攻略不能ゲーム攻略作戦 〜濃厚ホモエンドを回避せよ!〜

めの。

文字の大きさ
上 下
13 / 66
幼少期編

mission12 バグに負けずに攻略せよ!

しおりを挟む
 夏の日差しが眩しい中。俺と太郎は図書館へと歩みを進めていた。

「こう、こうかな?」
「多分早々尻を触る機会はないと思うぞ」

 いくらギャルゲーでも。開始数分でパンチラが見えると話題になったゲームは確かあったが。それはともかく、図書館に向かっているのにはもちろん理由がある。

 桐生すみれ

 このゲームのメインヒロインに出会うためだ。攻略本によれば、彼女とはこの日に出会っておかないと攻略が不可になるという初日からとんでもない地雷を抱えているようで。
 他のヒロインの選択肢もあったが、学力・体力・魅力を重視する彼女は今の太郎のパラメータから見ても攻略しやすい方だ。太郎は学力は高めだし体力もそこそこある。魅力は勉強中だが、無碍に逃す手はない。


「ん?」


 視界の端に何かが見切れた。紫色の……桐生すみれと同じ髪が見切れた気がする。

「おい、カッスよ」
『尊大に呼ぶなぷん』

 そこに引っかかるな。太郎はエア尻を撫でながら前を歩いている。今のうちに話しておこう。

「さっき桐生すみれが歩いていかなかったか?」
『ぷん。水族館方面へ歩いて行ったぷんね』
「図書館とは逆方向だな」
『まあ、ただのバグぷんね』

 冷静に言うな。

「クッソ、バグ多すぎなんだよ! なんだよこのゲームは!」
「ほーちゃん? どうかした?」
「気を鎮めるために尻を触ろうとするな! 手を下ろせ!」

 あらゆるところが危険でいっぱいだった。なんなのもう。


「ドラゴン。お前はこれから一人で図書館に行くんだ。必ず図書館を真っ直ぐ目指せ」
「え? ほーちゃんは?」
「退っ引きならない用事ができた。必ず追いつくから図書館へ行っておいてほしい。そこの道を真っ直ぐだ。分かったな」


 事態が飲み込めていなさそうなのがやや不安だったが、太郎はそのままにして桐生すみれを追いかける。が、足が早いせいかバグのせいか見当たらない。


「お! ほまれじゃないか! 野球しようぜ!」


 探してない男子3人組が声をかけてきた。

「誰だよお前らは!」
「何言ってんだよほまれ。磯野と中島と野球じゃないか」

 左と右の奴がどっかから名前をパクっているのは分かったが。

「ごめん、真ん中のお前の名前もう一回言って」
「ベスボだよ。野球と書いてベスボ!」
「もっとマシな名前があっただろうが!」

 のぼーるとかでもこの際いいよ! なんだよベスボって! 微妙に言いづらいんだよ! ベースボールをそんな略し方している奴見たことねぇよ、畜生!


「渾名はベースケなんだけど、この名前はじいちゃんが野球好きになるようにと付けてくれた名前で……」


 長い話が始まりそうだった。こんなことをしている場合じゃない。あと、渾名にベースボールみが感じられない。

「悪い、急ぐから!」
「おいおい! 鬼ごっこだってよ! 捕まえたら野球するぞ!」
「誰がそんなこと言った!?」

 話は通じないが律儀に10数えている間に逃げることにする。


『あれもバグぷんね。本来、太郎と一緒にいる時じゃないと出会わないはずぷん』
「バグバグバグバグ多すぎなんだよ! 邪魔だし話聞いてくれないし桐生すみれはどっか行くし良いことなしだよ!」
『そんな考えじゃだめぷん。ポリアンナという少女は貧しいながらも日々よかった探しを』
「うるせぇっ!」


 カッスはどうでもいいとして、一度止まって後ろを見る。まだ数を数えていたはずだが。


「なにあれ」


 黒いうにょうにょとした触手いっぱいの塊が磯野を捕らえていた。


『時空の狭間ぷん』
「もうちょっと説明もらえる!?」


 ツッコんでる間に逃げようとしていた中島も呑みこまれた。


「あっ……やっ!? だめ、こんなの……あぁっ!」


 なんか聞きたくもないが磯野と中島の嬌声が聞こえる気がする。野球はどこかへ逃げたようだが、となると、あの黒い塊はこちらへ目標を定めたわけで。俺が逃げなきゃ。

『えっと……。ほら、ポーズの時と同じ感じぷん。バグとか本来存在しない変な要素を排除するために時空の狭間がお掃除代わりに呑み込むぷん。修正ソフト? 的な役割ぷん』
「呑み、こまれたら、どうなるんだよっ!」

 全力で走りながらなので、すぐに返すことができない。


『あんな感じで気持ち良くなって現実世界にお帰りいただくだけぷん。ただ……』
「なんだよ!」
『余程気持ち良いのか、現実世界でもアブノーマルな性癖が残るぷん』


 カッスのその言葉には嫌な予感しかしない。

『でも、ホモが嫌ならこっちが良いかもしれないぷん! 呑み込まれて現実世界に戻ってタコ飼い始めた人もいるくらいだしなんとかなるぷん!』
「なるかっ!」

 確かにこのゲームの配信してた妄想ジェットさんがしばらく音沙汰なかった後にタコの怪しい動画投稿し始めておかしいとは思ってたんだよ!


「俺はっ! 女の子が好きなんだよっ! 恋愛の相手もっ、触手にまみれるのもっ、女の子がいいんだよ!」


 ショタの喘ぎ声に需要はないし、自分が触手にまみれたい願望はない。


『ぷぷん? でも、磯野と中島の声優さんは女性ぷん』
「え?」


 足を止めて耳をすませてみた。本当だ。触手はすぐそばまできた。


「クッソ! バッカ! バカッス! 足止めちまったじゃねぇか!」
『今の我が悪いぷん!?』


 細い路地に入りなんとか追跡をかわす。よし、次は……右だ!



「きゃっ!」



 全速力の俺とぶつかって、尻餅をついたのは。




「桐生、すみれ?」





 触手はすぐそこまできている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...