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(61)結婚しても愛してる
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お母さんが亡くなってからバタバタと過ごすうちに、仕事も引き継ぎを早めに対処して、ゴールデンウィークを待たずに私は会社を辞めた。
もちろんイギリスでの再就職もきちんと決めてあるし、契約も済んでいる。
イーグランドとアイザニュートとのコラボ企画は、第二弾の草案が出されて、そろそろ本格始動する。もちろん自分がその中に居て手掛けたい気持ちはあった。
だけど、そういう実績を今後に活かして、新しいことにチャレンジしたい気持ちの方が大きくなってた。
会社を辞めることについては、愛花はもちろんだけど、相談してた枝野さんですら想定してたより早すぎると困惑した様子だった。
そもそも秋前を想定して相談していたこともあるし、そこは予定よりも早く決断したことを心からお詫びした。
教師を辞めて本当にやりたいことを探して、インテリアコーディネーターの道に進んだことに後悔はない。
まだまだ半人前だし、もっともっとチャレンジしてみたいことはある。
今まで沢山の人に支えてもらって楽しく仕事をしてきたから、その人たちと別れるのは辛かったけど、今後も全く接点がない訳じゃない。だから頑張れると思う。
そして私は長く住んだ家を引き払って、一稀さんが待つイギリスでの生活をスタートさせると、お父さんを招いて憧れだった教会でウェディングドレスを着てバージンロードを歩いた。
参列者はお父さんとオリバーと恵子さんだけ。本当に身内だけのささやかな結婚式。
「私ね、このプリズムみたいな光の中で、お嫁さんになるのが夢だったんだ」
「なーたんは世界一可愛い花嫁さんだよ。夢見てきた花嫁像まで可愛いね」
お父さんと繋いだ手は一稀さんに引き継がれて、誓いの言葉を交わしてキスをする。
お父さんの前だからか、一稀さんはふざけたりエッチなことを言わなかっただけでも、花丸をつけてあげたい。最後はお姫様みたいに抱きかかえられたけど。
式が終わると、当たり前のように自宅に沢山あるゲストルームにお父さんが泊まれるよう、せっかく部屋を片付けたのに、あろうことか丁重に断られた。
「実はこっちに友人が居てな。観光がてらのんびりしたいし、新婚さんの邪魔をするほど無粋じゃないよ」
そう言ったお父さんに、一稀さんはせめてホテルだけでもと、最高級のホテルを手配してなんとか折り合いを付けていた。
「ふう。なんだかバタバタと今日を迎えたね」
「お疲れ様。タキシード姿も素敵だったよ」
「なーたんのウェディングドレスも最高だった。やっぱり別の機会にフォトウェディングしようよ」
「えー。今日の写真があるから別によくない?」
「やだ。もっと色んなドレス着たなーたんの写真残しときたい」
「なにまた子どもみたいなワガママ言って」
キッチンに二人で並んで夕飯の支度をしながら、切ったばかりのパプリカを一稀さんの口に放り込む。
「一生に一度だよ?もっともっと思い出に残るようにしなきゃ」
そう言いながら、一稀さんの不埒な手が私のスカートをたくし上げて内腿をゆるゆると撫でる。
「ちょっと、包丁持ってるのに危ないでしょ」
「とか言いながら、もう凄いことになってるんじゃない?」
一稀さんがニヤリと笑って潤んだ花弁を暴こうとする。
「こらっ!」
包丁を置いて不埒な手を叩くと、無駄に色気が漏れる視線を向けてくる一稀さんに、ご飯が先だからねと釘を刺すと、再び包丁を握って野菜を刻む。
「あぁあ、冷たい奥さんだな」
「なぁに、それはベッドの上でのことかしら」
「うわ、なーたんが攻めてきた」
「今日は初夜だよ?エグいくらいえっろいことするつもりだったんじゃないの、ハニー」
「だめ、可愛すぎてチンコ痛い」
「まただよ!バカ、すぐそういう下品な言い方しないでよ」
「正直だって言ってよね」
後ろから抱きついて、熱くなった昂りを私の腰に擦りつながら、愛してるよと耳元に囁かれる。
やっぱりどうしたって、こんな一稀さんが好きで好きで大好きで仕方なくて、愛してしまってる私にも原因はあるのかな。
「ああ、これで掻き回されたいな」
「え、ちょっとなーたん、どうしたの、グイグイ攻めてくるじゃん。もう出ちゃう」
「バカ。早くベッドに連れてって」
振り返って一稀さん好みの濃厚なキスをすると、参ったなって嬉しそうに苦笑いする顔と目が合った。
こうして、ゴミ捨て場で拾ったはずのヒモ男は、素敵な素敵な旦那様になりました。
じゃあ、今から夫婦の時間を楽しむから、寝室の扉は開けないでね。なんてね。
おわり。
もちろんイギリスでの再就職もきちんと決めてあるし、契約も済んでいる。
イーグランドとアイザニュートとのコラボ企画は、第二弾の草案が出されて、そろそろ本格始動する。もちろん自分がその中に居て手掛けたい気持ちはあった。
だけど、そういう実績を今後に活かして、新しいことにチャレンジしたい気持ちの方が大きくなってた。
会社を辞めることについては、愛花はもちろんだけど、相談してた枝野さんですら想定してたより早すぎると困惑した様子だった。
そもそも秋前を想定して相談していたこともあるし、そこは予定よりも早く決断したことを心からお詫びした。
教師を辞めて本当にやりたいことを探して、インテリアコーディネーターの道に進んだことに後悔はない。
まだまだ半人前だし、もっともっとチャレンジしてみたいことはある。
今まで沢山の人に支えてもらって楽しく仕事をしてきたから、その人たちと別れるのは辛かったけど、今後も全く接点がない訳じゃない。だから頑張れると思う。
そして私は長く住んだ家を引き払って、一稀さんが待つイギリスでの生活をスタートさせると、お父さんを招いて憧れだった教会でウェディングドレスを着てバージンロードを歩いた。
参列者はお父さんとオリバーと恵子さんだけ。本当に身内だけのささやかな結婚式。
「私ね、このプリズムみたいな光の中で、お嫁さんになるのが夢だったんだ」
「なーたんは世界一可愛い花嫁さんだよ。夢見てきた花嫁像まで可愛いね」
お父さんと繋いだ手は一稀さんに引き継がれて、誓いの言葉を交わしてキスをする。
お父さんの前だからか、一稀さんはふざけたりエッチなことを言わなかっただけでも、花丸をつけてあげたい。最後はお姫様みたいに抱きかかえられたけど。
式が終わると、当たり前のように自宅に沢山あるゲストルームにお父さんが泊まれるよう、せっかく部屋を片付けたのに、あろうことか丁重に断られた。
「実はこっちに友人が居てな。観光がてらのんびりしたいし、新婚さんの邪魔をするほど無粋じゃないよ」
そう言ったお父さんに、一稀さんはせめてホテルだけでもと、最高級のホテルを手配してなんとか折り合いを付けていた。
「ふう。なんだかバタバタと今日を迎えたね」
「お疲れ様。タキシード姿も素敵だったよ」
「なーたんのウェディングドレスも最高だった。やっぱり別の機会にフォトウェディングしようよ」
「えー。今日の写真があるから別によくない?」
「やだ。もっと色んなドレス着たなーたんの写真残しときたい」
「なにまた子どもみたいなワガママ言って」
キッチンに二人で並んで夕飯の支度をしながら、切ったばかりのパプリカを一稀さんの口に放り込む。
「一生に一度だよ?もっともっと思い出に残るようにしなきゃ」
そう言いながら、一稀さんの不埒な手が私のスカートをたくし上げて内腿をゆるゆると撫でる。
「ちょっと、包丁持ってるのに危ないでしょ」
「とか言いながら、もう凄いことになってるんじゃない?」
一稀さんがニヤリと笑って潤んだ花弁を暴こうとする。
「こらっ!」
包丁を置いて不埒な手を叩くと、無駄に色気が漏れる視線を向けてくる一稀さんに、ご飯が先だからねと釘を刺すと、再び包丁を握って野菜を刻む。
「あぁあ、冷たい奥さんだな」
「なぁに、それはベッドの上でのことかしら」
「うわ、なーたんが攻めてきた」
「今日は初夜だよ?エグいくらいえっろいことするつもりだったんじゃないの、ハニー」
「だめ、可愛すぎてチンコ痛い」
「まただよ!バカ、すぐそういう下品な言い方しないでよ」
「正直だって言ってよね」
後ろから抱きついて、熱くなった昂りを私の腰に擦りつながら、愛してるよと耳元に囁かれる。
やっぱりどうしたって、こんな一稀さんが好きで好きで大好きで仕方なくて、愛してしまってる私にも原因はあるのかな。
「ああ、これで掻き回されたいな」
「え、ちょっとなーたん、どうしたの、グイグイ攻めてくるじゃん。もう出ちゃう」
「バカ。早くベッドに連れてって」
振り返って一稀さん好みの濃厚なキスをすると、参ったなって嬉しそうに苦笑いする顔と目が合った。
こうして、ゴミ捨て場で拾ったはずのヒモ男は、素敵な素敵な旦那様になりました。
じゃあ、今から夫婦の時間を楽しむから、寝室の扉は開けないでね。なんてね。
おわり。
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