チート御曹司と再会したら、初恋以上に全力で溺愛されてしまって困ってます

濘-NEI-

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6-⑤

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「俺にも動けない事情があった。それは本当にすまないと思ってる。気が付いたら十年だもんな。だから多少の浮気は多めに見てやる」
「浮気って」
「当たり前だろ。俺は華と別れた覚えはない」
「そんなこと言われても、私の中では踏ん切りをつけたことです」
「ならまた惚れさせればイイだけの話だな」
「惚れ……なに言ってるんですか。今は事情が違うと言ってるんです。浦野さんは私の上司ですから、そんなのは無理です」
「出来ない屁理屈を並べるなよ。そもそも俺は華と別れてないって言ってるだろ」
「それこそ屁理屈です!」
「頑固だな。だけど華の意見を聞き入れるつもりはない。あの時からずっと、話し合う機会すら寄越さなかった華にも責任はある」
「そんな横暴な」
「素直になれよ、華」
 不意に顎を掴まれたかと思うと、再びふわりとスパイシーな香りに包まれ、躊躇なく浦野さんの指が私の唇を緩やかに撫でる。
「俺以上に華を愛してる男なんていない」
 瞳と唇を交互に見つめ、まるでキスでもしているように浦野さんの指が淫靡に蠢くと、どうしようもなく甘い声で不埒に愛を呟く。
「華……」
 こんな風に少し強引で身勝手に、だけど優しく私の名前を呼ぶ彼が大好きだった。
 だから別の女性と、仲良さそうにしてる姿を見るだけで耐えられなかった。
 あの日のことも聞く勇気すらないのに、きっとこれから先だって、誰かと楽しそうにする姿を見て平気でいられないのは目に見えてる。
 だって昔よりもずっと素敵になったし、大人の色気だってダダ漏れだ。
(どうして今更……)
 そもそも先輩と別れた後は、勉強に没頭して車の世界にのめり込んだ。
 恋人なんて作る暇もないくらい忙しかったし、先輩のことを引きずり過ぎて、そんな気分にだってなれはしなかった。
「私の中ではもう、終わったことなんです。私なりに傷付いたし、苦しんでどうにか忘れようとして来たんです」
「それで?」
「私は今の貴方を知りません。同じように貴方は私のことを知らないでしょう?」
「俺は俺のままだ。今も昔もないだろ」
「ありますよ! ただでさえカッコよかったのに、こんなに素敵になってるし。他の女性が放っておくとは思えません。貴方が他の女性と関わるなんて、苦しくて身が持ちませんから」
「これはまた熱烈な告白だな」
「揶揄ってますか? 私本気で言ってるんですけど」
「つまり俺のことが好きすぎて、仕事だろうが女の影がチラつくのが許せないんだよな。可愛いね、華」
 反論しようとした唇に、余裕の笑みを浮かべる浦野さんの唇が触れそうなところまで近付き、咄嗟に押しのけて突き放す。
「やめてください! こんな場所でなに考えてるんですか」
「なるほど、キスは嫌じゃないみたいでなにより」
「それは言葉のあやですよ!」
「言葉のあや、ね。まあ昔だ今だなんて言ってられないくらい、その頭の中、俺のことしか考えられないようにしてやるよ」
 強気な微笑みを浮かべ、私の唇を浦野さんの指先がゆっくりなぞると、どうしたって抗えなくて私の顔は真っ赤に染まるばかりだった。
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