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第二十章
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尼崎に戻ってきた私は、まず雄輝連合会の会長のところへ挨拶をしに行った。
会長はこの当時、細川組の若頭になろうとしていた時期だったのに、こんな私の事を笑って迎えてくれた。
会長への挨拶を済ませてから、本部長と話をした。
本部長には、これからはシノギよりも組事に専念したいと考えている事を伝えた。
私は、十八歳の頃からヤクザをしてきたけれど、これまではシノギしかしてこなかった。
そのほとんどが、覚せい剤だった。
猪ちゃんとの関わり、びわこダルクでの生活を経た私は、覚せい剤とは縁を切る考えを固めていた。
本部長はこの頃、細川組の直参に昇格する話があり、この後すぐ、細川組の事務局長に就任する事になる。
その流れで、私も本部に入るようになった。
山口組本家のガレージ当番のメンバーにも選ばれた。
さて、びわこダルク入寮中に雄輝連合会本部長、改め、細川組事務局長にあずけた、シンとハヤトはどうしているのかと言うと、、、
シンは私の若い衆として本部にも入り、親分の運転手までするようになっていた。
刑務官の息子が、、、
ポン中になったあげく、、、
ダルクに入寮して、、、
それから、山口組直系組長の運転手をするようになったのだから、世の中、何が起こるか判らないものだ。
ハヤトはと言うと、やはり私の若い衆としてではあったけれど、会長が経営している建設会社で働いていた。
私は、阪神尼崎にマンションを借りて生活するようにしていた。
私が自宅でくつろいでいる時、事務局長から電話がかかってきた。
「おはようございます」
「おはよう、今大丈夫か?」
「はい」
「ほな悪いけど、すぐ来てくれ」
「何かあったんでっか?」
「シンが会長の車乗ったまんまおらんようなったんや、携帯もつながらん」
「すぐ行きますわ」
私は事務局長からの電話を切って、すぐシンに電話をしてみた。
やはり電源が切られていた。
私はすぐに事務所へ向かった。
ヤクザをしていて、飛ぶ人間というのは少なくはない。
その大半が、覚せい剤を使用しておかしくなって飛ぶか、金銭問題で飛ぶか、ヤキを入れられて飛ぶかのいずれかだ。
シンが覚せい剤を使っていたのかは知らないけれど、、、
会長の車に乗ったまま行方不明だという事と、シンが持っている携帯電話が事務所で使っている物だという事、、、
私はその事が気が気ではなかった。
結局、会長の車は見つかって、シンが飛んだ先も判ったのだが、そうなる事を想定出来なかった私が甘かったんだろう。
そんな訳で、細川組に復帰して最初の仕事はシンの尻ぬぐいからという事になってしまった。
ハヤトはというと、、、
暫くの間はもっていたんだけれど、やはりシンの後を追うように飛んで行ってしまった。
本当に私が甘かったという事だ。
細川組では勉強させられる事が多かった。
細川組の本部は、一階が事務所、二階が大広間、そして三階は親分の自宅となっている。
山口組直系組織の中で、そういった形は稀だと思う。
だけど、プラチナ(山口組直系組長)と直接関わる事が出来るなんて、他の組織ではなかなかないだろう。
私にとっては本当に貴重な経験となった。
私は、親分のボディーガードを兼ねて、親分の買い物に同行する事があった。
親分が買い物をするために園田へ車で向かっていた時、、、
買い物袋を下げたオバサンが、私達の乗った車に手を振りながら近寄ってくるではないか、、、
「親分さぁ~ん」
親分は車の窓を開けて、そのオバサンにこたえていた。
「親分さん、もぉいいんですか?」
「この前、退院しましたんや」
私は、親分とオバサンとのやり取りを助手席で聞いていたんだけれど、、、
時代劇だけの話だと思っていた、、、
地元の堅気衆から慕われているヤクザ、、、
それを目の当たりにした時、私はある種の感動を覚えた。
親分に同行している時、こういった事は結構な頻度で起こった。
細川組では本部当番者が本部周辺の民家の前まで掃除をする。
「いつも有り難うございます」
近所の人達は気軽に声をかけてくれる。
やはりヤクザというのは、本来、そうあるべきなんだと認識させられた。
私は、これまでシノギ一辺倒だった生活を正反対に切りかえて、、、
細川組では、本部当番、山口組本家のガレージ当番、義理事等、組事に専念するようになっていた。
だけど、やはり何かしなければ生活は出来ない。
そんな時、知らない携帯番号からの着信があった。
「リュウジか?」
「どちらはんでっか?」
私に電話をかけてきた相手は、小園出身の怪物、マッサンだった。
「マッサン?」
「おう、そうや」
「どないしたんでっか?」
「ちょっとリュウジに頼みたい事あんねん」
「何でっか?」
「取り立てなんやけどな、ちょっと手伝ってくれへんか?」
「取り立てでっか、、、」
私は、マッサンからの突然の電話に戸惑いはしたものの、とりあえず待ち合わせの約束をして電話を切った。
後日、マッサンと会って、ある程度の話を聞いた。
取り立てをする相手は某組織の相談役で、取り立てた金は折半するというものだった。
相手がヤクザという事であれば、何の問題もないだろう。
私はその話をすぐに請け負った。
そして、そのままマッサンと二人で取り立てに向かった。
マッサンのシノギは、ヤクザ相手の取り立てばかりだった。
勿論、ほぼヤカラなのは言うまでもない。
相手がヤクザならという事で、私はマッサンと一緒に取り立てに回るようになった。
その他に私はこの頃、大阪で飲み屋等を経営している人物と関わるようになっていた。
その流れで、飲み屋の守りをするようになったので、生活自体に不自由はなくなってきていた。
会長はこの当時、細川組の若頭になろうとしていた時期だったのに、こんな私の事を笑って迎えてくれた。
会長への挨拶を済ませてから、本部長と話をした。
本部長には、これからはシノギよりも組事に専念したいと考えている事を伝えた。
私は、十八歳の頃からヤクザをしてきたけれど、これまではシノギしかしてこなかった。
そのほとんどが、覚せい剤だった。
猪ちゃんとの関わり、びわこダルクでの生活を経た私は、覚せい剤とは縁を切る考えを固めていた。
本部長はこの頃、細川組の直参に昇格する話があり、この後すぐ、細川組の事務局長に就任する事になる。
その流れで、私も本部に入るようになった。
山口組本家のガレージ当番のメンバーにも選ばれた。
さて、びわこダルク入寮中に雄輝連合会本部長、改め、細川組事務局長にあずけた、シンとハヤトはどうしているのかと言うと、、、
シンは私の若い衆として本部にも入り、親分の運転手までするようになっていた。
刑務官の息子が、、、
ポン中になったあげく、、、
ダルクに入寮して、、、
それから、山口組直系組長の運転手をするようになったのだから、世の中、何が起こるか判らないものだ。
ハヤトはと言うと、やはり私の若い衆としてではあったけれど、会長が経営している建設会社で働いていた。
私は、阪神尼崎にマンションを借りて生活するようにしていた。
私が自宅でくつろいでいる時、事務局長から電話がかかってきた。
「おはようございます」
「おはよう、今大丈夫か?」
「はい」
「ほな悪いけど、すぐ来てくれ」
「何かあったんでっか?」
「シンが会長の車乗ったまんまおらんようなったんや、携帯もつながらん」
「すぐ行きますわ」
私は事務局長からの電話を切って、すぐシンに電話をしてみた。
やはり電源が切られていた。
私はすぐに事務所へ向かった。
ヤクザをしていて、飛ぶ人間というのは少なくはない。
その大半が、覚せい剤を使用しておかしくなって飛ぶか、金銭問題で飛ぶか、ヤキを入れられて飛ぶかのいずれかだ。
シンが覚せい剤を使っていたのかは知らないけれど、、、
会長の車に乗ったまま行方不明だという事と、シンが持っている携帯電話が事務所で使っている物だという事、、、
私はその事が気が気ではなかった。
結局、会長の車は見つかって、シンが飛んだ先も判ったのだが、そうなる事を想定出来なかった私が甘かったんだろう。
そんな訳で、細川組に復帰して最初の仕事はシンの尻ぬぐいからという事になってしまった。
ハヤトはというと、、、
暫くの間はもっていたんだけれど、やはりシンの後を追うように飛んで行ってしまった。
本当に私が甘かったという事だ。
細川組では勉強させられる事が多かった。
細川組の本部は、一階が事務所、二階が大広間、そして三階は親分の自宅となっている。
山口組直系組織の中で、そういった形は稀だと思う。
だけど、プラチナ(山口組直系組長)と直接関わる事が出来るなんて、他の組織ではなかなかないだろう。
私にとっては本当に貴重な経験となった。
私は、親分のボディーガードを兼ねて、親分の買い物に同行する事があった。
親分が買い物をするために園田へ車で向かっていた時、、、
買い物袋を下げたオバサンが、私達の乗った車に手を振りながら近寄ってくるではないか、、、
「親分さぁ~ん」
親分は車の窓を開けて、そのオバサンにこたえていた。
「親分さん、もぉいいんですか?」
「この前、退院しましたんや」
私は、親分とオバサンとのやり取りを助手席で聞いていたんだけれど、、、
時代劇だけの話だと思っていた、、、
地元の堅気衆から慕われているヤクザ、、、
それを目の当たりにした時、私はある種の感動を覚えた。
親分に同行している時、こういった事は結構な頻度で起こった。
細川組では本部当番者が本部周辺の民家の前まで掃除をする。
「いつも有り難うございます」
近所の人達は気軽に声をかけてくれる。
やはりヤクザというのは、本来、そうあるべきなんだと認識させられた。
私は、これまでシノギ一辺倒だった生活を正反対に切りかえて、、、
細川組では、本部当番、山口組本家のガレージ当番、義理事等、組事に専念するようになっていた。
だけど、やはり何かしなければ生活は出来ない。
そんな時、知らない携帯番号からの着信があった。
「リュウジか?」
「どちらはんでっか?」
私に電話をかけてきた相手は、小園出身の怪物、マッサンだった。
「マッサン?」
「おう、そうや」
「どないしたんでっか?」
「ちょっとリュウジに頼みたい事あんねん」
「何でっか?」
「取り立てなんやけどな、ちょっと手伝ってくれへんか?」
「取り立てでっか、、、」
私は、マッサンからの突然の電話に戸惑いはしたものの、とりあえず待ち合わせの約束をして電話を切った。
後日、マッサンと会って、ある程度の話を聞いた。
取り立てをする相手は某組織の相談役で、取り立てた金は折半するというものだった。
相手がヤクザという事であれば、何の問題もないだろう。
私はその話をすぐに請け負った。
そして、そのままマッサンと二人で取り立てに向かった。
マッサンのシノギは、ヤクザ相手の取り立てばかりだった。
勿論、ほぼヤカラなのは言うまでもない。
相手がヤクザならという事で、私はマッサンと一緒に取り立てに回るようになった。
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