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バスルームを出ると、浦野さんが用意してくれたのだろう、ドライヤーがベッドの上に置いてあった。
浦野さんの姿は見えないので、ドライヤーで髪を乾かしたあとは手持ち無沙汰のまますることもなく、一度下に降りてバッグの中からスマホを取り出して時間を潰した。
メッセージが何件か届いていて、中には前園さんからのものもあり、真夜中なので返信はしないけれど、心配してくれている状況に申し訳なさと感謝の気持ちが湧いてきた。
「なんだ華、降りてきてたのか」
「はい」
私が使わなかった二階のバスルームから姿を現した浦野さんは、少しだけ驚いたように目を見開いて、その後なにもなかったようにキッチンの方に向かう。
「水分取ってないだろ。水で良いか」
「ありがとうございます」
浦野さんの声に返事すると、彼は冷蔵庫の中からペットボトルのミネラルウォータを取り出してリビングのソファーに腰を下ろした。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
ソファーに腰掛ける浦野さんは、スウェットのズボンだけを履いていて上半身は裸のままだ。
それなのに気にする様子もなく、逞しく引き締まった体を見せ付けるように、腕を伸ばして私が差し出したペットボトルを受け取り、ゴクゴク喉を鳴らして水を飲んでいる。
「あの、なんで裸なんですか。シャツは着ないんですか」
「風呂上がりで暑いから」
「だからって」
「なに? なんかイケナイことでも想像したか」
「違います!」
思わず大きな声で反論すると、浦野さんは明らかに揶揄っていたらしく、可笑しそうに肩を揺らして笑っている。
(私だって、もう三十前の大人なんですけど!)
心の中で絶叫したものの、そんないい歳をしてなんの経験もない自分が情けなくなってくる。
「どうした。飲まないのか」
「いただきます」
テーブルに置いたペットボトルを取ろうと手を伸ばすと、不意に手を掴まれて膝の上に抱っこされてしまう。
「うわっ」
「捕まえた」
「えっ、や、あの」
「甘い匂いがする」
私の首筋に顔を埋めて鼻を擦り付ける浦野さんの気配が濃くなると、思わず上擦った声が出る。
「あ、の……」
「そんなに緊張するなよ」
「だって」
「ごめん。イタズラが過ぎたな」
口ではそう言いながらも、浦野さんは私の髪を掻き分けて、項をむき出しにした場所に唇を押し当てる。
「んっ」
すぐにチリッとした痛みが走り、経験がなくてもキスマークを付けられたんだと気付いて、浦野さんが私を求めるなら応えたい気持ちが昂まっていく。
「……華」
熱っぽい声にどう反応していいか分からなくて、力が入らずに行き場を失っていた腕を、ゆっくりと浦野さんの背中に回して抱き締める。
「ここで拒まないと、俺も歯止めが効かないぞ」
確認するように耳元に囁く声はどこまでも甘くて、恥ずかしさで声も出せず、小さく頷いて答えることしかできない。
そんな私の耳元で小さく苦笑するような気配を感じると、背中を支えるようにしてソファーに寝かされる。
「華、俺はずっとお前が好きだった」
「浦野さん」
「ここには二人きりだろ、華」
「ビビ、先輩」
「それも良いけど、響騎って呼べよ」
浦野さんは破顔すると、私の唇に触れて響騎と呼ぶまで目線を外す様子がない。
「……響騎さん」
「響騎で良いのに」
「急には無理です」
「だろうな」
子どもみたいな笑顔のまま額にキスすると、響騎さんはそのまま戯れるみたいに、唇を啄むキスを繰り返す。
浦野さんの姿は見えないので、ドライヤーで髪を乾かしたあとは手持ち無沙汰のまますることもなく、一度下に降りてバッグの中からスマホを取り出して時間を潰した。
メッセージが何件か届いていて、中には前園さんからのものもあり、真夜中なので返信はしないけれど、心配してくれている状況に申し訳なさと感謝の気持ちが湧いてきた。
「なんだ華、降りてきてたのか」
「はい」
私が使わなかった二階のバスルームから姿を現した浦野さんは、少しだけ驚いたように目を見開いて、その後なにもなかったようにキッチンの方に向かう。
「水分取ってないだろ。水で良いか」
「ありがとうございます」
浦野さんの声に返事すると、彼は冷蔵庫の中からペットボトルのミネラルウォータを取り出してリビングのソファーに腰を下ろした。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
ソファーに腰掛ける浦野さんは、スウェットのズボンだけを履いていて上半身は裸のままだ。
それなのに気にする様子もなく、逞しく引き締まった体を見せ付けるように、腕を伸ばして私が差し出したペットボトルを受け取り、ゴクゴク喉を鳴らして水を飲んでいる。
「あの、なんで裸なんですか。シャツは着ないんですか」
「風呂上がりで暑いから」
「だからって」
「なに? なんかイケナイことでも想像したか」
「違います!」
思わず大きな声で反論すると、浦野さんは明らかに揶揄っていたらしく、可笑しそうに肩を揺らして笑っている。
(私だって、もう三十前の大人なんですけど!)
心の中で絶叫したものの、そんないい歳をしてなんの経験もない自分が情けなくなってくる。
「どうした。飲まないのか」
「いただきます」
テーブルに置いたペットボトルを取ろうと手を伸ばすと、不意に手を掴まれて膝の上に抱っこされてしまう。
「うわっ」
「捕まえた」
「えっ、や、あの」
「甘い匂いがする」
私の首筋に顔を埋めて鼻を擦り付ける浦野さんの気配が濃くなると、思わず上擦った声が出る。
「あ、の……」
「そんなに緊張するなよ」
「だって」
「ごめん。イタズラが過ぎたな」
口ではそう言いながらも、浦野さんは私の髪を掻き分けて、項をむき出しにした場所に唇を押し当てる。
「んっ」
すぐにチリッとした痛みが走り、経験がなくてもキスマークを付けられたんだと気付いて、浦野さんが私を求めるなら応えたい気持ちが昂まっていく。
「……華」
熱っぽい声にどう反応していいか分からなくて、力が入らずに行き場を失っていた腕を、ゆっくりと浦野さんの背中に回して抱き締める。
「ここで拒まないと、俺も歯止めが効かないぞ」
確認するように耳元に囁く声はどこまでも甘くて、恥ずかしさで声も出せず、小さく頷いて答えることしかできない。
そんな私の耳元で小さく苦笑するような気配を感じると、背中を支えるようにしてソファーに寝かされる。
「華、俺はずっとお前が好きだった」
「浦野さん」
「ここには二人きりだろ、華」
「ビビ、先輩」
「それも良いけど、響騎って呼べよ」
浦野さんは破顔すると、私の唇に触れて響騎と呼ぶまで目線を外す様子がない。
「……響騎さん」
「響騎で良いのに」
「急には無理です」
「だろうな」
子どもみたいな笑顔のまま額にキスすると、響騎さんはそのまま戯れるみたいに、唇を啄むキスを繰り返す。
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