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第5話
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「実家に帰らせて下さい!」
私は家に入り、一通りお宅拝見して楽しんだあと、言い出しました。
ここに一週間も住めるなんて、とても楽しみなことです。庭も広く、各部屋も綺麗に整えられているし、大浴場までありました。これは、ちょっとした高級旅館です。楽しめないはずがありません、綺麗な部屋でゆっくりと過ごすことを決意しました。
しかし、樹さんに連れて行かれるまま、着いてきてたわけなので、これからここに住むと言われてもなにも持っていないです。
「安心しろ、生活に必要なものは全部揃ってる」
途中までは、案内してくれていたけども、半分過ぎ他あたりから勝手に見てこいと案内を放り出した樹さんが胸を張って答えます。
なぜ、私が確認もしていないのに全部揃っていると言えるのでしょうか?
「おまえの部屋から丸ごと持ってきたからだ」
そう言って、樹さんは一つの部屋の襖を開けました。
でん!
なんということでしょう。
この純和風の家屋の一部屋に、なんとも一般家庭の平凡で面白みのない部屋があるではありませんか!
潰れたクッションに、ベッドから起きなくてもいいようにと手が届く範囲で乱雑に置かれている小物類、床にはパジャマが脱ぎ捨てられています。この、リラックスだけを求め、外観など求めないこの部屋はまさしく、私の部屋!
「今日からここがおまえの部屋だ!」
「私の旅館ライフがああああああ!!!!」
私は悔しさと他人に部屋を見られたことによる掃除をしておけばという後悔で、床に膝をつきました。
「終わった……でも、よく親が許しましたね。今日、私がなんか変なの見えるって言ったら、『それは大変ね、ゴミ出しすれば治るわよ』でしたよ?」
「ああ、親御さんには一週間の旅行に行って貰っている。全てこちらが負担すると言ったら、すぐ休みを取っていたぞ」
ーーえ?
まあまあ落ち着け、私。これは親とは思ぬ言動だが、仕方ない。私だって、奢りの旅行だったらなにがなんでも首を縦にふるだろう。まさに私の両親らしい反応だ。当然の判断だろう。だから、私は怒りはしない。
でも、これだけは聞かなければ。
「あのー、どこに?」
「伊豆の七日間海鮮食い倒れツワー」
「なんだとおおおおおおおお」
「おいおい、どこ行くんだ」
怒りのままに伊豆へ両親どもを追いかけに走り出したら、樹さんに肩を掴まれてしまった。
「離して下さい!あいつらを!」
「怒らないんじゃなかったのか?」
「しかし!しかしですねぇ!」
「まぁ、落ち着けって、ここだってご飯は出るし、部屋はここだが寝るのがここなわけではないぞ。あの浴場だって、先代の趣味で源泉の掛け流しだ。追いかける意味があるのか?」
「それは、確かに」
樹さんの言葉でとっくに私の怒りは消えていました。むしろ、両親には私だけすまないと思えるだけの優越感があります。
しかし、まだ樹さんの話は終わっていませんでした。
「それに、おまえにはメイドがつくぞ!」
「これから一週間よろしくお願いします!」
待ってて、お嬢様ライフ!見返してやる両親!
私は家に入り、一通りお宅拝見して楽しんだあと、言い出しました。
ここに一週間も住めるなんて、とても楽しみなことです。庭も広く、各部屋も綺麗に整えられているし、大浴場までありました。これは、ちょっとした高級旅館です。楽しめないはずがありません、綺麗な部屋でゆっくりと過ごすことを決意しました。
しかし、樹さんに連れて行かれるまま、着いてきてたわけなので、これからここに住むと言われてもなにも持っていないです。
「安心しろ、生活に必要なものは全部揃ってる」
途中までは、案内してくれていたけども、半分過ぎ他あたりから勝手に見てこいと案内を放り出した樹さんが胸を張って答えます。
なぜ、私が確認もしていないのに全部揃っていると言えるのでしょうか?
「おまえの部屋から丸ごと持ってきたからだ」
そう言って、樹さんは一つの部屋の襖を開けました。
でん!
なんということでしょう。
この純和風の家屋の一部屋に、なんとも一般家庭の平凡で面白みのない部屋があるではありませんか!
潰れたクッションに、ベッドから起きなくてもいいようにと手が届く範囲で乱雑に置かれている小物類、床にはパジャマが脱ぎ捨てられています。この、リラックスだけを求め、外観など求めないこの部屋はまさしく、私の部屋!
「今日からここがおまえの部屋だ!」
「私の旅館ライフがああああああ!!!!」
私は悔しさと他人に部屋を見られたことによる掃除をしておけばという後悔で、床に膝をつきました。
「終わった……でも、よく親が許しましたね。今日、私がなんか変なの見えるって言ったら、『それは大変ね、ゴミ出しすれば治るわよ』でしたよ?」
「ああ、親御さんには一週間の旅行に行って貰っている。全てこちらが負担すると言ったら、すぐ休みを取っていたぞ」
ーーえ?
まあまあ落ち着け、私。これは親とは思ぬ言動だが、仕方ない。私だって、奢りの旅行だったらなにがなんでも首を縦にふるだろう。まさに私の両親らしい反応だ。当然の判断だろう。だから、私は怒りはしない。
でも、これだけは聞かなければ。
「あのー、どこに?」
「伊豆の七日間海鮮食い倒れツワー」
「なんだとおおおおおおおお」
「おいおい、どこ行くんだ」
怒りのままに伊豆へ両親どもを追いかけに走り出したら、樹さんに肩を掴まれてしまった。
「離して下さい!あいつらを!」
「怒らないんじゃなかったのか?」
「しかし!しかしですねぇ!」
「まぁ、落ち着けって、ここだってご飯は出るし、部屋はここだが寝るのがここなわけではないぞ。あの浴場だって、先代の趣味で源泉の掛け流しだ。追いかける意味があるのか?」
「それは、確かに」
樹さんの言葉でとっくに私の怒りは消えていました。むしろ、両親には私だけすまないと思えるだけの優越感があります。
しかし、まだ樹さんの話は終わっていませんでした。
「それに、おまえにはメイドがつくぞ!」
「これから一週間よろしくお願いします!」
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