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第16話 小悪魔ガールは焦らしたい

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恥を捨て
                                            春空の下                                                        
        男泣き    
      
   今回のオープニングは、朝日空心の俳句をお届けしております。個人的に力を入れたのは、五・七・五の七の部分。自分の名である空と、春空をかけました。雅ですね~。



(ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙死にてえぇぇえええええええええええええええええええええええええええ)

   俺今年で、17よ?女子の、しかも先輩と後輩の前で泣き喚くとかどこのガキだよ今どき小学生でもんな事しねぇって!あーもう、なんで生きてるんだろ。誰か俺専用の墓石作ってくれ。その下土掘って眠るから永遠に。

「センパイ、さっきから何唸ってるの~?おつかい頼みたいんだけど~」

「あ?お前さっきコーラ買ってきてやっただろ。まだ何かあんのか?」

「実はさ~、ゴム切らしちゃって。もっかいコンビニダッシュよろ!」

    え、ゴム?ゴムって、あのゴムよね?男のマストアイテム。コイツ、彼氏いたの?切らすほど使ってるってことは、そういうことじゃん。

「いやビッチかよ」

「は?何突然怖いんだけど」

「聞きたいのはこっちだよ。なんで俺が、お前の彼氏の防御装備買わなきゃいけないん?他はまぁ、百歩。いや千歩譲って許すけどさ、それだけは自分で買いに行け。俺レジで恥かきたくない」

「……センパイ。あたしが言ってるのは、ヘアゴムのことだけど」

    えー?ゴムって言ったらヘアゴムしか思いつかないよね~普通。誰だよ卑猥な間違いしたの~。

「ぷっ、あはははっ、ははは!はー、はぁお腹痛い。センパイ、間違え方キモすぎっ。くっ……うはははは!ひー!」

「すっ……椿井さん、何か欲しいものは?」

「いきなり媚び売りだしたし……はぁ、おもろ。いや、いいよもう。ゴムは自分で買わないとだもんね♡」

「やぁめろぉ!やめてくれ謝るからぁ!」

  椿井は顔を真っ赤にして爆笑している。昨今の俺、恥しかかいてない。恥掻き小僧の空太郎。今年も街までやってきた。

「しかも、あたし彼氏なんていないよ?いたらセンパイなんかとツルまないってーの」

「へーそうなんですかァ。てっきりいらっしゃるのかと思ってましたー」

「何その反応wてか、あたし分かっちゃったことあるんだけどさ。センパイ、童貞でしょ」

「当たり前だろ!」

   これに関しては自信を持って言える。俺はモテるが女たらしでもないし、そういった経験は一切ない。なんなら付き合ったことだって、中学の頃に一度だけだ。なんかよく分かんないけど、付き合って一週間で振られた。この俺がだぞ?やばくねそいつの価値観。どんだけ目が肥えてるんだよって話。

「だよね~。言っとくけど、たまにあたしのスカートチラチラ見てんの、知ってるから」

「見てないっすよ、んなもんただの布切れじゃないっすか」

   見てない。断じて見てない。JK特有のスカートの短さなんてこれっぽっちも気にしてない。その中に広がるドリームランドなんて興味無い。

「ねぇセンパイ。見せたげよっか?」

「よろこんで!」

   興味無い。興味なんて無いけど。いや別にやましい気持ちがあるとかじゃなくてね?見せてくれるなら、せっかくだし。

(てかこの反応。やっぱりコイツ、経験はあるのか……?まあ、見た目的にもそんな感じだしな……)
 
「食いつきやばいな。へへ、いいよぉ」

  椿井はスカートの端をつまみ、ゆっくり上へと持ち上げていく。エレベーターのように上がっていくそれから、目が離せない。

(コイツに一番しっくりくるのは、黒。だが紫なんてのもありそうだ。初心に帰ってピンク?それとも大穴の白?最終階《パンツ》まで到達するまでに、当てたい!)

    どんどん上がっていくスカート。果たしてそれは何色に輝くのか。俺のファイナルアンサーは黒、黒だ!見えない部位とはいえ、女子なら己にベストマッチな代物を選ぶはず!さてその目に映るものとは―――











「いや、分かってたけどね?全然期待とかしてなかったですけど」

   正解は、ジャージのハーフパンツ。色は紺。学校指定で、皆同じ色だ。色も外れたしジャージだし!
    畜生からかいやがって!俺の好奇心を返せっ!

「何が見れると思ってたの~?センパイ」

「うるせぇクソビッチ!もう何も聞きたくねぇよっ!」

「勝手に期待したセンパイが悪いんじゃん。このヘ・ン・タ・イ♡」

   もうコイツやだ。どれだけ俺を恥ずか死させれば気が済むのぉ?!

「ちなみに……」

  悔しがって小言をブツブツ言う俺の耳元に、椿井は近づいて囁く。

「あたしは、まだそういうこと、未経験だよ」

「……」

「へへ、ビックリしたぁ?耳真っ赤だしw」

「もうっ、女の子がはしたないこと言うんじゃありませんっ!」

「わお、いきなりママじゃん」

「いやでも真面目に。そう言うの軽々しく言ってるとな、俺みたいな悪い男に襲われちまうんだぞ。」

「センパイはチキンだから無理っしょ」

「おおぅ辛辣。確かに俺はそういう気ないけど、世の中には危険な男がいっぱいいるんだ。あんま調子に乗らせると、何されるか分からんよ。お前の危機感無さすぎて、若干心配」

「ふぅ~ん……分かった、気をつける」

  思ったより聞き分けがいいな。なんか今の、ほんとに母親みたいなこと言ってた気がする。俺、実はママだったの……?

「でもセンパイをイジるのはやめな~い♪」

「あんまりそれも酷いと、本気で仲良くしてやんないからな。もし今後『おつかい』を続けようものなら、椿井にいじめられてるって本気で保護者会に説明する。うちの母さんPTA役員だぞ?分かったらとっとと帰れ、俺は帰る」

大体おつかいをこなすのは部活帰りだ。段々と暗くなってきてるし、俺自身ヘトヘトである。
 
「あ、ちょっと!」

 椿井が何か言いたげだったが、構わず足を校門の方へ進める。散々俺をこき使ってるんだ、このくらいの意地悪は許して欲しい。
   無論、椿井のことをPTAに相談する気など毛頭ない。そしたら色々ごたついて、学校生活に支障が出そうなので。でもおつかいは、正直結構ツラミ。

「明日からは、もうちょい大人しくなってるといいんだが……」
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