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変な空気が流れていて冷や汗が滲んでくるけど、友梨さんはそれを違う緊張だと受け止めてくれたらしく、お兄さんがここには住んでないことを強調する。
「お兄ちゃん、なんで今日に限ってここに居るのよ」
「別に、うちの家なんだし、いつ来ようが勝手だろう」
「そうもいかないのよ」
友梨さんは掻い摘んで私の事情を説明すると、この家の一部屋を私に貸し出す話が出てること、それはご両親にも許可を得てることをお兄さんに説明する。
「嫁入り前のお嬢さんなのよ、分かるでしょ。それにお兄ちゃんは自分のマンションがあるでしょ」
「それはそっちが勝手に決めたことだろ」
目の前で兄妹ゲンカが始まってしまった。
いたたまれなくて口を挟もうとするけど、バチバチと火花を散らすような大人気ない兄妹ゲンカに、なかなか入り込むことが出来ない。
「香澄ちゃんって言ったっけ」
突然声を掛けられて、慌てて彼の顔を見る。
「は、はい」
「部屋を貸すのは別に俺も反対はしないけど、言ってもここは俺の実家だからさ、仕事の都合でここに寝泊まりするのが便利な時もあるんだよね」
「それは、はい。こちらが無理を言ってるだけなので。私は自分で部屋を探しますので」
「いやいや、住むのは構わないんだって。だけど、俺がたまに泊まるのを了承してくれないかな」
「ちょっと、お兄ちゃん!」
友梨さんが間に割って入ろうとするのを、静かにしててとお兄さんが黙らせる。
「だってこんなだだっ広い家に、嫁入り前のお嬢さんが一人も不用心だろ。セキュリティ会社に登録してるとはいえ、お預かりするなら様子見も必要じゃないか」
「いえ、本当にお気遣いいただいて申し訳ないんですが、私やっぱり自分で部屋を探しますので」
なんだか話が大事になってきたので、いくら菜穂ちゃんの紹介で、よく見知った友梨さんの実家とはいえ、やっぱり部屋を間借りするのは諦めた方が良さそうだ。
「そうは言うけど香澄ちゃん、部屋が見つからなかったら大変じゃない。良いのよ、うちに住んでからゆっくり探せば」
「俺もそれが良いと思うよ」
「いえ、そういう訳には」
友梨さんとお兄さんにこの家に住めば良いと言われて言葉に詰まる。
お兄さんとも知らない間柄ではない、非常に気まずい立場の私としては、ここは引き止めずに追い出すくらいのことを言って欲しかったのに。
「ねえ香澄ちゃん。兄のことはちょっと想定外だったけど、本当に、遠慮してるだけなら気遣い無用だから」
「でも、友梨さん」
「本当に、遠慮ならしないでね。とりあえず事情が事情だし、今の部屋に住み続けるのも大変でしょ」
確かに新しい部屋が決まらないことには、美咲や旦那さんの家賃負担が続いてしまうし、私が一人で払うからと簡単に切り出せるような額じゃない。
色んなことが頭をよぎって悩んでいると、友梨さんのお兄さんが難しく考えなくて良いと口を開いた。
「俺のことは、この家の管理人みたいなものだと思ったらいいよ。二週に一回か月イチ程度、寝に帰ってくるだけだから。多分すれ違うこともないだろうし。友梨もそれなら良いだろ」
「そうね、家の管理で言えば武田さんも出入りするし。香澄ちゃん、兄のことはちょっと想定外だけど、それでどうかしら」
二人に見つめられて、ここに住めば良いと言い切られると、断る理由も咄嗟には思い付かなくて、押し切られる形で頷くしかなかった。
「じゃあ、お世話になります」
「ああ、良かった。菜穂子に頼まれてたから、これで追い出すみたいになったら嫌だったのよ」
友梨さんは安堵したようにそう答えると、二階を案内する前に換気を済ませてくると言ってリビングを出て行ってしまい、リビングには私と友梨さんのお兄さんが残された。
「お兄ちゃん、なんで今日に限ってここに居るのよ」
「別に、うちの家なんだし、いつ来ようが勝手だろう」
「そうもいかないのよ」
友梨さんは掻い摘んで私の事情を説明すると、この家の一部屋を私に貸し出す話が出てること、それはご両親にも許可を得てることをお兄さんに説明する。
「嫁入り前のお嬢さんなのよ、分かるでしょ。それにお兄ちゃんは自分のマンションがあるでしょ」
「それはそっちが勝手に決めたことだろ」
目の前で兄妹ゲンカが始まってしまった。
いたたまれなくて口を挟もうとするけど、バチバチと火花を散らすような大人気ない兄妹ゲンカに、なかなか入り込むことが出来ない。
「香澄ちゃんって言ったっけ」
突然声を掛けられて、慌てて彼の顔を見る。
「は、はい」
「部屋を貸すのは別に俺も反対はしないけど、言ってもここは俺の実家だからさ、仕事の都合でここに寝泊まりするのが便利な時もあるんだよね」
「それは、はい。こちらが無理を言ってるだけなので。私は自分で部屋を探しますので」
「いやいや、住むのは構わないんだって。だけど、俺がたまに泊まるのを了承してくれないかな」
「ちょっと、お兄ちゃん!」
友梨さんが間に割って入ろうとするのを、静かにしててとお兄さんが黙らせる。
「だってこんなだだっ広い家に、嫁入り前のお嬢さんが一人も不用心だろ。セキュリティ会社に登録してるとはいえ、お預かりするなら様子見も必要じゃないか」
「いえ、本当にお気遣いいただいて申し訳ないんですが、私やっぱり自分で部屋を探しますので」
なんだか話が大事になってきたので、いくら菜穂ちゃんの紹介で、よく見知った友梨さんの実家とはいえ、やっぱり部屋を間借りするのは諦めた方が良さそうだ。
「そうは言うけど香澄ちゃん、部屋が見つからなかったら大変じゃない。良いのよ、うちに住んでからゆっくり探せば」
「俺もそれが良いと思うよ」
「いえ、そういう訳には」
友梨さんとお兄さんにこの家に住めば良いと言われて言葉に詰まる。
お兄さんとも知らない間柄ではない、非常に気まずい立場の私としては、ここは引き止めずに追い出すくらいのことを言って欲しかったのに。
「ねえ香澄ちゃん。兄のことはちょっと想定外だったけど、本当に、遠慮してるだけなら気遣い無用だから」
「でも、友梨さん」
「本当に、遠慮ならしないでね。とりあえず事情が事情だし、今の部屋に住み続けるのも大変でしょ」
確かに新しい部屋が決まらないことには、美咲や旦那さんの家賃負担が続いてしまうし、私が一人で払うからと簡単に切り出せるような額じゃない。
色んなことが頭をよぎって悩んでいると、友梨さんのお兄さんが難しく考えなくて良いと口を開いた。
「俺のことは、この家の管理人みたいなものだと思ったらいいよ。二週に一回か月イチ程度、寝に帰ってくるだけだから。多分すれ違うこともないだろうし。友梨もそれなら良いだろ」
「そうね、家の管理で言えば武田さんも出入りするし。香澄ちゃん、兄のことはちょっと想定外だけど、それでどうかしら」
二人に見つめられて、ここに住めば良いと言い切られると、断る理由も咄嗟には思い付かなくて、押し切られる形で頷くしかなかった。
「じゃあ、お世話になります」
「ああ、良かった。菜穂子に頼まれてたから、これで追い出すみたいになったら嫌だったのよ」
友梨さんは安堵したようにそう答えると、二階を案内する前に換気を済ませてくると言ってリビングを出て行ってしまい、リビングには私と友梨さんのお兄さんが残された。
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