別れねぇ」

 夕飯を食べながら、ほまれの母親がしんみりしていた。そういえば、あと4日で預けられていた太郎は帰るんだったか。こちらとしては、幼少期が終わって高校生活が始まるだけだからそこにしんみり感はないが。

「寂しいなー。ほーちゃんとも離れちゃうし、おばさんのご飯美味しいし、ずっとここにいたいくらい」
「あらっ、良い子ね! からあげどうぞ」
「わぁい!」

 ほまれの母親もちょろいものだった。いや、専業主婦の方が案外と褒められる機会がないから承認欲求が高まりやすいことを考えるとちょろくなりやすいのか?
 まあ、ほまれの母親は当然攻略対象じゃないのでどうでもいいのだが。あ。

「そうだ。これ集めてる? 貰い物なんだけど」

 昼間に宮藤の父親から貰ったパン祭りの台紙を渡してみる。


「ああ……パン祭りの」


 微妙な反応をされた。

「結構集まってるねー」
「うーん……。でも景品がね」
「こういうのは大体皿じゃないの?」
「1つは確かにお皿なんだけど……。ほら、柄がこれなのよ」

 景品が書かれているチラシを見ると、確かに皿は皿だが、知らん男と知らん女が笑顔で純白のタキシードとドレスを身に纏っている写真が無駄に印刷されていた。

「パン屋さんの社長さんの姪っ子のいとこが結婚されたみたいで」
「割と遠縁だな」

 会社の景品にそれを持ち込むこと自体どうかと思うが、やるにしても普通は息子とか娘とかじゃないのかよ。血縁といえば血縁な気はするが。

「抽選の方の景品もほら……。この可愛くないブタちゃんみたいなのの置物だし」

 割と見知った姿がそこにあった。

「確かに。可愛くないブタだ」
『むきーっ! 誰が可愛くないブタぷん!』

 ブタみたいなのが怒っていた。コイツは作中ではパン屋のキャラなのか? にしては人気がないな。

「ごめんね、ほまれ。他に欲しい人がいたらあげてくれる?」
「そうだな、ドラゴン。いるか?」
「僕はいいや」

 あっさり断られた。早めに捨てた方が良いのかもしれない。しかし、宮藤のお父さんは何目的でこれを集めたんだろうか……。まあいいか。晩ご飯も食べ終わったしテレビでもつけるか。


『煌めくステージに咲く一輪の薔薇のようなかすみ草! あなたのハートにピリリとスパイス、これで完成召し上がれ! ハートはドキッと涙はサラッと愛と英知と希望とフラッシュ! あなたのアイドル・ハフハーフ! 雅に素敵に登場よっ!』


 知り合いが良からぬ呪文を喋っていた。

「あ、宮藤さんだ。本当にでてたんだねー」

 番組名は忘れたが、どうやら子供向けの戦隊モノのようなものらしい。女の子3人が主役で、宮藤はその中の一人か。

『ま、まさか貴女が寝返るなんて……!』
『ふふっ。勘違いしないでくれる? 貴女達とのお友達ごっこには飽き飽きしていたのよ』
『さて、今週のお地蔵はこちら!』

 せっかく宮藤が本性を現したところでお地蔵100選に変わってしまった。攻略相手でもないし別にいいか……。太郎がテレビに夢中になっている間に風呂に入ることにする。


『ふーっ。熱海の湯は心に染みるぷんね』
「当たり前のように一番風呂に入るな」


 摘み出そうかとも思ったが、疲れていて面倒なのでそのまま自分も入る。そんなにこの入浴剤に熱海感あるか?

「カッス。聞きたいことがある」
『ぷぷん。高くつくぷん』
「ほーら潜水艦だよ」
『沈めるなぷんっ!』

 そいつはさておき。


「あの攻略本はどこまで信用していいんだ?」


 結構頼りにしてしまっていたが、そもそもゲーム発売前に出された雑誌の付録。途中までしか記載されてないし、イベントも全部網羅はしていない上に、ミスもある。鹿峰の攻略失敗はわりとショックだった。

『我も全部読んでないから分かんないぷんが、困ったことがあればサポートキャラである我を頼ればいいぷん』
「不安しかないな」
『さっきから失礼ばかりぷん!』

 これからは攻略本に基づきつつ、ステータス等は自分の目とカッスで確かめる必要があるわけか。手間がかかる分、難易度が無駄に上がった気がする。

『でもお前はまだうまくやれてる方だと思うぷんよ』
「これまでのやつは確か太郎の方になって攻略してたんだったか」
『ぷん。9割は幼少期で終わってしまってたぷん』

 太郎側の方が難易度が高いのかどうかは分からないが、こっちも幼少期はあと4日残っている。気を抜けないな。

「あと4日で桐生のイベントはないんだよな」
『ぷん。桐生すみれはあのイベントだけぷんね』

 メインヒロインなのに一番イベントがないのは気になるが、その分高校時代のイベントでもあるのだろうか。

『桐生すみれに切り替えるぷん?』
「そうだな。メインヒロインだから難易度的には気になるところだが……。パラメータ的には桐生か綾咲だからな。登場の遅い綾咲よりは桐生を優先したい」

 綾咲かなえは二学期から転校してくる設定だ。そこを踏まえると、一学期から出会える桐生に舵を切っても大丈夫だろう。


「頼りにしてるぜ、カッス」


 自然と口をついて出てしまった。まあ、たまにはこういう言葉を言っておいてもいいのかもしれない。

『我、頼られてるぷん?』
「まあ、そうだな」

 わざわざ確認されると気恥ずかしいものがあるが。



『嬉しいぷんー♪』



 スタン・グレネードばりに発光した。


「だから目がやられるんだよ! 調子に乗るなこのブタちゃんがっ!」
『むきーっ! 誰がブタちゃんぷん!』
「ほーちゃん! 声を荒げる癖が出てるよ!」
「鍵かけてるからって窓開けないでくれる!?」





 騒がしい風呂を終えて眠りにつく。







 幼少期は、残すところあと4日。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ
恋愛
【副題に☆が付いている話だけでだいたい分かります!】 ・第1章  彼、〈君島奏向〉の悩み。それはもし将来、恋人が、妻ができたとしても、彼女を不幸にすることだった。  そんな彼を想う二人。  席が隣でもありよく立ち寄る喫茶店のバイトでもある〈草壁美頼〉。  所属する部の部長でたまに一緒に帰る仲の〈西沖幸恵〉。  そして彼は幸せにする方法を考えつく―――― 「僕よりもっと相応しい人にその好意が向くようにしたいんだ」  本当にそんなこと上手くいくのか!?  それで本当に幸せなのか!?  そもそも幸せにするってなんだ!? ・第2章  草壁・西沖の二人にそれぞれの相応しいと考える人物を近付けるところまでは進んだ夏休み前。君島のもとにさらに二人の女子、〈深町冴羅〉と〈深町凛紗〉の双子姉妹が別々にやってくる。  その目的は―――― 「付き合ってほしいの!!」 「付き合ってほしいんです!!」  なぜこうなったのか!?  二人の本当の想いは!?  それを叶えるにはどうすれば良いのか!? ・第3章  文化祭に向け、君島と西沖は映像部として広報動画を撮影・編集することになっていた。  君島は西沖の劇への参加だけでも心配だったのだが……  深町と付き合おうとする別府!  ぼーっとする深町冴羅!  心配事が重なる中無事に文化祭を成功することはできるのか!? ・第4章  二年生は修学旅行と進路調査票の提出を控えていた。  期待と不安の間で揺れ動く中で、君島奏向は決意する―― 「僕のこれまでの行動を二人に明かそうと思う」  二人は何を思い何をするのか!?  修学旅行がそこにもたらすものとは!?  彼ら彼女らの行く先は!? ・第5章  冬休みが過ぎ、受験に向けた勉強が始まる二年生の三学期。  そんな中、深町凛紗が行動を起こす――  君島の草津・西沖に対するこれまでの行動の調査!  映像部への入部!  全ては幸せのために!  ――これは誰かが誰かを幸せにする物語。 ここでは毎日1話ずつ投稿してまいります。 作者ページの「僕(じゃない人)が幸せにします。(「小説家になろう」投稿済み全話版)」から全話読むこともできます!

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

処理中です...