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20-③

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「えへへ」
 笑って誤魔化すと、可笑しな奴だなと響騎さんは苦笑して、それでも優しく私の手を取ってニッコリ笑ってくれる。
(こんなささやかな幸せを、一つでも逃したくない)
 自分でも大胆だと思いつつ、しっかりと響騎さんに寄り添うと、本当にどうしたんだと驚く彼に、更に笑ってみせて早く行こうとエレベーターに乗り込んだ。
 季節物を取り扱う催事場のフロアで浴衣を見て回り、お互いに選び合いっこをして、下駄も一緒に買い揃える。
 私が響騎さんに選んだのは、グレーの生地に銀のラインが入った浴衣と黒い帯がセットになった物で、彼が私に選んでくれたのは、白地に藍色の花柄が印象的な浴衣に濃紺の帯。
「華の浴衣姿は初めて見るからな」
「そうでしたね」
「これを着た姿を見るのが楽しみだよ」
「私も、響騎さんの浴衣姿楽しみです」
 そして浴衣を買い終えると、すぐそばにある水着のコーナーに立ち寄って、海にも行きたいと話題が盛り上がって水着も見て回ることになった。
「夏休みは多分取れると思うから、旅行に行こうか」
「日にちを合わせて休めると良いんですけど」
「なんとかなるだろ」
 そう答えながら響騎さんが私に薦める水着は、布の面積が頼りない大胆なものばかりだ。
「淡い色も可愛いけど、シンプルな方が似合うと思う」
「こんな大胆なのは無理です」
「じゃあこっちは」
「私の体型には合わないですよ」
「そんなことないよ。華ならよく似合う」
 意味深な手つきで腰を抱き寄せて微笑むと、響騎さんは手に取った黒いビキニを私の体の前で合わせてみせる。
「めちゃくちゃそそる」
「もう、すぐそういうことを」
「これ着た華が見たいな」
「言い方がズルいんですよ」
 結局逆らえずに大胆なビキニを買うことになってしまい、胸のボリュームが落ちないダイエットを模索しなければと、一人決意を固めることになった。
「そろそろ良い時間だな」
「そうですね」
「では参りましょうか、姫」
「ふふ、なんですかそれ」
 再会した時は、まさかこんな風に過ごすようになるなんて思いもしなかった。
 だけど響騎さんがすぐ隣にいて、こんなにも自然と笑えるなんて夢みたいだと思う。
 だからこそ仕事のことを思い出して悩んでしまう。
 確かに、エンジニアとして歩んできたことに誇りを持っているけれど、秘書として働き始めて、その面白さを感じ始めていた部分もある。
 響騎さんとのことは、もちろん真剣に考えているけれど、前園さんや倉本さんと一緒に仕事をするのはとても楽しい。
 私はこれから先、どうしていきたいんだろうか。
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