チート御曹司と再会したら、初恋以上に全力で溺愛されてしまって困ってます

濘-NEI-

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4-②

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「浦野さんに着任のご挨拶をいただくのは十六時からになりますので、私たちは一度失礼します。後でお声を掛けさせていただきますので、よろしくお願いします」
「おう。ありがとうね」
 片手を挙げる柳川事業部長と、その向かいに座る浦野さんに一礼すると、前園さんに続いて部屋を出る。
「さて。じゃあ明日以降のスケジュールを確認しておきましょうか」
 前園さんは事業部長の部屋の目の前のデスクを指差して、パーテーションで区切られた離れ小島でしょと笑いながら、引き継ぎのために用意してあった椅子に座るように私に促す。
「慣れない秘書業務は大変でしょう」
「でも出来ないとは言ってられないので」
「真面目なのね。でも良いことだと思う。ガッツがないとやっていけない仕事だからね」
 前園さんは私より五つ上でご結婚されているけど、その丁寧な仕事ぶりで役員からの覚えが良く、今でも第一線でバリバリ仕事をこなすワーキングママだ。
 私生活のことも織り交ぜながら雑談をするのは、きっと私が緊張してると思っての配慮だろう。
 慣れない仕事を目の前に、確かに緊張してない訳じゃないけど、私の心は別のことに占拠されていて、正直なところ仕事が頭に上手く入ってこない。
「本格的には明日からビジビシ引き継いで行くからね。今日のところは、予定外の時間で取り掛かるべき仕事について、一日の流れを把握しておいてね」
「分かりました」
「上司が違えば流れも変わるからね。その辺りは臨機応変に対応出来るよう、心づもりしておいた方が良いわよ」
「はい」
 前園さんが用意してくれた書類に、口頭で矢継ぎ早に始まった捕捉説明に質問しながら、要点を青いペンで書き込んでいく。
 十分ほどやり取りをすると、時計を意識しながら私の対応をしていた前園さんが、そろそろねと机に広げた書類を片付け始め、私のための書類をファイルに綴じて渡してくれる。
「社外秘には相当しないから、これは明日までに頭に叩き込んできて。ちゃんとテストするからね」
 イタズラっぽく笑って、さっきから落ち込んだ表情しか出来ない私の緊張をほぐそうとしてくれる前園さんの、さりげなくて自然な気遣いに救われる。
「じゃあ、このチャットで国販のメンバー全員に一斉送信出来るようになってるから、ここをクリックしてから、メッセージを打ってね」
 確認しながら、十六時より浦野事業部長着任のご挨拶がありますとメッセージを送信すると、技術部とは違うメッセンジャーで勝手は違うが、操作自体はそう難しくなくてホッとする。
「さ。いよいよ着任のご挨拶ね」
「はい」
 ざわつくフロアを背にして事業部長の部屋のドアをノックすると、返事を確認してから入室した視線の先で、和やかな雰囲気から一転して緊張した空気が走る。
「では、よろしくお願いします」
 前園さんの一言で、柳川事業部長がニコッと笑ってこちらを見ると、それを追うように浦野さんも席を立って部屋を出た。
 そしてこのフロアに集結した各部署の部課長たちが声を掛けて、仕事の手を止めて立ち上がった社員一同の視線が一気に私たちの方に向けられる。
 柳川事業部長の発声から講話が始まると、五分と経たずに浦野さんが紹介されて、いよいよ着任の挨拶が始まる。
「本日付で、国内販売事業部の事業部長を任されます浦野です」
 遠目に見ても華がある見た目、低くてよく通る静かなのに力強い声に、近くで聞いている女性社員は嬉々とした表情で浦野さんを見つめている。
 挨拶が進む中、私だけが一人青褪めた顔を誤魔化すように拳を握り締めて、早くこの時間が終わって欲しいと祈っていた。
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