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ウッドデッキに置かれたデッキチェアとテーブルのセットを眺めて、夕涼みする自分を想像してから、もうすっかり住む気になってる自分が恥ずかしくて咳払いをする。
確かにこんな素敵な家に、一時的とはいえ住めたら最高だけど、いくら友梨さんのご実家とはいえ、豪華すぎて気が引けるのも事実。
どうしたものかと思っていると、ちょうどリビングのドアが開いたので、友梨さんを出迎えるためにソファーから立ち上がる。
「あれ、お客さん?」
「え」
友梨さんが戻ってきたとばかり思っていたら、ドアを開けて入ってきたのは全くの別人だった。
「え、待って。君、なんでここに居るの」
明らかに寝起きの様子のその人は、Tシャツにジョガーパンツとラフな格好で、少し寝癖のついた髪を掻き上げて驚いた顔をしている。
だけど驚いたのは私も同じだ。
「あの、ごめんなさい。お邪魔してます。私は友梨さんと一緒に来たんですが」
「友梨と? ていうか、君、あの晩の子だよね」
「えっと、多分、はい。そうです」
中華屋さんでご飯をシェアして、二軒目のバーからホテルに行った、まさにあの晩の彼が目の前に立っている。
なぜ彼がここに居るんだろうか。
「ところで友梨は? どこに居んの」
「お茶を用意してくださってて、今は席を外してます」
「なるほど。ま、とりあえずくつろいでて。俺は友梨んとこ行ってくるわ」
「……はい。失礼します」
勢いよく閉まったドアを茫然と見つめていると、急に力が抜けてソファーに埋もれるように腰を落とす。
どうやら彼は友梨さんと面識があるようだけど、なぜこの家にあんな寛いだ姿で居たんだろうか。
突然のことに頭の中で処理が追いつかなくて、しんと静まり返った部屋に一人きりで頭の中をグルグルと高速回転させる。
この家に入った時、確かに友梨さんは誰かが来てると言っていた。
それにこのリビングに入った時も、家を管理してる人は今日は来ていないという話だったのに、部屋には冷房が効いていて今だって過ごしやすい。
「香澄ちゃん、ごめん」
こんがらがってパニック寸前の私の元に、慌てた様子の友梨さんが戻ってきたのはすぐのことだった。
「友梨さん……」
「本当にごめんなさいね。ああ、その顔は会っちゃったのね。本当にごめんなさい」
「いえ、あの、さっきお見えになった方は一体」
氷が入った涼しげな緑茶とお菓子を用意してくれる友梨さんの顔を覗き込むと、申し訳なさそうに友梨さんは手を合わせて私に謝った。
「本当にごめんなさい。どうも兄が寝泊まりしてたみたいなの」
「え、お兄様なんですか」
「そうなのよ。あんまりにも汚らしいから、顔洗いに行かせてる」
汚いもの見せてごめんなさいねと、友梨さんも想定外だったらしく、彼がここに居ることは知らなかったようだ。
「あの、お兄様がお住まいなら、今回の話はなかったことにしませんか」
「ダメよ、ダメ。兄はここに住んでる訳じゃないから良いのよ」
「でも、ご家族がお使いになる可能性がある家に、私みたいな他人が居候させていただくのは」
「本当に兄のことは気にしないで。自分のマンションが有るのに、帰るのが面倒で泊まっただけだろうから」
友梨さんの説明を聞いていると、リビングのドアが開いて、さっきとは違って髪をハーフアップにした彼が部屋に戻ってきた。
「香澄ちゃん。改めて紹介するけど、コレが私の兄で、 古川 樹貴。お兄ちゃん、こちらは菜穂子の従姉妹で伊原香澄ちゃん」
「おくつろぎのところ、突然お邪魔して申し訳ありません。伊原と申します」
「……どうも。友梨の兄の樹貴です」
気まずい。
確かにこんな素敵な家に、一時的とはいえ住めたら最高だけど、いくら友梨さんのご実家とはいえ、豪華すぎて気が引けるのも事実。
どうしたものかと思っていると、ちょうどリビングのドアが開いたので、友梨さんを出迎えるためにソファーから立ち上がる。
「あれ、お客さん?」
「え」
友梨さんが戻ってきたとばかり思っていたら、ドアを開けて入ってきたのは全くの別人だった。
「え、待って。君、なんでここに居るの」
明らかに寝起きの様子のその人は、Tシャツにジョガーパンツとラフな格好で、少し寝癖のついた髪を掻き上げて驚いた顔をしている。
だけど驚いたのは私も同じだ。
「あの、ごめんなさい。お邪魔してます。私は友梨さんと一緒に来たんですが」
「友梨と? ていうか、君、あの晩の子だよね」
「えっと、多分、はい。そうです」
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なぜ彼がここに居るんだろうか。
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「お茶を用意してくださってて、今は席を外してます」
「なるほど。ま、とりあえずくつろいでて。俺は友梨んとこ行ってくるわ」
「……はい。失礼します」
勢いよく閉まったドアを茫然と見つめていると、急に力が抜けてソファーに埋もれるように腰を落とす。
どうやら彼は友梨さんと面識があるようだけど、なぜこの家にあんな寛いだ姿で居たんだろうか。
突然のことに頭の中で処理が追いつかなくて、しんと静まり返った部屋に一人きりで頭の中をグルグルと高速回転させる。
この家に入った時、確かに友梨さんは誰かが来てると言っていた。
それにこのリビングに入った時も、家を管理してる人は今日は来ていないという話だったのに、部屋には冷房が効いていて今だって過ごしやすい。
「香澄ちゃん、ごめん」
こんがらがってパニック寸前の私の元に、慌てた様子の友梨さんが戻ってきたのはすぐのことだった。
「友梨さん……」
「本当にごめんなさいね。ああ、その顔は会っちゃったのね。本当にごめんなさい」
「いえ、あの、さっきお見えになった方は一体」
氷が入った涼しげな緑茶とお菓子を用意してくれる友梨さんの顔を覗き込むと、申し訳なさそうに友梨さんは手を合わせて私に謝った。
「本当にごめんなさい。どうも兄が寝泊まりしてたみたいなの」
「え、お兄様なんですか」
「そうなのよ。あんまりにも汚らしいから、顔洗いに行かせてる」
汚いもの見せてごめんなさいねと、友梨さんも想定外だったらしく、彼がここに居ることは知らなかったようだ。
「あの、お兄様がお住まいなら、今回の話はなかったことにしませんか」
「ダメよ、ダメ。兄はここに住んでる訳じゃないから良いのよ」
「でも、ご家族がお使いになる可能性がある家に、私みたいな他人が居候させていただくのは」
「本当に兄のことは気にしないで。自分のマンションが有るのに、帰るのが面倒で泊まっただけだろうから」
友梨さんの説明を聞いていると、リビングのドアが開いて、さっきとは違って髪をハーフアップにした彼が部屋に戻ってきた。
「香澄ちゃん。改めて紹介するけど、コレが私の兄で、 古川 樹貴。お兄ちゃん、こちらは菜穂子の従姉妹で伊原香澄ちゃん」
「おくつろぎのところ、突然お邪魔して申し訳ありません。伊原と申します」
「……どうも。友梨の兄の樹貴です」
気まずい。
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