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第25話 恋だとか想いとか
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「本っ当に、兄がご迷惑をおかけしました!」
遅くまで帰らない両親に代わり、先輩の家まで翼が迎えに来てくれた。弟にお迎えされるって、真面目に申し訳ない。着替えのTシャツと短パンまで持ってきてくれたし、翼には頭上がらねぇな。
「ほらお兄ちゃん、ちゃんとお礼」
「ありがとうございましたッ!」
「迷惑なんて、いいのよ全然。お兄さんのおかげで、こうして貴方と出会えたんだから」
「え、え?あ、はい。そうなんですか……?」
出たよ、先輩の年下好きアピ。ここでおねショタフィールド展開しようとすんのはマジでやめて欲しい。
「ちょっと、うちの弟に色目使わないで下さいよ~」
「弟?弟って言った?……まさか現代にリアル男の娘が存在するなんて、薄い本が厚くなる事案だわ」
「だーかーら!翼をそういうのに巻き込まないで下さい。先輩の変態、年下好き!」
「お兄ちゃん、薄い本ってなんのこと?」
「よーしよしよし翼は何も知らなくていいんだ。だからそれ以上の追求はよしてくれ。お兄ちゃんが死ぬ」
「わ、分かった……」
最近になって本性表しやがったなこのロリショタコンパイセン。もはやキャッチコピー意味わからん。
「そうよ、翼くんは何も気にしなくていいの。だからちょっとうちに住んでみない?」
「えー!……どうしよっかな」
「はいそこ!ちょっと悩んでるんじゃありません!翼には、ホームスイートホームがあるだろ?」
多分翼、先輩の家の内装を見て悩んだんだろう。コイツ意外と現金なとこあるからなぁ。
「それもそうだね。あんま長居しても申し訳ないし、そろそろ帰ろうか。今日は、本当にありがとうございました。紫水さん」
「紫水さんなんて野暮ったい言い方やめてちょうだい。響さんと、そう呼んで欲しいわ」
「り、了解です……」
「あーはいはいお邪魔しました~!」
翼を無理やり押し出すようにドアを開けた。夜の涼風が頬を掠める。
「あ、そうだ先輩。いっそ私と貴方が付き合えば、なんて。冗談でも言わない方が良いですよ。俺だったからよかったけど、男はそういうの、結構勘違いするんですからね」
仮にも女性。もし勘違いをさせてやばい男に狙われでもしたら、ちょっと胸糞悪い。紫水先輩ならなんとか出来ちゃいそうな気もしなくないが。
「そうね。貴方みたいな木偶の坊に狙われるなんて、私もごめんよ。次から気をつける」
「またそうやって俺のこと罵るんだから……ほんじゃ、また学校で」
ぱたり、とドアが閉まった。紫水響はドアが閉まったのを確認してから、誰にも聞こえないように呟く。
「……ほんと、生意気な後輩」
帰り道。翼がコソコソと俺に聞いてきた。
「ねぇお兄ちゃん。響さんと何かあったの?やましい事とかした?」
「してねぇよ。ただお茶をご馳走になってただけ」
「ふぅん……」
「そんな訝しげに俺を見ないでっ!マジだから!ほんとに何もしてないから!」
◇◇◇
さて。体育祭の汚名返上をするため、俺は次なる作戦を考えた。その名も、『ドキドキ!壁ドンパニック♡』
作戦内容は名前の通りである。通りがかった心和に壁ドンし、甘い言葉を囁く。これのために少女漫画読み漁って、練習までしたんだからな。
「声かけて、壁ドンして、俺結構本気だから、俺結構本気だから、俺結構本気だから……よし」
リハーサルもバッチリだ。いける!俺の顔面ならイチコロだ!
『その孤独に、貴方は向き合える?』
ふと、紫水先輩の言葉が蘇る。心和には恋愛に関するトラウマがあると先輩は言っていた。でも心和曰く、初恋はまだらしい。となると、他人の恋慕に巻き込まれた……って感じか?
(トラウマって言うくらいだし、怖がらせちゃったらどうしよう……いや、怖気付くな俺!ここで逃げたら、昨日の練習が無駄になるだろ!)
とりあえず、人前でやるのはさすがの俺も恥ずかしいので、どっか人気のない所に誘い込みたいんだが……ん?この言い方だと語弊しかない。
(まあここは普通に……)
俺は心和の席まで近寄ると、爽やか笑顔全開で話しかけた。
「心和さん。ちょっと大事な話があるんだけど、今いいかな?」
「はくしょっ、ん……」
「心和さん、聞いてる?大事な話が……」
「……」
おいマジか。コイツ無視決め込みやがったぞ。
「心和さーん。あれ?聞こえてない?心和さん、こーよーりさーん」
「……」
「無視されるのはちょっと、傷つくな~……なんて」
「……あ。え?なんですか?」
コイツあからさまに居るの今気づいた、みたいな反応しやがって!
「大事な話があるから、ちょっといいかな?」
「……はい、分かりました」
あれ?無視してた割には素直?
「どうせまたしょうもないなんとか作戦なんでしょ。乙です」
「おい、あんまクラスでそのこと言うな変人だと思われんだろ」
「元々じゃないですか」
呆れられてんなこれ。はいはい付き合えばいいんでしょ的な。だがしかし、コイツも乙女の端くれ。少女漫画の一つや二つ読んだことあるだろう。そして壁ドンに「キュンっ♡」としたことも。今回はかなり期待できるのではないだろうか!
◇◇◇
俺は屋上へ続く階段へと心和を案内する。ここは人が来ないスポットなので存分にかっこつけられる。やましいことはしませんからね!一切!
「……変態」
「まだ何もしてませんが?!」
「まだってことは、これからしようと思ってるんですか。こんな所に呼び出す時点で、もう決まったようなものですよね。はい、起訴」
「違います!大事なお話って言ったよね?人の話聞いて」
俺は深く息を吸い込むと、壁に追い込む形で心和にずずいと近づく。そして、思い切り壁に両手をついた。こうすることによって、相手は逃げ道を失う。
「あのさ、お前は単なるお遊びだと思ってるんだろうけど。俺、結構本気だから」
……き、決まったァー!かっこいい、俺最高にかっこいい!ちょっと急展開すぎる気もするが、イケボ&最高のシチュエーションだ。
(さあ心和、どんな反応を……ってあれ?)
心和は壁についた腕の下をくぐり抜けようとしている。え、そんな逃げ方あります?
「ちょ、おい逃げんな」
俺は逃がすまいと、心和を追いかけるように壁へ手をつく。それでも逃げようとする心和。しばらく、この意味不明な追いかけっこ?が続いた。
「ねぇなんで逃げるのさ。ねぇ!」
「だって、やっぱりしょうもないじゃないですか。それに壁ドンとか古すぎません?少女漫画の受け売りにしても、もっとマシな行動があるでしょ」
「ギクッ」
壁ドンって、もう古いの……?流行りが移り変わるの早すぎない?
(でも良かった。怖がってはなさそう。いつものテンションみたいだし……)
コイツのトラウマがあるにしろ無いにしろ、この関係性をはっきりさせなきゃいけないとは、俺も思っている。これはきっと恋じゃない。だからこそ、俺自身とコイツ自身の意思を確かめておかなきゃ。
「なあ心和。もし、もし仮にだよ?俺が付き合って欲しいっつったら、お前付き合う?」
「……フィッシュアンドチップスがどうかしましたか?」
「いや誰もそんな話してないです。だからお前は」
「私あれ食べた事ないんですよね。めっちゃカロリー高いらしいじゃないですか」
「どっから出てきたんだよフィッシュアンドチップス!」
俺の勘違いかもしんないけど。なんか今日の心和変じゃね?人の話をまるで聞いてないっていうか、やけにボーッとしてるというか……。
「もう休み時間終わるんで、教室戻ります。戻るんです、私は」
心和は階段へと足を踏み出す。が、段差でつまずき体制を崩した。
「わっ、ちょ危なっ!」
慌てて心和の腕を掴む。間一髪だ。階段から落下して骨折とかになったら、シャレにならん。俺も経験したことあるけど、骨折はマジ面倒だし痛いからな。
「心和、お前大丈夫?」
「ん、平気です。すみません、掴んでいただいて……」
「心和さ、なんかあったん?今日ちょっとおかしくね?」
「おかしいのが平常運転の人に言われたくないですね。私は至って普通ですから」
そのまま階段を降りる心和。上手く言えないけど、いつもより罵倒にキレがないな。話し方もめっちゃゆっくりだったし。
「なんなんだ?一体……」
で、結局放課後になってしまったわけだけれども。壁ドン作戦は失敗に終わり、甘い囁きの効力もゼロ!いよいよ後がない、俺!
これ以上何すればいいのか分かんねぇ!
「……はあ。はあ~~~~~~」
思わず深いため息。一人を惚れさせるって、こんなに大変なんだ。今までは何もしなくたって、たくさんの人が勝手に俺を好きになってた。でも最近の奴らときたら……なんで俺のかっこよさが分からないかなぁ?!人生損してますよ、全く!
「……帰ってゲームでもすっか」
下駄箱を開け、上履きを履き替えていると、横に心和が。こんな時に鉢合わせるとか、ちょっと憂鬱。
(今は話しかけんでおこ……無闇にいっても、また罵倒されるだけだしな)
ローファーを履き、心和に背を向ける。もう、心和ちゃんのバカっ!知らないっ!
……と思った瞬間。こつり、と背中に何かが当たった。微かにのしかかる重み。布を通して、仄かな温もりが伝わる。人肌の温もりだ。俺の背中に、誰かが寄りかかっている。
「あ、の……」
ゆっくりと振り返る。心和だ。心和が、俺の背中に寄りかかっていた。肩に頭を寄せられ、首元に息がかかる。くすぐったい。
「心和……心和さん?」
認識した途端、跳ね上がる鼓動。普段言い争っている仲とはいえ、いきなりこんな事をされれば緊張するのは自然の道理。
……じゃなくて、どうしちゃったのこの子。
遅くまで帰らない両親に代わり、先輩の家まで翼が迎えに来てくれた。弟にお迎えされるって、真面目に申し訳ない。着替えのTシャツと短パンまで持ってきてくれたし、翼には頭上がらねぇな。
「ほらお兄ちゃん、ちゃんとお礼」
「ありがとうございましたッ!」
「迷惑なんて、いいのよ全然。お兄さんのおかげで、こうして貴方と出会えたんだから」
「え、え?あ、はい。そうなんですか……?」
出たよ、先輩の年下好きアピ。ここでおねショタフィールド展開しようとすんのはマジでやめて欲しい。
「ちょっと、うちの弟に色目使わないで下さいよ~」
「弟?弟って言った?……まさか現代にリアル男の娘が存在するなんて、薄い本が厚くなる事案だわ」
「だーかーら!翼をそういうのに巻き込まないで下さい。先輩の変態、年下好き!」
「お兄ちゃん、薄い本ってなんのこと?」
「よーしよしよし翼は何も知らなくていいんだ。だからそれ以上の追求はよしてくれ。お兄ちゃんが死ぬ」
「わ、分かった……」
最近になって本性表しやがったなこのロリショタコンパイセン。もはやキャッチコピー意味わからん。
「そうよ、翼くんは何も気にしなくていいの。だからちょっとうちに住んでみない?」
「えー!……どうしよっかな」
「はいそこ!ちょっと悩んでるんじゃありません!翼には、ホームスイートホームがあるだろ?」
多分翼、先輩の家の内装を見て悩んだんだろう。コイツ意外と現金なとこあるからなぁ。
「それもそうだね。あんま長居しても申し訳ないし、そろそろ帰ろうか。今日は、本当にありがとうございました。紫水さん」
「紫水さんなんて野暮ったい言い方やめてちょうだい。響さんと、そう呼んで欲しいわ」
「り、了解です……」
「あーはいはいお邪魔しました~!」
翼を無理やり押し出すようにドアを開けた。夜の涼風が頬を掠める。
「あ、そうだ先輩。いっそ私と貴方が付き合えば、なんて。冗談でも言わない方が良いですよ。俺だったからよかったけど、男はそういうの、結構勘違いするんですからね」
仮にも女性。もし勘違いをさせてやばい男に狙われでもしたら、ちょっと胸糞悪い。紫水先輩ならなんとか出来ちゃいそうな気もしなくないが。
「そうね。貴方みたいな木偶の坊に狙われるなんて、私もごめんよ。次から気をつける」
「またそうやって俺のこと罵るんだから……ほんじゃ、また学校で」
ぱたり、とドアが閉まった。紫水響はドアが閉まったのを確認してから、誰にも聞こえないように呟く。
「……ほんと、生意気な後輩」
帰り道。翼がコソコソと俺に聞いてきた。
「ねぇお兄ちゃん。響さんと何かあったの?やましい事とかした?」
「してねぇよ。ただお茶をご馳走になってただけ」
「ふぅん……」
「そんな訝しげに俺を見ないでっ!マジだから!ほんとに何もしてないから!」
◇◇◇
さて。体育祭の汚名返上をするため、俺は次なる作戦を考えた。その名も、『ドキドキ!壁ドンパニック♡』
作戦内容は名前の通りである。通りがかった心和に壁ドンし、甘い言葉を囁く。これのために少女漫画読み漁って、練習までしたんだからな。
「声かけて、壁ドンして、俺結構本気だから、俺結構本気だから、俺結構本気だから……よし」
リハーサルもバッチリだ。いける!俺の顔面ならイチコロだ!
『その孤独に、貴方は向き合える?』
ふと、紫水先輩の言葉が蘇る。心和には恋愛に関するトラウマがあると先輩は言っていた。でも心和曰く、初恋はまだらしい。となると、他人の恋慕に巻き込まれた……って感じか?
(トラウマって言うくらいだし、怖がらせちゃったらどうしよう……いや、怖気付くな俺!ここで逃げたら、昨日の練習が無駄になるだろ!)
とりあえず、人前でやるのはさすがの俺も恥ずかしいので、どっか人気のない所に誘い込みたいんだが……ん?この言い方だと語弊しかない。
(まあここは普通に……)
俺は心和の席まで近寄ると、爽やか笑顔全開で話しかけた。
「心和さん。ちょっと大事な話があるんだけど、今いいかな?」
「はくしょっ、ん……」
「心和さん、聞いてる?大事な話が……」
「……」
おいマジか。コイツ無視決め込みやがったぞ。
「心和さーん。あれ?聞こえてない?心和さん、こーよーりさーん」
「……」
「無視されるのはちょっと、傷つくな~……なんて」
「……あ。え?なんですか?」
コイツあからさまに居るの今気づいた、みたいな反応しやがって!
「大事な話があるから、ちょっといいかな?」
「……はい、分かりました」
あれ?無視してた割には素直?
「どうせまたしょうもないなんとか作戦なんでしょ。乙です」
「おい、あんまクラスでそのこと言うな変人だと思われんだろ」
「元々じゃないですか」
呆れられてんなこれ。はいはい付き合えばいいんでしょ的な。だがしかし、コイツも乙女の端くれ。少女漫画の一つや二つ読んだことあるだろう。そして壁ドンに「キュンっ♡」としたことも。今回はかなり期待できるのではないだろうか!
◇◇◇
俺は屋上へ続く階段へと心和を案内する。ここは人が来ないスポットなので存分にかっこつけられる。やましいことはしませんからね!一切!
「……変態」
「まだ何もしてませんが?!」
「まだってことは、これからしようと思ってるんですか。こんな所に呼び出す時点で、もう決まったようなものですよね。はい、起訴」
「違います!大事なお話って言ったよね?人の話聞いて」
俺は深く息を吸い込むと、壁に追い込む形で心和にずずいと近づく。そして、思い切り壁に両手をついた。こうすることによって、相手は逃げ道を失う。
「あのさ、お前は単なるお遊びだと思ってるんだろうけど。俺、結構本気だから」
……き、決まったァー!かっこいい、俺最高にかっこいい!ちょっと急展開すぎる気もするが、イケボ&最高のシチュエーションだ。
(さあ心和、どんな反応を……ってあれ?)
心和は壁についた腕の下をくぐり抜けようとしている。え、そんな逃げ方あります?
「ちょ、おい逃げんな」
俺は逃がすまいと、心和を追いかけるように壁へ手をつく。それでも逃げようとする心和。しばらく、この意味不明な追いかけっこ?が続いた。
「ねぇなんで逃げるのさ。ねぇ!」
「だって、やっぱりしょうもないじゃないですか。それに壁ドンとか古すぎません?少女漫画の受け売りにしても、もっとマシな行動があるでしょ」
「ギクッ」
壁ドンって、もう古いの……?流行りが移り変わるの早すぎない?
(でも良かった。怖がってはなさそう。いつものテンションみたいだし……)
コイツのトラウマがあるにしろ無いにしろ、この関係性をはっきりさせなきゃいけないとは、俺も思っている。これはきっと恋じゃない。だからこそ、俺自身とコイツ自身の意思を確かめておかなきゃ。
「なあ心和。もし、もし仮にだよ?俺が付き合って欲しいっつったら、お前付き合う?」
「……フィッシュアンドチップスがどうかしましたか?」
「いや誰もそんな話してないです。だからお前は」
「私あれ食べた事ないんですよね。めっちゃカロリー高いらしいじゃないですか」
「どっから出てきたんだよフィッシュアンドチップス!」
俺の勘違いかもしんないけど。なんか今日の心和変じゃね?人の話をまるで聞いてないっていうか、やけにボーッとしてるというか……。
「もう休み時間終わるんで、教室戻ります。戻るんです、私は」
心和は階段へと足を踏み出す。が、段差でつまずき体制を崩した。
「わっ、ちょ危なっ!」
慌てて心和の腕を掴む。間一髪だ。階段から落下して骨折とかになったら、シャレにならん。俺も経験したことあるけど、骨折はマジ面倒だし痛いからな。
「心和、お前大丈夫?」
「ん、平気です。すみません、掴んでいただいて……」
「心和さ、なんかあったん?今日ちょっとおかしくね?」
「おかしいのが平常運転の人に言われたくないですね。私は至って普通ですから」
そのまま階段を降りる心和。上手く言えないけど、いつもより罵倒にキレがないな。話し方もめっちゃゆっくりだったし。
「なんなんだ?一体……」
で、結局放課後になってしまったわけだけれども。壁ドン作戦は失敗に終わり、甘い囁きの効力もゼロ!いよいよ後がない、俺!
これ以上何すればいいのか分かんねぇ!
「……はあ。はあ~~~~~~」
思わず深いため息。一人を惚れさせるって、こんなに大変なんだ。今までは何もしなくたって、たくさんの人が勝手に俺を好きになってた。でも最近の奴らときたら……なんで俺のかっこよさが分からないかなぁ?!人生損してますよ、全く!
「……帰ってゲームでもすっか」
下駄箱を開け、上履きを履き替えていると、横に心和が。こんな時に鉢合わせるとか、ちょっと憂鬱。
(今は話しかけんでおこ……無闇にいっても、また罵倒されるだけだしな)
ローファーを履き、心和に背を向ける。もう、心和ちゃんのバカっ!知らないっ!
……と思った瞬間。こつり、と背中に何かが当たった。微かにのしかかる重み。布を通して、仄かな温もりが伝わる。人肌の温もりだ。俺の背中に、誰かが寄りかかっている。
「あ、の……」
ゆっくりと振り返る。心和だ。心和が、俺の背中に寄りかかっていた。肩に頭を寄せられ、首元に息がかかる。くすぐったい。
「心和……心和さん?」
認識した途端、跳ね上がる鼓動。普段言い争っている仲とはいえ、いきなりこんな事をされれば緊張するのは自然の道理。
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