60 / 65
22-2
しおりを挟む
「あれは俺の緊張をほぐすためだと思うよ。いいお父さんだよ」
「樹貴さんは優しいですね。私は許せませんけどね」
本当に樹貴さんのご家族とは大違いだ。
実は樹貴さんのご家族には、既に先日挨拶を済ませている。
というのも、友梨さんが気を利かせてくれて、ご両親が揃って私たちが住んでる家、つまり自分たちの家に顔を出してくれたのだ。
樹貴さんはお母様に似たのか、お父様はダンディで素敵な方だったけど、樹貴さんに比べるとそこまで色男という感じではなかった。
逆にお母様は驚くほど若々しくてお綺麗で、なんでこんな奥様がいて浮気なんか出来たんだろうと、失礼なことを思ってしまった。
友梨さんが間に入ってくれたこともあり、ご両親は私たちの結婚を快諾してくださって、結婚後もあの家に住めばいいじゃないかと提案してくださった。
「大仕事を終えたら、なんか一気に疲労感が襲ってきた」
「大仕事だなんて。大袈裟ですよ」
「いやいや、大事なお嬢さんとの結婚だからね」
「それなのに、父が悪ふざけして本当にすみません」
「だからもうそれは良いって」
樹貴さんは思い出し笑いをして肩を揺らしている。
「それより、本当に良かったんですか」
「ん? なにが」
「あの家に住むことですよ」
「ああ、俺は全然構わないよ。香澄ちゃんはやっぱり通勤が不便かな」
「いえ、それは別に良いんです。自転車通勤だからトレーニングにもなりますし。だけど管理も大変ですよね」
「それは武田さんが引き続き管理を続けてくれるから大丈夫だよ。まあ、今よりは来てくれる頻度は下がるだろうけど、他の人を雇っても良いし」
「随分簡単に言いますけど、家の中のことを任せるなら、それなりの人を探さないと大変ですよ」
「それは武田さんが力になってくれるだろうから、問題はないよ」
「そうですか? なら良いんですけど」
電車を乗り継いで最寄駅に到着すると、うちの実家から手土産にスイーツやパンを大量にもらってきたので、スーパーに寄って、ジャムやパテ、チーズなんかも買ってから家に帰宅する。
「ふう。やっと帰ってきた」
「お疲れ様でした。コーヒー淹れますか? それともお酒にしますか」
「そうだね、ワインを飲みながら、いただいたパンを食べたいかな」
「じゃあワイン持ってきますね」
「あ、俺も行くよ。お皿とかいるでしょ」
座ったばかりのソファーから立ち上がって、樹貴さんが私の手を取って二人で一緒にダイニングキッチンに向かう。
買ってきたチーズをカットしてお皿に盛り付けると、ジャムやパテを掬うバターナイフを用意して、樹貴さんが選んだワインとグラスを持ってリビングに戻った。
「これでいよいよ本格的に結婚のことが決められるね」
「そうですけど、樹貴さんのお仕事関係の方をお呼びするなら、小規模でとは言ってられないですよね」
「そうなんだよね。プライベートに仕事は持ち込みたくないんだけど、こればっかりはそうもいかなくて」
「仕方ないですよ」
「レセプションのパートナーとかも、やってもらう機会が出てくると思うけど、本当にごめんね」
「ちょっと想像出来ないですけど、他の人に任せる訳にもいかないですし頑張ります。そもそも今まではどうしてたんですか」
「同伴者ってこと?」
「あ、その顔でなんとなく分かるんで大丈夫です」
「過去のことだから大目に見て欲しい」
「大丈夫です。私だって大人ですから。嫉妬しない訳じゃないですけど、過去はどうしようもないので」
これから決めなきゃいけないことや、覚えていかないといけないことがたくさんある。
でもそれは二人の新たなスタート地点に立てたってことなんだから、プラスに考えたいと思う。
「樹貴さんは優しいですね。私は許せませんけどね」
本当に樹貴さんのご家族とは大違いだ。
実は樹貴さんのご家族には、既に先日挨拶を済ませている。
というのも、友梨さんが気を利かせてくれて、ご両親が揃って私たちが住んでる家、つまり自分たちの家に顔を出してくれたのだ。
樹貴さんはお母様に似たのか、お父様はダンディで素敵な方だったけど、樹貴さんに比べるとそこまで色男という感じではなかった。
逆にお母様は驚くほど若々しくてお綺麗で、なんでこんな奥様がいて浮気なんか出来たんだろうと、失礼なことを思ってしまった。
友梨さんが間に入ってくれたこともあり、ご両親は私たちの結婚を快諾してくださって、結婚後もあの家に住めばいいじゃないかと提案してくださった。
「大仕事を終えたら、なんか一気に疲労感が襲ってきた」
「大仕事だなんて。大袈裟ですよ」
「いやいや、大事なお嬢さんとの結婚だからね」
「それなのに、父が悪ふざけして本当にすみません」
「だからもうそれは良いって」
樹貴さんは思い出し笑いをして肩を揺らしている。
「それより、本当に良かったんですか」
「ん? なにが」
「あの家に住むことですよ」
「ああ、俺は全然構わないよ。香澄ちゃんはやっぱり通勤が不便かな」
「いえ、それは別に良いんです。自転車通勤だからトレーニングにもなりますし。だけど管理も大変ですよね」
「それは武田さんが引き続き管理を続けてくれるから大丈夫だよ。まあ、今よりは来てくれる頻度は下がるだろうけど、他の人を雇っても良いし」
「随分簡単に言いますけど、家の中のことを任せるなら、それなりの人を探さないと大変ですよ」
「それは武田さんが力になってくれるだろうから、問題はないよ」
「そうですか? なら良いんですけど」
電車を乗り継いで最寄駅に到着すると、うちの実家から手土産にスイーツやパンを大量にもらってきたので、スーパーに寄って、ジャムやパテ、チーズなんかも買ってから家に帰宅する。
「ふう。やっと帰ってきた」
「お疲れ様でした。コーヒー淹れますか? それともお酒にしますか」
「そうだね、ワインを飲みながら、いただいたパンを食べたいかな」
「じゃあワイン持ってきますね」
「あ、俺も行くよ。お皿とかいるでしょ」
座ったばかりのソファーから立ち上がって、樹貴さんが私の手を取って二人で一緒にダイニングキッチンに向かう。
買ってきたチーズをカットしてお皿に盛り付けると、ジャムやパテを掬うバターナイフを用意して、樹貴さんが選んだワインとグラスを持ってリビングに戻った。
「これでいよいよ本格的に結婚のことが決められるね」
「そうですけど、樹貴さんのお仕事関係の方をお呼びするなら、小規模でとは言ってられないですよね」
「そうなんだよね。プライベートに仕事は持ち込みたくないんだけど、こればっかりはそうもいかなくて」
「仕方ないですよ」
「レセプションのパートナーとかも、やってもらう機会が出てくると思うけど、本当にごめんね」
「ちょっと想像出来ないですけど、他の人に任せる訳にもいかないですし頑張ります。そもそも今まではどうしてたんですか」
「同伴者ってこと?」
「あ、その顔でなんとなく分かるんで大丈夫です」
「過去のことだから大目に見て欲しい」
「大丈夫です。私だって大人ですから。嫉妬しない訳じゃないですけど、過去はどうしようもないので」
これから決めなきゃいけないことや、覚えていかないといけないことがたくさんある。
でもそれは二人の新たなスタート地点に立てたってことなんだから、プラスに考えたいと思う。
0
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!
めーぷる
恋愛
見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。
秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。
呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――
地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。
ちょっとだけ三角関係もあるかも?
・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。
・毎日11時に投稿予定です。
・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。
・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。
隠れ御曹司の愛に絡めとられて
海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた――
彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。
古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。
仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!?
チャラい男はお断り!
けれども彼の作る料理はどれも絶品で……
超大手商社 秘書課勤務
野村 亜矢(のむら あや)
29歳
特技:迷子
×
飲食店勤務(ホスト?)
名も知らぬ男
24歳
特技:家事?
「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて
もう逃げられない――
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
2021 宝島社 この文庫がすごい大賞 優秀作品🎊
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~
真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる