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幼少期編
mission19 不良達との戦闘に勝利せよ!
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土管が三つほど置かれている典型的な空き地に行くと確かに不良がいた。
「おうおうおう! 性懲りもなくまた来たのかい?」
小学生に対して随分とイキっている。しかし、なかなか体格が良いし武器は持っているし。どうするんだこれ?
「ああ! 今度は三対三で勝負だ!」
「ガキが3人に増えたところで何も変わらねぇよ!」
ちょっと待て。さっき野球はコイツら3人を1人で相手してたのか?
「ほまれ、太郎! 行くぞ!」
いつの間に太郎の名前を知っていたのか、そう言って野球が空き地に足を踏み入れる。ツッコミが追い付かないのと、どうにかなるような気がまるでしない。
「うん! 八つ裂きにしてやるよ!」
物騒。そんなことを考えていたら視界が一瞬暗くなり。
「なにこれ」
不良達と俺達の頭上にHPゲージが表示され、双方のビジュアルがデフォルメされたドット絵みたいになっている。いつの間にかギャラリーまでできていた。
「うるぁっ!」
あんまりギャルゲーで聞かない掛け声とともに不良が野球に木刀で殴りかかる。
「野球っ!」
「うわぁっ!」
流血沙汰になるかと思われたが、二人を覆うように表示された【ポカッ】という吹き出しで何も見えなかった。野球は特に怪我をすることもなく、HPゲージだけが少し減っている。
「ああ……そういうのね」
この年代の一部のギャルゲーにあった、唐突な戦闘イベントである。熊やロボと戦ったり、勝たないと告白されなかったりと、純粋に恋愛を求めてきたプレイヤーがぽかんとする要素がたまにあったのだ。
「ちぇすとっ!」
「ちぇりおっ!」
太郎は太郎で何かやりあっている。野球も戦っているとなると……。
「フッフッフ」
鎖鎌を持った不良が最近悪役でもしない笑い方をしながらこちらを見ていた。……警察に通報したら一発で終わるんじゃないかこれ。
「てりゃあっ!」
「痛ぇっ!」
例によって、鎖鎌で攻撃されても血が流れたり怪我をしたりすることはないが、ちょっとは痛いしHPゲージの減りが早い。他の二人も少しずつ苦戦しているようだし、俺は武器もないし……。となると、
「ポーズっ!」
卑怯だと思われてもいい。ただ、こういうイベントは勝たないと好感度が下がる恐れがある。使えるものはなんでも使っておこう。全ての時間が止まっている間に不良から鎖鎌を奪い取り、
ポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポ
ん? 途中からカッポになっていたような……。まあいいか。太郎と対戦している不良はあと一回攻撃すれば勝てるようにしておいて、他の2人は倒しておいた。これで勝てるだろう。
そして、時が動き出す。
「フッフぐぇっ!」
「うるぁぐぇっ!」
目論見通り不良2人が倒れ、
「ファイナルディスティネーションジャカジャカジャンケンフラーッシュ!」
別にちぇりおでいいだろ。
「ぐ、ぐあぁぁああああああ!」
最後の生き残りらしい立派な断末魔が響き渡り、無事に不良達を倒すことができた。
「やったね!」
なんかみんなポーズ取ってる。一応、ピースでもしておこう。と、また視界が暗転する。
◇ ◇ ◇
「くっ……まさか、こんなに強い小学生がいるなんてな!」
みんなのビジュアルが元に戻り、ゲージも消えた。不良は別に痛めていない腕を押さえて息を荒くしている。
「僕達に勝とうなんて10年早いよ!」
その頃にはアイツらアラサーだから逆に体力落ちてそうだけどな。
「フッフッフ。受けとりな、勝利の証だ」
学ランの第二ボタンを渡された。いらない。あげる奴がいないからって小学生に押し付けるな。
と、そんなわけで不良達は去って行き、平和の戻った空き地で、ギャラリー達の好感度が上がる音が響いた。いるのは知らんモブと知らんモブと知らんモブとみけと知らんモブと鹿峰か。
鹿峰?
「鹿峰っ!?」
「うわ、えっ? 何?」
「おま、おま、お前なんでここにいるんだよ!」
条件が整っているにも関わらず、海辺には来なかったくせに。
「へへっ。宿題してる時に喧嘩の声が聞こえてつい、ね」
「お前は宿題なんてしてるキャラじゃないだろっ!」
「ひどいっ!」
確かに酷いことは言ってしまったが、これで鹿峰が何をしていたかは分かった。海辺よりもそちらが優先された理由が知りたいところだが……。
「あっ! 赤来戸くん! さっき格好良かったね。惚れちゃいそうだよ!」
好感度は上がっているようだし、この選択も間違いではなかったのかもしれない。あとは、カッス待ちだな。
「太郎すごかったねーっ! みけの、太郎が強いの知らなかったよっ! すごいっ!」
なんだか久しぶりな気がするみけも太郎を褒めているし、まあそこそこ良い結果に終わったんだろう。
「さ、ほーちゃん帰ろうか」
あっという間に人がはけ、太郎と2人で家に帰る。その途中。
「ねぇ、ほーちゃん」
「なんだ?」
「ほーちゃんといると、ドキドキすることばかりだね」
不良と戦ったり触手から逃げたり、まあドキドキは多いのかもしれない。
「びゃおで読んだんだけど、これって恋のときめきと」
「違う」
隙あらばエンディングを迎えたがる太郎は置いておいて。
「勝利の証だ。お前が持っておけ」
第二ボタンを体よく押し付けることには成功した。
「おうおうおう! 性懲りもなくまた来たのかい?」
小学生に対して随分とイキっている。しかし、なかなか体格が良いし武器は持っているし。どうするんだこれ?
「ああ! 今度は三対三で勝負だ!」
「ガキが3人に増えたところで何も変わらねぇよ!」
ちょっと待て。さっき野球はコイツら3人を1人で相手してたのか?
「ほまれ、太郎! 行くぞ!」
いつの間に太郎の名前を知っていたのか、そう言って野球が空き地に足を踏み入れる。ツッコミが追い付かないのと、どうにかなるような気がまるでしない。
「うん! 八つ裂きにしてやるよ!」
物騒。そんなことを考えていたら視界が一瞬暗くなり。
「なにこれ」
不良達と俺達の頭上にHPゲージが表示され、双方のビジュアルがデフォルメされたドット絵みたいになっている。いつの間にかギャラリーまでできていた。
「うるぁっ!」
あんまりギャルゲーで聞かない掛け声とともに不良が野球に木刀で殴りかかる。
「野球っ!」
「うわぁっ!」
流血沙汰になるかと思われたが、二人を覆うように表示された【ポカッ】という吹き出しで何も見えなかった。野球は特に怪我をすることもなく、HPゲージだけが少し減っている。
「ああ……そういうのね」
この年代の一部のギャルゲーにあった、唐突な戦闘イベントである。熊やロボと戦ったり、勝たないと告白されなかったりと、純粋に恋愛を求めてきたプレイヤーがぽかんとする要素がたまにあったのだ。
「ちぇすとっ!」
「ちぇりおっ!」
太郎は太郎で何かやりあっている。野球も戦っているとなると……。
「フッフッフ」
鎖鎌を持った不良が最近悪役でもしない笑い方をしながらこちらを見ていた。……警察に通報したら一発で終わるんじゃないかこれ。
「てりゃあっ!」
「痛ぇっ!」
例によって、鎖鎌で攻撃されても血が流れたり怪我をしたりすることはないが、ちょっとは痛いしHPゲージの減りが早い。他の二人も少しずつ苦戦しているようだし、俺は武器もないし……。となると、
「ポーズっ!」
卑怯だと思われてもいい。ただ、こういうイベントは勝たないと好感度が下がる恐れがある。使えるものはなんでも使っておこう。全ての時間が止まっている間に不良から鎖鎌を奪い取り、
ポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポカッポ
ん? 途中からカッポになっていたような……。まあいいか。太郎と対戦している不良はあと一回攻撃すれば勝てるようにしておいて、他の2人は倒しておいた。これで勝てるだろう。
そして、時が動き出す。
「フッフぐぇっ!」
「うるぁぐぇっ!」
目論見通り不良2人が倒れ、
「ファイナルディスティネーションジャカジャカジャンケンフラーッシュ!」
別にちぇりおでいいだろ。
「ぐ、ぐあぁぁああああああ!」
最後の生き残りらしい立派な断末魔が響き渡り、無事に不良達を倒すことができた。
「やったね!」
なんかみんなポーズ取ってる。一応、ピースでもしておこう。と、また視界が暗転する。
◇ ◇ ◇
「くっ……まさか、こんなに強い小学生がいるなんてな!」
みんなのビジュアルが元に戻り、ゲージも消えた。不良は別に痛めていない腕を押さえて息を荒くしている。
「僕達に勝とうなんて10年早いよ!」
その頃にはアイツらアラサーだから逆に体力落ちてそうだけどな。
「フッフッフ。受けとりな、勝利の証だ」
学ランの第二ボタンを渡された。いらない。あげる奴がいないからって小学生に押し付けるな。
と、そんなわけで不良達は去って行き、平和の戻った空き地で、ギャラリー達の好感度が上がる音が響いた。いるのは知らんモブと知らんモブと知らんモブとみけと知らんモブと鹿峰か。
鹿峰?
「鹿峰っ!?」
「うわ、えっ? 何?」
「おま、おま、お前なんでここにいるんだよ!」
条件が整っているにも関わらず、海辺には来なかったくせに。
「へへっ。宿題してる時に喧嘩の声が聞こえてつい、ね」
「お前は宿題なんてしてるキャラじゃないだろっ!」
「ひどいっ!」
確かに酷いことは言ってしまったが、これで鹿峰が何をしていたかは分かった。海辺よりもそちらが優先された理由が知りたいところだが……。
「あっ! 赤来戸くん! さっき格好良かったね。惚れちゃいそうだよ!」
好感度は上がっているようだし、この選択も間違いではなかったのかもしれない。あとは、カッス待ちだな。
「太郎すごかったねーっ! みけの、太郎が強いの知らなかったよっ! すごいっ!」
なんだか久しぶりな気がするみけも太郎を褒めているし、まあそこそこ良い結果に終わったんだろう。
「さ、ほーちゃん帰ろうか」
あっという間に人がはけ、太郎と2人で家に帰る。その途中。
「ねぇ、ほーちゃん」
「なんだ?」
「ほーちゃんといると、ドキドキすることばかりだね」
不良と戦ったり触手から逃げたり、まあドキドキは多いのかもしれない。
「びゃおで読んだんだけど、これって恋のときめきと」
「違う」
隙あらばエンディングを迎えたがる太郎は置いておいて。
「勝利の証だ。お前が持っておけ」
第二ボタンを体よく押し付けることには成功した。
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