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幼少期編

mission18 要件を満たしてイベントを発生させよ!

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 幼なじみの春日野みけの、メインヒロインの桐生すみれ、本屋のチョロイン箱森ひより、アホの子鹿峰わかな、二周目アイドル宮藤まなみ。
 始まりの日に出会ったみけを含めて、3日間で5人のヒロインと出会ったわけだが。


『面白い顔をして何を悩んでるぷん?』
「面白い顔はしていないな」


 今後の攻略法を考えていただけだ。残るは12人のヒロインと隠しキャラ3人。14日のうち3日を終えて、残り11日。一日会うことができるのは基本的には一人だけ。そして。

「4日目の今日からはキャライベントも発生してくるからな。取捨選択が重要になってくるんだよ」
『そんなこと我なら分かって……投げようとするなぷん!』

 4日目の今日の午後には早速5イベントが被っている。みけのイベント、新キャラとの出会いイベント3つ。そして、本命の鹿峰イベント。

 攻略本の取り扱いを見るに、みけのイベントはどうでも良さそうだが、鹿峰のイベントは攻略に必須な気がする。一枚絵あるし。
 パラメータ被りの綾咲かなえに出会えないのはつらいが、こちらの方はあと何回かチャンスがあるようだし、致し方ないだろう。


「ほーちゃん、本終わったよー」


 その言葉を受けて、急いで廊下に出てポーズをしてからステータスを確認。初日から全振りしただけあって、魅力は順調に上がっていた。といっても、ほぼゼロから10になったくらいで、一番高い学力の50には遠く及ばないが。
 この調子でいけばデートで帰られない最低限の数値の20までは難なく上げられそうだ。


「出かけるか」


 ポーズを解いて、鹿峰わかながいる海辺を目指す。



◇ ◇ ◇



 海辺に着いた。今日も海水浴客はいないようだったが。



「誰もいないみたいだ……」



 太郎の言葉通り、肝心の鹿峰もどこにもいなかった。学力・体力が30以上あれば必ずイベントが起こるはずなのに。

「さっ、ほーちゃん帰ろうか」
「ちょっと待て。鹿峰がどこかにいるかもしれないから探さないと」

 何考えてるか分かんない奴だから、どこかに隠れている可能性がある。探せばなんとか……いや、もしかしたら探すこともイベントなのか?


「何言ってるの。ほーちゃん」


 そんな俺に太郎が呆れたように言う。



「もう、夕方だよ」



 カラスの鳴く声、赤く染まっていく空。太郎の言う通り、先ほどまで確かに昼間だった景色は夕方に一変していた。

「な、どういう。なんで?」
『誰もいない目的地に来ると、太郎が一言喋ってその日の行動は終了するぷん』

 前やったことがあるゲームでもよくあった描写だ。ヒロインがおらず空振った場合に主人公が一言喋って帰るだけ。それに倣う形で太郎はすでに帰路に着いている。

「鹿峰は……まさか、またバグか?」

 桐生すみれのように、他の場所へ行っていたのか?

『違うぷん』

 その考えはあっさりと否定された。


『バグの気配も時空の狭間の気配もないぷん。単純に要件を満たしてないと判断されたぷん』


 要件は先ほども確認した通り、学力・体力ともに30以上。太郎は学力50・体力32だから、クリアしているはずなのに。

「ポーズっ!」

 太郎の側に寄り、

「ステータスっ!」

 ステータスを確認してもそこに問題はない。必要条件は満たしている。


「カッス。鹿峰のこのイベントは起こさなくても問題ないものか?」
『ぷん。高校時代からはフラグもステータスで見れるぷんが……。ちょっと確認してみるぷん』
「頼んだ」


 どうでもいいイベントなら問題ないが……。カッスはどこかへ確認しに行ったようだし、一先ずポーズを解いて太郎の元へ戻る。本命がいきなり攻略不可になるような状況は不味い。なんとかしないと……。ん?


「ほまれ! 助けてくれ!」


 お呼びじゃない野球が現れた。

「今忙しいんだ。じゃあ」
「空き地が不良の高校生達に乗っ取られたんだ!」
「そもそも空き地は俺らのもんでもないだろ」

 話を聞くと、野球が空き地で野球の練習をしていると、不良にタバコを吸うから出て行けと命じられたらしい。世も末だな。

「必死にバットで殴ったんだけど、アイツらビクともしなくてさ」
「どっちも怖いわ」

 躊躇いなくバットで殴るな。

「あのメリケンサックがなければ……くそっ!」
「久しぶりに聞いた」

 今も売ってるのかな? メリケンサック。


「ほーちゃん、どうする?」


 カッスがいないから判断が難しいが、多分偶発的なイベントなんだろう。どんなイベントで誰がいるかは分からないが……。


「行くか」


 今日一日を無駄に過ごすよりは、何かしておいた方がいいだろう。



「うん。……肩慣らしにはちょうど良さそうだしね」



 何回肩を慣らすんだお前は。





 とりあえず、空き地へ急ごう。
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