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幼少期編
mission12 バグに負けずに攻略せよ!
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夏の日差しが眩しい中。俺と太郎は図書館へと歩みを進めていた。
「こう、こうかな?」
「多分早々尻を触る機会はないと思うぞ」
いくらギャルゲーでも。開始数分でパンチラが見えると話題になったゲームは確かあったが。それはともかく、図書館に向かっているのにはもちろん理由がある。
桐生すみれ
このゲームのメインヒロインに出会うためだ。攻略本によれば、彼女とはこの日に出会っておかないと攻略が不可になるという初日からとんでもない地雷を抱えているようで。
他のヒロインの選択肢もあったが、学力・体力・魅力を重視する彼女は今の太郎のパラメータから見ても攻略しやすい方だ。太郎は学力は高めだし体力もそこそこある。魅力は勉強中だが、無碍に逃す手はない。
「ん?」
視界の端に何かが見切れた。紫色の……桐生すみれと同じ髪が見切れた気がする。
「おい、カッスよ」
『尊大に呼ぶなぷん』
そこに引っかかるな。太郎はエア尻を撫でながら前を歩いている。今のうちに話しておこう。
「さっき桐生すみれが歩いていかなかったか?」
『ぷん。水族館方面へ歩いて行ったぷんね』
「図書館とは逆方向だな」
『まあ、ただのバグぷんね』
冷静に言うな。
「クッソ、バグ多すぎなんだよ! なんだよこのゲームは!」
「ほーちゃん? どうかした?」
「気を鎮めるために尻を触ろうとするな! 手を下ろせ!」
あらゆるところが危険でいっぱいだった。なんなのもう。
「ドラゴン。お前はこれから一人で図書館に行くんだ。必ず図書館を真っ直ぐ目指せ」
「え? ほーちゃんは?」
「退っ引きならない用事ができた。必ず追いつくから図書館へ行っておいてほしい。そこの道を真っ直ぐだ。分かったな」
事態が飲み込めていなさそうなのがやや不安だったが、太郎はそのままにして桐生すみれを追いかける。が、足が早いせいかバグのせいか見当たらない。
「お! ほまれじゃないか! 野球しようぜ!」
探してない男子3人組が声をかけてきた。
「誰だよお前らは!」
「何言ってんだよほまれ。磯野と中島と野球じゃないか」
左と右の奴がどっかから名前をパクっているのは分かったが。
「ごめん、真ん中のお前の名前もう一回言って」
「ベスボだよ。野球と書いてベスボ!」
「もっとマシな名前があっただろうが!」
のぼーるとかでもこの際いいよ! なんだよベスボって! 微妙に言いづらいんだよ! ベースボールをそんな略し方している奴見たことねぇよ、畜生!
「渾名はベースケなんだけど、この名前はじいちゃんが野球好きになるようにと付けてくれた名前で……」
長い話が始まりそうだった。こんなことをしている場合じゃない。あと、渾名にベースボールみが感じられない。
「悪い、急ぐから!」
「おいおい! 鬼ごっこだってよ! 捕まえたら野球するぞ!」
「誰がそんなこと言った!?」
話は通じないが律儀に10数えている間に逃げることにする。
『あれもバグぷんね。本来、太郎と一緒にいる時じゃないと出会わないはずぷん』
「バグバグバグバグ多すぎなんだよ! 邪魔だし話聞いてくれないし桐生すみれはどっか行くし良いことなしだよ!」
『そんな考えじゃだめぷん。ポリアンナという少女は貧しいながらも日々よかった探しを』
「うるせぇっ!」
カッスはどうでもいいとして、一度止まって後ろを見る。まだ数を数えていたはずだが。
「なにあれ」
黒いうにょうにょとした触手いっぱいの塊が磯野を捕らえていた。
『時空の狭間ぷん』
「もうちょっと説明もらえる!?」
ツッコんでる間に逃げようとしていた中島も呑みこまれた。
「あっ……やっ!? だめ、こんなの……あぁっ!」
なんか聞きたくもないが磯野と中島の嬌声が聞こえる気がする。野球はどこかへ逃げたようだが、となると、あの黒い塊はこちらへ目標を定めたわけで。俺が逃げなきゃ。
『えっと……。ほら、ポーズの時と同じ感じぷん。バグとか本来存在しない変な要素を排除するために時空の狭間がお掃除代わりに呑み込むぷん。修正ソフト? 的な役割ぷん』
「呑み、こまれたら、どうなるんだよっ!」
全力で走りながらなので、すぐに返すことができない。
『あんな感じで気持ち良くなって現実世界にお帰りいただくだけぷん。ただ……』
「なんだよ!」
『余程気持ち良いのか、現実世界でもアブノーマルな性癖が残るぷん』
カッスのその言葉には嫌な予感しかしない。
『でも、ホモが嫌ならこっちが良いかもしれないぷん! 呑み込まれて現実世界に戻ってタコ飼い始めた人もいるくらいだしなんとかなるぷん!』
「なるかっ!」
確かにこのゲームの配信してた妄想ジェットさんがしばらく音沙汰なかった後にタコの怪しい動画投稿し始めておかしいとは思ってたんだよ!
「俺はっ! 女の子が好きなんだよっ! 恋愛の相手もっ、触手にまみれるのもっ、女の子がいいんだよ!」
ショタの喘ぎ声に需要はないし、自分が触手にまみれたい願望はない。
『ぷぷん? でも、磯野と中島の声優さんは女性ぷん』
「え?」
足を止めて耳をすませてみた。本当だ。触手はすぐそばまできた。
「クッソ! バッカ! バカッス! 足止めちまったじゃねぇか!」
『今の我が悪いぷん!?』
細い路地に入りなんとか追跡をかわす。よし、次は……右だ!
「きゃっ!」
全速力の俺とぶつかって、尻餅をついたのは。
「桐生、すみれ?」
触手はすぐそこまできている。
「こう、こうかな?」
「多分早々尻を触る機会はないと思うぞ」
いくらギャルゲーでも。開始数分でパンチラが見えると話題になったゲームは確かあったが。それはともかく、図書館に向かっているのにはもちろん理由がある。
桐生すみれ
このゲームのメインヒロインに出会うためだ。攻略本によれば、彼女とはこの日に出会っておかないと攻略が不可になるという初日からとんでもない地雷を抱えているようで。
他のヒロインの選択肢もあったが、学力・体力・魅力を重視する彼女は今の太郎のパラメータから見ても攻略しやすい方だ。太郎は学力は高めだし体力もそこそこある。魅力は勉強中だが、無碍に逃す手はない。
「ん?」
視界の端に何かが見切れた。紫色の……桐生すみれと同じ髪が見切れた気がする。
「おい、カッスよ」
『尊大に呼ぶなぷん』
そこに引っかかるな。太郎はエア尻を撫でながら前を歩いている。今のうちに話しておこう。
「さっき桐生すみれが歩いていかなかったか?」
『ぷん。水族館方面へ歩いて行ったぷんね』
「図書館とは逆方向だな」
『まあ、ただのバグぷんね』
冷静に言うな。
「クッソ、バグ多すぎなんだよ! なんだよこのゲームは!」
「ほーちゃん? どうかした?」
「気を鎮めるために尻を触ろうとするな! 手を下ろせ!」
あらゆるところが危険でいっぱいだった。なんなのもう。
「ドラゴン。お前はこれから一人で図書館に行くんだ。必ず図書館を真っ直ぐ目指せ」
「え? ほーちゃんは?」
「退っ引きならない用事ができた。必ず追いつくから図書館へ行っておいてほしい。そこの道を真っ直ぐだ。分かったな」
事態が飲み込めていなさそうなのがやや不安だったが、太郎はそのままにして桐生すみれを追いかける。が、足が早いせいかバグのせいか見当たらない。
「お! ほまれじゃないか! 野球しようぜ!」
探してない男子3人組が声をかけてきた。
「誰だよお前らは!」
「何言ってんだよほまれ。磯野と中島と野球じゃないか」
左と右の奴がどっかから名前をパクっているのは分かったが。
「ごめん、真ん中のお前の名前もう一回言って」
「ベスボだよ。野球と書いてベスボ!」
「もっとマシな名前があっただろうが!」
のぼーるとかでもこの際いいよ! なんだよベスボって! 微妙に言いづらいんだよ! ベースボールをそんな略し方している奴見たことねぇよ、畜生!
「渾名はベースケなんだけど、この名前はじいちゃんが野球好きになるようにと付けてくれた名前で……」
長い話が始まりそうだった。こんなことをしている場合じゃない。あと、渾名にベースボールみが感じられない。
「悪い、急ぐから!」
「おいおい! 鬼ごっこだってよ! 捕まえたら野球するぞ!」
「誰がそんなこと言った!?」
話は通じないが律儀に10数えている間に逃げることにする。
『あれもバグぷんね。本来、太郎と一緒にいる時じゃないと出会わないはずぷん』
「バグバグバグバグ多すぎなんだよ! 邪魔だし話聞いてくれないし桐生すみれはどっか行くし良いことなしだよ!」
『そんな考えじゃだめぷん。ポリアンナという少女は貧しいながらも日々よかった探しを』
「うるせぇっ!」
カッスはどうでもいいとして、一度止まって後ろを見る。まだ数を数えていたはずだが。
「なにあれ」
黒いうにょうにょとした触手いっぱいの塊が磯野を捕らえていた。
『時空の狭間ぷん』
「もうちょっと説明もらえる!?」
ツッコんでる間に逃げようとしていた中島も呑みこまれた。
「あっ……やっ!? だめ、こんなの……あぁっ!」
なんか聞きたくもないが磯野と中島の嬌声が聞こえる気がする。野球はどこかへ逃げたようだが、となると、あの黒い塊はこちらへ目標を定めたわけで。俺が逃げなきゃ。
『えっと……。ほら、ポーズの時と同じ感じぷん。バグとか本来存在しない変な要素を排除するために時空の狭間がお掃除代わりに呑み込むぷん。修正ソフト? 的な役割ぷん』
「呑み、こまれたら、どうなるんだよっ!」
全力で走りながらなので、すぐに返すことができない。
『あんな感じで気持ち良くなって現実世界にお帰りいただくだけぷん。ただ……』
「なんだよ!」
『余程気持ち良いのか、現実世界でもアブノーマルな性癖が残るぷん』
カッスのその言葉には嫌な予感しかしない。
『でも、ホモが嫌ならこっちが良いかもしれないぷん! 呑み込まれて現実世界に戻ってタコ飼い始めた人もいるくらいだしなんとかなるぷん!』
「なるかっ!」
確かにこのゲームの配信してた妄想ジェットさんがしばらく音沙汰なかった後にタコの怪しい動画投稿し始めておかしいとは思ってたんだよ!
「俺はっ! 女の子が好きなんだよっ! 恋愛の相手もっ、触手にまみれるのもっ、女の子がいいんだよ!」
ショタの喘ぎ声に需要はないし、自分が触手にまみれたい願望はない。
『ぷぷん? でも、磯野と中島の声優さんは女性ぷん』
「え?」
足を止めて耳をすませてみた。本当だ。触手はすぐそばまできた。
「クッソ! バッカ! バカッス! 足止めちまったじゃねぇか!」
『今の我が悪いぷん!?』
細い路地に入りなんとか追跡をかわす。よし、次は……右だ!
「きゃっ!」
全速力の俺とぶつかって、尻餅をついたのは。
「桐生、すみれ?」
触手はすぐそこまできている。
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