攻略不能ゲーム攻略作戦 〜濃厚ホモエンドを回避せよ!〜

めの。

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幼少期編

mission8 落としものを発見せよ!

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「ここもバグってたのか……」


 このゲームのパラメータのMAX値は100。なんということはない。設定されたパラメータ以下だったからイベントが起こらなかっただけだ。


『あ、あのー……そろそろ、我の助け欲しくないかぷん?』
「ああ、ほしいほしい。とりあえず戻ってからな」


 元の位置は戻りポーズを取って時間が動き出すと同時に走って二人の後ろへ。今度は太郎にも怪しまれなかったようだ。


「カッス。全パラメータを90以上にすることはできるのか?」
『ぷん。難しいけど不可能ではないぷん。パラメータは第1章だけじゃなくて、第二章の高校一年生の間はあげられるぷん。ヒロイン達とのルートに入ったら上げられなくなるぷんが……』


 しおらしいと有益な情報が出てくるのか。面倒くさいヤツだな。しかし、今の情報からだとみけを狙うにはハードルが高すぎる。


「あれっ……あれっ? みけののキーホルダー、知らない?」
「うん。もしかして落としちゃった?」


 二人が騒いでいるので近くに寄ってみたが、どうやらキーホルダーをなくしたようだった。そういえば、ポシェットに付いていたキーホルダーがないな。

「どうしよう。さっき川で音がしたけど、もしかして……」

 あれはカッスが川に飛び込んだ音だ。

「とりあえず来た道を戻って探そうか。ほーちゃんどう思う?」

 記憶を総動員して思い出す。これはやったことがあるイベントだ。この時点で選択肢が無駄に6つもあって、間違えるとフリーズして終了する。まあ、散々やったから答えは知っているので問題ない。


「そうだな。俺が川の近くを探してくるから、ドラゴンは戻って探してくれないか? カーブミラーの下辺りを念入りに」


 俺が行く方は空振りではあるが、ここは太郎に見つけさせておいた方が無難だろう。攻略しないキャラであれ好感度は高いに越したことはない。

「ええっ! ダメだよほーちゃん。川の近くに一人で行くなんて危ないよ!」

 どうせ行ったフリだけだからいいんだよ。余計な気を遣うな。

「じゃあ、みけのが行こうか?」
「女の子は流されるからだめだよ!」

 この世代の男女でそこまで差が出るものでもないだろ。なんだよ女子だけ確実に流される川って。


「じゃあ……」
「川には……僕が行く」


 行くな。ここで決意固められるとこっちが困るんだよ。

『ど、どどどどうするぷん!? 修羅場ってやつぷん?』
「お前はもう少し落ち着けよ」

 その場のノリにお前が流されてどうする。


「いいよいいよっ! 2年前にほーちゃんが夏祭りの屋台で買ってくれてからずっとつけててすっごく大事なお守りみたいなものだったんだけど、二人に比べたらうんちみたいなものだしっ!」


 言い方。


「でも、そのうんちみたいなものでもみけにとっては宝物だったんでしょ! なら……行くしかないよ!」

 猫のキーホルダーだよ。何がうんちみたいなものだ。

『ご、ごばばばばっ! 我は修羅場に慣れてないぷん! 頭が割れてしまうぷん!』
「耐性なさすぎだろ」

 面倒臭くなってきたので、この修羅場を終わらせることにする。


「とりあえずみんなで一回元の道を戻るか。川は見つからなかった時に考えよう」


 そう。別に川へ行く必要はないのだ。俺がなんとなく太郎にキーホルダーを見つけさせようとしただけ。正直、ここの選択肢が他にそんなに影響を与えるとも思えないし、さっさと見つけて進もう。

「あったぁ! 良かった!」
「だねー! 案外と近くにあってよかった。あれ、でもカーブミラーを念入りにって……あれ?」

 思い出すな。カンのいいガキは嫌いなんだよ。忘れておけ。


「ほーちゃん、太郎。ありがとっ! すっごく大事なキーホルダーだったから……本当によかったぁ」


 さっきうんちみたいって言われていなければ嬉しいセリフだった。

「ほーちゃんやっぱり優しいよねっ! さっきも川に行くの危険なのに自分から言ってくれたし」
「うん。なかなかできることじゃないと思うよ」

 太郎もその後すぐに川に行くって言ってたから同レベルだろ。遠回しに太郎自身も褒めてないか?


「ほーちゃんありがとっ! だいすきっ!」


 可愛いけど、俺に言われても困る。お前は太郎の攻略相手なんだよ。

「あ、みけばっかりずるい! 僕だってほーちゃんのことーー」
「お前はそれ以上言うなっ!」

 危うく告白されるところだった。これだけでエンディングに行くかは分からないが、避けておいた方が無難だろう。

「ドラゴン、みけ。そういうふうに思ってくれるのは嬉しいが、そういった言葉は本当に好きな相手にしか言っちゃダメだ。その時まで取っておけ」
「ええっ! でもみけのは」

 その先を言いたげなみけの言葉は遮る。どっちかというとこの話を聴かせたいのは太郎だ。

「そうだな。高校三年生の卒業の時までは言わない方がいい」
「えっ……具体的すぎて気持ち悪い……」

 引くなよ。意識づけだよ。


「でも、ほーちゃん」


 引いたくせに、みけはこちらをまっすぐ見つめて。笑う。



「わたしは、たぶん。ずっと、ずーっと。ほーちゃんが好きだよ」



 なまじイラストが良い分。破壊力抜群だった。




『まあ、パラメータさえ上回れば普通に太郎を好きになるぷんけどね』
「台無しだよ」


 ただのビッチに見えるだろうが。


『あれ? でもなんだかちょっと顔が赤いぷん? ぷぷーっ! やっぱりこういう告白に慣れてないぷんね! 我の見立て通りだったわけぷん。全く、事実を言われたからってムカつかないでほしいぷん!』


 事実ではあるが、ムカつくことに変わりはないので。




 ぽちゃん




 魚が跳ねたような音をたてておいた。
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